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その後のお話編:彼女にまつわるエトセトラ
エ□フ編その さん:神官長と精霊のお話
しおりを挟む<あのね、あのね、もりのこたちがじまんするの>
<おともだちがきたんだって>
<でもないしょなの>
<おっきいのもいっしょになってかくしてる>
<でもね、すごくいいにおいがもれてくるの>
<ひとりじめなんてずるいよね>
<いいなー>
<いいなー>
魔力を高めるよう、祈りの間の祭殿に籠って祈りを捧げていると、自らの精神が研ぎ澄まされ、精霊様の御声が明瞭になる。
早朝の務めの時間や精霊様の御声を頂戴したい時、この様に祭殿に上がって御声に耳を傾けると、彼らの会話を伺うことができ、その御声を直接賜ることができることがあるのだ。
ここに来ないと御声を賜ることができないということはないが、精霊様のご加護を頂いた私でも、常に全てを聞き取れるというわけではない。加えて、時間の概念がない方々でもあり、常に語り掛けられることによって私の精神に大きな負担ををかけられることもあるため、なるべくこの場にて賜ることにしている。
しかし最近、妙な胸騒ぎによって気持ちが落ち着かず、このように一人で祭殿に籠る時間が増えて来た。
精霊様の御声はいつも稚い幼児のような口調で、無邪気に思い思いの気持ちを語り掛けてくださるので、時に心が和んで穏やかな気持ちになれたのだが…最近は精霊様もザワザワとして落ち着きがないご様子である。
上記の会話の内容を鑑みるに、どうやらこの間からおっしゃられていた <もりのおともだち> のお話だろうか。
以前、北東のノルステン島にあるゴルトライヒ王国という国に異変があるという内容の会話をされていた記憶が新しく、そのあたりから騒めいて落ち着きのない御様子が伺えたものだったが……私の胸騒ぎもその辺りから発生していた。
「おともだち…とは、どのような方のことでしょうか?」
普段は会話されている内容に耳を傾けているだけなのだが、最近の話に現れる存在が気にかかり、常になく思わず会話に口を出してしまった。
<よくわかんない。どこでもおしゃべりできるこなんだって>
<どんなこかおしえてくれないけど、おしゃべりできるのはいいね>
<でもなんかどやがおでじまんされるとむかつく>
<あいつらかんじわるーい>
<ちっさいのがあっちいくとおっきくなるんだって>
<なにそれなにそれ、はつみみ>
<だからおちつかないこはどんどんあそこにながれていっちゃう>
<かくしてるけどあっちでうまれたこもけっこうふえたよね>
<なんかすごくない?>
<すごいねー>
<すごいよねー>
精霊様はおしゃべりが大好きでいらっしゃり、時々会話に口を挟むとこのように、流れる水の如き勢いで御言葉を返していただけるので、そこから情報を分析するのが大変である。
精霊様方は世界中の精霊様と繋がっており、時に遠方の聖地とやり取りをされている様子があるのだが、どうやら <おともだち> という方が、ゴルトライヒ王国の聖地に現れ、その地の精霊様方と友誼を深めているということの様だ。
その上、その方は自我をもたずに漂っている精霊様方の成長を促しているため、存在が希薄であるが故に安定しない精霊様が集まり、またあちらでも新しい精霊様が増えているとか………
私は会話の内容を理解した瞬間、思わず息を飲んだ。
それは…この世界において異変が起こっていると言っても良いのではないだろうか?
<おともだち> というのは、どのような存在だと言うのだろうか。
私はそのような存在のことなど、誰からも聞いたことはないし、過去の文献ですら思い当たる記述がなかった。
更に強いて記憶を探るならば、幼い頃に読んだ物語…童話のような創作物に出てくる架空の存在位だろうか。
そうして、考えつく限りあらゆる思考を巡らせていると、精霊様の会話が思わぬ方向へ向かった。
<あのね、あっちのおっきいのがおともだちといっしょにこっちをのぞいたときに、ぼくもみてみたの>
<おお、のぞきみ>
<おっきいのともおはなしできるんだー>
<べったべたにくっついてるらしいよ>
<ちょうあいされちゃってるんだねぇー、やらしー>
<いっしょにみてるなんて、えっちー>
<つながっちゃったのね>
<みえたの?みちゃったの?>
<あのね、ひとのこのおんなのこが、こっちをみてた>
その御声を聞いて、その内容に思わず心臓がドクンと音をたてた。
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