異世界の石像

鯖になりたい人

文字の大きさ
10 / 13
第一章

同じ者(3)

しおりを挟む
~翌日~

 朝から、ラベが大荷物を抱えて丘にやってきた。
「さ、アキレウス様、もう覚悟はできてますよね?」
 相変わらず不敵な笑みを浮かべているが、
「そもそも何するか聞いてないんだけど…」
 昨日、あの後、ラベは「準備してきます!」と張り切って帰っていった。
 …こけながら。
 そのため、何をするのかを聞かされずに今に至る訳だけど…
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
 本人はこれである。
「まぁ動けるようになるんだったら、何でもするけどさ。」
「じゃあいいですね!」
 そう言うと、ラベは大工さんが使いそうなのみと、金槌を出した。
「…ほんとに何するの?」
 なぜかラベの目がキラキラ光っている。
 その目がさらに俺を不安にさせるのだが…
「まぁまぁ、それは後のお楽しみということで、とりあえず、腕か足どちらか選んでください。(●︎☆▽︎☆●︎)」
「…え?」
「ですから、腕か足をどちらか選んでください!」
 …なんだろう、この世界に来てから、初めて身の危険を感じた気がする。
 ま、まさかと思うけど…
「ラベ?もしかして、その手に持ってるのみと金槌で俺を…」
「はい、削りますよ?」
 あ、なんだ削るのか、良かった良かったてっきり切断でもされるのかと…
「じゃねぇぇ!」
「うわ、びっくりさせないでくださいよー。」
「おい待てテメコラ、何?削るって?俺の体削るの?」
 冗談じゃない、今俺の体はこの石像だ。
 だから、削られたりしたらどんなことになるか…
 どうにかラベを言いくるめようと思ったが、俺はとんでもない失態をしていた。
「え?でも、さっきなんでもするって言ってましたよね?」
 …………あ。
「いや、ほらあれは言葉のあやで…」
「言・い・ま・し・た・よ・ね?」
「はい…」lll_ _ )
 くっ、謀ったなラベめ…
 このままじゃ、俺の体が傷付いてしま
ガキンッ
 ん?なんの音…
「あ、あ、あぁ。」
「どしたの?ラ、べ、」
 下を見るとラベの持っていた、のみが見事なまでにへし折れていた。
「何してくれてるんですかー!!」( T^T )
「え、いやいやいや、その前に何が起こったの?」
 よく見ると、俺の膝の部分が少し擦れている。
 まるでヤスリで削ったかのように。
「アキレウス様の膝部分の石をちょっと採取しようとしただけです!」
「いや待って待って、説明求む説明求む」






・・・





 こうしてラベによる『動いてみよう大作戦』というお子様が付けたような名前の作戦説明が行われた。
 ラベはどこからともなく取りだした眼鏡をかけて、説明を始めた。
 ついでに指示棒も持って
「まず私達巫女には『秘記』(ヒキ)と呼ばれる、巫女同士で情報を交換するノートがあります。まぁ交換日記のようなものと思ってください。」
「はい、ストップ。」
 俺は一旦説明を辞めるようにラベを促した。
「どうしました?」
「巫女ってそんな何人もいんの?」
「あー、その説明してませんでしたね。」
 すると、ラベは困惑した顔で目を逸らす。
「巫女はまぁー、、1000人くらいいるじゃないですかね?」
「え、まさか、知らないの?」
「だって、巫女は1つの神に1人必ず居るので…」
「なるほど。じゃあ説明の続きをお願いします。」
「アッハイ」
 ラベは再びこちらを向き説明を再開した。
「で、そこに記されていたのが今回の方法です。」
①神の仮の姿である石像から四肢の部分の欠片を採ります。
②それに聖水と土を混ぜて鍋で煮ます。
③十分に煮込んだら、それらを取り出して人の形に整形します。
④あとは、それを石像の前に持っていき、祈りを捧げます。
⑤すると、その人型に神が宿ります。
「と、いう方法です。」
 説明が終わり、とりあえず俺はあることを思った。
「なんか、胡散臭い。」
 なんかこういうの元の世界にあったなー。
 ○レビショッピング、俺あーいうの一切信じない人だったから、こういう証明されてないの信じれないんだよな~。
「ちなみにですが、こちらの方法で成功した例がいくつかあります。」
 ごめん、前言撤回やっぱこういうの好き。
「で、まとめると、ラベは俺の四肢から俺の人型を造ろうとして、のみで欠片を採取しようとしたら、のみが折れた。って感じでいいかな?」
 俺が簡潔にまとめると、ラベが涙目になり、俺の脚部をポカポカ叩きながら、訴えてきた。
「そうですよ!その通りですよ。あののみ、もしもの事があっても大丈夫なように、1番強度が高く、そして、値段が1番高いやつ買ってきたんですよ!?なのに、こんなにポッキリと折れて…お金返してくだしいよ!」
「いや、そんな事言われても勝手に削ろうとしたのはラベなんだから、俺悪くなくない?」
 そんなこんなで俺達2人が言い合いをしていると、
「全く、言い争ってる暇があるなら、その時間をそのナントカ大作戦に当てたらどうですか?」
 そこには麦わら帽子を被った、見覚えのある顔がいた。
「あ!カベラ!」
 そう、皆さんご存知、カベラ。
 ちなみにカベラはこっちの世界に度々来るらしい。
 「え、誰です?」
 ラベが疑問そうに聞くと、カベラが改まった態度で自己紹介をした。
「これは失礼、私、カベラと、言うものですわ。以後よろしくお願いしますね。」
「あ、ご丁寧にどうも、わたしはラーベ・ダンと言います。ラベと気軽に呼んでください。」
 一通り自己紹介が終わるとラベが小声で話しかけてきた。
(アキレウス様。あの方はどなたですか?)
(え?カベラだけど?)
(そうじゃなくて、何者なんですか?あの方。尋常じゃない強さを感じるんですが…)
 ラベが言うにはカベラから、とてつもないオーラみたいなものが滲み出ているらしい。
 全くわかんないけど…
(ま、まぁ仲良くしてよ。)
「で、カベラ?何しに来たの?」
「何しにとは心外ですね~。面白そうな事をやってたので、来てみただけですよ。えーっと、確か四肢の欠片がいるんでしたっけ?」
 その直後、シュンッと風が切ったような音がした。
 一瞬間を置くと、俺の体、石像の四肢にあたいする部分がポロポロと崩れた。
 そして、その崩れた欠片をカベラが拾っていた。
 その欠片をラベに渡し、カベラは微笑んだ。
「これ、必要なんでしょ?」
「え、え?今何が起こって…」
 すると、カベラが人差し指で、ラベの口を抑えた。
「詳しい事はあまり詮索してはダメよ?さ、これでその人型とやらを作ってみて?」
 「え、あ、はい!」
 なんだろう、今一瞬だけ狂気を感じた気が…

 その後、ラベは俺の体の欠片を持って帰り、陽は沈んだ。



~またまた翌日~

「アキレウス様ー!出来ましたよー!」
 朝っぱらからラベの大声が聞こえてきた。
 とても嬉しそうに何かを抱えて、丘にやってきた。
 そして、お約束のように、、、こけた。
 すると、ラベが抱えてたものが転がってきた。
 見てみると、
「うわぁー!生首!怖!」
 なんと人の生首が転がってきた。
「そんなわけないじゃないですか!!人型です!」
 と、言われたがあまりにも精巧にできすぎていて、ラベを疑いの眼差しで見てしまう。
 出来ないけど…
「全く、人が徹夜してまで造ってきたのに、あんまりですよ!」
「ごめんって、で、これが例の人型?」
「その通り!後は祈りを捧げるので、この人型に宿ってくださいね?」
 とは言われたが、宿り方なんて知らん。
 適当にしとけばいいのかな?
 そんなことを考えていると、ラベがカベラと同じような呪文を唱え始めた。
「Ь/+/`!!+:´+β◆/=+Ь/―´τЬЛЖСЩЕ。」
「だから何言ってるか分かんないって!!」
 そうツッコミを入れた次の瞬間、体が、いや、意識が吸い込まれる感覚に襲われた。
 怖くて目をつぶり、再度目を開けると、そこには、俺がいた。
「成功ですね!」
 ラベが駆け寄ってきて、手を掴まれた。
 久しぶりの感覚だった。
 それから俺は全身を隈無く動かした。
 走ったり、ジャンプしたり、とにかく運動した。
「これが、俺…」
 改めて感傷に浸った。
「ご自分の姿を、ごらんになります?」
 そう言ってラベは鏡を出してくれた。
 見てみると、容姿は白髪、金眼、彫りは浅く、髪型はどこにでもいるような普通な感じ。
「よし、動ける体ができたし、いっちょ旅に出ますか!!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...