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第二章:周囲の状況に気を付けましょう
幕間ーロビン視点①-
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僕の名前はロビン。テルミ村の村長ゲラルトの孫です。
今年10歳になるのですが、魔力が多い反面成長が遅く、未だに幼児のような体で村の人たちから子ども扱いされるのが不満です。
僕が小さい頃病気で亡くなったお母さんがこういう感じで、獣性が少なく魔力の多い性質の人間で、白い犬の耳と尻尾以外は全人種の様でした。そして、同じころに魔獣に襲われて亡くなったお父さんは、キツネ頭で狐尻尾の普通の獣人だったのですが、僕はお母さんに似たようです。
現在は、両親を亡くした僕をおじいちゃんが引き取り、今はテルミ村で一緒に暮らしています。
この村は、王都から北に位置する精霊の森の外れにあります。しかし、この島国自体が北方に位置することもあって、そのなかでも北側に位置するこの地域は、夏は涼しい反面、冬の寒さが厳しい気候であり、毛皮の豊富な獣人族以外が住むことは困難を極めます。そして、それ以上に、この地域は魔素が濃いため、精霊様の気配が強く、他の地域よりも強力な魔獣などが闊歩しており、僕たち人間は常に生命の危機に怯えながらもこの過酷な環境下で生き抜いてきました。
僕たちの祖先は、かつて王都で武人として栄えた一族だったと聞いていますが、権力争いに敗れ仕えていた主家の一族と共に、当時の権力者から逃げる様にこの辺りに移り住んだそうです。その後、徐々にその数を少なくしていきながらも、何とか環境に適応して細々と生存してこれた訳ですが、現在の村人は100人弱。かつて移住してきた人数より半分以下になっているため、村長の祖父はいつも眉間にしわを寄せながら、村の今後を憂いています。
そんな祖父が、数日前村の周辺を見回っていた時にテス虫に足を噛まれ、床についてしまいました。
テス虫とは、この辺りに生息する毒虫で、森の中に巣を作る甲虫の一種です。村人が巣を発見してから、駆除する前に巣の状態を見回っていた最中の出来事でした。その後、虫の巣自体は駆除できたのですが、虫の毒に倒れた祖父はベッドから起き上がることができず、顔や全身を浮腫ませて、胸を押さえてハァハァと苦しそうに寝ていました。
即死するほどの毒ではありませんが、このままの状態でいれば、1か月もしないうちに心臓を止める強い毒です。ヒールやポーションで少しずつ体力を回復しながらやってきましたが一日に何度も使えるような魔法でもなく、下級のポーションだって安いものでもないため、数に限りがあります。そして、このような病の治療には薬が必要となります。しかし、万能ともいえる状態回復薬は高価であり、このような寒村で手の出せる値段でもなく、またその伝手もありません。 なので、結果この山で採れる薬草の類を調合して与えることとなるのですが、その為にはリモーという花の花弁と根っこが必要だと、村の治療師のおじさんが言っていました。
「このまま手をこまねいていても、村長は良くならない。村人総出でリモーの花を探しに行こう」
そうして、みんなが危険を覚悟して村から離れた森の中まで探しに行ったのです。
僕は体は小さいけれど、魔法の腕はすでに大人並みだったので、村の戦士で腕もたつジョン兄の傍で夢中になって花を探していました。
おじいちゃんを早く治してあげたい……
そう思いながら集中しすぎていたのでしょうか、気づくと周囲に村人の姿が見えなくなっており、僕は慌てて元の場所に戻ろうと彷徨っていました……その時です。
『ゴゥッ!!』
と、大きな音が響いたかと思うと、僕のすぐ左横の大木が大きな風穴を開けました。
っっ!?
突然の出来事に、思わず動くこともできずに目を見開いて固まっていると、スターンスターンと、その大きな体躯の割に軽快な足音で強そうな狼型魔獣がこちらにくるではないですか! あまりにも大きく、強大な力と知性を感じる上位魔獣だったので、僕は抵抗することも思いつかずに、アワアワと立ちすくんでいました。
喰われるっ!!
僕はギュッと体を縮こませて目をつぶりました。……しかし、魔獣は一旦僕を通り過ぎたのでホッとしたものの、『フォレストワームか…』と呟いた後、再び僕の所に戻ってきました。
今度こそ喰われるっ!!
しかし、魔獣は僕を見下ろして首を傾げた後、ローブの襟首を咥えただけで、僕を食べようとはせずに運んでいきました。
…あああ、あとで食べるんですか? お持ち帰りですか?
僕はギュッと体を固くしながら、喰われる恐怖を感じていましたが……魔獣は僕を運んだだけでした。
しかし、魔獣が数歩歩いた先で、ドサッと落とされて……僕は運命の人に出会った…。
今年10歳になるのですが、魔力が多い反面成長が遅く、未だに幼児のような体で村の人たちから子ども扱いされるのが不満です。
僕が小さい頃病気で亡くなったお母さんがこういう感じで、獣性が少なく魔力の多い性質の人間で、白い犬の耳と尻尾以外は全人種の様でした。そして、同じころに魔獣に襲われて亡くなったお父さんは、キツネ頭で狐尻尾の普通の獣人だったのですが、僕はお母さんに似たようです。
現在は、両親を亡くした僕をおじいちゃんが引き取り、今はテルミ村で一緒に暮らしています。
この村は、王都から北に位置する精霊の森の外れにあります。しかし、この島国自体が北方に位置することもあって、そのなかでも北側に位置するこの地域は、夏は涼しい反面、冬の寒さが厳しい気候であり、毛皮の豊富な獣人族以外が住むことは困難を極めます。そして、それ以上に、この地域は魔素が濃いため、精霊様の気配が強く、他の地域よりも強力な魔獣などが闊歩しており、僕たち人間は常に生命の危機に怯えながらもこの過酷な環境下で生き抜いてきました。
僕たちの祖先は、かつて王都で武人として栄えた一族だったと聞いていますが、権力争いに敗れ仕えていた主家の一族と共に、当時の権力者から逃げる様にこの辺りに移り住んだそうです。その後、徐々にその数を少なくしていきながらも、何とか環境に適応して細々と生存してこれた訳ですが、現在の村人は100人弱。かつて移住してきた人数より半分以下になっているため、村長の祖父はいつも眉間にしわを寄せながら、村の今後を憂いています。
そんな祖父が、数日前村の周辺を見回っていた時にテス虫に足を噛まれ、床についてしまいました。
テス虫とは、この辺りに生息する毒虫で、森の中に巣を作る甲虫の一種です。村人が巣を発見してから、駆除する前に巣の状態を見回っていた最中の出来事でした。その後、虫の巣自体は駆除できたのですが、虫の毒に倒れた祖父はベッドから起き上がることができず、顔や全身を浮腫ませて、胸を押さえてハァハァと苦しそうに寝ていました。
即死するほどの毒ではありませんが、このままの状態でいれば、1か月もしないうちに心臓を止める強い毒です。ヒールやポーションで少しずつ体力を回復しながらやってきましたが一日に何度も使えるような魔法でもなく、下級のポーションだって安いものでもないため、数に限りがあります。そして、このような病の治療には薬が必要となります。しかし、万能ともいえる状態回復薬は高価であり、このような寒村で手の出せる値段でもなく、またその伝手もありません。 なので、結果この山で採れる薬草の類を調合して与えることとなるのですが、その為にはリモーという花の花弁と根っこが必要だと、村の治療師のおじさんが言っていました。
「このまま手をこまねいていても、村長は良くならない。村人総出でリモーの花を探しに行こう」
そうして、みんなが危険を覚悟して村から離れた森の中まで探しに行ったのです。
僕は体は小さいけれど、魔法の腕はすでに大人並みだったので、村の戦士で腕もたつジョン兄の傍で夢中になって花を探していました。
おじいちゃんを早く治してあげたい……
そう思いながら集中しすぎていたのでしょうか、気づくと周囲に村人の姿が見えなくなっており、僕は慌てて元の場所に戻ろうと彷徨っていました……その時です。
『ゴゥッ!!』
と、大きな音が響いたかと思うと、僕のすぐ左横の大木が大きな風穴を開けました。
っっ!?
突然の出来事に、思わず動くこともできずに目を見開いて固まっていると、スターンスターンと、その大きな体躯の割に軽快な足音で強そうな狼型魔獣がこちらにくるではないですか! あまりにも大きく、強大な力と知性を感じる上位魔獣だったので、僕は抵抗することも思いつかずに、アワアワと立ちすくんでいました。
喰われるっ!!
僕はギュッと体を縮こませて目をつぶりました。……しかし、魔獣は一旦僕を通り過ぎたのでホッとしたものの、『フォレストワームか…』と呟いた後、再び僕の所に戻ってきました。
今度こそ喰われるっ!!
しかし、魔獣は僕を見下ろして首を傾げた後、ローブの襟首を咥えただけで、僕を食べようとはせずに運んでいきました。
…あああ、あとで食べるんですか? お持ち帰りですか?
僕はギュッと体を固くしながら、喰われる恐怖を感じていましたが……魔獣は僕を運んだだけでした。
しかし、魔獣が数歩歩いた先で、ドサッと落とされて……僕は運命の人に出会った…。
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