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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「馬鹿者! ダイナは王室育ちのお嬢様なんだぞ! そんな野生じみた動きはできないっ」
「いや、そのお嬢様、さっきすごいかろやかに木に登りましたけど……」
「登ると降りるのでは違う! とにかく、安全第一で頼む」
「はい、分かりました……」
内心、面倒だと思いながら足を降ろす。
さて、どうしたもんかな……。
飼い主の呼びかけでもだめ、驚かせるのもだめ、猫じゃらしのようなものも見当たらない……となると、猫博士でもない俺にはお手上げだった。
これはもうダイナが降りてくるのを気長に待つしかないか。
「ソウシ、何かいい方法はあるか? あ! 魔法を使って安全に降ろすのはどうだ?」
キラキラと期待のこもった目で見つめられ、ドキッと心臓が跳ね上がった。
「あ、い、いや~……、今、ちょっと調子が悪くて、下手に使うと暴走してダイナにケガを負わせちゃうかもです……」
「そうか……、それは危険だな。やめておこう」
明らかに落胆した様子に、良心にチクチクと痛む。
ごめん! 本当にごめん……っ!
こうなると申し訳ない気持ちで、さすがに気長に待とうなんてことは言い出せなかった。
なにかいい方法はないものか……。
頭をひねってなんとかひねり出そうとするが、なかなか出てこない。
猫を飼ったこともないし、周りで飼っている奴もいなかったから当然と言えば当然かもしれないが……。
野良猫とか見かけてもこっちから近づくこともなかたしなぁ。
あ、でも昔、同じクラスの梨花ちゃんと一緒に触ったっけ……。
小学二年の時に同じクラスだった梨花ちゃんとの甘酸っぱい思い出だ。
猫好きな彼女が猫を触っている時によく猫好きを演じて隣に座ったものだ。
まぁ、その梨花ちゃんは慶介が好きでひっそり失恋したんだけどな、ははは……。
甘酸っぱい思い出が苦い涙の味に染まった瞬間、俺はハッとあることを思い出した。
そういえば猫を呼び寄せる時、確か梨花ちゃん……――。
百パーセント有効かは分からないが、少なくとも梨花ちゃんの場合は百発百中だった。
よし……! 少し恥ずかしいけど、やってみるか。
俺は再度木の下から上を仰ぎ見た。そして、
「にゃ、にゃあ……」
猫の鳴き真似をしてダイナに呼びかけると、エグバードが目を見開いた。
く……っ、そんなに驚いてくれるな。なんかすげぇ恥ずかしいだろ!
「ソウシ、すごいな。動物言語を習得しているのか?」
「へ? あ、ああ、まぁそんなところです……」
そんな大層なものではないが、エグバードが感心しているようだったのでとりあえずそういうことにした。
これで少しは白銀の翼っぽいところを見せられたかもしれない。
あとはダイナが降りてくれば完璧なんだけど……。
ちらり、とダイナの方を窺い見る。
少し身を乗り出してじっとこっちを凝視しているが、動く気配はない。
う……、やっぱり梨花ちゃんみたいに可愛い声じゃないとだめなのか……!
しかしさっきまでそっぽ向いていたのに今はこっちを見ているのだ。
あながち全く脈なしというわけでもなさそうだ。
俺は鳴き真似を続けた。
「にゃあにゃあ、にゃー、にゃにゃー、みゃあ」
いろいろと変化をつけてみるが、やっぱりダイナはこっちを見ているものの動かない。
というか、このノーリアクション、なかなかきつい。
滑った芸人の気持ちが今、痛いほど分かった。
やっぱりだめか……。
「にゃー……」
溜め息と共に半ば投げやりの鳴き真似を吐き出す。
すると、次の瞬間ダイナが木の枝から突如飛び降りた。
「え? え? えぇ!?」
俺は慌てて手を広げてキャッチする姿勢を見せたが、ダイナは俺の頭を蹴って方向転換してそのままエグバードの胸に飛び込んだ。
「ダ、ダイナ……っ!」
エグバードは感極まった表情でぎゅっとダイナを抱きしめた。
その腕の中でダイナは胸に顔をすりつけて甘えている。さっきまでツンとしていたのが嘘のようだ。
ひとしきりダイナとの感動の再会に浸ると、エグバードは顔を上げて俺の方に向き直った。
「いや、そのお嬢様、さっきすごいかろやかに木に登りましたけど……」
「登ると降りるのでは違う! とにかく、安全第一で頼む」
「はい、分かりました……」
内心、面倒だと思いながら足を降ろす。
さて、どうしたもんかな……。
飼い主の呼びかけでもだめ、驚かせるのもだめ、猫じゃらしのようなものも見当たらない……となると、猫博士でもない俺にはお手上げだった。
これはもうダイナが降りてくるのを気長に待つしかないか。
「ソウシ、何かいい方法はあるか? あ! 魔法を使って安全に降ろすのはどうだ?」
キラキラと期待のこもった目で見つめられ、ドキッと心臓が跳ね上がった。
「あ、い、いや~……、今、ちょっと調子が悪くて、下手に使うと暴走してダイナにケガを負わせちゃうかもです……」
「そうか……、それは危険だな。やめておこう」
明らかに落胆した様子に、良心にチクチクと痛む。
ごめん! 本当にごめん……っ!
こうなると申し訳ない気持ちで、さすがに気長に待とうなんてことは言い出せなかった。
なにかいい方法はないものか……。
頭をひねってなんとかひねり出そうとするが、なかなか出てこない。
猫を飼ったこともないし、周りで飼っている奴もいなかったから当然と言えば当然かもしれないが……。
野良猫とか見かけてもこっちから近づくこともなかたしなぁ。
あ、でも昔、同じクラスの梨花ちゃんと一緒に触ったっけ……。
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猫好きな彼女が猫を触っている時によく猫好きを演じて隣に座ったものだ。
まぁ、その梨花ちゃんは慶介が好きでひっそり失恋したんだけどな、ははは……。
甘酸っぱい思い出が苦い涙の味に染まった瞬間、俺はハッとあることを思い出した。
そういえば猫を呼び寄せる時、確か梨花ちゃん……――。
百パーセント有効かは分からないが、少なくとも梨花ちゃんの場合は百発百中だった。
よし……! 少し恥ずかしいけど、やってみるか。
俺は再度木の下から上を仰ぎ見た。そして、
「にゃ、にゃあ……」
猫の鳴き真似をしてダイナに呼びかけると、エグバードが目を見開いた。
く……っ、そんなに驚いてくれるな。なんかすげぇ恥ずかしいだろ!
「ソウシ、すごいな。動物言語を習得しているのか?」
「へ? あ、ああ、まぁそんなところです……」
そんな大層なものではないが、エグバードが感心しているようだったのでとりあえずそういうことにした。
これで少しは白銀の翼っぽいところを見せられたかもしれない。
あとはダイナが降りてくれば完璧なんだけど……。
ちらり、とダイナの方を窺い見る。
少し身を乗り出してじっとこっちを凝視しているが、動く気配はない。
う……、やっぱり梨花ちゃんみたいに可愛い声じゃないとだめなのか……!
しかしさっきまでそっぽ向いていたのに今はこっちを見ているのだ。
あながち全く脈なしというわけでもなさそうだ。
俺は鳴き真似を続けた。
「にゃあにゃあ、にゃー、にゃにゃー、みゃあ」
いろいろと変化をつけてみるが、やっぱりダイナはこっちを見ているものの動かない。
というか、このノーリアクション、なかなかきつい。
滑った芸人の気持ちが今、痛いほど分かった。
やっぱりだめか……。
「にゃー……」
溜め息と共に半ば投げやりの鳴き真似を吐き出す。
すると、次の瞬間ダイナが木の枝から突如飛び降りた。
「え? え? えぇ!?」
俺は慌てて手を広げてキャッチする姿勢を見せたが、ダイナは俺の頭を蹴って方向転換してそのままエグバードの胸に飛び込んだ。
「ダ、ダイナ……っ!」
エグバードは感極まった表情でぎゅっとダイナを抱きしめた。
その腕の中でダイナは胸に顔をすりつけて甘えている。さっきまでツンとしていたのが嘘のようだ。
ひとしきりダイナとの感動の再会に浸ると、エグバードは顔を上げて俺の方に向き直った。
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