美形×平凡 短編集(ヤンデレ・執着攻め多め)

綺沙きさき(きさきさき)

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『ひねくれ人気ミステリ作家×苦労性家政夫シリーズ』

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「そうだな。まぁ、俺の厚意を無碍にしたことは許し難いが、新しいエプロンはなかなか趣味がいいじゃないか」
 珍しく穂積さんが褒めたので驚いて振り仰いだ。
「何だ? その驚いた顔は」
 怪訝そうに穂積さんが首を傾げる。
「あ、い、いえ。まさか褒めて貰えるなんて思っていなくて……」
「褒めてないさ。ただ思っていたよりはマシという意味だよ。どうせ君が買うものなど、君のセンスと経済力を考えれば、いかにも大量生産といった安物が関の山だろうからね」
「……あ、そーですか」
 一言どころか、二言三言も余計な物言いに、何か言い返す気力すら奪われた。
 しかし悔しいが、穂積さんの言う通りだった。そのエプロンは、上質な濃紺の和生地で、深紅の糸で細かな模様が描かれている。
 俺の寂しい懐ではこんな上等な生地のエプロンは買えないし、貧相なセンスではこんな洒落たものは選ばないだろう。
 これは俺を指名してくれているお客さんの一人、櫟原(いちはら)さんから貰ったものだ。櫟原さんは五十代の男性だが、見た目はもっと若く見える。やり手の実業家らしいが、全く偉ぶったところがなく、俺なんかにも気さくに接してくれる優しい人だ。
 全く、どこぞの人気ミステリー作家さんにも爪の垢でも煎じて……いやここまで性格がひん曲がっていては煎じては効果がないだろう、そのまま口に突っ込んでやりたいくらいだ。
「君らしくないセンスだが、どこで買ったんだい?」
「あ、これは買ってないんです。貰ったんです」
「貰った?」
 穂積さんの眉がぴくりと動いた。俺は内心げっ、となった。眉が神経質な動きを見せるのは、彼の不機嫌になる前兆だからだ。
「一体誰に貰ったんだ?」
「え、あ、えっと、俺を指名してくれてる方が、旅行に行った時のお土産で……」
 妙な威圧感に怯みながら答えると、穂積さんは馬鹿にするように鼻の先で笑った。
「全く貧乏人というものは、貰えれば何でも尻尾振って貰うんだな」
「ご厚意で頂いてるのに突っぱねるわけにはいかないでしょ」
 しかも役に立つものなのだから、貰わない手はない。
「……俺があげたものは着てこないくせに」
 ぼそりと呟くと穂積さんはふい、とそっぽ向いた。
「え?」
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