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その後のお話編:彼女にまつわるエトセトラ

エ□フ編その 9-下:だから、本来電話なわけなんですよ、スマホって ※

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「あの………まだでしょうか? 少々キツくなってきたのですが…」

 私は今、祭殿の間にて精霊様に促されるまま水鏡に魔力を込め、かの方の住まう地に向けて交信を試みている。

 水鏡には、遠方の精霊様が住まう、他の聖地と音声にて連絡を取ることができる機能が備わっているのだが……これも成立する条件が大層厳しく、相手も高純度の精霊水を満たした場所にて、私と同様かそれ以上の魔力を行使する必要があるなど、およそ現実的ではない条件が課せられている。

 ここで、何故 “私以上” と条件づけるかと言うと―――自惚れなどではなく、純然たる事実なのだが―――我ら全人種以上に魔力に秀でた人間種族はおらず、その中でも突出して魔力が多い私程度の量がないと機能しないからである。

 他国の一般的な半人種で、ようやく下級神官程度の魔力を持ち、精霊の加護を持つと言われる存在ですら、全人種という基本性能を持ちつつ加護を与えられている私の域にまで及ばない。

 それがこの世界における事実だと思っていたのだが……水鏡越しに確認したあの時、格というか次元の違いすら感じさせる魔力の放出に…、彼女から迸るその光に魅せられ、言葉も出ない程見惚れていた。


 そんな風に、あの時の彼女の美しさを脳裏に蘇らせては己を鼓舞し、精霊様に促されるまま水鏡に魔力を満たしていくと、精霊様はあまり見たことのない 【みみながさん(^-^)】 という、不思議な文様を水鏡に刻むように浮かべられた。

<なんか、こんなかんじでまってるといいんだって>

 と仰りながら、そのまま魔力を注入した状態で待機するよう指示されたので、私はその場で大人しく魔力を注いでいったのだった。

 それにしてもこの行為、魔力の消費量が半端ではない。
 ほんの数分注いだだけで、フワッと軽いめまいがする。

 そして、更にぐんぐんと力が吸い取られていく気怠さを感じながら、魔力を注入し続けていき…ふと、グラッと体が傾いた感じがして……気が付くと、私は知らないうちに、使い慣れた自分の寝台で寝かされていたのだった。


「神官長……あまり根を詰めてお祈りされるはおやめください。 お一人で倒れている姿を発見した神官が、泣きながら私の所へ報告に来た時、私は心臓が潰れるかと思う程心配いたしました」

 私が目覚めたとの報せがあり、すぐに駆け付けて来たイシュト神官からの苦情と心配の小言を受けながら、

「済まない。心配をかけてしまったな。
 今、私は精霊様方のご協力の元、水鏡を通してノルステン島の女神と交流を図ろうとしているのだ。

 あの方の魔力量は、精霊様方を凌駕するほどの内容量を秘めていることが明らかであり、そのため、そのような存在といち早く親交を深め、他国を牽制してく必要があると考えてやっていること。

 しかし、中々困難なようなので、しばらくこのような状態が続くだろう。

 ……お前たちには心配かけることになって悪いと思うが、もう少しこのままやらせてくれ」


 と、イシュト神官の胸元を見ながら、小言を先回りするかのように謝罪する。

 彼に言った言葉に嘘はないが、言っている端から脳裏に彼女の嬌声と艶姿が浮かんでくるので、何となく後ろめたい気持ちになってしまい、真剣に私の体を心配してくれているイシュト神官の目を見て話すことができなかった。

 しかし、こうして生真面目でやや童顔な補佐官に物憂げな表情をさせてしまうことに罪悪感を抱きながらも、思考はついついあの日へ向かってしまう。

 あの滑らかで柔らかそうな体の感触をその手で確かめ、快楽で高まった声を間近に聞くことが出来たら…どのような心地になるのだろうか?
 そして、あの豊富な魔力に包まれて、彼女の芳しい匂いを吸い込むことが出来たら…私はどうなってしまうのだろうか?

 要職について何十年と経ち、老獪な政治家たちや上級市民たちと接触することが多い仕事柄、表面上を取り繕う術は十分心得ており、心の中で何を考えていたところで、それを他人に気づかれる様な愚を犯したことなどないが、気を抜くとそんな浮ついた想像に囚われる自分に驚いてしまう。

 私が内心何を思っての言葉であるかなど、全く気付かない様子のイシュト神官に、思慮深く気遣うような微笑みで見つめられながら、

「…わかりました。
 精霊様のご指示であり、神官長のお考えからも、教団や国のためにおやりになられていることに、どうして我々が否やと言えるでしょうか。
 しかし、いくら必要なことであろうとも、倒れる程の無理はなさらず、危険な時には必ず側仕えか護衛にお知らせしていただけるのであれば、私からは何も申しません」

 と、ありがたいほどの理解を得られてしまうので、彼の顔色を曇らせるようなことを言う事はできず、

「わかった。必ずそうしよう」

 と、若干視線を逸らせつつ、後ろめたい気持ちを封印しながら言葉少なく了承したのだった。



 それから、朝な夕なに精霊様方のお力をかりて、水鏡で交信を試みる日が5日程続いたある日。
 交信回数が通算24回目となった時のことであった。

 最初の頃は魔力の放出加減がわからなかったため、無駄に魔力を吸われては、魔力欠乏で気を失うことも多かったのだが、試みも10回を超えたあたりからは安定し、20回にもなると出力加減のコツも掴めていたので、かなり余裕をもって交信を行うことができるようになっていた。
 しかし、恐らく彼女の元までは通じていたと思うのだが、一向に応答する気配もなく…

 そもそものやり方が間違っていたのだろうか…?

 そんな疑念が私や精霊様の間で生まれ始め、この試みが全くの失敗であるかもしれないと焦りが生じていた時でもあった。

 女神様……この想いをどうか受け取ってください…。
 せめて、一声、声を聞かせていただきたい。
 それすら叶えられないのならば…私は、思い切った手を使わなくてはならなくなる…。

 そのような想いを込めた願いが通じたのだろうか?
 突如、『ピッ』という、聞きなれない高い音が耳に入って来たので、私は期待にグッと体を乗り出して水鏡を覗きこんだ。
 すると…


『ぁんっ……』

 鼻にかかったような…吐息交じりに漏らしたような声が微かに聞こえて来た気がしたが、何か聞き損ねただろうかと頭を捻る。

『ふっ……ぁ…』

 しかし、やはり何かか細い声の様なものが聞こえるので、私はもう一度ピクピクと耳を震わせ、音を聞き漏らすまいと集中して、文字通り耳を傾けた。

『あっ…ブルブル、押し当てないで。 ふぁぁ……』

 ……何のことを言っているのだろうか……

 そう思ったが、その鼻にかかった高めの声を聞いた瞬間、脳裏にあの日の情事が思い出され、私は思わずゴクッと音を立てて唾液を嚥下した。

『ふふ、もうブルブル震えてないぞ、主よ。 この、震える魔道具はそんなに心地よかったのか? 
 ちょっと押し当てただけで、ここはもう、ビンビンに立ち上がっているではないか』

 そう言っている声は、まだ年若い青年――少年の様でもある――のものだと思われるのだが……やや離れた位置で話をしている声が聞こえて来る。

 状況はともかく、術が成功し、かの方と繋がったのだ!

 私は、嬉しくなって耳を揺らしながら、思わず顔をほころばせた。

 しかし、前回の時と違って水鏡には何も映らず、微かな二人の息遣いと、ガサガサという衣擦れの音などしか聞こえないため、今置かれている彼女の状況を掴みにくい。

 私は思わず物音を立てないよう息を殺し、更に耳を水鏡に傾けて、現状把握に努めることにしたのだが……
 もしや? と思う期待がドキドキと音を高鳴らせ、その胸を圧迫した。

『ぁ…やん、指で弾かないで…』

 しかし、その声を最後に、何か柔らかい物の上に落下したような 『ボサッ』 という大きな音が聞こえると、それ以降の音声はやや遠く聞こえるようになった。

 ……??

 私は首をひねって、どうしたのだろうかと思ったが、遠くから微かにピチャピチャと何かを舐めるような音も確認されて…

『あっあっ…もう、ちくびばっかり………。 あぁんっ、コロコロだめぇ!』

 と、何やら艶めいた悲鳴まで響いてくる。

 こ、これは………アレ…か?

 …そういうことに慣れていない私も、流石にその情景を悟ることができ、思わずゴクリと音を立てて唾液を飲み込んだ。



『はぁン………へんなことしないで…』

 “ヘンなこと”とは何だろうか……

 あえかな吐息に混じって聞こえて来た言葉に、思わず考えこみそうになってしまったが、今重要なのはソレじゃない。

 どうやら、やはり再び情事に遭遇してしまっているようである。
 何故2回続けてこの状況になってしまっているのかを精霊様に問いたい所であるが、コレも今ではない。

 ……かの女神様は、すでに夫が何人かいるのだろうか…

 私は、そんなことを考えながら、続きも聞き逃すまいと更に力を込めて限界ギリギリまで魔力を注入していった。

『主の胸の先がコリコリと固くなっているので、口に含んでしゃぶりやすくていい……フフッ……ピンク色の先っぽが、赤く色づいて、欲情している色になってうまそうだ……』

 そういって、その情景をまざまざと想像させるような台詞と、チュパチュパっと吸い付いているような音が共に相まって、私は自分がその状況を見ているような気持になり、男の情欲の籠った声にすら反応しそうになってしまう。

『主……ほら、ココ、こんなに固くなって、唾液でテラテラ光ってる……いやらしい眺めだ』

『ぁあっ……いちいち言わないで…っ…』

 男はククッと含み笑いをしながら、黙ってピチャピチャと舐め転がしているような音を立てて、彼女を責めているらしい。

 ……説明が分かりやすい。この男、なかなかいい仕事をするではないか。……じゃなくて。

 私は、その声が前回のライオンの半獣人とは違うなと、微かに残る冷静な部分で考えたのだが、

『ふぁ…っ……、だめっ……そこ、きもちい…』

 という艶声が聞こえた瞬間、再度耳をピクピクと震わせながら、微かな物音も聞き漏らすまいという覚悟をもってして、漏れ聞こえる声に意識を集中させてしまうのだった。



 そしてどの位の時が流れたのだろうか……

 グチュグチュという水音に彼女のすすり泣き喘ぐ声が交じり合って聞こえて来ては、それに合わせて私の息も乱され、無意識に熱く昂ったモノに触れそうになるのを堪えて身悶え…。

 パンパンと肉がぶつかりあって奏でる破裂音の様な音と、やたらとクリアに聞こえるようになった彼女の息遣いや声が、静謐な祭殿の間に鳴り響いた時には、流石に我慢が出来ず水鏡の台座となっている大理石の台の側面に、私の固くなったモノをこすり付け、慰め始めてしまった。

 神官たちが毎日祈りを奉げる清らかな空間で、それらを取り仕切る私自らが淫らな行為をしているという背徳感がたまらない。

 精霊様がここにいらっしゃると言うのに……ああ…見られているのだろうか……

 そう思うと、私の性器はより昂りを増して固くなり、ゴリゴリと押し付ける台座のひんやりとした冷たさに萎えるどころか、尚更興奮してきてしまい、はぁはぁと息が乱れてくるのだった。

 このような場所でそのような汚らわしい振る舞いをする不埒者がいたら、きっと私はその者をひっ捕らえて、神殿地下の牢に拘束し、即日断罪することだろう

 しかし、私は自分がこの地での最高権力者であることを、今ほど感謝したことはない。
 私を断罪できる存在など、精霊様以外にいないのだが、その精霊様ご自身が見逃してくださっているという事実が、私の淫らな行為を助長する。


 もちろん、上に立つ特権を私的に行使するような者が権力を握るなど、あってはならないことであると、日々考えて務めて来た。
 今後もその考えを変えることなどないだろう。
 権力を持つ者こそ、高潔で正しく人々を教え導くものなのだ。

 そうなのだが……ああ……腰が…手が止まらない…

 そうして、相反する言動を自覚しながら、いつしか私は台座に擦りつけていた性器を衣服越しに握りしめ、シュッシュと上下に擦り上げていた。

「あっ…あっ……めがみさま……」

 いつしか声を殺すこともやめ、喘ぎながらガチガチに固くなった性器を夢中になって擦っていると、

『ふぁっあっあっ……やぁっ、イク…イっちゃうぅぅんっ』

 という、彼女の大きな喘ぎ声が、まるで身近に感じられるようになってくるので、より一層擦る手に力が籠る。

『あっあっ……ぁ、あるじっ…我も……………』

 姿も知れない男の声も、このまま果てそうになっている自分の気持ちとリンクしているように聞こえ、私の昂りを助長してくるので堪らない。


『ぁあっあっあっ…はぁんっ!イクゥーーっ!』

「あぁっあっ…めがみっ…一緒にっ…ぁあっ…」


 まるで自分が彼女と共にいるような気持になる程近くで声が響くので、彼女の高まる声と同じタイミングで声をあげながら、熱を帯びて高まり続けた熱を放つかのように、衣服の中に白濁を放ったのだった。

 魔力を使い果たした疲労と射精後の気怠さを感じつつも、ハァハァと乱れた息を整えながらクリーンをかけていると、ふと視線を感じたので、もたれ掛かっていた体を起こして水鏡を覗きこみ…


『………………だれ?』

 水鏡の向こう側、上から見下ろされる様な形で、女神様と目が合った。

 彼女は、情欲の名残で赤く染まった頬と濡れた瞳を映しつつ、大層驚いて目を真ん丸にしていたが、場違いながらも、そのような飾らない表情も可愛らしいと思った。

 間近に見える、彼女の美しい黒い瞳に、何故か小さな枠に収まった自分の姿が映っており、自分の姿が彼女にはこう見えているのだと悟る。

 お互いの姿を視覚で確認しつつも、状況が整理できずに見つめ合ったまま…数秒は経っただろうか……

 何か言わなくては。

 ハッと我に返った私は、ご挨拶もしていないことに気づき、慌てて口を開いた。


「夫にしてください」 と。 


 言われた瞬間、彼女はポカンと口を開いたまま、何も言うことができずにいる。

 ……あれ?何か変なことを言っただろうか?

 驚いたまま微動だにしない彼女の様子がおかしいと気づき、思わず口走った己の言葉の内容を思い出し、少しずつ浸透するかのように理解していくと、恥ずかしさのあまり頭を抱えて叫び出しそうになった……のだが、

『え、あの……えぇっ…!? ………どちらさまっ!? ていうか、なんで!?』

 と、真っ赤になって狼狽える彼女の姿を見て口を噤み、案外間違っていなかったかもしれないと思った。

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