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第2章 異世界でももふもふは正義!?
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「グルルル……ッ」
相変わらずモンスターは上体を低くして、低い剣呑な声で唸り続けていた。
本当はすぐにでも笛を鳴らしたかったが、少しでも動けば飛び掛かりかねない、そんな一触即発な空気のせいで俺は身動き一つとれずにいた。
というか、全然魔除け効いてねぇじゃねぇか!
鼻先にふわりとかすめたポプリの香りに、アーロンの言葉を思い出して八つ当たり交じりに心の中で怒鳴り散らした。
しかし考えてみればあの守銭奴が俺のために、効力のある本物を貸してくれるはずがない。
店でもらったオマケ程度のものなのかもしれない。
アーロンはともかく、ドゥーガルドがくれた笛は恐らく、いや絶対本物だろう。
何とかこの笛を吹いて応援を呼ばなければならないのだが、モンスターは親の仇でも討ちにきたのかとでも聞きたくなるほどに鋭い眼光を俺に向けたままだ。
笛を吹くどころか、笛を手に持った瞬間に飛び掛かってくることは容易に想像できる。
どうにか隙を作れないものか……。
野生の熊に出遭ってしまった時の対処として目を逸らしてはいけない、というのが果たして異世界のモンスターにも通じるのかは分からないが、俺はびびりつつもとりあえずモンスターの目をじっと見詰めながら、隙を作る方法を考えた。
確か前に観たテレビ番組で、熊の意識を人間から逸らすため、物を明後日の方向に投げるといいと言っていたような気がする。
いや、それはクイズ番組でハズレの選択肢だったか……。
あー! なんでもっとちゃんとテレビ観てなかったんだよ! 過去の俺のバカ!
中途半端な知識しか持っていない自分に思わず頭を掻き毟りたくなった。
でもどんなに曖昧な知識でもないよりはマシだ。
このままでは何かの拍子にモンスターが襲ってくるかもしれない。向こうが先に動けば完全に俺の出遅れで為す術もない。
それならこっちから何か仕掛けなければ……!
たとえ、それが一か八かの作戦でも――。
俺は震える手で、ぎゅっと水袋を握り締めた。
そして、視線はモンスターに据えたまま水袋をなるべく遠くへ放り投げた。
思惑通り、モンスターの注意はそっちに逸れた。
今まで飛び掛かる寸前かのように低くしていた上体を起こして、草むらへ落ちていく水袋を目で追っていた。
笛を吹くには充分すぎるほどの隙だった。
ピーっと、甲高い音が笛の先から辺りに響き渡った。
モンスターが嫌う音と言っていただけあってその効果はてきめんで、鼓膜に突き刺さる音を振り払おうとするかのように、地面に耳をすりつけていた。
今だ……!
俺はモンスターに背を向けて走り出した。
そして比較的登りやすそうな木を見つけると、その木の枝を掴んで、足で幹を蹴りながら登り始めた。
相変わらずモンスターは上体を低くして、低い剣呑な声で唸り続けていた。
本当はすぐにでも笛を鳴らしたかったが、少しでも動けば飛び掛かりかねない、そんな一触即発な空気のせいで俺は身動き一つとれずにいた。
というか、全然魔除け効いてねぇじゃねぇか!
鼻先にふわりとかすめたポプリの香りに、アーロンの言葉を思い出して八つ当たり交じりに心の中で怒鳴り散らした。
しかし考えてみればあの守銭奴が俺のために、効力のある本物を貸してくれるはずがない。
店でもらったオマケ程度のものなのかもしれない。
アーロンはともかく、ドゥーガルドがくれた笛は恐らく、いや絶対本物だろう。
何とかこの笛を吹いて応援を呼ばなければならないのだが、モンスターは親の仇でも討ちにきたのかとでも聞きたくなるほどに鋭い眼光を俺に向けたままだ。
笛を吹くどころか、笛を手に持った瞬間に飛び掛かってくることは容易に想像できる。
どうにか隙を作れないものか……。
野生の熊に出遭ってしまった時の対処として目を逸らしてはいけない、というのが果たして異世界のモンスターにも通じるのかは分からないが、俺はびびりつつもとりあえずモンスターの目をじっと見詰めながら、隙を作る方法を考えた。
確か前に観たテレビ番組で、熊の意識を人間から逸らすため、物を明後日の方向に投げるといいと言っていたような気がする。
いや、それはクイズ番組でハズレの選択肢だったか……。
あー! なんでもっとちゃんとテレビ観てなかったんだよ! 過去の俺のバカ!
中途半端な知識しか持っていない自分に思わず頭を掻き毟りたくなった。
でもどんなに曖昧な知識でもないよりはマシだ。
このままでは何かの拍子にモンスターが襲ってくるかもしれない。向こうが先に動けば完全に俺の出遅れで為す術もない。
それならこっちから何か仕掛けなければ……!
たとえ、それが一か八かの作戦でも――。
俺は震える手で、ぎゅっと水袋を握り締めた。
そして、視線はモンスターに据えたまま水袋をなるべく遠くへ放り投げた。
思惑通り、モンスターの注意はそっちに逸れた。
今まで飛び掛かる寸前かのように低くしていた上体を起こして、草むらへ落ちていく水袋を目で追っていた。
笛を吹くには充分すぎるほどの隙だった。
ピーっと、甲高い音が笛の先から辺りに響き渡った。
モンスターが嫌う音と言っていただけあってその効果はてきめんで、鼓膜に突き刺さる音を振り払おうとするかのように、地面に耳をすりつけていた。
今だ……!
俺はモンスターに背を向けて走り出した。
そして比較的登りやすそうな木を見つけると、その木の枝を掴んで、足で幹を蹴りながら登り始めた。
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