勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
27 / 266
第1章 異世界でも俺はこき使われる

26

しおりを挟む

****

「どーして今日はドゥーガルドが荷物を持ってるの~?」

チェルノが不思議そうに首を傾げて、大きな荷物を背負ったドゥーガルドと手ぶらの俺を交互に見る。

まぁ、当然の疑問だろう。
ただ事実を言うのははばかられる。

「……実はソウシが昨日俺の」
「マ、マッサージ! 昨日疲れていたからマッサージしてやったんだよ! そしたらお礼に今日は荷物持ってくれるってさ!」

恥もなく正直に昨日のことを話そうとするドゥーガルドの言葉を慌てて遮って嘘をついた。

「ふぅん、そうなんだ~。よかったね~」

特に俺の言葉を疑うことなく納得したチェルノに、ほっと胸をなで下ろしていると、

「じゃあ今日はお前は俺を背負え」
「ぐぇ!」

突然、背後からアーロンに飛びつかれ足のバランスを崩したが、ドゥーガルドがさっと手を出してくれたおかげで何とか倒れずにすんだ。

「なにすんだ!」

振り返って怒鳴るが、アーロンは悪びれる様子もなく鬱陶しそうに顔をしかめるだけだった。

「うるせぇ。俺は昨日の媚薬のせいでまだ体がだりぃんだよ。それでも休まず先を急ごうとしてやってんだ。有り難く思え」
「ここで一生休んでろ!」

なぜこうも上から目線になれるんだ!

確かに息が少し荒く、体も熱っぽいし、いつもの覇気も全くない。
ただ、不遜な態度だけは一ミリも変わらず、むしろ体調不良を理由に増長している節すらある。
労る気持ちが微塵もわかないのもそのせいだ。

さっさと降りろ! と背中のアーロンに言い放とうと口を開きかけた時、不意に背中が軽くなった。
ただ、それはアーロンが自主的に俺の背中から降りたわけではなく、ドゥーガルドがアーロンを無理矢理引き剥がしたからだ。

「なにしやがる!」

地に尻餅をついたアーロンが、ドゥーガルドを睨みつける。

「……ソウシにくっつくな。いやがっている」

ドゥーガルドは冷たい目でアーロンを睨み付け、庇うようにして俺を引き寄せた。

「はぁ? なんでこいつが嫌がってるからって俺が気をつかわねぇといけねぇんだよ。いいか? よく聞け! いつでもどこでも俺のしたいことが最重要事項だ! こいつの意志なんか二の次、三の次、いや百の次くらいでいいんだよ!」
「どんだけ俺の優先順位低いんだよ!」

逆に間の二番から九十九番の内容をききたいわ!

自分ファースト野郎を睨みつけていると、

「……大丈夫だ。俺がソウシのことは守る」

そう言ってぎゅっと俺の肩を抱き寄せてドゥーガルドは歩き始めた。

お前は王子か!

そう突っ込んでやりたかったが、真顔で、あるいははにかんで頷きそうな気がしてならなかったので、俺はぐっと堪えた。
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!

義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。ユリウスに一目で恋に落ちたマリナは彼の幸せを願い、ゲームとは全く違う行動をとることにした。するとマリナが思っていたのとは違う展開になってしまった。

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...