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第5章 35歳にして、愛について知る
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「何て言ったらいいのかな。所有欲、とでもいうのかな。自分のものに触れられたくない、っていう意識が強いいんだ」
目元を撫でていた親指がいつのまにか僕の唇の輪郭をなぞっていた。
「へぇ、そうなんだ、意外だなぁ。でも確かに晴仁の家にはいっぱいおしゃれで高そうな物があるもんね。それは人に触られると嫌、というか心配になるよね」
部屋を見渡しながら僕は頷いた。
センス皆無の僕でもそれらが洗練されたものであることはよく分かった。
「あ、じゃあ僕もなるべく晴仁の物に触れないようにするね。嫌な時は遠慮なく言って……って、というかそもそも他人の僕が晴仁の家に居座ってること自体悪くない!?」
どうしよう!
今までそうとは知らず図々しく居座り続けていた……!
僕は慌てて立ち上がった。
「え、えっと、えっと、ごめん、そうとも知らずに……! あの、と、とりあえず、今から不動産に行ってくるよ!」
とにかく行動へ移さないと! と慌てて走り出そうとした僕を晴仁が手を掴んで引き止めた。
「あはは、こーすけは考えがすぐ先走るね。大丈夫だよ。こーすけは特別だから。そもそも嫌なら最初から家に住まわせてないよ」
「そ、そっか……」
晴仁の嘘偽りのない笑みと言葉に、僕は椅子にへなへなとへたり込んだ。
「よかったぁ。晴仁に嫌われてなくて」
大きく溜め息を漏らす僕に、晴仁が笑った。
「そんなに僕に嫌われるのがいや?」
「もちろんいやだよ! だって晴仁とはずっと付き合っていたいからね」
笑って即答すると、晴仁が目を丸くした。
その驚いた表情に僕は、慌てて言い足した。
「あ、もちろん友達として一緒にいたいということで、それはつまり心の繋がりみたいなもので、あの、その、ずっとこの家に居座るっていう意味じゃないから、っうわ!」
弁解を連ねていると立ち上がった晴仁にテーブル越しに抱きしめられてしまった。
「ふふふ、嬉しいなぁ。こーすけも同じ気持ちでいてくれたなんて」
晴仁の嬉しそうな声が耳の傍をくすぐった。
よかった。
どうやら有り難いことに晴仁も僕とずっと友達でいてほしいようだ。
僕の一方通行でなくてほっとする。
「こうなったら、おじいさんになっても仲良くいようね」
晴仁のマイホームの縁側で日向ぼっこをしながら囲碁を打つ、なんて想像をしながら僕は笑った。
「…………テメェ、やっぱりホモ野郎だったのか」
鳥肌が立ったような声が聞こえて顔を上げると、湯上りの蓮さんが顔を強張らせてリビングのドアの近くに立っていた。
その表情は、若い子の言葉で言えばまさに『ドン引き』というものだった。
「ちょ、ちょっ、違いますよ!? 僕たちはただの友達で……」
「言い訳くせぇ……。別に人の性癖に文句はいわねぇけど、恋人がいるなら他に手を出すなよ」
「いやいやいや! それも誤解です!!」
ほぼ悲鳴に近い声で無実を訴えたけれど、僕に向ける視線はますます胡乱げになる一方だった。
「あ、そういえば、まだ聞いてなかったね。……初めて会った時、キスしたって言ってたけどそれはどういうことかな? こーすけ」
晴仁の威圧感を纏った笑みと蓮さんの侮蔑の視線に挟まれ、僕は泣きそうになった。
目元を撫でていた親指がいつのまにか僕の唇の輪郭をなぞっていた。
「へぇ、そうなんだ、意外だなぁ。でも確かに晴仁の家にはいっぱいおしゃれで高そうな物があるもんね。それは人に触られると嫌、というか心配になるよね」
部屋を見渡しながら僕は頷いた。
センス皆無の僕でもそれらが洗練されたものであることはよく分かった。
「あ、じゃあ僕もなるべく晴仁の物に触れないようにするね。嫌な時は遠慮なく言って……って、というかそもそも他人の僕が晴仁の家に居座ってること自体悪くない!?」
どうしよう!
今までそうとは知らず図々しく居座り続けていた……!
僕は慌てて立ち上がった。
「え、えっと、えっと、ごめん、そうとも知らずに……! あの、と、とりあえず、今から不動産に行ってくるよ!」
とにかく行動へ移さないと! と慌てて走り出そうとした僕を晴仁が手を掴んで引き止めた。
「あはは、こーすけは考えがすぐ先走るね。大丈夫だよ。こーすけは特別だから。そもそも嫌なら最初から家に住まわせてないよ」
「そ、そっか……」
晴仁の嘘偽りのない笑みと言葉に、僕は椅子にへなへなとへたり込んだ。
「よかったぁ。晴仁に嫌われてなくて」
大きく溜め息を漏らす僕に、晴仁が笑った。
「そんなに僕に嫌われるのがいや?」
「もちろんいやだよ! だって晴仁とはずっと付き合っていたいからね」
笑って即答すると、晴仁が目を丸くした。
その驚いた表情に僕は、慌てて言い足した。
「あ、もちろん友達として一緒にいたいということで、それはつまり心の繋がりみたいなもので、あの、その、ずっとこの家に居座るっていう意味じゃないから、っうわ!」
弁解を連ねていると立ち上がった晴仁にテーブル越しに抱きしめられてしまった。
「ふふふ、嬉しいなぁ。こーすけも同じ気持ちでいてくれたなんて」
晴仁の嬉しそうな声が耳の傍をくすぐった。
よかった。
どうやら有り難いことに晴仁も僕とずっと友達でいてほしいようだ。
僕の一方通行でなくてほっとする。
「こうなったら、おじいさんになっても仲良くいようね」
晴仁のマイホームの縁側で日向ぼっこをしながら囲碁を打つ、なんて想像をしながら僕は笑った。
「…………テメェ、やっぱりホモ野郎だったのか」
鳥肌が立ったような声が聞こえて顔を上げると、湯上りの蓮さんが顔を強張らせてリビングのドアの近くに立っていた。
その表情は、若い子の言葉で言えばまさに『ドン引き』というものだった。
「ちょ、ちょっ、違いますよ!? 僕たちはただの友達で……」
「言い訳くせぇ……。別に人の性癖に文句はいわねぇけど、恋人がいるなら他に手を出すなよ」
「いやいやいや! それも誤解です!!」
ほぼ悲鳴に近い声で無実を訴えたけれど、僕に向ける視線はますます胡乱げになる一方だった。
「あ、そういえば、まだ聞いてなかったね。……初めて会った時、キスしたって言ってたけどそれはどういうことかな? こーすけ」
晴仁の威圧感を纏った笑みと蓮さんの侮蔑の視線に挟まれ、僕は泣きそうになった。
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