35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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 蓮さんが僕に頼みたいこと? 
 僕は首を傾げた。もちろんいつもヘルプに入った時にお世話になっているからできることならなんでもしたい。
 でも実際問題、蓮さんに僕ができることなど掃除や荷物運びなど小間使いのような役割しか思い浮かばなかった。
 しかしそれではとてもじゃないがこの高級なお肉とは釣り合いがとれない。

「えっと、僕にできることなんて限られていますけど、いつもお世話になっているのでぜひその恩返しをさせてください」
「別にお前の世話なんてしてねぇけど……」
「いえいえ、ヘルプに入った時に何かとフォローして頂いてるので! それで僕に頼みたいことというのは僕でも出来そうなことですか」
「お前じゃないとできないことだよ」

 網の上の焼き肉をくるりと蓮さんがひっくり返した。

 僕じゃないとできないこと……。

 益々見当がつかず、僕は首を傾げた。

「僕にしか出来ないことなんて思い当たることがないんですけど……」
「いや、俺の周りで出来る奴はお前しかいない。……お前に俺の上司の振りをして欲しい」
「え!」

 僕が蓮さんの上司の振り!?

「む、無理ですよ! 蓮さんの上司の振りってことはつまりナンバーワンホストのさらに上ってことですよね? この見た目じゃ全く説得力ないですよ!」

 手をブンブンと横に振りながら、いかに自分がその役に適していないかを力説すると、蓮さんが呆れたように溜め息を吐いた。

「誰がお前をホストとしての上司になれって言ったよ」
「へ?」

 僕は目をパチパチと瞬かせた。

「お前にはサラリーマンとして俺の上司の振りをして欲しいんだ」

 そう言うと、蓮さんは網の上の焼き肉を僕のお皿にのせた。

「サラリーマン、ですか」

 僕は置かれた焼き肉と蓮さんの顔を交互に見ながら言った。
 確かにホストよりサラリーマンの方が僕の見た目にはしっくりくるだろう。たとえリストラされた身とはいえ……。
 ただ、ホストである蓮さんの上司なのにサラリーマンというのは無理があるのでは? と思って首を傾げていると、

「来週の日曜日に妹が来るんだ」

 新しい肉を網の上に置きながら蓮さんが言った。

「え! 蓮さんって妹さんがいらっしゃるんですか!」

 思わず驚いた。蓮さんも人間なのだからきょうだいがいてなんの不思議はないのだけれど、ナンバーワンホストという肩書きの蓮さんは僕にとってどこか遠い世界の人のような感じがするのだ。だからその蓮さんから妹という言葉が出たことに驚いた。
 あと単純に、あまり個人的な会話をしない蓮さんのプライベートを少しのぞき見られたようで嬉しかった。
 プライベートな部分を見せてくれるってことは少なからず心を許してくれているということだ。
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