22 / 35
22
しおりを挟む
邸の中はどこか素朴さを感じさせる雰囲気だった。
シグルスが言っていた通りあちらこちらに花が飾られてもいるので物語の小人や妖精の家を彷彿させる。
そして優しいハーブの香りが漂っていた。
「いい香りがするわ」
「あぁ、なんだか疲れが和らぐ気がするよ」
双子は無邪気に喜んだがホストであるシグルスが不思議そうにしている。
「確かに良い香りだが…初めて嗅ぐ。花にしては強いしなんの匂いだろう…?」
「「えぇ!?」」
しかしリュシルファだけは3人のやり取りを優しい目で眺めていた。
「もしかして…シル様はこの香りが何かご存知なんですか?」
ディルアーナの問いかけにリュシルファが頷いた時、部屋の隅に並んでいた使用人たちの奥から声が上がった。
「僭越ながら私が説明させて頂いても宜しいでしょうか?」
顔を覗かせたのは外の夕焼けにも負けない真っ赤な髪をした青年だった。
少し癖毛なのかゆるくカールした毛束の先がどれもオレンジ色でますます夕陽のようである。
しかし漆黒の瞳は夜の闇のようでどこか仄暗さもある人物だった。
「紹介するわ。いつも私を助けてくれるジグス・サーディスよ」
「皆様はじめまして。日頃はリュシルファお嬢様の侍従をさせて頂いてますジグス・サーディスと申します。男爵家の家名サーディスを名乗らせて頂いておりますが私は庶子なのでどうぞ『ジグス』とお呼びください」
いつぞや聞いたトロル族の侍従だとひと目で分かった。
美しい髪に大きな黒目、人形姫の側にいても見劣らない容姿をしている。
攻略対象のシグルスもセルディも充分美形で目を引くのだが彼はそんな彼らを上回りそうな不思議な魅力があり、正直こんな見目麗しい人だと想像もしていなかった。
(そう言えば可愛らしい女性が多いから混血の多い種族だってシル様が話してたな…)
庶子だと話していたし、恐らく容姿の美しさ故に彼の母親は男爵の子を妻でない立場で身籠るような境遇になったのだろうなと容易に想像ができた。
「皆様が今お話になっていた香りですが、ハーブで作ったお香でございます。長く馬車に揺られお疲れかと思いましたのでリラックス効果と疲労回復効果のある香りを焚いております」
ソファに腰掛けると邸に先に来ていた侍女がお茶を淹れてくれた。
「こちらもジグス殿がご用意されたハーブティーでございます。私どもも頂きましたが溜まった疲労を出しスッキリとした気分にさせてくれました」
飲んでみるとほんのりミントが香る爽やかで美味しいお茶だった。
「シルはいつもこれを飲んでいるの?」
「はい、これも…」
シグルスがリュシルファからジグスへ視線をやる。
「お嬢様が一番好んで飲んでいらっしゃるのは別のお茶ですが、お疲れであろうときにお淹れしているのはこちらのお茶でございます」
「シルの好みのお茶はどんなものなんだい?」
「はい、近頃の好みは様々なフルーツの香りがする甘いお茶でございます。朝食にも合いますので宜しければ明日の朝にご用意させて頂きます」
「楽しみにしているよ」
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
その後も歓談を楽しみにひと心地ついていると
「そろそろお食事はいかがでしょうか?」と声をかけられた。
そうこうしているうちに共に来た侍女や侍従たちも休憩を取り仕事が出来る状態になっていたらしい。
いつの間にか共に来た者たちも部屋の壁際で待機している。
到着したときには日が落ちかけていたのもあって窓の外は夕焼けを通り越して暗くなっている。
「食事をしながら明日の予定を立てようか」
シグルスのその一声で一同は食堂へと移っていった。
シグルスが言っていた通りあちらこちらに花が飾られてもいるので物語の小人や妖精の家を彷彿させる。
そして優しいハーブの香りが漂っていた。
「いい香りがするわ」
「あぁ、なんだか疲れが和らぐ気がするよ」
双子は無邪気に喜んだがホストであるシグルスが不思議そうにしている。
「確かに良い香りだが…初めて嗅ぐ。花にしては強いしなんの匂いだろう…?」
「「えぇ!?」」
しかしリュシルファだけは3人のやり取りを優しい目で眺めていた。
「もしかして…シル様はこの香りが何かご存知なんですか?」
ディルアーナの問いかけにリュシルファが頷いた時、部屋の隅に並んでいた使用人たちの奥から声が上がった。
「僭越ながら私が説明させて頂いても宜しいでしょうか?」
顔を覗かせたのは外の夕焼けにも負けない真っ赤な髪をした青年だった。
少し癖毛なのかゆるくカールした毛束の先がどれもオレンジ色でますます夕陽のようである。
しかし漆黒の瞳は夜の闇のようでどこか仄暗さもある人物だった。
「紹介するわ。いつも私を助けてくれるジグス・サーディスよ」
「皆様はじめまして。日頃はリュシルファお嬢様の侍従をさせて頂いてますジグス・サーディスと申します。男爵家の家名サーディスを名乗らせて頂いておりますが私は庶子なのでどうぞ『ジグス』とお呼びください」
いつぞや聞いたトロル族の侍従だとひと目で分かった。
美しい髪に大きな黒目、人形姫の側にいても見劣らない容姿をしている。
攻略対象のシグルスもセルディも充分美形で目を引くのだが彼はそんな彼らを上回りそうな不思議な魅力があり、正直こんな見目麗しい人だと想像もしていなかった。
(そう言えば可愛らしい女性が多いから混血の多い種族だってシル様が話してたな…)
庶子だと話していたし、恐らく容姿の美しさ故に彼の母親は男爵の子を妻でない立場で身籠るような境遇になったのだろうなと容易に想像ができた。
「皆様が今お話になっていた香りですが、ハーブで作ったお香でございます。長く馬車に揺られお疲れかと思いましたのでリラックス効果と疲労回復効果のある香りを焚いております」
ソファに腰掛けると邸に先に来ていた侍女がお茶を淹れてくれた。
「こちらもジグス殿がご用意されたハーブティーでございます。私どもも頂きましたが溜まった疲労を出しスッキリとした気分にさせてくれました」
飲んでみるとほんのりミントが香る爽やかで美味しいお茶だった。
「シルはいつもこれを飲んでいるの?」
「はい、これも…」
シグルスがリュシルファからジグスへ視線をやる。
「お嬢様が一番好んで飲んでいらっしゃるのは別のお茶ですが、お疲れであろうときにお淹れしているのはこちらのお茶でございます」
「シルの好みのお茶はどんなものなんだい?」
「はい、近頃の好みは様々なフルーツの香りがする甘いお茶でございます。朝食にも合いますので宜しければ明日の朝にご用意させて頂きます」
「楽しみにしているよ」
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
その後も歓談を楽しみにひと心地ついていると
「そろそろお食事はいかがでしょうか?」と声をかけられた。
そうこうしているうちに共に来た侍女や侍従たちも休憩を取り仕事が出来る状態になっていたらしい。
いつの間にか共に来た者たちも部屋の壁際で待機している。
到着したときには日が落ちかけていたのもあって窓の外は夕焼けを通り越して暗くなっている。
「食事をしながら明日の予定を立てようか」
シグルスのその一声で一同は食堂へと移っていった。
139
あなたにおすすめの小説
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました
タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。
ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」
目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。
破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。
今度こそ、泣くのは私じゃない。
破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。
乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる
アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。
自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。
魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。
しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。
前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。
「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」
追放された悪役令嬢は、辺境の谷で魔法農業始めました~気づけば作物が育ちすぎ、国までできてしまったので、今更後悔されても知りません~
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リーゼリット・フォン・アウグストは、婚約者であるエドワード王子と、彼に媚びるヒロイン・リリアーナの策略により、無実の罪で断罪される。「君を辺境の地『緑の谷』へ追放する!」――全てを失い、絶望の淵に立たされたリーゼリット。しかし、荒れ果てたその土地は、彼女に眠る真の力を目覚めさせる場所だった。
幼い頃から得意だった土と水の魔法を農業に応用し、無口で優しい猟師カイルや、谷の仲間たちと共に、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。やがて、その成功は私欲にまみれた王国を揺るがすほどの大きなうねりとなり……。
これは、絶望から立ち上がり、農業で成り上がり、やがては一国を築き上げるに至る、一人の令嬢の壮大な逆転物語。爽快なざまぁと、心温まるスローライフ、そして運命の恋の行方は――?
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる