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八年後のお茶会
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レーモンド公爵家の庭でお茶会をしているのは学友の二人である。
一人はハリス・レーモンドの妻、アネリア。
そしてもう一人は騎士爵夫人から最近伯爵夫人となったフュリー。
爵位は逆転したがお互い公式の場以外では砕けた口調のまま付き合いが続いている。
「ナドリックが伯爵位を賜ってホッとしたわ」
そう頬に手を当て大袈裟にホッとしたとアピールしつつお茶を口に含むフュリー。
「フュリーのお父様の侯爵様がよくご結婚をお許しになったって今でも思うもの。本当に良かったわよね」
そういうとフュリーの少し膨らんだ腹部に視線をやった。
「騎士爵だと引退後平民になっちゃうからこの子に余計なプレッシャー与えちゃうかもしれないものね」
フュリーはいたずらっぽくそう言いつつ愛しそうにお腹を撫でる。
もう七ヶ月だそうだ。
「それで、聞いた?コナル・リドー様のこと」
随分と懐かしい名前である。
「知らないわ」
アネリアは素直に答えた。
興味が無いとかでなく、卒業後に公爵夫人となるべく教育が始まり忙しくしてる間に次男であったリドーが独立して準貴族となったので接点が無くなっていたのだ。
「ついにね、子爵位を賜ったらしいわ。それで今度入籍をするみたい!」
楽しそうにリドーの近況を報告してくる。
「そうなの?というか、なんでフュリー、そんなに詳しいの?」
学生時代、フュリーは婚約を破棄したり、それを無かったことにしようとしたりするリドーに憤慨していた。
それがどこで仲良くなったのか不思議で仕方ない。
「この腕輪、可愛くなぁい?」
そう差し出された腕には繊細なデザインをしたワイヤーワークの腕輪がはめられている。
「え?えぇ。素材は銀かしら?丁寧な作りでデザインが何より可愛らしいわね」
大きな宝石が付いているわけでないので値段は手頃かもしれないがとても可愛らしく、どこで購入したのか後ほど教えて貰おうと思っていたものである。
「これをね、売っている商会がコナル・リドー様の…今はシャゼル・リドー氏の商会なの。私、お得意様なのよ」
まるでイタズラが成功した子供のような笑顔でそう言うではないか。
「彼にこんなセンスがあったなんて意外だわ!」
付き合っていた頃、そんなにセンスを感じたことは無い。
どちらかというといつもシンプルなものを選んでいたイメージである。
「このセンスは今度奥様になる女性のものらしいわ。シャゼル氏は女心を掴む商談がとてもお上手なの。元々平民の富裕層相手に商売してたみたいだけどウチは騎士爵だったから商談の話が来てね、会ったらコナル・リドー様でビックリよ。お化粧品も扱ってるんだけど入れ物が可愛かったり、肌のくすみをカバーする物が特に質が良かったりで素敵なの。で、見る間に商会が大きくなって子爵位を賜って、そのセンスの良い女性と結婚することになったんですって!」
「まさかその相手って…」
「バイオリンの名手でもあるらしいわ」
コナル・リドーと縁のあるバイオリンの名手など一人しかいない。
「あのリドー様が本当に!?」
あの当時アネリアを選んだ理由が、そして婚約破棄した理由が容姿によるものだと今のアネリアは知っている。
そしてレミア・レシャットがリドー好みの美女では無かったことも…。
心の底から驚いたときである。
「おかあたまー!」
トテトテと走りよる金の髪に紫の目の女の子が侍女の手をすり抜けてやってきた。
「アシェリー、どうしたの?」
そっと抱き上げ微笑むと紫の花を手に持っていた。
「おかあたまにアシェがとぅんだ おはな、あげゆの。アシェとおとうたまの おめめの いろなの」
そう言うとハイッと押しつけるように渡してまた遊びに行ってしまった。
「アシェリーちゃん、もう2歳だっけ?早いわぁ」
その背中を笑顔で見送りつつフュリーが溢す。
「もうすぐ3歳かな。本当に早いわぁ…」
それを聞き噛みしめるようにアネリアは返した。
リドーは自分本位で、女性の容姿に価値を置くような人というイメージだった。
「時の流れで変わっていったのかしらね」
アネリアはそう小さく呟き微笑んだ。
一人はハリス・レーモンドの妻、アネリア。
そしてもう一人は騎士爵夫人から最近伯爵夫人となったフュリー。
爵位は逆転したがお互い公式の場以外では砕けた口調のまま付き合いが続いている。
「ナドリックが伯爵位を賜ってホッとしたわ」
そう頬に手を当て大袈裟にホッとしたとアピールしつつお茶を口に含むフュリー。
「フュリーのお父様の侯爵様がよくご結婚をお許しになったって今でも思うもの。本当に良かったわよね」
そういうとフュリーの少し膨らんだ腹部に視線をやった。
「騎士爵だと引退後平民になっちゃうからこの子に余計なプレッシャー与えちゃうかもしれないものね」
フュリーはいたずらっぽくそう言いつつ愛しそうにお腹を撫でる。
もう七ヶ月だそうだ。
「それで、聞いた?コナル・リドー様のこと」
随分と懐かしい名前である。
「知らないわ」
アネリアは素直に答えた。
興味が無いとかでなく、卒業後に公爵夫人となるべく教育が始まり忙しくしてる間に次男であったリドーが独立して準貴族となったので接点が無くなっていたのだ。
「ついにね、子爵位を賜ったらしいわ。それで今度入籍をするみたい!」
楽しそうにリドーの近況を報告してくる。
「そうなの?というか、なんでフュリー、そんなに詳しいの?」
学生時代、フュリーは婚約を破棄したり、それを無かったことにしようとしたりするリドーに憤慨していた。
それがどこで仲良くなったのか不思議で仕方ない。
「この腕輪、可愛くなぁい?」
そう差し出された腕には繊細なデザインをしたワイヤーワークの腕輪がはめられている。
「え?えぇ。素材は銀かしら?丁寧な作りでデザインが何より可愛らしいわね」
大きな宝石が付いているわけでないので値段は手頃かもしれないがとても可愛らしく、どこで購入したのか後ほど教えて貰おうと思っていたものである。
「これをね、売っている商会がコナル・リドー様の…今はシャゼル・リドー氏の商会なの。私、お得意様なのよ」
まるでイタズラが成功した子供のような笑顔でそう言うではないか。
「彼にこんなセンスがあったなんて意外だわ!」
付き合っていた頃、そんなにセンスを感じたことは無い。
どちらかというといつもシンプルなものを選んでいたイメージである。
「このセンスは今度奥様になる女性のものらしいわ。シャゼル氏は女心を掴む商談がとてもお上手なの。元々平民の富裕層相手に商売してたみたいだけどウチは騎士爵だったから商談の話が来てね、会ったらコナル・リドー様でビックリよ。お化粧品も扱ってるんだけど入れ物が可愛かったり、肌のくすみをカバーする物が特に質が良かったりで素敵なの。で、見る間に商会が大きくなって子爵位を賜って、そのセンスの良い女性と結婚することになったんですって!」
「まさかその相手って…」
「バイオリンの名手でもあるらしいわ」
コナル・リドーと縁のあるバイオリンの名手など一人しかいない。
「あのリドー様が本当に!?」
あの当時アネリアを選んだ理由が、そして婚約破棄した理由が容姿によるものだと今のアネリアは知っている。
そしてレミア・レシャットがリドー好みの美女では無かったことも…。
心の底から驚いたときである。
「おかあたまー!」
トテトテと走りよる金の髪に紫の目の女の子が侍女の手をすり抜けてやってきた。
「アシェリー、どうしたの?」
そっと抱き上げ微笑むと紫の花を手に持っていた。
「おかあたまにアシェがとぅんだ おはな、あげゆの。アシェとおとうたまの おめめの いろなの」
そう言うとハイッと押しつけるように渡してまた遊びに行ってしまった。
「アシェリーちゃん、もう2歳だっけ?早いわぁ」
その背中を笑顔で見送りつつフュリーが溢す。
「もうすぐ3歳かな。本当に早いわぁ…」
それを聞き噛みしめるようにアネリアは返した。
リドーは自分本位で、女性の容姿に価値を置くような人というイメージだった。
「時の流れで変わっていったのかしらね」
アネリアはそう小さく呟き微笑んだ。
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