175 / 228
第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
7
しおりを挟む
蓮さんから「俺の会社の上司なんだから敬語は使うなよ。あと蓮さんって言うのもなしだ。いいな?」と念を押されているのだ。
蓮さんは僕の言葉にカッと目を見開いた。その形相に思わずひっと身を竦める。
もしかして僕のぎこちない口調が悪かったのだろうか……!
けれど蓮さんは僕には目もくれず、蘭香ちゃんの両肩をガッと掴むと彼女に詰め寄った。
「大丈夫だったか? 変なことされてないか? どっか触られたとかないか?」
「大丈夫です、お兄様。青葉さんがすぐに助けに入ってくれたので何の問題もありませんでした」
表情を少し険しくして心配そうに詰め寄る蓮さんを宥めるようにして蘭香ちゃんが答える。
その答えにほっと息を吐きつつも、蓮さんは再度厳しい表情を作って蘭香ちゃんに向き直った。
「だからあまり一人でうろうろするなと何回も言っておいただろ」
「ごめんなさい。でも予定より早い新幹線に乗って来たので時間が空いてしまって。それで先にお土産を買っていたんです」
紙袋を持ち上げて見せて笑う蘭香ちゃんに、蓮さんは溜め息を吐いた。
「そんなの俺たちと合流してからでいいだろう。田舎と違って都会は変な奴が多いんだからな」
「ふふふ、お兄様ったら心配性なんだから。でも実際に昔変質者に連れ去られそうになったのはお兄様の方じゃないですか」
「あ、あれは小さい頃の話だろっ。とにかく、お前はもっと危機感を持って」
「ふふふ、はいはい分かりました」
心配して小言を言う蓮さんを笑顔で聞き流す蘭香ちゃんは、とても楽しげで、ようやく年相応の笑顔が見られた気がした。
お兄ちゃんらしく妹を心配する蓮さんもまた微笑ましく、思わず頬が綻ぶ。
「あ、置いてけぼりにしてしまってごめんなさい。今日はお休みの日にわざわざ会ってくださってありがとうございます」
蘭香ちゃんは僕の方に向き直ると、深々と頭を下げた。
蓮さんが事前に僕のことを――というより設定を話してくれていたようだ。それで僕の名前を聞いた時、蓮さんの上司ではないかと思ったそうだ。
「あ、いや、そんな頭を下げないで。僕が勝手を言って来ただけだから」
……という設定になっている。
肩を竦めるようにして蓮さんが言った。
「青葉さん、妹が来るって言ったら会ってみたいってしつこくて」
……という設定になっている。
全て蓮さんが考えた設定だけれど、あらためて考えると、随分と図々しい上司だな……。
こういう図々しい上司は早々に退散した方がいい。
「あはは、兄妹水入らずのところ本当にごめんね。でも蓮君の妹さんって言うからきっと可愛いだろうなと思ったら気になって。それじゃあ僕はここで失礼するね。どうぞごゆっくり」
蓮さんからあらかじめ与えあられた台詞をそらんじながらその場を立ち去ろうとすると、
「あ、お待ちくださいっ」
蘭香ちゃんが僕の服の裾を掴んで引き留めた。
蓮さんは僕の言葉にカッと目を見開いた。その形相に思わずひっと身を竦める。
もしかして僕のぎこちない口調が悪かったのだろうか……!
けれど蓮さんは僕には目もくれず、蘭香ちゃんの両肩をガッと掴むと彼女に詰め寄った。
「大丈夫だったか? 変なことされてないか? どっか触られたとかないか?」
「大丈夫です、お兄様。青葉さんがすぐに助けに入ってくれたので何の問題もありませんでした」
表情を少し険しくして心配そうに詰め寄る蓮さんを宥めるようにして蘭香ちゃんが答える。
その答えにほっと息を吐きつつも、蓮さんは再度厳しい表情を作って蘭香ちゃんに向き直った。
「だからあまり一人でうろうろするなと何回も言っておいただろ」
「ごめんなさい。でも予定より早い新幹線に乗って来たので時間が空いてしまって。それで先にお土産を買っていたんです」
紙袋を持ち上げて見せて笑う蘭香ちゃんに、蓮さんは溜め息を吐いた。
「そんなの俺たちと合流してからでいいだろう。田舎と違って都会は変な奴が多いんだからな」
「ふふふ、お兄様ったら心配性なんだから。でも実際に昔変質者に連れ去られそうになったのはお兄様の方じゃないですか」
「あ、あれは小さい頃の話だろっ。とにかく、お前はもっと危機感を持って」
「ふふふ、はいはい分かりました」
心配して小言を言う蓮さんを笑顔で聞き流す蘭香ちゃんは、とても楽しげで、ようやく年相応の笑顔が見られた気がした。
お兄ちゃんらしく妹を心配する蓮さんもまた微笑ましく、思わず頬が綻ぶ。
「あ、置いてけぼりにしてしまってごめんなさい。今日はお休みの日にわざわざ会ってくださってありがとうございます」
蘭香ちゃんは僕の方に向き直ると、深々と頭を下げた。
蓮さんが事前に僕のことを――というより設定を話してくれていたようだ。それで僕の名前を聞いた時、蓮さんの上司ではないかと思ったそうだ。
「あ、いや、そんな頭を下げないで。僕が勝手を言って来ただけだから」
……という設定になっている。
肩を竦めるようにして蓮さんが言った。
「青葉さん、妹が来るって言ったら会ってみたいってしつこくて」
……という設定になっている。
全て蓮さんが考えた設定だけれど、あらためて考えると、随分と図々しい上司だな……。
こういう図々しい上司は早々に退散した方がいい。
「あはは、兄妹水入らずのところ本当にごめんね。でも蓮君の妹さんって言うからきっと可愛いだろうなと思ったら気になって。それじゃあ僕はここで失礼するね。どうぞごゆっくり」
蓮さんからあらかじめ与えあられた台詞をそらんじながらその場を立ち去ろうとすると、
「あ、お待ちくださいっ」
蘭香ちゃんが僕の服の裾を掴んで引き留めた。
41
あなたにおすすめの小説
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
人気アイドルが義理の兄になりまして
三栖やよい
BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?
彼はオレを推しているらしい
まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。
どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...?
きっかけは突然の雨。
ほのぼのした世界観が書きたくて。
4話で完結です(執筆済み)
需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*)
もし良ければコメントお待ちしております。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる