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その後のお話編:彼女にまつわるエトセトラ
異世界お宅訪問編 エルフさんのお宅から ⑦
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「颯太……颯太……眠ってるの?」
クスクスと、子供の頃から聞き慣れた女の声が笑いながら俺を呼ぶ。
少し低めの心地良い柔らかな声が間近で聞こえた気がして、俺は何となく微笑んだ。
頭の下の温かい枕は記憶にあるよりも固くて高い気がしたが、そっと優しく頭を撫でられる感触に安心して笑みが深くなる。
うん……何かいい気分だから、もう少し寝かせてよ。
人肌の温もりのある枕に頬を擦り寄せ、目を閉じたまま心の中でそう言うと、『ピギャ』と何かが潰れる様な音や、「しっかりしろ…っ」といった人の声が聞こえた気がしたが―――それよりも近くで「ふふふ」と小さく笑う低い声が耳に残った。
うとうとと微睡んでいると、昔…俺がまだ小さな子供だった頃、日当たりの良い窓際で漫画を読む姉ちゃんに膝枕されたまま、腹にブランケットを掛けられ昼寝をしていたことを思い出す。
思えばあの頃の俺は、姉が自分のためにいると信じて疑っておらず、俺の一挙手一投足に笑いながら振り回される姿を当たり前のものだと思っていた。本当に傲慢なガキンチョだったと、今の自分なら言えるのに。
体はあの当時の姉ちゃんよりも大きくなり、色々器用に熟せるようになってはいたけども、心の中は中学生から進んでいないと、姉と再会してから気がついた。いつまでたっても、やっぱり俺の一番はこの女だったのだ。
そして、あの頃のように気安く話ができるようになった今、やっと凝り固まっていた俺の心が少しずつ解きほぐされ……素直な気持ちをぶつけることができるようになったと思っていた。
ねぇちゃん……
「………やっと帰ってきたんだね……ずっと一緒だよ……」
それは寝言だったのか、心の中で呟いだだけだったのか、自分では分からなかったけれども。
『待っていた人が自分の元に帰って来て永遠に側にいてくれる』とか……なんて乙女チックで都合の良い夢を見てるんだと自分にツッコミを入れながら、クスクスと再び笑いがこみ上げた―――のだが。
「ハァハァハァハァ………うう、ソータさまぁ……かわいいかわいいかわいい………」
上からポタポタと、温かい何かの雫が頬に滴り落ちる感触に眉を寄せた。
…生あったけぇな……
そして頬に当たる液体が首元に伝い落ち、やたらと低い男声が耳に響いて……その違和感に目を開けた瞬間―――
「ハァハァハァ……ソータ様、ソータ様ぁっ!」
やたらと至近距離で、唇を尖らせながら俺に迫る顔面にゾワッと全身鳥肌が立ち、目の前のそれを力いっぱい殴りつけた。
生理的嫌悪感が半端ない。
「グッ!!」
上から覆い被さんとばかりに唇を寄せてくる男は、無防備な顎下から強烈な打撃を食らい、小さなうめき声を上げて背後に倒れる。
俺の頭を膝に乗っけたまま…という姿を崩すこと無いのは、敵ながらその執念を褒めるべきか。
んん……? あれ? 姉ちゃん……なんだ、夢か。
本能の赴くまま目の前の男の顔面を殴り飛ばし―――見知らぬ男に膝枕されていた事も、その男に襲われかかっていた事にも―――あまり動揺はなかったが、久しぶりに見た優しい夢がやっぱり夢だったことに気がついて、静かに落胆する。
そして、何かよくわからないが体に感じるベトつく感触を清浄魔法で一掃すると、「ふぁあ」と大きな欠伸が出た。
俺は眠気を噛み殺しながら、ゆっくりと上体を起こして片膝を立て、体を捻ったまま顔を抑えて悶絶する男に話しかけた。
「……お前、…どこの変態だ?」
そのまま辺りを見回して、自分が大きなベッドの端で眠っていたことを確認しながら、肌蹴かかった浴衣の胸元に手を差し入れ、欠伸混じりの気だるい気分を隠しもせず、ボリボリ掻く。
伊達に小さな頃からご近所のアイドルしていない。こう言う変態(男)には、哀しいことに耐性ができていた。
なので特に取り乱すこともなく、欠伸に誘発されて浮かんだ涙混じりの目でよく見てみると、目の前の巻毛の金髪マッチョが見覚えのある人物であると気がついた。
「…………ああ、コンスタンって名前の人だっけ? あんた何してんの?
…ふあぁ……くっそ眠い……なんだこれ、ダリぃ……。
何で俺、こんな所で一人で浴衣なんて着てんの? 姉ちゃんは?」
目覚める前までは、一応初対面であることからできる限り失礼のないよう振る舞う気持ちはあったのだが、覚醒した瞬間目に入った光景や、しこたま飲んだ翌朝の様な気怠さが、俺からなけなしの礼儀を奪っていた。
加えて、心地よい夢の中で大事にしまっておいた思い出を、この眼の前の変態に汚されたような苛立ちもあったかもしれない。
て言うか、いつまで横座りしてプルプル震えてるんだよ、こいつ……。
そのガタイからすれば、不意に入れられた攻撃だったとしても、こんなに体格差のある相手からの打撃なんて、大したダメージでも無かった筈だろうに。
「おい、ちょっと……」
オネエ座りで身を捩り、俺から顔を背けるコンスタンに声を掛けようとして……よく見ると長い耳を真っ赤にしてハァハァと息切らす不気味な姿に、思わず手を引っ込めた。すると、
「ぶほぉっ! ……な、なんてあられもない、しどけないお姿っ!」
広い部屋の中、想像以上に近い位置から聞き覚えのない若い男の声がして……突如ブパァッと降りかかる赤い飛沫に、流石に「ひっ!」と短い悲鳴を上げた。
またもや反射的に、その場から飛び退いたけれども、寝起きの体は思った以上に動きが鈍く、寝台の上を少し移動しただけだったので、飛び散る赤い飛沫が俺の浴衣や頬にぺたりとついた。有り得ねえ。
赤い飛沫が点在する布地をよくよく見れば、襟元や袖口に金の刺繍が施された白い浴衣は、誰の趣味でチョイスしたのか分からない程ツヤツヤした素材の、やたらと透け感のあるセクシー仕様の襦袢のようだったので、飛び散った赤さが死ぬほど目立つ。
「おまっ……なんじゃこのエロい浴衣は!? 今どきセクシー男優でもこんなスケスケ着ねえわっ!!」
その悪趣味な衣装を誰が着せたのか、何の意図で俺に着せたのかと考えると、低かったテンションが急激に上昇して怒りに変わる。
そして、怒りのまま浴衣を脱ぎ捨てようとしたのだが―――
「ハァハァハァハァ……きれいかわいいきれいかわいいとうとい…」
「…ふぉぉぉっ!! こんなに素晴らしい方が存在するとは……是非ともこのお姿を国民に広めたいっ!!」
「おおお―――っ! 感無量ですっ! このまま萌え尽きて死に果てるが、私めの本望でございますっ!!」
「ああああ……生きてて良かったっ!!精霊さまぁぁぁーーーっ!」
自分が思ってた以上に多くの人が、高校の教室程に大きな部屋の中にひしめいていた。その上異様――いや、異常な程熱い目つきでベッドを取り囲み俺を見つめる姿にゾワッと全身総毛立ったけれども、グッと息を飲み込んで、これ以上肌を晒さないよう浴衣の合わせを握り込んで座り直す。清浄魔法は再び重ね掛けだ。
気分は、ゲスな野郎どもの欲望の視線に晒された潔癖症の生娘である。
「棒付きが勝手に触るんじゃないわよ」とか罵りたい。こんなに欲望丸出しの目つきをされれば、相手がブサヲタとかイケメンエルフとか、容姿なんてまるで関係なく気持ち悪い。
なんだこれ、何が起こってるんだ? てか、ここ、どこ?
俺を取り囲む男たちより一段高い寝台にストンと座り込み、一体何事が起こっているのかと考えたが……俺がこんなにイケメン揃いのエルフ共に、まるで教祖か生き神様のように崇め奉られる理由が心の底から思い当たらなかった。
そもそも全員初対面の人間どころか、生きてる世界すら違うエルフ達なのである。
異世界事情なんて、マジわからんし。
「はぁはぁ…。うププ……勇者様が好んでお召になったというキモノをモチーフにした夜着が良くお似合いで……やはりソータ様の美しい肌にはクイーンアラクネの糸で織った布地に金のガルーン鳥の刺繍がよくお映えになる……眼福ですっ」
焦点の合わない目つきで訳のわからない戯言を言いながら、天使の輪もキラキラ輝く淡い金髪の美エルフが、鼻を抑えながらそっと手を伸ばそうとしてくるので、俺は不機嫌も隠さずその手を払ったのだが……何故かその男はそのままヨヨヨとゆっくり倒れ伏したかと思うと、払われた手を握り込んでビクビクと体を震わせた。
寧ろその動きにこっちがビクッとなる。病気持ちか?
「ふぅぅ……そのクールな横顔も、堪りません。お願いです、その虫けらを見るような目で『この雑種っ!』と罵ってくださいっ!」
「うわっ、近っ!『雑種』ってなんだよ…異世界ジョークわかんねーからっ!」
…と、抱きつこうとしてくる桃色巻毛の美少年エルフの小さな顔面をアイアンクローして、「ふんぬっ」と放り投げる。
そして、反対方向から寝台の脇で突然スライディング土下座して
「そのおみ足で私めの頭を踏みつけてください!」
と懇願してくる男(青銀ストレートヘアのイケオジエルフ)には恐怖しか湧かず、最早触るのも嫌になり、ATフィー…じゃなくて、魔力による防御壁で跳ね除けた。
そして一頻り変態どもを捌いた後、先程までキモさ際立っていた傍らに目をやると、寝台の上からそいつらを見下ろす変態の笑みには、その男達に対する明確な蔑みが感じられ、
どういう立ち位置のつもりだ、この変態―――とスルーすると共にドン引きした。
いや、ホント何なの!?
こいつらの俺への異常な執着?愛情?思慕?―――何でも良いけど、とにかく気持ち悪いっ!
逆ハーレム主人公が異世界に現れた瞬間、女日照りの住民に発見されたただけで、無条件に執着溺愛されるアレなのか?
しかしその場合、そんなん俺じゃなくて女である姉ちゃんの役割なはずだろ!?
不本意だけど!
それとも、既にコイツらの親玉が唯一の女を奪ってったからこっちに来てるってことか!?
もっと不本意なんだけどっ!?
そもそも、なんで俺がこんなクッソイケメンの幻想生物共にワッショイワッショイされないといかんの!?
いくら美形揃いでも……色とりどりの極彩色な色合いの儚げエルフ共に持て囃されたって、立つのは股間じゃなくて鳥肌だけなんだよっ!
俺じゃなくて逆ハーに憧れる夢女子連れてこいやっ!! 喜んで代わってやるから!!
理不尽に対する怒りと状況を理解できない戸惑いとは対照的に、キャッキャとはしゃいで頬染める男たちの低い声が、俺の心を孤独に駆り立てる。
俺の一挙手一投足に色めき立つ男たちであったが、何処かある種の敬意も払わられている節もあったので、以外と触れる行為以上は近寄ってこないのが救いであったけれども。
俺は一体いつまでここにいなくてはならないのか?
そう思いながら、波たつ己の心を鎮め、精神を無にして問いかける。
「……すみません、一体何がどうなって………俺は誰かと勘違いされてるんですか…?
あなた達にそんなに崇められ―――もとい、持て囃される覚えが…まるでないのですけど…」
口汚く罵れば罵るほど悦ばれ、猫なで声で優しく問いかけても相互を崩した笑顔で微笑まれるので、最早必要以上に刺激しないよう、感情のこもらない言葉を心がけなければならなかった。
大学で(騙されて連れてかれた)ヤリ目合コンに来ていた女子共だってもう少し遠慮があり、ここまで欲望を丸出しにしてはいなかったというのに…。(ちなみにそういう事を中坊あたりで卒業していた俺は、面倒くさくなってサッサと一人で帰った)
それに絶対に俺自身のことを見て言ってるわけじゃないのはわかっていた。
そもそもガチで初対面なんだから、ここまで食いつかれる意味がわかんねーし。
さっきからちょいちょい聞こえる『勇者様』って言葉もひっかかる。
なので、視線1つで周囲の変態共を誤解させあらぬ暴発を招かないよう、楚々とした態度で目を逸らしつつ答えを待つ。ザワザワと、お互いの視線と小声で話し合う時間が長い。
そして、数分程待っていると、
「………ソータ様は女神様とご同郷で、遠方出身の方でございましたね。でしたらご存知なくとも仕方ないのかもしれませんが……」
俺の寝台を中心に囲んでいた人の隙間から、おずおずと顔を出した人の良さそうな青年が、若干ドヤを感じさせる表情で俺を見た。ウゼェ。
そのアラサーと思しき青年は、コンスタンと共にヨナ神官長の側近を務める神官だと自己紹介をした後、誇らしげな顔で壁の肖像画にその手を掲げ―――その動きに合わせてザッとその場に片膝をついて跪くエルフ共の、一糸乱れぬ行動にドン引いた。
中には心臓を捧げそうな勢いの奴までいる始末である。
もうやだ、こいつら。
イチイチ、ノリのわからない大袈裟なアクションを返す集団に内心ウンザリしながらも、俺は今まで壁のインテリアとしか思っていなかった肖像画を改めて眺めた。
「我が国の国民全てが敬愛と愛情を捧げる、伝説の英雄―――黒髪の勇者様でございます」
その言葉に対する俺と言えば―――ふーん。確かに髪は黒いよな。
その程度の淡白な感想しか思い浮かばなかった訳で。しかし、俺の平坦なリアクションに反比例するかの如く盛り上がっていく男たちのテンションは留まる所を知らず……
「どうでしょうか、ソータさまっ!!
この真っ直ぐに流れるような艷やかな黒髪! 黒水晶の様な澄んだ瞳っ! ストイックにしてクールさを醸し出す端正なお姿は正に美の化身っ!! ご同郷である貴方様と瓜二つではございませんかっ!!」
そう言われた瞬間―――俺は瞬時に最大魔力を込めて『ドコォ――ンッ!!』と壁ごとその絵をぶち破る。
「その日本画の落書きみたいな絵のどこが瓜二つだ―――っ!!!」
控えめに言っても、素人日本画家が左手で書いた墨絵の様な武士っぽい男の姿に、俺はこれ以上そうそうない程ブチ切れた。
この絵の男との共通点なんて黒髪・黒目位しか見当たらず、引目鉤鼻的にシンプルな顔貌の肖像と瓜二つと言われれば、紅茶に注がれたと言うアルコールの余韻も相まって、擦り切れかかった理性も吹っ飛ぶ勢いである。
「お前らの目は腐ってんのか―――っ!?」
突然雄叫びながら怒りを爆発させた俺の剣幕に恐れを成したのか、それとも一瞬にして御神体を破壊されたショックのためか―――
「…………―――っ!!!」
あまりの衝撃的状況に、思考も動きも止まっていたエルフ達であったが、事の状況を理解し始めると、特有の長い耳をペタンと伏せて
「「「おおぉぉ………勇者様がァァ……」」」
と風穴の開いた肖像画を拝み始めた。
俺と言えば、勝手に人をご神体扱いしてくるキモヲタ集団の姿に同情は湧かず、むしろ「やってやった」と言わんばかりの爽快な気分すらあった。
思った以上に彼らの振る舞いにストレスを感じていた様である。
腕を組んで鷹揚な態度すら見せていたコンスタンは、そのままの体勢で目をかっ開いたままあんぐりと口を開け、静止している。
「カッカッカッ………へっ、ザマーミロっ!」
俺は、いつの間にかベッドの上で仁王立ちし、肖像画どころかその後ろの壁にヒビを入れる程の攻撃をかまし、極悪非道とも言える己の所業に高笑いを上げていた。
俺TUEEEEってこんな気分なんだろうな。やっべ、クセになりそう。
それなりにストレスを抱えながら周りに合わせて生活していた反動か、調子に乗ってそんなことまで考えていたのだがら、突然力を手に入れるって恐ろしい。
本来もっと理性的で大人しい性質の人間だったはずなのに、破壊衝動をブッパすることが、こんなに快感を得るものだったとは。
「魔王……魔王ね……なんか楽しいな…」
中央から放射状に伝うヒビの大きさが少しずつ拡大し、衝撃の大きかった部分からガラガラと音立てて崩れていく中、俺は思わず「精霊達のご期待に応えて、この世界の魔王目指すのも悪くないかもなー」なんて考えていた。冗談だけど。
流石に本気で目指す程拗らせてはいないし、身内の白眼視に耐えられるとも思えないが。
しかし、黒髪の勇者様と呼ばれた肖像の上半身部分が崩れ去り、ポッカリと空いた壁穴から姉の麻衣と夫と宣うエルフの二人と目が合って―――その肌色の多めな光景にブチ切れた。
「お前ら俺をこんな地獄に放り込んどいて、何乳繰り合ってんだ―――――っ!」
神にも等しい存在の肖像画を破壊されて項垂れるエルフたちの悲嘆の声の中、三度目の雄叫びが木霊した。
クスクスと、子供の頃から聞き慣れた女の声が笑いながら俺を呼ぶ。
少し低めの心地良い柔らかな声が間近で聞こえた気がして、俺は何となく微笑んだ。
頭の下の温かい枕は記憶にあるよりも固くて高い気がしたが、そっと優しく頭を撫でられる感触に安心して笑みが深くなる。
うん……何かいい気分だから、もう少し寝かせてよ。
人肌の温もりのある枕に頬を擦り寄せ、目を閉じたまま心の中でそう言うと、『ピギャ』と何かが潰れる様な音や、「しっかりしろ…っ」といった人の声が聞こえた気がしたが―――それよりも近くで「ふふふ」と小さく笑う低い声が耳に残った。
うとうとと微睡んでいると、昔…俺がまだ小さな子供だった頃、日当たりの良い窓際で漫画を読む姉ちゃんに膝枕されたまま、腹にブランケットを掛けられ昼寝をしていたことを思い出す。
思えばあの頃の俺は、姉が自分のためにいると信じて疑っておらず、俺の一挙手一投足に笑いながら振り回される姿を当たり前のものだと思っていた。本当に傲慢なガキンチョだったと、今の自分なら言えるのに。
体はあの当時の姉ちゃんよりも大きくなり、色々器用に熟せるようになってはいたけども、心の中は中学生から進んでいないと、姉と再会してから気がついた。いつまでたっても、やっぱり俺の一番はこの女だったのだ。
そして、あの頃のように気安く話ができるようになった今、やっと凝り固まっていた俺の心が少しずつ解きほぐされ……素直な気持ちをぶつけることができるようになったと思っていた。
ねぇちゃん……
「………やっと帰ってきたんだね……ずっと一緒だよ……」
それは寝言だったのか、心の中で呟いだだけだったのか、自分では分からなかったけれども。
『待っていた人が自分の元に帰って来て永遠に側にいてくれる』とか……なんて乙女チックで都合の良い夢を見てるんだと自分にツッコミを入れながら、クスクスと再び笑いがこみ上げた―――のだが。
「ハァハァハァハァ………うう、ソータさまぁ……かわいいかわいいかわいい………」
上からポタポタと、温かい何かの雫が頬に滴り落ちる感触に眉を寄せた。
…生あったけぇな……
そして頬に当たる液体が首元に伝い落ち、やたらと低い男声が耳に響いて……その違和感に目を開けた瞬間―――
「ハァハァハァ……ソータ様、ソータ様ぁっ!」
やたらと至近距離で、唇を尖らせながら俺に迫る顔面にゾワッと全身鳥肌が立ち、目の前のそれを力いっぱい殴りつけた。
生理的嫌悪感が半端ない。
「グッ!!」
上から覆い被さんとばかりに唇を寄せてくる男は、無防備な顎下から強烈な打撃を食らい、小さなうめき声を上げて背後に倒れる。
俺の頭を膝に乗っけたまま…という姿を崩すこと無いのは、敵ながらその執念を褒めるべきか。
んん……? あれ? 姉ちゃん……なんだ、夢か。
本能の赴くまま目の前の男の顔面を殴り飛ばし―――見知らぬ男に膝枕されていた事も、その男に襲われかかっていた事にも―――あまり動揺はなかったが、久しぶりに見た優しい夢がやっぱり夢だったことに気がついて、静かに落胆する。
そして、何かよくわからないが体に感じるベトつく感触を清浄魔法で一掃すると、「ふぁあ」と大きな欠伸が出た。
俺は眠気を噛み殺しながら、ゆっくりと上体を起こして片膝を立て、体を捻ったまま顔を抑えて悶絶する男に話しかけた。
「……お前、…どこの変態だ?」
そのまま辺りを見回して、自分が大きなベッドの端で眠っていたことを確認しながら、肌蹴かかった浴衣の胸元に手を差し入れ、欠伸混じりの気だるい気分を隠しもせず、ボリボリ掻く。
伊達に小さな頃からご近所のアイドルしていない。こう言う変態(男)には、哀しいことに耐性ができていた。
なので特に取り乱すこともなく、欠伸に誘発されて浮かんだ涙混じりの目でよく見てみると、目の前の巻毛の金髪マッチョが見覚えのある人物であると気がついた。
「…………ああ、コンスタンって名前の人だっけ? あんた何してんの?
…ふあぁ……くっそ眠い……なんだこれ、ダリぃ……。
何で俺、こんな所で一人で浴衣なんて着てんの? 姉ちゃんは?」
目覚める前までは、一応初対面であることからできる限り失礼のないよう振る舞う気持ちはあったのだが、覚醒した瞬間目に入った光景や、しこたま飲んだ翌朝の様な気怠さが、俺からなけなしの礼儀を奪っていた。
加えて、心地よい夢の中で大事にしまっておいた思い出を、この眼の前の変態に汚されたような苛立ちもあったかもしれない。
て言うか、いつまで横座りしてプルプル震えてるんだよ、こいつ……。
そのガタイからすれば、不意に入れられた攻撃だったとしても、こんなに体格差のある相手からの打撃なんて、大したダメージでも無かった筈だろうに。
「おい、ちょっと……」
オネエ座りで身を捩り、俺から顔を背けるコンスタンに声を掛けようとして……よく見ると長い耳を真っ赤にしてハァハァと息切らす不気味な姿に、思わず手を引っ込めた。すると、
「ぶほぉっ! ……な、なんてあられもない、しどけないお姿っ!」
広い部屋の中、想像以上に近い位置から聞き覚えのない若い男の声がして……突如ブパァッと降りかかる赤い飛沫に、流石に「ひっ!」と短い悲鳴を上げた。
またもや反射的に、その場から飛び退いたけれども、寝起きの体は思った以上に動きが鈍く、寝台の上を少し移動しただけだったので、飛び散る赤い飛沫が俺の浴衣や頬にぺたりとついた。有り得ねえ。
赤い飛沫が点在する布地をよくよく見れば、襟元や袖口に金の刺繍が施された白い浴衣は、誰の趣味でチョイスしたのか分からない程ツヤツヤした素材の、やたらと透け感のあるセクシー仕様の襦袢のようだったので、飛び散った赤さが死ぬほど目立つ。
「おまっ……なんじゃこのエロい浴衣は!? 今どきセクシー男優でもこんなスケスケ着ねえわっ!!」
その悪趣味な衣装を誰が着せたのか、何の意図で俺に着せたのかと考えると、低かったテンションが急激に上昇して怒りに変わる。
そして、怒りのまま浴衣を脱ぎ捨てようとしたのだが―――
「ハァハァハァハァ……きれいかわいいきれいかわいいとうとい…」
「…ふぉぉぉっ!! こんなに素晴らしい方が存在するとは……是非ともこのお姿を国民に広めたいっ!!」
「おおお―――っ! 感無量ですっ! このまま萌え尽きて死に果てるが、私めの本望でございますっ!!」
「ああああ……生きてて良かったっ!!精霊さまぁぁぁーーーっ!」
自分が思ってた以上に多くの人が、高校の教室程に大きな部屋の中にひしめいていた。その上異様――いや、異常な程熱い目つきでベッドを取り囲み俺を見つめる姿にゾワッと全身総毛立ったけれども、グッと息を飲み込んで、これ以上肌を晒さないよう浴衣の合わせを握り込んで座り直す。清浄魔法は再び重ね掛けだ。
気分は、ゲスな野郎どもの欲望の視線に晒された潔癖症の生娘である。
「棒付きが勝手に触るんじゃないわよ」とか罵りたい。こんなに欲望丸出しの目つきをされれば、相手がブサヲタとかイケメンエルフとか、容姿なんてまるで関係なく気持ち悪い。
なんだこれ、何が起こってるんだ? てか、ここ、どこ?
俺を取り囲む男たちより一段高い寝台にストンと座り込み、一体何事が起こっているのかと考えたが……俺がこんなにイケメン揃いのエルフ共に、まるで教祖か生き神様のように崇め奉られる理由が心の底から思い当たらなかった。
そもそも全員初対面の人間どころか、生きてる世界すら違うエルフ達なのである。
異世界事情なんて、マジわからんし。
「はぁはぁ…。うププ……勇者様が好んでお召になったというキモノをモチーフにした夜着が良くお似合いで……やはりソータ様の美しい肌にはクイーンアラクネの糸で織った布地に金のガルーン鳥の刺繍がよくお映えになる……眼福ですっ」
焦点の合わない目つきで訳のわからない戯言を言いながら、天使の輪もキラキラ輝く淡い金髪の美エルフが、鼻を抑えながらそっと手を伸ばそうとしてくるので、俺は不機嫌も隠さずその手を払ったのだが……何故かその男はそのままヨヨヨとゆっくり倒れ伏したかと思うと、払われた手を握り込んでビクビクと体を震わせた。
寧ろその動きにこっちがビクッとなる。病気持ちか?
「ふぅぅ……そのクールな横顔も、堪りません。お願いです、その虫けらを見るような目で『この雑種っ!』と罵ってくださいっ!」
「うわっ、近っ!『雑種』ってなんだよ…異世界ジョークわかんねーからっ!」
…と、抱きつこうとしてくる桃色巻毛の美少年エルフの小さな顔面をアイアンクローして、「ふんぬっ」と放り投げる。
そして、反対方向から寝台の脇で突然スライディング土下座して
「そのおみ足で私めの頭を踏みつけてください!」
と懇願してくる男(青銀ストレートヘアのイケオジエルフ)には恐怖しか湧かず、最早触るのも嫌になり、ATフィー…じゃなくて、魔力による防御壁で跳ね除けた。
そして一頻り変態どもを捌いた後、先程までキモさ際立っていた傍らに目をやると、寝台の上からそいつらを見下ろす変態の笑みには、その男達に対する明確な蔑みが感じられ、
どういう立ち位置のつもりだ、この変態―――とスルーすると共にドン引きした。
いや、ホント何なの!?
こいつらの俺への異常な執着?愛情?思慕?―――何でも良いけど、とにかく気持ち悪いっ!
逆ハーレム主人公が異世界に現れた瞬間、女日照りの住民に発見されたただけで、無条件に執着溺愛されるアレなのか?
しかしその場合、そんなん俺じゃなくて女である姉ちゃんの役割なはずだろ!?
不本意だけど!
それとも、既にコイツらの親玉が唯一の女を奪ってったからこっちに来てるってことか!?
もっと不本意なんだけどっ!?
そもそも、なんで俺がこんなクッソイケメンの幻想生物共にワッショイワッショイされないといかんの!?
いくら美形揃いでも……色とりどりの極彩色な色合いの儚げエルフ共に持て囃されたって、立つのは股間じゃなくて鳥肌だけなんだよっ!
俺じゃなくて逆ハーに憧れる夢女子連れてこいやっ!! 喜んで代わってやるから!!
理不尽に対する怒りと状況を理解できない戸惑いとは対照的に、キャッキャとはしゃいで頬染める男たちの低い声が、俺の心を孤独に駆り立てる。
俺の一挙手一投足に色めき立つ男たちであったが、何処かある種の敬意も払わられている節もあったので、以外と触れる行為以上は近寄ってこないのが救いであったけれども。
俺は一体いつまでここにいなくてはならないのか?
そう思いながら、波たつ己の心を鎮め、精神を無にして問いかける。
「……すみません、一体何がどうなって………俺は誰かと勘違いされてるんですか…?
あなた達にそんなに崇められ―――もとい、持て囃される覚えが…まるでないのですけど…」
口汚く罵れば罵るほど悦ばれ、猫なで声で優しく問いかけても相互を崩した笑顔で微笑まれるので、最早必要以上に刺激しないよう、感情のこもらない言葉を心がけなければならなかった。
大学で(騙されて連れてかれた)ヤリ目合コンに来ていた女子共だってもう少し遠慮があり、ここまで欲望を丸出しにしてはいなかったというのに…。(ちなみにそういう事を中坊あたりで卒業していた俺は、面倒くさくなってサッサと一人で帰った)
それに絶対に俺自身のことを見て言ってるわけじゃないのはわかっていた。
そもそもガチで初対面なんだから、ここまで食いつかれる意味がわかんねーし。
さっきからちょいちょい聞こえる『勇者様』って言葉もひっかかる。
なので、視線1つで周囲の変態共を誤解させあらぬ暴発を招かないよう、楚々とした態度で目を逸らしつつ答えを待つ。ザワザワと、お互いの視線と小声で話し合う時間が長い。
そして、数分程待っていると、
「………ソータ様は女神様とご同郷で、遠方出身の方でございましたね。でしたらご存知なくとも仕方ないのかもしれませんが……」
俺の寝台を中心に囲んでいた人の隙間から、おずおずと顔を出した人の良さそうな青年が、若干ドヤを感じさせる表情で俺を見た。ウゼェ。
そのアラサーと思しき青年は、コンスタンと共にヨナ神官長の側近を務める神官だと自己紹介をした後、誇らしげな顔で壁の肖像画にその手を掲げ―――その動きに合わせてザッとその場に片膝をついて跪くエルフ共の、一糸乱れぬ行動にドン引いた。
中には心臓を捧げそうな勢いの奴までいる始末である。
もうやだ、こいつら。
イチイチ、ノリのわからない大袈裟なアクションを返す集団に内心ウンザリしながらも、俺は今まで壁のインテリアとしか思っていなかった肖像画を改めて眺めた。
「我が国の国民全てが敬愛と愛情を捧げる、伝説の英雄―――黒髪の勇者様でございます」
その言葉に対する俺と言えば―――ふーん。確かに髪は黒いよな。
その程度の淡白な感想しか思い浮かばなかった訳で。しかし、俺の平坦なリアクションに反比例するかの如く盛り上がっていく男たちのテンションは留まる所を知らず……
「どうでしょうか、ソータさまっ!!
この真っ直ぐに流れるような艷やかな黒髪! 黒水晶の様な澄んだ瞳っ! ストイックにしてクールさを醸し出す端正なお姿は正に美の化身っ!! ご同郷である貴方様と瓜二つではございませんかっ!!」
そう言われた瞬間―――俺は瞬時に最大魔力を込めて『ドコォ――ンッ!!』と壁ごとその絵をぶち破る。
「その日本画の落書きみたいな絵のどこが瓜二つだ―――っ!!!」
控えめに言っても、素人日本画家が左手で書いた墨絵の様な武士っぽい男の姿に、俺はこれ以上そうそうない程ブチ切れた。
この絵の男との共通点なんて黒髪・黒目位しか見当たらず、引目鉤鼻的にシンプルな顔貌の肖像と瓜二つと言われれば、紅茶に注がれたと言うアルコールの余韻も相まって、擦り切れかかった理性も吹っ飛ぶ勢いである。
「お前らの目は腐ってんのか―――っ!?」
突然雄叫びながら怒りを爆発させた俺の剣幕に恐れを成したのか、それとも一瞬にして御神体を破壊されたショックのためか―――
「…………―――っ!!!」
あまりの衝撃的状況に、思考も動きも止まっていたエルフ達であったが、事の状況を理解し始めると、特有の長い耳をペタンと伏せて
「「「おおぉぉ………勇者様がァァ……」」」
と風穴の開いた肖像画を拝み始めた。
俺と言えば、勝手に人をご神体扱いしてくるキモヲタ集団の姿に同情は湧かず、むしろ「やってやった」と言わんばかりの爽快な気分すらあった。
思った以上に彼らの振る舞いにストレスを感じていた様である。
腕を組んで鷹揚な態度すら見せていたコンスタンは、そのままの体勢で目をかっ開いたままあんぐりと口を開け、静止している。
「カッカッカッ………へっ、ザマーミロっ!」
俺は、いつの間にかベッドの上で仁王立ちし、肖像画どころかその後ろの壁にヒビを入れる程の攻撃をかまし、極悪非道とも言える己の所業に高笑いを上げていた。
俺TUEEEEってこんな気分なんだろうな。やっべ、クセになりそう。
それなりにストレスを抱えながら周りに合わせて生活していた反動か、調子に乗ってそんなことまで考えていたのだがら、突然力を手に入れるって恐ろしい。
本来もっと理性的で大人しい性質の人間だったはずなのに、破壊衝動をブッパすることが、こんなに快感を得るものだったとは。
「魔王……魔王ね……なんか楽しいな…」
中央から放射状に伝うヒビの大きさが少しずつ拡大し、衝撃の大きかった部分からガラガラと音立てて崩れていく中、俺は思わず「精霊達のご期待に応えて、この世界の魔王目指すのも悪くないかもなー」なんて考えていた。冗談だけど。
流石に本気で目指す程拗らせてはいないし、身内の白眼視に耐えられるとも思えないが。
しかし、黒髪の勇者様と呼ばれた肖像の上半身部分が崩れ去り、ポッカリと空いた壁穴から姉の麻衣と夫と宣うエルフの二人と目が合って―――その肌色の多めな光景にブチ切れた。
「お前ら俺をこんな地獄に放り込んどいて、何乳繰り合ってんだ―――――っ!」
神にも等しい存在の肖像画を破壊されて項垂れるエルフたちの悲嘆の声の中、三度目の雄叫びが木霊した。
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