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十話 交錯
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「今日から三連休か」
俺は朝食を貪りながらそう呟く。
「そうだね。まぁ、ボクらはバイトばっかりだろうけど。あれ、そう言えば今日はシフト入れないでって海斗言ってたけど、なんで?」
「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれた。これを見よ!」
俺は足元に隠してあった通帳を見せびらかす。
「えっと、ん?じゅ、十万円!?どっから持ってきたのこれ!?」
「バカ、自分で稼いだ分だよ。今年は私服以外全部貯めてたからな」
庭理は成る程と頷く。
「この金でさ、東京行こうぜ東京!」
「いいけど、なんで東京?」
「スカイツリー見たい」
俺が正直にそう言うと、何故か庭理はぷっと吹き出した。
「なんで笑うんだよぉ!」
「だってスカイツリーって、はははっ」
ま、庭理も楽しそうだしいっか。
俺は笑う庭理をよそに、食器をキッチンに運んだ。
その後庭理も食べ終わり、食器を運ぶ。それを俺がせっせと洗う訳だ。
滑りひとつ残さず洗い終えた俺は、隣の寝室へ入る。
「キャー、海斗さんのえっちー」
着替え中の庭理が、棒読みでそんなことを言ってきた。
「あ、悪い」
俺はそう言いながら着替え始める。
「あ、もう気にしないんだこういうの」
庭理が苦笑しながらそう言ってきた。
俺はタンスに向かい適当な服を選び着る。
黒いティーシャツに青と黄色のチェックのシャツを上に着る。下はジーンズを穿いた。
「庭理ー、着替え終わったか?」
一応、庭理には背を向けた状態で着替えたので、庭理が着替え終えているか確認した。
「うん。今終わった」
振り向くと、水色のワンピースを着た庭理がそこにいた。肩には革のバッグを提げている。
「じゃ、行くか」
俺は煉瓦色のコートを、庭理は薄花色のカーディガンを羽織った。これで寒さ対策も大丈夫なはず。
「海斗、なんかダサくない?」
「え?結構可愛いと思うけど」
「いや、ボクじゃなくてさ......」
「え、俺......?」
俺は自分の服を見てみる。
「そうか?」
庭理は冷めた目で俺を見ていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━
「凄かったね、スカイツリー」
俺は庭理にそうだなと頷く。
いや、正直本当に凄かった。
日本晴れのおかげで遠くまでくっきり見えたし、まぁ、その分長く並ばされたけど。
とにかく、スカイツリーの中も近未来的でびっくりしたし、エレベーターはめっちゃ早かった。
「海斗、このあとどうするの?」
「あー、ソラマチで適当に食べて帰ろうぜ」
俺達がソラマチへ向かおうとすると、後方から声がかけられた。
「お、美園クンじゃーん!懐かしー」
俺は振り向き、その顔をみたとたん、顔をしかめた。
「永沢......」
この少しふっくらしたこいつは、永沢優。俺が転校する前の学校の同級生だ。
「え?誰その子?え、え?彼女?まじかよ!すげぇな美園クン」
馬鹿にしたように騒ぐ永沢に腹をたてながらも、俺はぐっと堪えた。
「じゃ、俺もう行くから」
「いや、待てって美園クン」
永沢が俺の手を掴んできた。振りほどきたくて仕方なかったが、折角のデートを壊したくないので、永沢になんか用かと聞く。
「もっと話しようぜー、せっかく会えたんだしよぉ」
「......てか、なんでお前がここにいんだよ」
「別にそんなん勝手じゃーん」
「なぁ、もういいだろ。俺達行くから」
俺が庭理の手を引き、離れようとすると、
「ねぇ、彼女サンは美園クンの秘密知ってんの?」
俺はその足を止めた。
庭理は俺のことを知ってるから良かったけど、もしも知らなかったらどういうつもりだ。
いや、こいつは単に、俺達を引き離そうとしてるのだろう。こいつはそういうやつだ。
遊び感覚で、他人の人生を狂わせる。それが楽しくて堪らないんだろう。
こいつは昔から、何一つ成長してないんだな。
「美園クンはさぁ!昔自分の父親を殺した、犯罪者なんだぜぇ!」
ぷつりとなにかが切れた音がした俺は、殴りかかろうと永沢に振り向き、
「ねぇ」
庭理が声を出した。
「なんでそのことを君が言うの?普通彼女がいる前でそういうこと、言う必要ないよね?」
庭理は、それはもう激昂していた。
「君って、凄く最低な人間なんだね」
気圧されたのか、若干冷や汗を流していた永沢だったが、すぐ反論してきた。
「はっ?犯罪者の方がずっと最低野郎だと思いますけどぉ?」
「海斗は仕方なくやったことだけど、君は違うでしょ?そんな風に誰かを面白半分で傷つける人間の方が、ずっとずっと最低だよ」
「何言ってんだよ。自分の父親を殺したんだぞそいつは。しかも当日小学三年生。どう考えてもこいつのが頭イカれ......」
「永沢」
俺は静かに、そう呟く。
「もう黙れ」
俺は永沢が身を固めている内に、庭理の手を引き歩き出した。
その後、我を取り戻した永沢は、怒鳴り付けてきた。
「お前みたいな殺人者が、しゃしゃってんじゃねぇぞ!」
その後も道のど真ん中で怒鳴り散らす永沢と、その視線の先にいる俺達は、周囲の注目を集めた。
その大半は、永沢の言葉を鵜呑みにし、哀愁の視線を注いできた。
残りは、訳のわからないことを怒鳴り散らす変人への、差別的な視線だった。
俺は朝食を貪りながらそう呟く。
「そうだね。まぁ、ボクらはバイトばっかりだろうけど。あれ、そう言えば今日はシフト入れないでって海斗言ってたけど、なんで?」
「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれた。これを見よ!」
俺は足元に隠してあった通帳を見せびらかす。
「えっと、ん?じゅ、十万円!?どっから持ってきたのこれ!?」
「バカ、自分で稼いだ分だよ。今年は私服以外全部貯めてたからな」
庭理は成る程と頷く。
「この金でさ、東京行こうぜ東京!」
「いいけど、なんで東京?」
「スカイツリー見たい」
俺が正直にそう言うと、何故か庭理はぷっと吹き出した。
「なんで笑うんだよぉ!」
「だってスカイツリーって、はははっ」
ま、庭理も楽しそうだしいっか。
俺は笑う庭理をよそに、食器をキッチンに運んだ。
その後庭理も食べ終わり、食器を運ぶ。それを俺がせっせと洗う訳だ。
滑りひとつ残さず洗い終えた俺は、隣の寝室へ入る。
「キャー、海斗さんのえっちー」
着替え中の庭理が、棒読みでそんなことを言ってきた。
「あ、悪い」
俺はそう言いながら着替え始める。
「あ、もう気にしないんだこういうの」
庭理が苦笑しながらそう言ってきた。
俺はタンスに向かい適当な服を選び着る。
黒いティーシャツに青と黄色のチェックのシャツを上に着る。下はジーンズを穿いた。
「庭理ー、着替え終わったか?」
一応、庭理には背を向けた状態で着替えたので、庭理が着替え終えているか確認した。
「うん。今終わった」
振り向くと、水色のワンピースを着た庭理がそこにいた。肩には革のバッグを提げている。
「じゃ、行くか」
俺は煉瓦色のコートを、庭理は薄花色のカーディガンを羽織った。これで寒さ対策も大丈夫なはず。
「海斗、なんかダサくない?」
「え?結構可愛いと思うけど」
「いや、ボクじゃなくてさ......」
「え、俺......?」
俺は自分の服を見てみる。
「そうか?」
庭理は冷めた目で俺を見ていた。
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「凄かったね、スカイツリー」
俺は庭理にそうだなと頷く。
いや、正直本当に凄かった。
日本晴れのおかげで遠くまでくっきり見えたし、まぁ、その分長く並ばされたけど。
とにかく、スカイツリーの中も近未来的でびっくりしたし、エレベーターはめっちゃ早かった。
「海斗、このあとどうするの?」
「あー、ソラマチで適当に食べて帰ろうぜ」
俺達がソラマチへ向かおうとすると、後方から声がかけられた。
「お、美園クンじゃーん!懐かしー」
俺は振り向き、その顔をみたとたん、顔をしかめた。
「永沢......」
この少しふっくらしたこいつは、永沢優。俺が転校する前の学校の同級生だ。
「え?誰その子?え、え?彼女?まじかよ!すげぇな美園クン」
馬鹿にしたように騒ぐ永沢に腹をたてながらも、俺はぐっと堪えた。
「じゃ、俺もう行くから」
「いや、待てって美園クン」
永沢が俺の手を掴んできた。振りほどきたくて仕方なかったが、折角のデートを壊したくないので、永沢になんか用かと聞く。
「もっと話しようぜー、せっかく会えたんだしよぉ」
「......てか、なんでお前がここにいんだよ」
「別にそんなん勝手じゃーん」
「なぁ、もういいだろ。俺達行くから」
俺が庭理の手を引き、離れようとすると、
「ねぇ、彼女サンは美園クンの秘密知ってんの?」
俺はその足を止めた。
庭理は俺のことを知ってるから良かったけど、もしも知らなかったらどういうつもりだ。
いや、こいつは単に、俺達を引き離そうとしてるのだろう。こいつはそういうやつだ。
遊び感覚で、他人の人生を狂わせる。それが楽しくて堪らないんだろう。
こいつは昔から、何一つ成長してないんだな。
「美園クンはさぁ!昔自分の父親を殺した、犯罪者なんだぜぇ!」
ぷつりとなにかが切れた音がした俺は、殴りかかろうと永沢に振り向き、
「ねぇ」
庭理が声を出した。
「なんでそのことを君が言うの?普通彼女がいる前でそういうこと、言う必要ないよね?」
庭理は、それはもう激昂していた。
「君って、凄く最低な人間なんだね」
気圧されたのか、若干冷や汗を流していた永沢だったが、すぐ反論してきた。
「はっ?犯罪者の方がずっと最低野郎だと思いますけどぉ?」
「海斗は仕方なくやったことだけど、君は違うでしょ?そんな風に誰かを面白半分で傷つける人間の方が、ずっとずっと最低だよ」
「何言ってんだよ。自分の父親を殺したんだぞそいつは。しかも当日小学三年生。どう考えてもこいつのが頭イカれ......」
「永沢」
俺は静かに、そう呟く。
「もう黙れ」
俺は永沢が身を固めている内に、庭理の手を引き歩き出した。
その後、我を取り戻した永沢は、怒鳴り付けてきた。
「お前みたいな殺人者が、しゃしゃってんじゃねぇぞ!」
その後も道のど真ん中で怒鳴り散らす永沢と、その視線の先にいる俺達は、周囲の注目を集めた。
その大半は、永沢の言葉を鵜呑みにし、哀愁の視線を注いできた。
残りは、訳のわからないことを怒鳴り散らす変人への、差別的な視線だった。
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