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その後のお話編:彼女にまつわるエトセトラ
颯太くんの成長日記 ④ ※※
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うちの姉は、実は結構可愛い。
サラサラの癖のない黒髪に、大きすぎない黒目がちな瞳、よく見ると通った鼻筋に、整った目鼻立ち、華奢な体躯。
パーツのそれぞれは俺と似通ったところが多く、一緒にいると似ている姉弟だとよく言われる。
それなのに何故か俺の方ばかりが注目を浴びてしまっていた。
姉だってそんな俺と似ていると言われるのだから世間的には可愛い女の子と認識されていたっていいはずなのだが、何故かイマイチ地味な印象しか残らず、美少女…とまでは言わないが、実は可愛くて、一番男ウケが良いタイプだと言うことがわかりにくい。
なんだろう…実はイシコロ帽(@青い猫型ロボット)でも被って生活していたのか? うちの姉ちゃんは。
時々本気でそう思うことがあったのだが、まあ、俺も都合がいいのであまり追求しなかった。
しかし、こういう地味系の女子を好む野郎たちには、『自分だけが知ってる可愛い子』という、ある意味原石を見つけたような錯覚を起こさせる存在なんだろうと、早熟な俺は割と早い段階から気づいていたのだけども。
多分、男同士が仲間内で恋バナなんかすると、目ざとい草食系の奴らの一人か二人が「気になってる子がいるんだ」と打ち明けるタイプ。
地味に静かにモテてるけれども、惚れる男もヘタレなので結局本人は一生気づかず、何年も経ってから同窓会なんかで「あの時実は…」とか告られればいい方…というのは言い過ぎかもしれない。
また、本人もそういうことに無頓着な上に、普段から俺のことばっかり気にしているせいか、周りの男どもが時々チラチラと気にしていることも全く気づいていない様だった。
――――まあ、俺もそんなこと本人に気づかせないように注意をひきつけ、できる範囲でこっそり印象操作やら妨害工作なんかはさせてもらったけども。
姉は元々可愛い弟である俺に夢中だったし、俺ばっかりがチヤホヤされる環境に慣れすぎてしまっていて、注目を浴びているのは常に俺だと勘違いしていたフシもあったから、その辺りの操作は本当にヌルゲーだった。
その上中学に入ってからは、妙なオタク趣味に目覚めてしまったためか、より一層周囲の男どもの視線に無頓着になってしまったのだが…
中学生なんて発情期に現実の男に目を向けないのは、むしろ俺にとっては追い風が来たようなものだったので、もちろん乗っかった。
オタク位で引くような男なんて碌なもんじゃない。
ヲタ趣味全開の一方的なマシンガントークを3時間以上食らった程度で引いてしまうようなヘタレに、姉を任せるわけにはいかないのだ。
俺なら5時間は微笑みながら相槌を打ちつつ聞いてやれる。
何、まるで興味のないことを一方的に聞かされても我慢できるコツなんて、実は簡単なことなんだ。
キラキラと瞳を輝かせながら、百面相を織りなす姉ちゃんの変化を愉しめば良いのだ。
姉は語りたいだけなので、実は本気で聞いてるかどうかなんて、然程気にしていないのだから。
最近の若い奴らはそういうことが出来ないからダメなんだと、俺は思う。
まぁ、それはそれとして、話を戻そう。
所謂オタクと言っても、姉はいわゆる乙女ゲーやら腐ゲーやらといった女子ヲタ方向ではなく、なぜか従兄弟の兄ちゃん(当時25歳フリーター)がハマっていたダークファンタジー系のヲタゲー(R15版)の方向に走っていったのも、どこかズレた姉らしいと言っちゃ姉らしかった。
ただ……その時知った姉の推しが、ムキムキの生活苦溢れる無精髭のオッサン騎士(38歳バツイチ子持ち)のNPCだったと知った時は流石にショックが大きかったのだけれども…
中学生女子がハマるにしては、マニアックすぎるだろう…。
せめてメインキャラクターのイケメン王子とかクール系イケメン騎士でもいいだろうに…
姉が俺に推しキャラの良さを語る時は、「うんうん、かっこいいよね」なんて聞いていたものだったが、当時7歳だった俺にはただの生活にくたびれたオッサンにしか見えず、生ぬるい微笑みを浮かべながら大好きなはずの姉と心の距離を初めて感じていた。
まあ、そんな風に浮世離れした所のある姉だったので、現実にそんな男がいたとしてもお知り合いになることもなく、例え知り合ったとしても世間の目や法律が彼らの間を割いてくれるのだから、姉ちゃんの一番は俺しかいない。
俺たちはずっと二人で一緒に暮らしていける(両親はノー眼中)。
そう思っていたのに、別れは突然やってきた。
「大学の近くで一人暮らしするよ」
そう言われた時、なぜか裏切られたと思った。
あんなに俺にベッタリだったくせに、大学に行く位で俺と離れるのか?…と。
あの時の姉と同じ年になった今なら、それも仕方のないことだとわかっているし、実はあの時だって、全くわかっていなかったわけではなかった。
それでも、姉が自分を捨てて見知らぬ世界に行ってしまうということに我慢ができなかったのだ。
姉の人生は未来永劫自分のものだと思っていたかったから。
そして、姉が家から出ていってから…俺はこっそりグレた。
しかし、ヤンキーになって悪い友達と夜中に遊び歩くとか、非行に走って補導されるなどという、わかりやすいグレ方をするほど、俺の頭は悪くない。
というか、そんな積極性はなかった。
ただ単に、無気力になったというのかもしれない。
俺も姉が絡まないと周りのことを気にしない質だったので。
その結果…まあ、断るのが面倒で関わり自体を避けていた、イロイロな誘いを断らなくなった。
今までは、姉が俺の中で一番重きを置く存在だったので、姉を疎んじるような女子どもからは遠く離れ、呑気な男の友達ばかりと連れ立っていた。
そのため、俺に色目を使ってくるような女は面倒くさくて近寄らせなかったのだが、断ってもしつこく食い下がらられると、本当にどうでも良くなって…しつこく俺にアプローチしてくる先輩(中3)に誘われるまま、童貞を捨てた。
とはいえ、感想としては「こんなものか」という程度。
それなりに美人で有名な先輩だったものの、清楚な外見とは裏腹に結構遊んでいたようで、まあまあキモチイイ思いはさせてもらったが、終わってしまえば何の感慨もなかった。
その後しばらく言われるままに付き合ったが、イマイチ反応に乏しくて、誘われるがままにヤルだけという俺の反応が気に入らなかったらしい。
そうして先輩は、ある日メールで一方的に別れを告げると、自分にゾッコンな別の男に乗り換えていった。
勝手にすり寄ってきて、その気もなかった俺に伸し掛かって襲ってきたくせに、突然反応が気に入らないと言い出して勝手に男を作って去っていった先輩も大概だと思った。
しかし、何か言いたげだった節のある先輩を全く引き止めもせず、新しい彼氏を見せつけるように離れていっても声も掛けず、全く気にしていない俺も結構最低な部類だと思えば、特に腹も立たなかった。
その後、先輩が離れていってからも…と言うか、離れていってから何かが解禁されたのか、ひっきりなしに女の誘いがあり、気が向いたら言われるがまま付き合ってセックスして、あまりに受け身な俺に相手が我慢できなくなったり、俺が相手に面倒くさくなると別れたりを繰り返していたため、中学生にしてはあり得ないほど女の回転率は早かったと思う。
その頃、俺も身長170cm近くあって、高校生と間違われることもあったので、上は20代のOLから、下は下級生と様々な年代と関わりを持っていたが…
やたら積極的な肉食系の女って、年とか関係ないのな…と思ったが、どうでもいいことだった。
女なんて、姉ちゃんじゃなければみんな同じだ。
既にこの頃には、勝手に自分に近づいてくる女たちを冷めた目で見るようになっており、かなり世間を斜めから見ていた覚えがある。
ある意味中二病を患っていた時期だったのだろう。
…何か、そんなことを姉ちゃんに言うと泣きながら殴られそうな気がするが。
そんな中2のある日…冬休み前の期末テストが終了したばかりの時だったと思う。
姉が家から出ていって1年以上経っており、完全に姉ちゃんロスの状態が極まっていた…そんな時期だった。
学校近くの町中で、とある女に逆ナンされて、とりあえずヤルか…という状況になった時―――どういう状況かはあまり覚えていない―――完全にトチ狂っていたとしか思えない選択をした。
というのも、その女は高校生で彼氏もいるというのに、俺の外見が好みだからという理由で、会って30分で「エッチしよう」と言ってきた。
普通だったら絡みつかれた腕を振り払い、無視して去っていく様な案件だったが…清楚系の外見や声が、姉に結構似ていたのだ。
今思えば、そんな風に見えただけで、実際は全く似てなんていなかったのだが、姉と同じ高校の制服だった…というのも大きな錯覚の要因だったのだろうと思う。
俺の姉ちゃんはこんな誰彼構わず、顔が良ければヤろうとするようなビッチじゃねぇ。
そう思って無性にイラッとしたが、砂漠で干乾びそうになっている人間がオアシスの幻を見るような心境と言えばわかってもらえるだろうか?
中身が全く違っていても、ちょっと似てるだけの他人に縋るほど、俺は本当に飢えていたのだ。
乾きを癒すものなら、何でも良かった。
そして、こんなビッチの誘いに乗るだけでは飽き足らず、主不在となった部屋にたった今知り合っただけの他人を連れ込んで、当の主がいない空虚さを埋めようとしたのだから、本当にヤバい心理状況だったのだと思う。
女の方も、今しがた知り合った他人の家にノコノコと付いてくるのだから、バカさ加減は俺と大差ないレベルではある。
しかし、俺が年下の中学生と知ったら多少はあった警戒もかなぐり捨て、余計に図々しくなったのだから、こいつの事を気にすることもないだろう。
そして、俺の部屋ではなく姉の部屋に連れ込んで―――結論から言うと―――ヤッた。
最初は姉の部屋で、姉の姿を見たいという意識が強かった。
幸い、母親は用事があって夜まで帰ってこないと知っていたし、当然父親も仕事で遅くなる。
…姉は帰ってこないし、帰ってくるという知らせもなかったから。
「ねえ、ここ、君の部屋じゃないでしょ? 女の子の部屋だよね?」
クスクスと笑いながら部屋を見回す女の姿を見て、ホッとするどころか違和感しかしない。
「ひょっとして、お姉さん? 妹じゃ…ないよね? ふふふ、シスコンなんだ?」
キョロキョロと辺りを見回しつつ制服のブレザーを脱ぎながら、主不在で生活感が消え失せた姉の部屋の小物を手にとり話しかけてくるのだが…
おい、そのオッサンのフィギュアから手を離せ。
オッサンの股間を下から覗き込むな。
俺は微笑みながらそっと、
「それ、結構面白いっしょ? 割と好きなキャラなんだ」
と言いながら、そっとその手に誘拐されたオッサンを救出して、元の家(ガラスケース)に押し込んだ。
「ふふふ、なにそれ、ウケるんだけど。
何のキャラなのかわかんないけど、渋すぎない?
そんなものより…折角だから、もっとイチャイチャしよ?」
そう言いながら、胸元を半分ほど開けたシャツとパンツギリギリの短いスカート姿になった女が胸に飛び込んできたので、後ろのケースを庇いながら、衝撃を殺すようにそっと抱きとめて顔を間近で見下ろしたのだが…
ヤバい…こいつ、制服脱いだらマジで似てねぇ。
よく見ると結構髪とか痛んでるし…実は最近まで違う色だったのを急に黒髪にしたせいで痛みまくったパターンだな?
それに清楚に見せかけたナチュラル風メイクも、全然ナチュラルじゃないし。
むしろ、何かケバくね?
声も似てると思ったけど、静かで抑揚に乏しい感じの姉ちゃんの声と違って、鼻にかかって媚びてる声音がむしろイラッとするな。
処世術的な笑顔を崩さずに冷めた頭でしみじみと観察してしまい、街で話していた時には気づかなかった部分が顕になって、バッタモンの違和感に苛立ちが募ってくる。
気づかなければよかったのに。
俺はこれ以上この女とこの部屋でやり取りするのが嫌になり…性急な風を装って口づけながら、ベッドに腰を下ろした。
取り敢えず、ここまできたらヤることヤッて放り出そう。
体は案外似てるから、思ったよりは盛り上がるかもしれないし。
……姉と似ている…と思っていた女を姉の部屋でヤるなんて、なんとも倒錯的なシチュエーションではないか。
最早救いの手はそんなことにしか見いだせなかった。
本当に、俺も馬鹿な男だと何度も思ったが、この出来の悪いパチモンでも、その位の楽しみはあるかもしれないと思いこもうと努めた。
そして、おざなりなキスもそこそこに、服を脱がせ合いながら体を弄り合い、もつれ合うようにベッドに倒れ込み……
胸を弄って膨らみに手を這わせると、着痩せするタイプで意外と肉付きの良かった姉と違って、見たまんま貧相だった体にも密かにガッカリした。
肌質も、なんか乾燥してカサカサしてる部分が気になって、逆に姉のモチモチとして滑らかな肌を思い出す。
何で知ってるかって?
―――それは、姉が家を出る直前まで、11歳の俺が何やかんやと言いくるめて、一緒に風呂に入っていたからだ。
姉の体を本人よりも知り尽くした弟。それが俺である。
そう思うにつけ、やっぱり姉ちゃんっていい体してたんだな…なんて、アンアン喘ぐ女の嬌声を聞きながら、最低なことを考えていた。
…それにしても…正常位は…ないな。
もう、せめて後ろからやればなんとか耐えられるか?
幸い、後ろ姿なら多少似ていないこともないし。
なんとも容赦ないことを考えながら、前戯もそこそこだったというのにすっかりドロドロになっていた蜜孔に、大して解しもせずに性器を突っ込んだ。
女は挿入された最初の数回は苦しそうな声を上げていたが、容赦なく後ろからガンガン突いてやると、近所に聞こえそうなレベルで嬌声を上げられて少し焦った。
しかも、地声であげる嬌声も、似ているようで全く似ていないことも癇に障ったので、興奮していると見せかけて、女の頭を枕に押し付け、早くイケとばかりに敏感に反応を返す所を狙ってゴリゴリ擦ってやると、ヤバいくらいに腰を振られてちょっとビビる。
しかし、モノのように激しく責め立ててやると、こちらが苦笑いしてしまうほど何度も絶頂していたようだったし、俺も物理的にクるものがあったのだが…気持ちがノらないためか、固く勃起したままの性器は硬度を保ったまま全くイク気配もなく…
取り敢えず、女の気を失わせてから、こっそりシャワーに行って一人で抜いた。
……あの女の痴態に姉ちゃんの姿を映して想像すると3擦りで達したものの、ものすごく虚しくて深いため息が出た。
サラサラの癖のない黒髪に、大きすぎない黒目がちな瞳、よく見ると通った鼻筋に、整った目鼻立ち、華奢な体躯。
パーツのそれぞれは俺と似通ったところが多く、一緒にいると似ている姉弟だとよく言われる。
それなのに何故か俺の方ばかりが注目を浴びてしまっていた。
姉だってそんな俺と似ていると言われるのだから世間的には可愛い女の子と認識されていたっていいはずなのだが、何故かイマイチ地味な印象しか残らず、美少女…とまでは言わないが、実は可愛くて、一番男ウケが良いタイプだと言うことがわかりにくい。
なんだろう…実はイシコロ帽(@青い猫型ロボット)でも被って生活していたのか? うちの姉ちゃんは。
時々本気でそう思うことがあったのだが、まあ、俺も都合がいいのであまり追求しなかった。
しかし、こういう地味系の女子を好む野郎たちには、『自分だけが知ってる可愛い子』という、ある意味原石を見つけたような錯覚を起こさせる存在なんだろうと、早熟な俺は割と早い段階から気づいていたのだけども。
多分、男同士が仲間内で恋バナなんかすると、目ざとい草食系の奴らの一人か二人が「気になってる子がいるんだ」と打ち明けるタイプ。
地味に静かにモテてるけれども、惚れる男もヘタレなので結局本人は一生気づかず、何年も経ってから同窓会なんかで「あの時実は…」とか告られればいい方…というのは言い過ぎかもしれない。
また、本人もそういうことに無頓着な上に、普段から俺のことばっかり気にしているせいか、周りの男どもが時々チラチラと気にしていることも全く気づいていない様だった。
――――まあ、俺もそんなこと本人に気づかせないように注意をひきつけ、できる範囲でこっそり印象操作やら妨害工作なんかはさせてもらったけども。
姉は元々可愛い弟である俺に夢中だったし、俺ばっかりがチヤホヤされる環境に慣れすぎてしまっていて、注目を浴びているのは常に俺だと勘違いしていたフシもあったから、その辺りの操作は本当にヌルゲーだった。
その上中学に入ってからは、妙なオタク趣味に目覚めてしまったためか、より一層周囲の男どもの視線に無頓着になってしまったのだが…
中学生なんて発情期に現実の男に目を向けないのは、むしろ俺にとっては追い風が来たようなものだったので、もちろん乗っかった。
オタク位で引くような男なんて碌なもんじゃない。
ヲタ趣味全開の一方的なマシンガントークを3時間以上食らった程度で引いてしまうようなヘタレに、姉を任せるわけにはいかないのだ。
俺なら5時間は微笑みながら相槌を打ちつつ聞いてやれる。
何、まるで興味のないことを一方的に聞かされても我慢できるコツなんて、実は簡単なことなんだ。
キラキラと瞳を輝かせながら、百面相を織りなす姉ちゃんの変化を愉しめば良いのだ。
姉は語りたいだけなので、実は本気で聞いてるかどうかなんて、然程気にしていないのだから。
最近の若い奴らはそういうことが出来ないからダメなんだと、俺は思う。
まぁ、それはそれとして、話を戻そう。
所謂オタクと言っても、姉はいわゆる乙女ゲーやら腐ゲーやらといった女子ヲタ方向ではなく、なぜか従兄弟の兄ちゃん(当時25歳フリーター)がハマっていたダークファンタジー系のヲタゲー(R15版)の方向に走っていったのも、どこかズレた姉らしいと言っちゃ姉らしかった。
ただ……その時知った姉の推しが、ムキムキの生活苦溢れる無精髭のオッサン騎士(38歳バツイチ子持ち)のNPCだったと知った時は流石にショックが大きかったのだけれども…
中学生女子がハマるにしては、マニアックすぎるだろう…。
せめてメインキャラクターのイケメン王子とかクール系イケメン騎士でもいいだろうに…
姉が俺に推しキャラの良さを語る時は、「うんうん、かっこいいよね」なんて聞いていたものだったが、当時7歳だった俺にはただの生活にくたびれたオッサンにしか見えず、生ぬるい微笑みを浮かべながら大好きなはずの姉と心の距離を初めて感じていた。
まあ、そんな風に浮世離れした所のある姉だったので、現実にそんな男がいたとしてもお知り合いになることもなく、例え知り合ったとしても世間の目や法律が彼らの間を割いてくれるのだから、姉ちゃんの一番は俺しかいない。
俺たちはずっと二人で一緒に暮らしていける(両親はノー眼中)。
そう思っていたのに、別れは突然やってきた。
「大学の近くで一人暮らしするよ」
そう言われた時、なぜか裏切られたと思った。
あんなに俺にベッタリだったくせに、大学に行く位で俺と離れるのか?…と。
あの時の姉と同じ年になった今なら、それも仕方のないことだとわかっているし、実はあの時だって、全くわかっていなかったわけではなかった。
それでも、姉が自分を捨てて見知らぬ世界に行ってしまうということに我慢ができなかったのだ。
姉の人生は未来永劫自分のものだと思っていたかったから。
そして、姉が家から出ていってから…俺はこっそりグレた。
しかし、ヤンキーになって悪い友達と夜中に遊び歩くとか、非行に走って補導されるなどという、わかりやすいグレ方をするほど、俺の頭は悪くない。
というか、そんな積極性はなかった。
ただ単に、無気力になったというのかもしれない。
俺も姉が絡まないと周りのことを気にしない質だったので。
その結果…まあ、断るのが面倒で関わり自体を避けていた、イロイロな誘いを断らなくなった。
今までは、姉が俺の中で一番重きを置く存在だったので、姉を疎んじるような女子どもからは遠く離れ、呑気な男の友達ばかりと連れ立っていた。
そのため、俺に色目を使ってくるような女は面倒くさくて近寄らせなかったのだが、断ってもしつこく食い下がらられると、本当にどうでも良くなって…しつこく俺にアプローチしてくる先輩(中3)に誘われるまま、童貞を捨てた。
とはいえ、感想としては「こんなものか」という程度。
それなりに美人で有名な先輩だったものの、清楚な外見とは裏腹に結構遊んでいたようで、まあまあキモチイイ思いはさせてもらったが、終わってしまえば何の感慨もなかった。
その後しばらく言われるままに付き合ったが、イマイチ反応に乏しくて、誘われるがままにヤルだけという俺の反応が気に入らなかったらしい。
そうして先輩は、ある日メールで一方的に別れを告げると、自分にゾッコンな別の男に乗り換えていった。
勝手にすり寄ってきて、その気もなかった俺に伸し掛かって襲ってきたくせに、突然反応が気に入らないと言い出して勝手に男を作って去っていった先輩も大概だと思った。
しかし、何か言いたげだった節のある先輩を全く引き止めもせず、新しい彼氏を見せつけるように離れていっても声も掛けず、全く気にしていない俺も結構最低な部類だと思えば、特に腹も立たなかった。
その後、先輩が離れていってからも…と言うか、離れていってから何かが解禁されたのか、ひっきりなしに女の誘いがあり、気が向いたら言われるがまま付き合ってセックスして、あまりに受け身な俺に相手が我慢できなくなったり、俺が相手に面倒くさくなると別れたりを繰り返していたため、中学生にしてはあり得ないほど女の回転率は早かったと思う。
その頃、俺も身長170cm近くあって、高校生と間違われることもあったので、上は20代のOLから、下は下級生と様々な年代と関わりを持っていたが…
やたら積極的な肉食系の女って、年とか関係ないのな…と思ったが、どうでもいいことだった。
女なんて、姉ちゃんじゃなければみんな同じだ。
既にこの頃には、勝手に自分に近づいてくる女たちを冷めた目で見るようになっており、かなり世間を斜めから見ていた覚えがある。
ある意味中二病を患っていた時期だったのだろう。
…何か、そんなことを姉ちゃんに言うと泣きながら殴られそうな気がするが。
そんな中2のある日…冬休み前の期末テストが終了したばかりの時だったと思う。
姉が家から出ていって1年以上経っており、完全に姉ちゃんロスの状態が極まっていた…そんな時期だった。
学校近くの町中で、とある女に逆ナンされて、とりあえずヤルか…という状況になった時―――どういう状況かはあまり覚えていない―――完全にトチ狂っていたとしか思えない選択をした。
というのも、その女は高校生で彼氏もいるというのに、俺の外見が好みだからという理由で、会って30分で「エッチしよう」と言ってきた。
普通だったら絡みつかれた腕を振り払い、無視して去っていく様な案件だったが…清楚系の外見や声が、姉に結構似ていたのだ。
今思えば、そんな風に見えただけで、実際は全く似てなんていなかったのだが、姉と同じ高校の制服だった…というのも大きな錯覚の要因だったのだろうと思う。
俺の姉ちゃんはこんな誰彼構わず、顔が良ければヤろうとするようなビッチじゃねぇ。
そう思って無性にイラッとしたが、砂漠で干乾びそうになっている人間がオアシスの幻を見るような心境と言えばわかってもらえるだろうか?
中身が全く違っていても、ちょっと似てるだけの他人に縋るほど、俺は本当に飢えていたのだ。
乾きを癒すものなら、何でも良かった。
そして、こんなビッチの誘いに乗るだけでは飽き足らず、主不在となった部屋にたった今知り合っただけの他人を連れ込んで、当の主がいない空虚さを埋めようとしたのだから、本当にヤバい心理状況だったのだと思う。
女の方も、今しがた知り合った他人の家にノコノコと付いてくるのだから、バカさ加減は俺と大差ないレベルではある。
しかし、俺が年下の中学生と知ったら多少はあった警戒もかなぐり捨て、余計に図々しくなったのだから、こいつの事を気にすることもないだろう。
そして、俺の部屋ではなく姉の部屋に連れ込んで―――結論から言うと―――ヤッた。
最初は姉の部屋で、姉の姿を見たいという意識が強かった。
幸い、母親は用事があって夜まで帰ってこないと知っていたし、当然父親も仕事で遅くなる。
…姉は帰ってこないし、帰ってくるという知らせもなかったから。
「ねえ、ここ、君の部屋じゃないでしょ? 女の子の部屋だよね?」
クスクスと笑いながら部屋を見回す女の姿を見て、ホッとするどころか違和感しかしない。
「ひょっとして、お姉さん? 妹じゃ…ないよね? ふふふ、シスコンなんだ?」
キョロキョロと辺りを見回しつつ制服のブレザーを脱ぎながら、主不在で生活感が消え失せた姉の部屋の小物を手にとり話しかけてくるのだが…
おい、そのオッサンのフィギュアから手を離せ。
オッサンの股間を下から覗き込むな。
俺は微笑みながらそっと、
「それ、結構面白いっしょ? 割と好きなキャラなんだ」
と言いながら、そっとその手に誘拐されたオッサンを救出して、元の家(ガラスケース)に押し込んだ。
「ふふふ、なにそれ、ウケるんだけど。
何のキャラなのかわかんないけど、渋すぎない?
そんなものより…折角だから、もっとイチャイチャしよ?」
そう言いながら、胸元を半分ほど開けたシャツとパンツギリギリの短いスカート姿になった女が胸に飛び込んできたので、後ろのケースを庇いながら、衝撃を殺すようにそっと抱きとめて顔を間近で見下ろしたのだが…
ヤバい…こいつ、制服脱いだらマジで似てねぇ。
よく見ると結構髪とか痛んでるし…実は最近まで違う色だったのを急に黒髪にしたせいで痛みまくったパターンだな?
それに清楚に見せかけたナチュラル風メイクも、全然ナチュラルじゃないし。
むしろ、何かケバくね?
声も似てると思ったけど、静かで抑揚に乏しい感じの姉ちゃんの声と違って、鼻にかかって媚びてる声音がむしろイラッとするな。
処世術的な笑顔を崩さずに冷めた頭でしみじみと観察してしまい、街で話していた時には気づかなかった部分が顕になって、バッタモンの違和感に苛立ちが募ってくる。
気づかなければよかったのに。
俺はこれ以上この女とこの部屋でやり取りするのが嫌になり…性急な風を装って口づけながら、ベッドに腰を下ろした。
取り敢えず、ここまできたらヤることヤッて放り出そう。
体は案外似てるから、思ったよりは盛り上がるかもしれないし。
……姉と似ている…と思っていた女を姉の部屋でヤるなんて、なんとも倒錯的なシチュエーションではないか。
最早救いの手はそんなことにしか見いだせなかった。
本当に、俺も馬鹿な男だと何度も思ったが、この出来の悪いパチモンでも、その位の楽しみはあるかもしれないと思いこもうと努めた。
そして、おざなりなキスもそこそこに、服を脱がせ合いながら体を弄り合い、もつれ合うようにベッドに倒れ込み……
胸を弄って膨らみに手を這わせると、着痩せするタイプで意外と肉付きの良かった姉と違って、見たまんま貧相だった体にも密かにガッカリした。
肌質も、なんか乾燥してカサカサしてる部分が気になって、逆に姉のモチモチとして滑らかな肌を思い出す。
何で知ってるかって?
―――それは、姉が家を出る直前まで、11歳の俺が何やかんやと言いくるめて、一緒に風呂に入っていたからだ。
姉の体を本人よりも知り尽くした弟。それが俺である。
そう思うにつけ、やっぱり姉ちゃんっていい体してたんだな…なんて、アンアン喘ぐ女の嬌声を聞きながら、最低なことを考えていた。
…それにしても…正常位は…ないな。
もう、せめて後ろからやればなんとか耐えられるか?
幸い、後ろ姿なら多少似ていないこともないし。
なんとも容赦ないことを考えながら、前戯もそこそこだったというのにすっかりドロドロになっていた蜜孔に、大して解しもせずに性器を突っ込んだ。
女は挿入された最初の数回は苦しそうな声を上げていたが、容赦なく後ろからガンガン突いてやると、近所に聞こえそうなレベルで嬌声を上げられて少し焦った。
しかも、地声であげる嬌声も、似ているようで全く似ていないことも癇に障ったので、興奮していると見せかけて、女の頭を枕に押し付け、早くイケとばかりに敏感に反応を返す所を狙ってゴリゴリ擦ってやると、ヤバいくらいに腰を振られてちょっとビビる。
しかし、モノのように激しく責め立ててやると、こちらが苦笑いしてしまうほど何度も絶頂していたようだったし、俺も物理的にクるものがあったのだが…気持ちがノらないためか、固く勃起したままの性器は硬度を保ったまま全くイク気配もなく…
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