【R18】「いのちだいじに」隠遁生活ー私は家に帰りたいー

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第三章:巻き込まれるのはテンプレですか? ふざけんな

10-2.森の姫君(笑)、報復はその場で ※

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 某TL系のお話なんかで、知り合いと電話中に、えっちないたずらで電話を邪魔しにくるドSな彼氏の責めとか、よくある定番のシーンだけど羞恥心の中にも背徳感みたいなものがあって、えっちの気分も読者の期待も盛り上がりますよね? 
特に電話相手が自分に思いを寄せる純情当て馬青年(要イケメン)とかだと倍率ドン
でもそれってあくまでフィクションだからだと思うんですよね。

 それが自分とか、 あ り え ね え

 しかも、彼氏でも何でもない赤の他人な上に、あっちも私の事はただの不審者だと思っているようなギスギスした関係性で、「もうっ」なんて可愛く怒りながら相手の欲望に隠された嫉妬を嬉しいと思うようなシチュエーションになるわけもなく、ただただ見知らぬ男にセクハラされているという怒りだけが湧いてくる。
 ないわーー。マジないわーーー

  お互いに愛情が存在しなければ、こんなのただの痴漢!! 冤罪でも何でもない、ガチで現行犯の!
 ていうか、しかも電話の向こうが“母親”とか、ホントありえねえ!!

 ビッチでMっ気のある彼女もドS彼氏もドン引きのシチュエーションで萎えることこの上ない
 それでも強硬しようという猛者がいたところで、“嫌よ嫌よもガチで嫌”っていう、マジな裏拳が飛ぶどころか、むしろもげろとばかりにトドメ刺される案件であると思われる。
 ていうか、私ならそうする。

 マジそうしたい!!
 



 ………などと、王子の濡れ衣感が無きにしもあらずと言った状況ではあるものの、理不尽なセクハラを始める男への怒りでなんとか流されないようにがんばっているのだが………このままじゃだめだ、とりあえず電話を一旦終了して早く撤収しよう。これ以上エスカレートしてくると、お母さんに聞かれないように声を押し殺したまま蹂躙された上に、牢屋に連行される未来しか待っていない気がする…。

 そう思って、母に一旦電話を切ることを伝えようと左手のスマホに顔を寄せようとした時

「……少々小ぶりではあるもののそれなりに張りもあり、感触も悪くない」

 と、王子が何かの評論をするように呟きながらドレスの上から私の胸の形を確認し、下から掬い上げては揉みしだく。そして薄い布越しにその中央を探りながらまさぐってきたため、せっかく自由にできるようになった右手を咄嗟に口に当てて声を押し殺すことになってしまった。

「なんだ、服の上からちょっと触っただけですっかり勃ち上がっているじゃないか。ここを触られると、ビクビク反応しているな? ここがイイのか?」

 そう、嘲るように嗤いながら固くなった先っぽを、布の上からしつこく指でこすり合わせてくるのはどういう意図なのか。

 ちょっ、おまっ、趣旨変わってんだろ!? 何公然とセクハラしてんだ!?

 そう罵ってやりたいのに、無駄に巧みな愛撫でコリコリと胸の敏感な所を責めたててくるので、声を漏らして母に聞かれないよう、口を押さえることに必死になっていた。
 何かでふさいでいないと、確実に喘ぎ声を漏らすことになるので必死である。…とはいえ、全ての声を抑え込むことができずに

「…っ、……っ! はぁ…!」

 と、吐息を漏らしてしまうのは許してほしい。

 ちょっとぉ!! 今乳首とか、摘まんだり弾いたりする必要ってある!? 胸だけで女ってわかってんでしょ!?

「ここをいじる度に体がビクビク跳ねているところを見ると、それなりに敏感に感じているようだが、声も聞こえないな。…その感じやすい体で、我慢しているのか? それとも、聴覚阻害の効果で聞こえないだけか?」

 そう、余裕綽々で言葉責めをかましてくる男に殺意が芽生え、この男をぶち殺したくなったが、それよりも…私の自尊心を殺さないためにも早く電話を切りたいと思っているのに、不埒な動きを繰り返す男の手は、固くしこった中央に刺激加えながらもモゾモゾと胸をまさぐり、脇の下のドレスの隙間から侵入してきて直接私の胸に触れてくるではないか。

「ほぉ…ちょっとなかなかいない程きめ細やかで滑らかな、触り心地の良い肌だ……いかん、この手触りは癖になるな」

 そう言って、王子は片手で持ち上げた胸をモニモニと弄ぶ。

 ちょ・ちょっとっ!!

 男の手の温かい手で直接まさぐられているのを感じ、私は身動きも取れずに、片手で口を押さえながら首を反らせて天を仰いだ。
 身動きも取れず声も漏らせない状況での蹂躙に、何となく気持ちよさを感じなくはないが、それ以上の怒りに大分頭に血が上ってきているのを感じていたが、状況は一向に改善の兆しが見えずに、不埒な手はどんどん調子に乗って行く。しかし、効果的な反撃も思い浮かばない。

 正直、王子の声が母に通じていなさそうなことだけが救いだと思う。  え、…通じてないよね?

 そう思うことだけが、今の私の心の均衡を保っているのであるが…そうやって私が心の内で静かなる死闘を繰り広げているうちに、胸をまさぐっていた手は一旦服から抜き出されると、どんどん下方に下がって行き、脇腹や腰の側面を撫でながらお尻に到達した。

「 ふふっ…この淫乱な体で、どこまで堪えられるのか愉しくなってきたな」

 いや、だからぁっ! 目的がセクハラに変わってるよね!? 侵入者の確認に来たんじゃなかったの!?
 ブレずに初心に帰れよ!! 姿も見えない行きずりの女への身元確認業務に私的な楽しみを見出すのはやめようよ!!

 そんなことを考えながら、私は目に涙を溜めて斜め後ろを睨みつけたが、視界阻害が効力を発揮しているため、王子は睨まれていることにも気づかない…というか、きっと気づいたら捕食者の笑みでもっと喜ぶんじゃないかと推測できる。
 そして、上着の内部でドレス越しに私の腿に手を滑らせると、興に乗ってきたのか、「くくっ」と笑いながら、右手でスリスリと私のお尻の形を確認し始めたので、ようやくスマホごと固定していた左手を私の腕から離したではないか。

 よし、今だ!

 私はそのタイミングを逃さずスマホをしっかり耳にあて…

「ごめん、お母さん。 ちょっと急用が入っちゃって…。別に体とか、何もないから心配しないで。じゃあ、また電話するから、切るね! あ、お盆は帰れないかもしれないから! じゃあ!」

 と、早口でまくし立てると、母は

『え、ちょっと、麻衣? また連絡しなさいよ? 』

 と、戸惑っていたが、私は続きを聞くこともせずに電話を切ったのだった。

 これでとりあえずは一安心…とばかりにスマホをしまおうとしたが……

「…ンぁっ!!」

 突然、お尻を撫でていた手がドレスのスリットの中まで入ってきたため、声を漏らしそうになって口を押さえた。
 いや、もう我慢しなくていいのか。

「……くくっ。こんなところまで開いて足が露わになる衣装なんて、エロい女だな? 高価な魔道具をジャラジャラつけたりするほどの財と、誰にも気づかれずに王宮の奥にまで侵入する力を持ちながら、こんな奥庭で潜んでいる理由はわからないが……実は、親父か兄貴が呼び寄せた愛人だったりしないよな? ……まぁ、それはないか」

 あ、あいじん………

 すっかり興に乗ってドS責めに豹変している男は、そんな失礼千万なことを言いつつ私のドレスの左側に空いたスリットに手を差し込んで直接太ももをさすり出した。

 …いや、生足であのスリットは確かに私もちょっと…と思わなくもなかったが、その傲慢な物言いに、じわじわと心の奥底から怒りが湧いてくる。

 こいつ…泣かす…。 ぜってー泣かす!!

 いわれのない侮辱に静かにキレながらも、私はそう決意を固めていった。

 しかしそれ以上に、ちょっと目を離した一瞬で、いつの間にか前に回り込まれて窮地に陥っている現状をいかにすべきか。
 獣人の身体能力を、こんなところでまで発揮しないでほしいと心から思った。
 2匹に助けを求めようと耳元のピアスに手をあてるつもりだったのに、その手はまたもや不埒な動きを始めた相手のせいで、思わず目の前の相手の胸にすがりついて顔を埋める体たらくとなる。

 ……ちょっと、お尻を両手で揉まないで! 後ろから指を指し込もうとしないで!

 そう思って抵抗をしようとするのだが、その指は私の尾てい骨あたりを探るようにまさぐり、一通り確認が終わったような動きをした後、徐々に奥の方……私の体の前方に向けて蠢いていた。

「あぁんっ! そこ、だめぇっ!」

 もう声を我慢しないといけない理由がなくなったので、私は押さえることもせずに声を上げる。その一方でどこか冷静に音声阻害もちゃんと効果が持続していてよかったと思いながら。
 しかし、私の首元に顔を埋めながら、王子は嬉しそうに笑い、その責める手を一層エスカレートさせていくではないか。

 …こいつ、この前の貴族のお嬢様たちと話していた時は猫かぶってたんだな…と、王子の胸によりかかりながら思う。

 絶対こいつ、これが素だろ。

「ふーん、やっぱり尻尾はないのか…。そして、ちゃんと体毛が処理されているわけだ。 それにしても、ちょっと感じやすすぎるんじゃないか?淫乱め。 これだけでココからこんなに蜜を溢れさせて…下着がびしょ濡れになってきているぞ?」

 そう嘲りを含んだ声を耳元で囁きながら、ぐちゃぐちゃと水音をたてて下着越しに隘路をなぞってくる。そして、下着の上から指を上下になぞり、時折下着の隙間から指を差し入れては蜜口の浅瀬をかき混ぜ、あふれ出した蜜を下着越しに露わになった陰核に擦り付けてくるため

「ひぁっ! ぁんっ、やだ!」

 と、両手で口を覆いながら、王子の胸に体を押し付けて声を上げた。

 やばい…やばいやばいやばい!

 このまま行くと、絶対に不味いことになる。 
 嫌な予感がビンビンしてくるのを感じながらも、すがりついて抵抗できないでいる自分が悔しい。

 すると、王子は見えてないくせに器用に私の紐パンの紐をするりと解くと、その下着を芝生に落として取り払った。そして、その責め手を一旦止めると、その腕の中でそっと私を囲い、耳元に寄り添うように優しいとも言える口調で静かに囁いた。

「……で、そろそろ正体を明かす気になったか? 正直、ここまでされるがままで逃げ出しもせず、俺を害しようともしない全人族の若い女が刺客だとも思えないが…。一応聞いておく。  答えないようなら、この先も進んで行くぞ? 幸いここは外から見え辛いし、お前は誰にも見えないときたものだ。…ふふっ…しかし夜は長いからな、このまま答えてくれない方がお互い愉しめるとも思えば、口を割ろうが割るまいがどちらでもいいが」

 お尻を激しく揉まれながら、その指で陰核や蜜口をしつこく責められ、快楽にぼやけた頭で下着を失った解放感を感じつつも、尋問が続いていたことをボンヤリと悟る。  

 早く、逃げないと……。だめ……

 私は、必死に意識を保ちながら王子の胸に肘をつき、震える指先を耳にあて…“助けて…”と心でつぶやいた。その瞬間。

『ガアァッ!!』

 と、陰からタロウとマーリンが飛び出してきて、ハッと意識が浮上した。

『ご主人、大丈夫ニャ?』

 マーリンはそう言いながら、私にポーションと状態異常回復薬を振りかけたので、頭と体がスッキリするのを感じて芝生に座り込んだ。

「あ、ありがとう。…危ない所だったわ…」

 なんていうか、貞操が。 いや、このままいってたら貞操だけじゃ済まなかったかもしれないけど。

『いつまでたってもお呼びがかからないから、どうしたのかと思ってたニャ』
「うん、あの人に捕まって…」

 そう言って、クリスティアン王子の方を見ると…あちらも突然現れたタロウに対して、弟くんを呼び出して戦おうとしている所だったので、私は、マーリンと一緒にその場に向かって駆けだした。

 長剣を構えているクリスティアン王子は、足元に中型犬サイズの弟くんを従えており、本来の大きさに戻ったタロウが上から見下ろして唸り声をあげながら、牙を剥いている。

 その光景を見ながら、私は全力で走り寄って………

「地獄に落ちろ、この痴漢野郎ぉぉっ!!」

 と、そのおきれいな顔面に『ボゴォッ!!』と、渾身の右ストレートを叩きこんでやった。助走をつけて勢いに乗った挙句に魔道具の指輪がゴッテリ盛られた右拳で振りぬいたので、その威力は通常の比ではあるまい。…いや、指輪で強化したかったのは物理の攻撃力じゃなかったはずなんだけどね!
 すると、全く無防備になっていた方向からの、気配も察知できない存在による一撃に、クリスティアン王子は

「ぁがっ!?」

 と、奇声を上げて吹っ飛び、ズサァッと芝生の上に仰向けに倒れ込んで動かなくなった。…よく見るとピクピクとしているので死んだわけではあるまい。

「あーー、スッキリした!」

 はぁはぁと息を切らせ両手を腰に当てて仁王立ちしながら、王子の無残な姿を見下ろし確認すると、やっと溜飲が下りて晴れ晴れとした気持ちになる。

 母との久しぶりの会話を邪魔された挙句、いくら不審な存在を検めるためだったとはいえ、抵抗できない状況で散々好き勝手に弄ばれたのだ、これ位の復讐はさせてもらわないと、気が済まない。
 むしろここから更に追い打ちをかけてトドメを刺したい所だったのだが、突然吹っ飛ばされたクリスティアン王子を、口をパックリ開けて目をまんまるに見開いた驚愕の表情で見送っていた三者の視線を感じ、私はブレスレットの隠密モードを解いて姿を現した。

『っ!?』

 タロウとマーリンはちょっと目を見開いただけだったが、弟くんは突然現れた私の姿を目にして言葉も出ない程驚いている。 感覚が鋭敏な魔獣だけに、自分の知覚内に謎の存在が突然現れると衝撃はより大きくなるらしい。 こちらに向かって口をパクパク動かして何か吠えているようなのだが…ひゃんひゃんと息が洩れるような音が繰り返されるだけで……。

 いや、声が出せない…?

 弟くんの中型犬サイズの小さな体をよく見るとその額や喉元に大きな古傷があった。例え治癒力に優れた魔獣であっても治りきらない程の大けがを負ったことがあるということだろう。 …そういえば後ろ足とか他の所も古傷があったし…体中傷だらけだったな…と思い出す。
 出会った頃のタロウよりも小さなこの体で、ケガをしながらも頑張って生きて来たのだろう。 そして今、さりげなく倒れたクリスティアン王子を自分の後ろにかばって、こちらを警戒している。 この二人の関係性が何なのかはわからないが恐らく、こうやってこの子が身を挺してまで庇いたい程には大切な存在であるのだろうことが容易く想像できた。
 昔飼っていたペットの犬を思い出させるような容姿の存在に、そんな健気な姿を見せられては、怒りを持続させるのが難しい。

 もう、いいか。 

「ふぅ」と大きく息を吐いてから、弟くんと視線を合わせて「仕方ないなぁ」と笑いかけると、弟くんはビクリと体を震わせ、こちらの様子を窺うように首を傾げた。

 そして、マーリンから『ご主人、そろそろ衛兵が集まってくる音が聞こえるニャ』との声がかかると、私は指輪のストレージから上級ポーションを出して歩み寄った。 

 あまりに無造作に近寄ったせいだろうか、弟くんは、対応に困ってこちらを見上げたまま、どうしようか迷っている様だった。

『ジェロームよ、主に敵意はない。大人しくしていろ』

 タロウがそう言うと、弟くん…もとい、ジェロームはビクリと体を震わせたかと思うと、その動きをピタリと止めて動けなくなったようだった。

 弟くん、ジェロームって名前なんだ。カッコいい名前だなぁ。

 そう思いながら、ジェロームの側まで近づいて跪き、「ごめんね」と言ってその顎をクイっと上げさせると、ジェロームはビクリとしたが、オドオドと怯えながら、つぶらな茶色の瞳で見上げてきたので、その可愛らしさに思わずキュンとなる。 ……かわええ……。

「大丈夫、もう何もしないから。これを飲んで。きっと元気になるよ」

 そうしてキュンキュンと萌え逸る心を抑えながら小瓶の蓋をあけ、オズオズと開いたその口の中に上級ポーションを流し込んだ時、私の耳にも王宮の護衛兵(騎士?)たちが駆けつける音が遠くに聞こえて来たので、急いだほうが良さそうだと思った。

 そうしてジェロームの古傷だらけの体に上級ポーションを飲ませた後の変化は劇的だった。 まず首や額の大傷が淡い光を発したかと思うと、瞬く間に消失していく。他に光っていた部分もあったため、同じように消失しているのだろうと容易く想像がつき、ジェロームは自分の体の変化を感じ取っているのか、キョロキョロとそこかしこに視線を忙しなく移動させつつ落ち着かない。
 私は、そんな姿も見守っていたかったのだが、徐々に衛兵たちの足音が近づいて来るので撤収しなければならないなと諦めて準備を始める。 

 …どうせまた来るんだから、いっか。

 そう考えて、視線を送った先には強い電波を湛えた時空の『揺らぎ』が変わらず存在している。 …長引いた電話で消失しちゃってたらどうしようかと思っていたが、まだイケそうだ。

「タロウ、マーリン、帰ろうか」

 そうやって声を掛けると、家猫姿のマーリンがスッと私の腕の中に納まり、大型犬サイズになったタロウが私の傍らに控え、私たちは転移の体勢を整えた。

「じゃあね。バイバイ」

 そう言って、ジェロームとその向こうでいつの間にか起きだし、足を投げ出したまま座り込んでぼんやりとこちらを窺っているクリスティアン王子に「じゃあね」と笑って小さく手を振り、私たちはフッと音もなく転移していった。 ……殴りつけた王子の顔面がヤバい位腫れあがっていたので、下級ポーションをポイと一つ芝生に落としてきたのは、ちょっとしたおまけである。




「ただいま。なんかすごく疲れたよ…」

私は肩をグリグリ回して首を揉みながらぼやいた。腕の中のマーリンは、

『たった数時間の出来事だったはずニャんだけど、吾輩はほとんど陰に隠れていたからよくわかんないニャ』

と、不満顔である。傍らに寄り添うように座っているタロウは、

『それは我も似たようなもの。あの後、弟も主のおかげで傷が癒えていたようであるが…、あの王子へ報復できなかったのが心残り…しかし、この匂い……主…やっぱり今から戻ってあの王子を成敗しにいくべきでは?』

いつものように平坦な口調で同調しつつも、クンクンと匂いを嗅いでくるので、私は自分の状況をハッと思い出して、ささっと自分にクリーンを掛け、何事もなかったような顔をした。 

「ああ…もう疲れたしめんどくさい。…あのドS王子は私が自ら制裁を下したからもういいよ……思い出したくないし(小声)…」

最後は思わずと言った感じのつぶやきだったのだが、腕の中にいるニャンコには聞こえてしまったらしく、「何!?」という感じで見上げて来た。

『ニャ? ご主人、どういう事ニャ!?』

本当になかったことにしたいので、私は強めの口調で訴える。

「だから、終わったことだからもういいって!」

 そうヤイヤイと言いながら、私たちは王宮を後にした時と同じ配置で庭先に転移し、無事自宅へと帰りついたのだった。

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