勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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 王様も何と言葉を続けていいか迷っているようだった。
 誰もが重く口を閉ざしていれば、さらにみんな閉じた口を固くするので沈黙は長引いて、負のスパイラルにはまる。
 こうした厄介な沈黙を打ち破るのは、まるで神の籠でも受けたかのような光属性か、空気の読めない馬鹿だと相場が決まっている。
 この場にいたのは後者だった。

「──ということで、王様、ここで提案なんですけどよぉ」

 跪いていたアーロンがゆっくりと立ち上がり、慇懃無礼な態度で言ってにやりと唇の端を持ち上げた。

「魔王討伐に続き、今度は邪神討伐を引き受けても構いませんよぉ。──ただし、報酬は五千万ピーロだ」
「なっ……!」

 守銭奴の提案に、王様は絶句し、周囲はどよめいた。
 金額一個人に与える報酬としては行き過ぎている金額はもちろん、金銭を要求すること自体に驚いているようだ。
 そりゃあそうだろう。こんな勇者、あらゆる異世界ものを読んできた俺でも見たことねぇもん……。

「ゆ、勇者よ。もちろん、邪神を倒した暁にはそれ相応の褒美をやるつもりだ。し、しかし、勇者たるもの金で動くのはどうかと思うぞ……」

 性格はアレとはいえ、魔王を倒すほどの力のある勇者に機嫌を損ねては困るのだろう。王様が怒りを堪えるような引きつった笑みでアーロンに言い諭す。
 だが、もちろん馬の耳に念仏、アーロンの耳に正論だ。そんな常識的な言葉が奴の心に届くはずがなかった。

「何言ってんですかよ、人間みんな金で動くのは当たり前じゃねぇですか。そして危険なことほどその金額は高くなるのは、当然でしょ」
「た、確かにそうだが……」

 シンプルなこの世の真理を突きつけられ、王様は言葉を詰まらせた。
 そこに畳み掛けるようにアーロンが言葉を続ける。

「何躊躇ってるんですか? 民を守るのが王様の仕事でしょうよ? アンタの部屋の無駄に豪華な家具でも売り払えば五千万ピーロくらい簡単に準備できますよねェ?」
「き、貴様、無礼だぞ!」

 耐え兼ねたように玉座の横に控えている男が声を荒げた。

「はァ? 無礼? だからなに?」

 男の言葉にアーロンが鼻で笑う。

「無礼で当然じゃん。俺は事実を言ってるだけで、大概において事実に礼儀なんてものはねぇ。事実はいつだってシンプルだ。礼儀なんてしゃらくせぇもんは、アンタらみたいに権力者に媚びへつらう奴らが事実にごちゃごちゃ飾り付けてるだけのもんだろ」
「き、貴様……っ!」

 男が顔を赤くして、剣を構えた。
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