17 / 27
第一章
13.王様はドMだけど、誰彼構わない訳じゃない。
しおりを挟む「うん、だからね。 こういうのって、もう少し、お互いがわかり合ってからすることだと思うのね」
現在、急激に冷静さを取り戻した私達は、いそいそと乱れた衣服を元に戻し、再び対面して話を戻すことにしたのだが…。
何故かエイリーク王は私の足元で、そうそう見かけない位に素晴らしい土下座スタイルで座り始めた。
「はいっ。 いくら理性を失っていたとは言え、無抵抗で無垢なカエデ様にこの様な狼藉をするなど、首を落とされても文句など言えません。申し訳ありませんでしたっ!」
エイリークは、大きな体を小さくさせながら、額を地面に着けたまま謝罪を繰り返している。
私と言えば、そこまでしなくても…と思うけれども、かと言って対面して冷静に話が出来るようになれているとも思えないので、そのまま上から見下ろすように声をかけている。
いや、それでもなんだかなぁ……なんなの、これ。
内心ため息をつきながら、平身低頭する立派な身なりのイケメンの後頭部を見下ろし、そこはかとなく湧き上がる居心地の悪さを噛み締めた。
ギンギンに勃起したモノをモロ出しにして迫るエイリークに怯えた私は、悲鳴を上げながら強烈な左フックをカマして彼を床に叩きつけた。
思った以上の力が籠もった強烈な一撃に理性が飛んだのか、倒れ伏したエイリークは焦点の合わない目で更に飛びかかって来ようと瞬時に起き上がった。しかし、私の「お座り!!」との叫びに反射的に土下座して、ようやく正気に返ったらしい。
そして、「お座り」の命令のまま体が勝手にこの様な、今までの人生で一度も経験のない体勢をとっていたことに驚くも、じわじわと自分の暴挙を思い出して……心の底から申し訳ないと思ったらしい。
最初は意図せず強制的にさせられていた体勢であったが、そこに謝罪の心が伴えばとても自然に受け入れた。ただ、それ以上に私にその姿を見てもらえているという事実に喜びを感じてしまったと……聞きたくなかったことまで聞かされた。
ドMか……ドM獣人なのか。
自己顕示欲の強いタイプのドMなのか!?
静かにドン引きしながら問いかける私に応えるものは、今この場にはいなかった。
「んァッ…カエデ様……っ…本当に…なんてことを……ハァハァ……」
「………うん、それはもう良いって言ってるでしょ…」
そんなに嬉しそうに言われても…ただただキモいだけだし。
気づかれてないと思ってるかも知れないけど……その股間、また大きくなってるよね……?
もう、そんなにビビったりしないけど…貴方が体を起こす度にチラチラと見え隠れしてる凶器はちょっと私の目に触れない様にしておいてほしいの。
あえて焦点を合わせず見ないように努めるも、なんだかこいつのプレイに巻き込まれてる感じしかなくなり、大人しく付き合ってる自分がバカバカしくなってきた。
「うん、まぁ、ホント、話進まないから、ちょっと顔上げて…
そろそろ、今回のお話の本題に入っていいかなぁ…」
かなり投げ遣りな態度になっていることを隠しもせず、エイリークの後頭部に声をかける。
私の許しを得た王様は、嬉しそうにハッハッと肩を揺らして見上げてくるので、なんだか近所の大型犬でこういういたなぁ…と思い出しながら話を続けた。
「私があの住処を円満に出ていくことに協力して欲しいことと、一人で自活できるよう、色々なことを教えてもらおうと思って…。魔法とか、一般常識とか。
ママンのところじゃちょっと高度過ぎて、ついていける気がしないんだよね…。
図々しいお願いで申し訳ないんだけど……だめかな?」
私の言葉にエイリークは、フサフサの尻尾をパタパタと音立てて揺らしながら、見上げて嬉しそうに笑って、
「貴女があの家を出ること事態は是非とも応援させていただきたいくらいなので、かまいません!」
勢いづいてそう言った後、何か考えるように少し首を傾けて言葉を続けた。
「ただ、神獣様をあまり悲しませたくないのも、我が国の国民の心でもあります。
我々は、神獣様ご本人に対して忠誠を捧げておりますので、あまり神獣様を悲しませないようにお願いしたいと思っています。
しかし…弟君方に対しては…少々勝手が変わるかもしれませんけどね」
最後の言葉の時にニヤッと笑った様に見えた気がしたが、すぐに収まったので気のせいかと思い直す。
「ん? ロキやヴォル? まぁ、お姉ちゃん子だし、ちょっとごねるかもしれないけど、そのうち分かってくれると思うよ。家族なら。」
「家族なら…そうでしょうねぇ……」
何やら意味深な含みをもたせた呟きであったが、あまりよく聞こえなかった上にピンと来なかったので、私は肝心な所を聞き逃していたのだった。
しかし、今後の円満な家出計画に対しては味方になってくれると言うので、今回のミッションは達成されたといえる。
その後、あるとあらゆる消臭剤、魔力消し、気配消しを駆使した上に体液のついた衣服を焼却して、着替えまで行った。そして、体についた鬱血痕をヒールで直して、痕跡を消すと、何食わぬ顔で弟たちを迎えに行ったのだったが…
それでもバレるかな…?と思ってヒヤヒヤしていた私の反応にも気づかず、弟たちは獲物の血塗れになって、毒ガスを吹きかけるイタチの最後っ屁を食らったから、鼻がきかなくて辛いとボヤいていたので、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。
しかし、ママンがそんな私達の後ろから『あらら…うふふ…』と、微笑ましいものを見るような表情で微笑んでいたことなど、私は気づかなかった。
10
あなたにおすすめの小説
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。
カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」
なんで?!
家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。
自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。
黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。
しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。
10人に1人いるかないかの貴重な女性。
小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。
それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。
独特な美醜。
やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。
じれったい恋物語。
登場人物、割と少なめ(作者比)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる