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第四章:地味に平和が一番です
幕間ー犬と竜の他者面談ー後
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『あぁら、カーバンクルの里長ちゃんじゃないの。お久しぶりね~』
謁見の場に通された後、案内に従って進んで行くと、山をくりぬいたような巨大な空間に、小山程もある巨大な竜が横たわっていたが、本来の姿である我の10倍以上は大きいと思われる巨大さに、思わず息を飲む。
1000年を超えて生きる竜は古竜と呼ばれ、その体躯は年輪にふさわしくより巨大に、その鱗も貴石の様に艶めいた輝きをみせるようになると言われている。
そして、我々が到着するのを待っていた竜は、その大きさもさることながら、緑柱石の様な緑色に煌めく美しい鱗に覆われており、フォレストドラゴンという種類から進化した古竜であることを示していた。しかし、その存在感や威圧感、魔力量に至っては、これまでに出会ったドラゴン達とは隔絶された存在であることをまざまざと認識させたのだが……威厳ある、低く落ち着いた声で第一声が、『あぁら』?
見た目や匂いの感じから、メスだとも思えないし、…我の聞き間違いでもない……と思うのだが…。
思わず動揺して、カーバンクルの2匹に視線をやると、2匹ともチラッと我と視線を合わせ、何も言わずに穏やかな表情でゆっくりとその短い首を振ったので、我はもう一度古竜の長に向き直った。
『お久しぶりでございます。かれこれ50年ぶりでございましょうか? 長殿もご健勝そうで何よりでございます。
この度、かつてご依頼いただいた宝飾品を納めさせていただきたく、訪問させていただきました』
そうして2匹は我との間には何もなかったかのように切り出すと、何の物怖じもしない様子で豪奢な装飾を施した鎖のようなものを差し出している姿は、例え小動物といえども、さすが場慣れしているなと思った。
『あらあら、まだそれだけしか経っていなかったかしら? 時が経つのって早いわねぇ~。でも、こうやって時々あなた方の可愛らしい姿を堪能できるのだから、もう少し来てくれても構わないのにぃ』
そう言って『ウフフ』と野太い声で笑いながら、小指(?)を立ててカーバンクル2匹が一生懸命差し出している物を、ヒョイっとつまみ上げると、その育ち切った丸太のように太くありながらも、大きな体躯に比べると短い前足(腕?)に装着した。 どうやらブレスレットと呼ばれる装飾品だったようだ。
黄金の輝きを放つ鎖部分に、主の拳程の大きさを持つ3つの色違いの魔石が美しい。
恐らく、それ自体は人間の国家では値が付けられない位に高価なものなのだろうと、そういった物に疎い我にも想像がついた。
『やっぱり、あなたたちが作った宝石が一番カットが美しくて、デザインも可愛らしいわぁ…。私の美しい鱗にも負けないこの魔石の輝き…惚れ惚れしちゃう』
そう言いながら、自分の腕に装着したブレスレットを眺めてうっとりしているこの竜、……やっぱりオス……であると思うのだが。
人間種と違い、竜の雌雄は意外と外見ではわかり辛いところがあるものの、上位種ならばそのオーラなり匂いなりで間違えることはない。そのため、思わず戸惑ってもう一度長に視線を送ってみたが、やはり長はにっこりと笑顔を崩さず、落ち着けとばかりにゆっくりと頷いて返してくる。
……わかった。 ならば受け入れるのみ。
とりあえず、この存在がオスだろうがメスだろうが我には関係がないと思い、その戸惑いは受け入れることにした。
そうして、里長との無言のやり取りを済ませて、一頻りブレスレットを眺めてキャッキャと威厳のある低い声ではしゃいでいる様を見守っていると、不意にチラリとこちらを見るので視線が合しまい、思わず『うっ』とひるんでしまった。
『あら、珍しいお客様もいらっしゃったのね? 里長ちゃんのお友達かしら?』
『ええ、最近危ない所を助けていただき、その後も何かと良くしていただいておりまして。 この度は長殿にお会いしたいと仰るのでお連れさせていただいたのですじゃ』
里長がそう言うと、古竜の長殿は『あら、そうなのぉ、奇遇ねぇ』と言って、またもや『ウフフ』と含み笑いをした。
その視線を受けて、何故か項の毛がゾワゾワと逆立つような不気味さを感じた。
以前主に聞いたことがある、「オネエ」というやつがコレか…と、ふと思い出し、スッと座って無意識に急所を守る体勢をとる。 いや、本当になんとなくなのであるが、尻がキュッとするのだ。
『あのね、家にもかわいい神狼の子犬ちゃんがいるのよ。30年程前…かしら。私たちの縄張りの近くで、はぐれてキュンキュン鳴いてた子がいたから、配下の者が可哀そうだって言って拾ってきたの』
……30年前…子犬?
耳に入った言葉を考えた時、その存在に思い当たって我がハッと驚愕していると、古竜の長殿は笑いながら広げた空間に声をかけた。
『…フェリクス、いらっしゃい』
すると瞬く間に、古竜の長殿の側近くに、見覚えのある姿より幾分大きくなった同族の姿が現れた。
『お呼びですか、長さま』
『フェリクス……生きていたのか』
30年ぶりに目にしたすぐ下の弟は、今の我の半分程ではあるが、あの頃に比べて随分大きく立派になっており、毛足が長く真っ白な毛皮は記憶のままであった。(その後、それを目にしたご主人に「…ピレネー犬?」と呟かれた)
『え? …まさか、ジェラルド兄さま? 兄さまだ――――ッ!!』
そう言って、我を認識した瞬間飛びついてきたのは、まぎれもなく生き別れとなった2番目の弟であった。…クンカクンカと匂いを確認しながらベロベロとしつこく舐ってくるこの暑苦しい感じ……そこも記憶通りである。
『まぁまぁ…。生き別れの兄弟の感動の再開ねーー…』
そう言いながら、徐にとりだした布切れでボロボロとこぼれる涙を拭いながら我らのやり取りを見守る古竜の長殿の視線が少々イタイ。
多少は懐かしさを感じなくはないが、そもそも魔獣同士の親子や兄弟の絆など、薄いもののはずなのだ。しかし、この2番目の弟は何かと我や弟を構い倒してくる珍しい奴だったと思い出した。
『うんうん。 やはり家族は一緒にいられるのが一番じゃ』
『ええ、ええ。 弟さんもお兄さんと会うことができてよかったことです』
カーバンクルの2匹も、側近く控えているリザードマンや竜の近習も、感動しながら瞳を潤ませてこちらを見守っている。
『はっはっはっ……兄さま、兄さま、にいさまぁ……ベロベロベロベロ……はぁ、イイ匂い……』
いや、確かに嬉しくないこともないのだが、こいつはちょっと感激しすぎているのではないだろうか…?
ハァハァと鼻息荒く興奮して、ガシッと前足で首に抱き着きながら主が好んでいるフワフワの毛皮をよだれでドロドロにするのはやめてほしいのであるが……。
そのまま抵抗せずにジッと座っていると、弟のスキンシップがどんどん激しくなっていく。
ややあって、甘噛みされつつ日々丁寧に櫛削られている毛皮を乱されていることに我慢ができなくなり、イラっとしてしつこい弟を組み伏せると、やっと大人しくなった。
こいつが我より小さくて良かった…。
そう思って、足の下で仰向けになって倒された弟を見るのだが、ウルウルと潤んだ眼差しで見上げながら「クゥ~ン、兄さまぁ…」と鼻にかかって甘えたような声を上げてハァハァしてくるので、思わず総毛だって飛び退ってしまう。
え…なにこいつ、キモイ……
思わず主のような口調になってしまうのだが、一体弟はどうしてしまったというのか?
…こんな不気味なやつだっただろうか?
見た感じ、何の苦労もなく大事に育てられていたようにしか見えないのだが。
『そういえば、二人とも…あまり似ていないのねぇ?』
はぁはぁと興奮しながらのそりと起き上がり、『兄さまぁ…』と寂しそうに上目づかいで見上げてくる弟の視線に、ゾワゾワと背中を走る悪寒を堪えながら、
『母親は同じであるが、我らの父親はそれぞれが別であった故かと思われる。我らにはもう1頭の弟がおりますが、それもまた我らと毛並みが異なっております。我々の一族は、幼体の時は親の一族の特徴が色濃く出てくるのでありますが、いずれ成獣になった時には、毛皮の色や毛足の長さなどは多少違えど、皆同じ様な狼の形態になっていくこととなります故』
と、長殿の疑問に答えると、
『ふーん。幼い頃はみんな父親似だなんて、割と不思議な一族よねぇ…』
そのキラキラと美しく飾られつつも長く鋭い爪を眺めながら、特に気のない素振りでの返答が帰って来た。
『今この子、うちの集落で一緒に暮らしているの。 みんなもいい年してるし、今更他種族だからっていじめたりしないで、可愛がって仲良く暮らしているから、お兄さんも安心してね? あなたも良かったらうちで暮らしてもいいのよ?』
まあ、こいつの甘ったれた様子をみて虐待されていることはなさそうであるが、むしろ“ペットの様に”可愛がられているのだろうと想像がつく。 しかし、どんなに平和であろうとも、我が主と暮らす今の住処を離れることはない。
そう思って、居住まいを正して見上げると、
『まあ、その様子じゃこっちに来るってことはなさそうね。 …で、ここに来た本題を教えてもらえるかしら? 何もカーバンクルちゃんたちのアッシーするためだけに来たんじゃないんでしょう?』
我の視線を受けながらも、その笑みはそのままに、我の全身を探るように見下ろしてきた。
得体のしれない圧力が強まったのを察知して、我は思わず項の毛がゾワリと逆立ったのを感じ、フェリクスはその場を邪魔しないよう、地に伏せてその存在感を消していた。
これこそが、この存在の本質。 すべての生物の頂点たる竜の持つ圧というものなのだろう。
見れば、そこにいるすべての者が固唾を飲んで、静かに古竜の長の言動を注視していた。
我は無意識に息を飲んで、本来の目的を果たすべく口を開く。
『この度は、我が主の意向を伝えるべくこちらに伺わせていただいた。
我が主は、稀人の身でありながらも精霊たちと懇意にしており、現在は森の深奥に誘われて居を構えておられるが、その魔力は唯人の域をはるかに超えており、無意識にこの森どころかこの島全体を覆いつくさんほどの量を内包しておられる』
そこまで話すと、『ふーん』と、何かを考えている長殿の声が聞こえて、その続く言葉を待った。
『最近、妙に森が…精霊たちが落ち着かないと思ってたけど…。
そうなの…精霊たちのお城に稀人が…。にしても、彼らが軒並みあそこに集中したがるから、何かがあるのだろうとは思っていたのだけれども…大精霊さまのお気に入りが現れたのね。 …ああ、いいわ、続けて頂戴』
そう促されて、我は言葉を続ける
『その膨大なる魔力によって、主はそこのカーバンクルの一族や森の端に住まう人間などに慈悲を与えることもあるが、元々は森を乱すことなく、誰にも知られず平穏に過ごしたいと望むような、温厚な方でもいらっしゃる。しかし、徐々に膨れ上がる魔力で様々なものを惹きつける様子は、いずれ世に知られることとなるだろうと、意志ある精霊さま達も憂いておられる。
そこで、隠して置けないならば逆にその力を世に知らしめて、慮外なるモノどもを寄せ付けないようにしていこうと我々が愚考した次第であるのだが…』
そこまで言うと、古竜の長殿はおもむろに天井を見上げ、ふぅと息を吐いた。
…それだけでもなかなかの風圧が跳ね返って天井から降り注いでくるため、カーバンクルたちは吹き飛ばされないように地面にへばりつき、我も飛ばされないように地面に爪を立ててやり過ごす。
『ん~…。ていうかぁ、精霊って気に入った子にはゾッコンになっちゃう子ばっかりだから、大精霊様たち、その子のこと気に入りすぎて、色々介入しすぎちゃったんじゃないのかしら? で、あんまりないことだけど、思った以上に相性良すぎちゃって、自分たちでもどうにもできない位に育っちゃったもんで、嬉しい反面困ってるってことなのかしらね…。
で、隠して置けないから、逆にお披露目しようと思ったのはいいのだけど…結局、私たちに何を望んでここに来たのかしらぁ?』
そう穏やかな口調で言いながらも、冷徹な眼差しで遥か上方から我を見下ろす視線を感じ、気づかれないようにグッと地面に立てた爪に力を込めて、話を続ける。
『重ねて言うが、主は平穏に暮らすことを望むような方である。しかし、そのような過ぎた力を持って隠れ住むのは逆に災いを招きかねないため、精霊あまねくこの森において支配下にある人間や魔獣どもに崇められる存在となって、この地にあることを世に公表していくつもりである。大精霊様をはじめとした精霊たちは喜んで協力してくれるとのことなのだが、古竜どのたちの縄張りには一切触れるつもりはないので、事を荒立てず静観していていただきたいと要請しに参じた次第である』
そこまで言い終えると、カーバンクルたちは息を飲んで我々を見守り、その場の者たちは黙って我らを静観し、長殿の様子を窺っている気配を感じた。
長殿は、我を見つめながらスッと双眸を細めると
『ふぅ~ん…。 精霊たちを後ろ盾に、人間やその辺の魔獣たち集めて崇めさせるだなんて…国でも作る気なのかしら?
で、私たちには介入するなって釘を刺しに来たのねぇ……』
と呟きながら俯き、何かを堪えるようにプルプルと震え出したので、思わず「怒りを買ったか?」と、全身を強張らせた。
すると、
『やっだーっ! 大精霊さまったら、何やってんのよぉ~!』
と、大音量で爆笑しだしたではないか。
ちなみに、その鼻息でカーバンクルたちが吹き飛びそうになっていたので、思わず受け止めてしまったわけであるが。
『ホント、あの方たちは加減ってものを知らないわよねぇ。 でも、その子も魔力が豊富な稀人とはいえ、ただの人間のはずでしょう? どんな介入の仕方したら、そんな化け物みたいな存在になるっていうのよぉ。 それを、この森で崇めさせるとか…偶像か神にでもするつもりなのかしら。…やっだぁ、なんか面白いじゃないのぉ』
そう言いながら、クックックと笑いが治まらない様子でこちらに視線を寄こしてくるので、思わず首をかしげて出方を窺ってしまうが…とりあえず、いきなり攻撃されることはなさそうなので、一安心である。
『ねえ、いずれその子にも会わせると約束してくれるなら、あなたたちのことに関わらないどころか、協力だってしてあげちゃうわよ? だって、この森どころかこの島全体を豊かにしてくれるんでしょう?』
『その程度の力はあると、大精霊さま方からのお墨付きであると言える』
長殿は、その言葉を聞いて更に破顔すると、
『だったら、私たちが顔を見せに行かない理由がないわね。 だって、この森出身のカリスマになるんですもの。後援者の一人として、是非とも名乗りを挙げさせてもらうわよ?』
そう言って、至極愉快そうに、高らかに笑い声をあげたので、ふと我は主にいただいた小さな包みがあることを思い出し、長殿に手渡しすと、その中には“これからよろしくお願いします”と、書き慣れていないこちらの文字で書かれた紙と、主の魔力で練り上げた小さくも高純度の魔石が入っていた。
小さなそれを箱ごと受け取った古竜の長殿は、大きな爪でつまみ上げて眺めると、『うふふ』と微笑み、大層喜んでくれたのだった。
その後、キュンキュンと鳴き声を上げる弟を振り切り、カーバンクルの2匹を背に乗せて家路につくのであるが……こいつ、このままここにいて大丈夫なのだろうかと、少しだけ気になった。
…まあ、長殿の口調はアレだが、特に同性を好む嗜好というわけでもないと言っているし………(カーバンクルの里長談)
しかし、主の性別が女性であると言った時、少しだけヒゲがヘタったのが気になったわけで………。
まぁ、気にすることでもあるまいと、その思考はここで終了することにした。
…それはともかく、思った以上の成果があがったため、これでマーリンの成果と合わせて、主を守る体制が盤石のものになるだろうと思うと、安堵の息がもれる。しかし…
…主をこの地で守り、住民に崇めさせることで、身体のみならず心理的にも逃がさないよう縛り付けるという意味合いも含んでいるということは、これらに携わっている我々だけの秘密である。
謁見の場に通された後、案内に従って進んで行くと、山をくりぬいたような巨大な空間に、小山程もある巨大な竜が横たわっていたが、本来の姿である我の10倍以上は大きいと思われる巨大さに、思わず息を飲む。
1000年を超えて生きる竜は古竜と呼ばれ、その体躯は年輪にふさわしくより巨大に、その鱗も貴石の様に艶めいた輝きをみせるようになると言われている。
そして、我々が到着するのを待っていた竜は、その大きさもさることながら、緑柱石の様な緑色に煌めく美しい鱗に覆われており、フォレストドラゴンという種類から進化した古竜であることを示していた。しかし、その存在感や威圧感、魔力量に至っては、これまでに出会ったドラゴン達とは隔絶された存在であることをまざまざと認識させたのだが……威厳ある、低く落ち着いた声で第一声が、『あぁら』?
見た目や匂いの感じから、メスだとも思えないし、…我の聞き間違いでもない……と思うのだが…。
思わず動揺して、カーバンクルの2匹に視線をやると、2匹ともチラッと我と視線を合わせ、何も言わずに穏やかな表情でゆっくりとその短い首を振ったので、我はもう一度古竜の長に向き直った。
『お久しぶりでございます。かれこれ50年ぶりでございましょうか? 長殿もご健勝そうで何よりでございます。
この度、かつてご依頼いただいた宝飾品を納めさせていただきたく、訪問させていただきました』
そうして2匹は我との間には何もなかったかのように切り出すと、何の物怖じもしない様子で豪奢な装飾を施した鎖のようなものを差し出している姿は、例え小動物といえども、さすが場慣れしているなと思った。
『あらあら、まだそれだけしか経っていなかったかしら? 時が経つのって早いわねぇ~。でも、こうやって時々あなた方の可愛らしい姿を堪能できるのだから、もう少し来てくれても構わないのにぃ』
そう言って『ウフフ』と野太い声で笑いながら、小指(?)を立ててカーバンクル2匹が一生懸命差し出している物を、ヒョイっとつまみ上げると、その育ち切った丸太のように太くありながらも、大きな体躯に比べると短い前足(腕?)に装着した。 どうやらブレスレットと呼ばれる装飾品だったようだ。
黄金の輝きを放つ鎖部分に、主の拳程の大きさを持つ3つの色違いの魔石が美しい。
恐らく、それ自体は人間の国家では値が付けられない位に高価なものなのだろうと、そういった物に疎い我にも想像がついた。
『やっぱり、あなたたちが作った宝石が一番カットが美しくて、デザインも可愛らしいわぁ…。私の美しい鱗にも負けないこの魔石の輝き…惚れ惚れしちゃう』
そう言いながら、自分の腕に装着したブレスレットを眺めてうっとりしているこの竜、……やっぱりオス……であると思うのだが。
人間種と違い、竜の雌雄は意外と外見ではわかり辛いところがあるものの、上位種ならばそのオーラなり匂いなりで間違えることはない。そのため、思わず戸惑ってもう一度長に視線を送ってみたが、やはり長はにっこりと笑顔を崩さず、落ち着けとばかりにゆっくりと頷いて返してくる。
……わかった。 ならば受け入れるのみ。
とりあえず、この存在がオスだろうがメスだろうが我には関係がないと思い、その戸惑いは受け入れることにした。
そうして、里長との無言のやり取りを済ませて、一頻りブレスレットを眺めてキャッキャと威厳のある低い声ではしゃいでいる様を見守っていると、不意にチラリとこちらを見るので視線が合しまい、思わず『うっ』とひるんでしまった。
『あら、珍しいお客様もいらっしゃったのね? 里長ちゃんのお友達かしら?』
『ええ、最近危ない所を助けていただき、その後も何かと良くしていただいておりまして。 この度は長殿にお会いしたいと仰るのでお連れさせていただいたのですじゃ』
里長がそう言うと、古竜の長殿は『あら、そうなのぉ、奇遇ねぇ』と言って、またもや『ウフフ』と含み笑いをした。
その視線を受けて、何故か項の毛がゾワゾワと逆立つような不気味さを感じた。
以前主に聞いたことがある、「オネエ」というやつがコレか…と、ふと思い出し、スッと座って無意識に急所を守る体勢をとる。 いや、本当になんとなくなのであるが、尻がキュッとするのだ。
『あのね、家にもかわいい神狼の子犬ちゃんがいるのよ。30年程前…かしら。私たちの縄張りの近くで、はぐれてキュンキュン鳴いてた子がいたから、配下の者が可哀そうだって言って拾ってきたの』
……30年前…子犬?
耳に入った言葉を考えた時、その存在に思い当たって我がハッと驚愕していると、古竜の長殿は笑いながら広げた空間に声をかけた。
『…フェリクス、いらっしゃい』
すると瞬く間に、古竜の長殿の側近くに、見覚えのある姿より幾分大きくなった同族の姿が現れた。
『お呼びですか、長さま』
『フェリクス……生きていたのか』
30年ぶりに目にしたすぐ下の弟は、今の我の半分程ではあるが、あの頃に比べて随分大きく立派になっており、毛足が長く真っ白な毛皮は記憶のままであった。(その後、それを目にしたご主人に「…ピレネー犬?」と呟かれた)
『え? …まさか、ジェラルド兄さま? 兄さまだ――――ッ!!』
そう言って、我を認識した瞬間飛びついてきたのは、まぎれもなく生き別れとなった2番目の弟であった。…クンカクンカと匂いを確認しながらベロベロとしつこく舐ってくるこの暑苦しい感じ……そこも記憶通りである。
『まぁまぁ…。生き別れの兄弟の感動の再開ねーー…』
そう言いながら、徐にとりだした布切れでボロボロとこぼれる涙を拭いながら我らのやり取りを見守る古竜の長殿の視線が少々イタイ。
多少は懐かしさを感じなくはないが、そもそも魔獣同士の親子や兄弟の絆など、薄いもののはずなのだ。しかし、この2番目の弟は何かと我や弟を構い倒してくる珍しい奴だったと思い出した。
『うんうん。 やはり家族は一緒にいられるのが一番じゃ』
『ええ、ええ。 弟さんもお兄さんと会うことができてよかったことです』
カーバンクルの2匹も、側近く控えているリザードマンや竜の近習も、感動しながら瞳を潤ませてこちらを見守っている。
『はっはっはっ……兄さま、兄さま、にいさまぁ……ベロベロベロベロ……はぁ、イイ匂い……』
いや、確かに嬉しくないこともないのだが、こいつはちょっと感激しすぎているのではないだろうか…?
ハァハァと鼻息荒く興奮して、ガシッと前足で首に抱き着きながら主が好んでいるフワフワの毛皮をよだれでドロドロにするのはやめてほしいのであるが……。
そのまま抵抗せずにジッと座っていると、弟のスキンシップがどんどん激しくなっていく。
ややあって、甘噛みされつつ日々丁寧に櫛削られている毛皮を乱されていることに我慢ができなくなり、イラっとしてしつこい弟を組み伏せると、やっと大人しくなった。
こいつが我より小さくて良かった…。
そう思って、足の下で仰向けになって倒された弟を見るのだが、ウルウルと潤んだ眼差しで見上げながら「クゥ~ン、兄さまぁ…」と鼻にかかって甘えたような声を上げてハァハァしてくるので、思わず総毛だって飛び退ってしまう。
え…なにこいつ、キモイ……
思わず主のような口調になってしまうのだが、一体弟はどうしてしまったというのか?
…こんな不気味なやつだっただろうか?
見た感じ、何の苦労もなく大事に育てられていたようにしか見えないのだが。
『そういえば、二人とも…あまり似ていないのねぇ?』
はぁはぁと興奮しながらのそりと起き上がり、『兄さまぁ…』と寂しそうに上目づかいで見上げてくる弟の視線に、ゾワゾワと背中を走る悪寒を堪えながら、
『母親は同じであるが、我らの父親はそれぞれが別であった故かと思われる。我らにはもう1頭の弟がおりますが、それもまた我らと毛並みが異なっております。我々の一族は、幼体の時は親の一族の特徴が色濃く出てくるのでありますが、いずれ成獣になった時には、毛皮の色や毛足の長さなどは多少違えど、皆同じ様な狼の形態になっていくこととなります故』
と、長殿の疑問に答えると、
『ふーん。幼い頃はみんな父親似だなんて、割と不思議な一族よねぇ…』
そのキラキラと美しく飾られつつも長く鋭い爪を眺めながら、特に気のない素振りでの返答が帰って来た。
『今この子、うちの集落で一緒に暮らしているの。 みんなもいい年してるし、今更他種族だからっていじめたりしないで、可愛がって仲良く暮らしているから、お兄さんも安心してね? あなたも良かったらうちで暮らしてもいいのよ?』
まあ、こいつの甘ったれた様子をみて虐待されていることはなさそうであるが、むしろ“ペットの様に”可愛がられているのだろうと想像がつく。 しかし、どんなに平和であろうとも、我が主と暮らす今の住処を離れることはない。
そう思って、居住まいを正して見上げると、
『まあ、その様子じゃこっちに来るってことはなさそうね。 …で、ここに来た本題を教えてもらえるかしら? 何もカーバンクルちゃんたちのアッシーするためだけに来たんじゃないんでしょう?』
我の視線を受けながらも、その笑みはそのままに、我の全身を探るように見下ろしてきた。
得体のしれない圧力が強まったのを察知して、我は思わず項の毛がゾワリと逆立ったのを感じ、フェリクスはその場を邪魔しないよう、地に伏せてその存在感を消していた。
これこそが、この存在の本質。 すべての生物の頂点たる竜の持つ圧というものなのだろう。
見れば、そこにいるすべての者が固唾を飲んで、静かに古竜の長の言動を注視していた。
我は無意識に息を飲んで、本来の目的を果たすべく口を開く。
『この度は、我が主の意向を伝えるべくこちらに伺わせていただいた。
我が主は、稀人の身でありながらも精霊たちと懇意にしており、現在は森の深奥に誘われて居を構えておられるが、その魔力は唯人の域をはるかに超えており、無意識にこの森どころかこの島全体を覆いつくさんほどの量を内包しておられる』
そこまで話すと、『ふーん』と、何かを考えている長殿の声が聞こえて、その続く言葉を待った。
『最近、妙に森が…精霊たちが落ち着かないと思ってたけど…。
そうなの…精霊たちのお城に稀人が…。にしても、彼らが軒並みあそこに集中したがるから、何かがあるのだろうとは思っていたのだけれども…大精霊さまのお気に入りが現れたのね。 …ああ、いいわ、続けて頂戴』
そう促されて、我は言葉を続ける
『その膨大なる魔力によって、主はそこのカーバンクルの一族や森の端に住まう人間などに慈悲を与えることもあるが、元々は森を乱すことなく、誰にも知られず平穏に過ごしたいと望むような、温厚な方でもいらっしゃる。しかし、徐々に膨れ上がる魔力で様々なものを惹きつける様子は、いずれ世に知られることとなるだろうと、意志ある精霊さま達も憂いておられる。
そこで、隠して置けないならば逆にその力を世に知らしめて、慮外なるモノどもを寄せ付けないようにしていこうと我々が愚考した次第であるのだが…』
そこまで言うと、古竜の長殿はおもむろに天井を見上げ、ふぅと息を吐いた。
…それだけでもなかなかの風圧が跳ね返って天井から降り注いでくるため、カーバンクルたちは吹き飛ばされないように地面にへばりつき、我も飛ばされないように地面に爪を立ててやり過ごす。
『ん~…。ていうかぁ、精霊って気に入った子にはゾッコンになっちゃう子ばっかりだから、大精霊様たち、その子のこと気に入りすぎて、色々介入しすぎちゃったんじゃないのかしら? で、あんまりないことだけど、思った以上に相性良すぎちゃって、自分たちでもどうにもできない位に育っちゃったもんで、嬉しい反面困ってるってことなのかしらね…。
で、隠して置けないから、逆にお披露目しようと思ったのはいいのだけど…結局、私たちに何を望んでここに来たのかしらぁ?』
そう穏やかな口調で言いながらも、冷徹な眼差しで遥か上方から我を見下ろす視線を感じ、気づかれないようにグッと地面に立てた爪に力を込めて、話を続ける。
『重ねて言うが、主は平穏に暮らすことを望むような方である。しかし、そのような過ぎた力を持って隠れ住むのは逆に災いを招きかねないため、精霊あまねくこの森において支配下にある人間や魔獣どもに崇められる存在となって、この地にあることを世に公表していくつもりである。大精霊様をはじめとした精霊たちは喜んで協力してくれるとのことなのだが、古竜どのたちの縄張りには一切触れるつもりはないので、事を荒立てず静観していていただきたいと要請しに参じた次第である』
そこまで言い終えると、カーバンクルたちは息を飲んで我々を見守り、その場の者たちは黙って我らを静観し、長殿の様子を窺っている気配を感じた。
長殿は、我を見つめながらスッと双眸を細めると
『ふぅ~ん…。 精霊たちを後ろ盾に、人間やその辺の魔獣たち集めて崇めさせるだなんて…国でも作る気なのかしら?
で、私たちには介入するなって釘を刺しに来たのねぇ……』
と呟きながら俯き、何かを堪えるようにプルプルと震え出したので、思わず「怒りを買ったか?」と、全身を強張らせた。
すると、
『やっだーっ! 大精霊さまったら、何やってんのよぉ~!』
と、大音量で爆笑しだしたではないか。
ちなみに、その鼻息でカーバンクルたちが吹き飛びそうになっていたので、思わず受け止めてしまったわけであるが。
『ホント、あの方たちは加減ってものを知らないわよねぇ。 でも、その子も魔力が豊富な稀人とはいえ、ただの人間のはずでしょう? どんな介入の仕方したら、そんな化け物みたいな存在になるっていうのよぉ。 それを、この森で崇めさせるとか…偶像か神にでもするつもりなのかしら。…やっだぁ、なんか面白いじゃないのぉ』
そう言いながら、クックックと笑いが治まらない様子でこちらに視線を寄こしてくるので、思わず首をかしげて出方を窺ってしまうが…とりあえず、いきなり攻撃されることはなさそうなので、一安心である。
『ねえ、いずれその子にも会わせると約束してくれるなら、あなたたちのことに関わらないどころか、協力だってしてあげちゃうわよ? だって、この森どころかこの島全体を豊かにしてくれるんでしょう?』
『その程度の力はあると、大精霊さま方からのお墨付きであると言える』
長殿は、その言葉を聞いて更に破顔すると、
『だったら、私たちが顔を見せに行かない理由がないわね。 だって、この森出身のカリスマになるんですもの。後援者の一人として、是非とも名乗りを挙げさせてもらうわよ?』
そう言って、至極愉快そうに、高らかに笑い声をあげたので、ふと我は主にいただいた小さな包みがあることを思い出し、長殿に手渡しすと、その中には“これからよろしくお願いします”と、書き慣れていないこちらの文字で書かれた紙と、主の魔力で練り上げた小さくも高純度の魔石が入っていた。
小さなそれを箱ごと受け取った古竜の長殿は、大きな爪でつまみ上げて眺めると、『うふふ』と微笑み、大層喜んでくれたのだった。
その後、キュンキュンと鳴き声を上げる弟を振り切り、カーバンクルの2匹を背に乗せて家路につくのであるが……こいつ、このままここにいて大丈夫なのだろうかと、少しだけ気になった。
…まあ、長殿の口調はアレだが、特に同性を好む嗜好というわけでもないと言っているし………(カーバンクルの里長談)
しかし、主の性別が女性であると言った時、少しだけヒゲがヘタったのが気になったわけで………。
まぁ、気にすることでもあるまいと、その思考はここで終了することにした。
…それはともかく、思った以上の成果があがったため、これでマーリンの成果と合わせて、主を守る体制が盤石のものになるだろうと思うと、安堵の息がもれる。しかし…
…主をこの地で守り、住民に崇めさせることで、身体のみならず心理的にも逃がさないよう縛り付けるという意味合いも含んでいるということは、これらに携わっている我々だけの秘密である。
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これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
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