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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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その転んだ拍子にお金の入った小袋が俺の手から離れた。
慌てて拾おうとしたが、それよりも早く小柄な少年がそれをひょい、と拾い上げた。
「あ、どうもありが――」
拾ってくれたお礼を口にしたと同時に、なんとその少年は小袋を持ったまま猛ダッシュで走り出した。
「……は? はぁぁぁぁ!?」
あまりにも思いがけない突然のことで唖然としたが、状況を理解した俺はすぐさま立ち上がって少年の後を追った。
「こら待て! 返せ! 俺の全財産!」
怒鳴りながら追いかけるが、少年は少しもこちらを振り向かない。
周りには人が多くいるというのに、厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだとばかりに眉を顰めて人混みの中を突っ走る少年と俺から距離をとるばかりで、助けようとしてくれる人は皆無だった。
く、くそ……っ! ふざけんな! なんで俺ばっかりこんな目にあわなきゃいけねぇんだよ!
半泣き状態で追いかけていると、少年が突如右に曲がって狭い路地へと入っていった。
薄暗い路地は一瞬俺の足に躊躇いを生じさせたが、相手は俺より小柄な子どもだ。
小袋を取り返すために取っ組み合いになっても、体格差から俺が有利なのは火を見るより明らかだ。
それに邪魔な人混みがない分、かえって路地の方が早く追いつけそうだ。
少年に追いついて小袋を取り返すビジョンが明確に浮かんだ俺はさらにスピードを上げて少年の後を追って路地へと入っていった。
路地は思った以上に入り組んでいて、その上細い階段まで現れて必然的に追う速度は下がる。
だが、それは相手も同じこと。徐々に距離は縮まっていった。
「くそっ、もう少し……っ!」
手を伸ばして少しでも少年の体に触れようとするが空振り。指先すらかすらなかった。
走りながら無理に手を伸ばしたのがいけなかったのか、少しバランスをくずした俺は石畳に突っかかりそのまま前のめりに盛大に転んでしまった。本日二回目の転倒だ。
くそ! なんでここで転ぶんだよ……ッ!
自分の不注意と不運に大きく舌を打った。
顔を上げると、前を行く少年の姿が消えた。
一瞬、何かの魔法かと驚いたが何てことはない。
道の先が下りの階段だっただけだ。その証拠に、タタタタタ……と階段を駆け下りる音が響いている。
こうなったら階段から飛び降りて少年を下敷きにしてでも確保してやる……!
幸いにもさっき駆け上った階段はそんなに高くはなかった。そうなれば必然的に下りの階段もそんなに高さはないはずだ。
少し危ない乱暴な作戦だが、ことの元凶である少年と自分の連続する不運への怒りで頭に血が上っていた俺は鼻息荒く立ち上がって走り出した。
そして道が切れたところで、俺はタンッ! と勢いよく地面を蹴った。
「俺の金、返せぇぇぇぇ!」
叫びながら飛び降りてくる俺に、階段を降りきった少年は目を見開いてこちらを見上げていた。
――だが、そこにいたのは少年だけではなかった。俺より体格がよくガラの悪い男が二人、少年と同様に目を丸くして立っていた。
「……は? えぇぇぇ!?」
慌てて拾おうとしたが、それよりも早く小柄な少年がそれをひょい、と拾い上げた。
「あ、どうもありが――」
拾ってくれたお礼を口にしたと同時に、なんとその少年は小袋を持ったまま猛ダッシュで走り出した。
「……は? はぁぁぁぁ!?」
あまりにも思いがけない突然のことで唖然としたが、状況を理解した俺はすぐさま立ち上がって少年の後を追った。
「こら待て! 返せ! 俺の全財産!」
怒鳴りながら追いかけるが、少年は少しもこちらを振り向かない。
周りには人が多くいるというのに、厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだとばかりに眉を顰めて人混みの中を突っ走る少年と俺から距離をとるばかりで、助けようとしてくれる人は皆無だった。
く、くそ……っ! ふざけんな! なんで俺ばっかりこんな目にあわなきゃいけねぇんだよ!
半泣き状態で追いかけていると、少年が突如右に曲がって狭い路地へと入っていった。
薄暗い路地は一瞬俺の足に躊躇いを生じさせたが、相手は俺より小柄な子どもだ。
小袋を取り返すために取っ組み合いになっても、体格差から俺が有利なのは火を見るより明らかだ。
それに邪魔な人混みがない分、かえって路地の方が早く追いつけそうだ。
少年に追いついて小袋を取り返すビジョンが明確に浮かんだ俺はさらにスピードを上げて少年の後を追って路地へと入っていった。
路地は思った以上に入り組んでいて、その上細い階段まで現れて必然的に追う速度は下がる。
だが、それは相手も同じこと。徐々に距離は縮まっていった。
「くそっ、もう少し……っ!」
手を伸ばして少しでも少年の体に触れようとするが空振り。指先すらかすらなかった。
走りながら無理に手を伸ばしたのがいけなかったのか、少しバランスをくずした俺は石畳に突っかかりそのまま前のめりに盛大に転んでしまった。本日二回目の転倒だ。
くそ! なんでここで転ぶんだよ……ッ!
自分の不注意と不運に大きく舌を打った。
顔を上げると、前を行く少年の姿が消えた。
一瞬、何かの魔法かと驚いたが何てことはない。
道の先が下りの階段だっただけだ。その証拠に、タタタタタ……と階段を駆け下りる音が響いている。
こうなったら階段から飛び降りて少年を下敷きにしてでも確保してやる……!
幸いにもさっき駆け上った階段はそんなに高くはなかった。そうなれば必然的に下りの階段もそんなに高さはないはずだ。
少し危ない乱暴な作戦だが、ことの元凶である少年と自分の連続する不運への怒りで頭に血が上っていた俺は鼻息荒く立ち上がって走り出した。
そして道が切れたところで、俺はタンッ! と勢いよく地面を蹴った。
「俺の金、返せぇぇぇぇ!」
叫びながら飛び降りてくる俺に、階段を降りきった少年は目を見開いてこちらを見上げていた。
――だが、そこにいたのは少年だけではなかった。俺より体格がよくガラの悪い男が二人、少年と同様に目を丸くして立っていた。
「……は? えぇぇぇ!?」
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