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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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中性的な声や顔立ち、笑みとは無縁の鋭い無表情、細い体を包む燕尾服、一つに束ねた腰近くまである長い黒髪……、それらのせいで性別の判断に一瞬迷うが、それでも彼女が女であることを確信したのは――。
「その小袋がそのお方のものであることは、私が証言する。ちなみに貴様らの弟がそのお方から小袋を盗んだこともな」
コツコツ……と高い靴音を響かせ、美女が階段を降りてくる。
その豊満な胸を揺らしながら……。
で、でかい……!
テレビの向こうや二次元でしか見たことのないレベルの巨乳に、俺も男たちも思わず目を奪われる。
いや、目どころか心まで奪われていたといってもいいだろう。
その証拠に、美女が腰に携えた鞘から剣を抜き出し、俺の手を掴む男にその切っ先を向けるのを許した。
「貴様ら、人と話す時はちゃんと顔を見て話せと教わらなかったのか。それとも顔と乳の区別がつかないほどに愚昧なのか」
「ぐ……っ」
鋭い剣先で顎をクイ、と上に向かせる美女に、男は今まで余裕に満ちたなめらかさでべらべらと口を動かしていたのから一転して、言葉を詰まらせた。
彼女は俺の証人となるとまで言ってくれたので味方で間違いないのだろうが、いかんせん男の悲しい性ともいえる下品な反射ででかい胸を凝視してしまったので、俺の心境としては剣先を向けられている男たちに近い。
「……五秒時間をくれてやる。私が数え終わる前にその袋を置いてこの場から去れ」
冷酷さすら感じられる鋭い声でそう言うと、彼女はカウントダウンを始めた。
数からすれば自分たちが有利であるはずだが、彼女の纏う常人とは明らかに違う空気に男たちは瞬時に五秒先の惨状を予感したのだろう。
男たちは俺の小袋を置いて脱兎のごとく逃げ出した。
その背を見送りながら、美女はゆっくりと剣を鞘に戻した。
そして男たちが放り捨てるように置いて行った小袋を拾うと俺の方に差し出した。
「どうぞ」
「あ、ありがとう、ございます……」
俺は戸惑いつつも小袋を受け取った。
窮地を脱したことにホッとすべきところなのだろうが、目の前に立つ美女の思惑が分からない限り安心しきるにはまだ早い。
「あ、あの、本当に助かりました……っ。なんとお礼を言っていいやら。本当に、ありがとうございます……っ!」
似たような感謝の言葉を並べて頭を下げながら相手の動向を伺うが、彼女は黙ったままこちらを見つめているだけだった。
表情は愛想の欠片もない無表情だが、今までの一連の言動から害意があるように思えなかったし、騙したり脅したりしてこの金を横取りしようとするような風にも見えない。
それどころか「このお方」など、俺に対して敬意を払った言動すら見られた。
だからこそ不気味で怪しく、窮地を助けてもらったことを諸手を挙げて喜べない。
覚えのない敬意なんて胡散臭い。裏に何か思惑あるに違いないと思わせる。
なのに彼女は黙ったままでその思惑を切り出そうとしない。
何度も繰り返すお礼の言葉がいい加減白々しい時間稼ぎの風になったところで、俺は顔を上げた。
「いやぁ、でもたまたま通りすがっただけだろうに助けてくださるなんて本当にできた方ですね」
「たまたま?」
真意を探るように口にしたお世辞に、美女が反応した。
そしてずっとこれまで無表情を貫いていたその唇をくすりと綻ばせた。
しかしそれはどこか不穏な影を纏っていた。
「たまたまではないですよ。――私は貴方が宿を出た時からずっと後をつけていました」
「え?」
美女からの堂々としたストーカー発言に俺は目を剥いた。
「その小袋がそのお方のものであることは、私が証言する。ちなみに貴様らの弟がそのお方から小袋を盗んだこともな」
コツコツ……と高い靴音を響かせ、美女が階段を降りてくる。
その豊満な胸を揺らしながら……。
で、でかい……!
テレビの向こうや二次元でしか見たことのないレベルの巨乳に、俺も男たちも思わず目を奪われる。
いや、目どころか心まで奪われていたといってもいいだろう。
その証拠に、美女が腰に携えた鞘から剣を抜き出し、俺の手を掴む男にその切っ先を向けるのを許した。
「貴様ら、人と話す時はちゃんと顔を見て話せと教わらなかったのか。それとも顔と乳の区別がつかないほどに愚昧なのか」
「ぐ……っ」
鋭い剣先で顎をクイ、と上に向かせる美女に、男は今まで余裕に満ちたなめらかさでべらべらと口を動かしていたのから一転して、言葉を詰まらせた。
彼女は俺の証人となるとまで言ってくれたので味方で間違いないのだろうが、いかんせん男の悲しい性ともいえる下品な反射ででかい胸を凝視してしまったので、俺の心境としては剣先を向けられている男たちに近い。
「……五秒時間をくれてやる。私が数え終わる前にその袋を置いてこの場から去れ」
冷酷さすら感じられる鋭い声でそう言うと、彼女はカウントダウンを始めた。
数からすれば自分たちが有利であるはずだが、彼女の纏う常人とは明らかに違う空気に男たちは瞬時に五秒先の惨状を予感したのだろう。
男たちは俺の小袋を置いて脱兎のごとく逃げ出した。
その背を見送りながら、美女はゆっくりと剣を鞘に戻した。
そして男たちが放り捨てるように置いて行った小袋を拾うと俺の方に差し出した。
「どうぞ」
「あ、ありがとう、ございます……」
俺は戸惑いつつも小袋を受け取った。
窮地を脱したことにホッとすべきところなのだろうが、目の前に立つ美女の思惑が分からない限り安心しきるにはまだ早い。
「あ、あの、本当に助かりました……っ。なんとお礼を言っていいやら。本当に、ありがとうございます……っ!」
似たような感謝の言葉を並べて頭を下げながら相手の動向を伺うが、彼女は黙ったままこちらを見つめているだけだった。
表情は愛想の欠片もない無表情だが、今までの一連の言動から害意があるように思えなかったし、騙したり脅したりしてこの金を横取りしようとするような風にも見えない。
それどころか「このお方」など、俺に対して敬意を払った言動すら見られた。
だからこそ不気味で怪しく、窮地を助けてもらったことを諸手を挙げて喜べない。
覚えのない敬意なんて胡散臭い。裏に何か思惑あるに違いないと思わせる。
なのに彼女は黙ったままでその思惑を切り出そうとしない。
何度も繰り返すお礼の言葉がいい加減白々しい時間稼ぎの風になったところで、俺は顔を上げた。
「いやぁ、でもたまたま通りすがっただけだろうに助けてくださるなんて本当にできた方ですね」
「たまたま?」
真意を探るように口にしたお世辞に、美女が反応した。
そしてずっとこれまで無表情を貫いていたその唇をくすりと綻ばせた。
しかしそれはどこか不穏な影を纏っていた。
「たまたまではないですよ。――私は貴方が宿を出た時からずっと後をつけていました」
「え?」
美女からの堂々としたストーカー発言に俺は目を剥いた。
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