35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
213 / 228
第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

43

しおりを挟む
 蓮さんの言葉にハッとする。
 そうだ、これは言ってはいけない類いの話だ。蓮さんを励まそうと、高校時代あまり勉強をしていなかったテツ君もオーナーになれたのだから、今から勉強すれば大丈夫だと伝えたかっただけなのだけれど、テツ君からしたら名誉毀損みたいなものだ。
  
「ど、どうしよう……っ」

 わたわたと慌てる僕を見て、蓮さんが喉の奥で堪えるようにして笑った。

「別に誰にも言わねぇよ」
「あ、ありがとうございます……! ぜひここだけの話ということで……!」
「なになにぃ? ナイショ話~?」
「うわっ!」

 気配なく突然桜季さんが現れて、背後から僕らの間に入ってきたので、思わず間抜けな悲鳴を上げてしまった。

「び、びっくりした……。さ、桜季さん、テレビは終わったんですか?」
「まだやってるよぉ。でもCMだからトイレに来たんだよぉ。ところでここだけの話ってなにぃ?」

 話題をさり気なく逸らしたのに、すぐに話を戻されてしまった。
 目をキラキラと輝かせる桜季さんに気圧される。でも桜季さんに言ったが最後、絶対に言いふらされてしまう……!

「な、なんでもありませんよ! 大したことじゃないですっ」
「えぇ~、大したことないならおれにも教えてよぉ」

 グイと顔を近づけて笑顔で詰め寄ってくる桜季さんに、僕はさらに慌てた。

「あ、えっと、やっぱり大したことあります! なので教えられませんっ」
「あ~、青りんごがおれに嘘吐くなんてショック~。……嘘つきにはお仕置きだよぉ」
「へ?」

 にやりと、なんだか嫌な予感を胸によぎらせる笑みを浮かべると、桜季さんは僕の肩に腕を回した。そしてそのまま後頭部を手で掴ん固定すると、そのまま唇を近づけてきて……――。

「いつまでもホモ設定続けんな」

 蓮さんが泡だらけのスポンジを持った手で桜季さんの頭頂部にゴン、とげんこつを下した。

「痛ぁ! だから暴力反対だってばぁ! というか頭に泡つけないでよぉ」

 桜季さんが唇を尖らせて蓮さんの方を振り返った。

「自業自得だろ。頭洗って来いよ、シャワー貸してやるから。ついでに頭冷やせ」
「もぉ、レンコンのお邪魔虫ぃ」

 頬を膨らませてそう言うと、桜季さんは浴室に向かった。
 視線で桜季さんの背中を見送りながら溜め息を吐くと、蓮さんは目の端を吊り上げて俺に向き直った。

「お前さ、前にも言ったけどもっと警戒心持てよ。あいつお前のことかなり気に入ってるからボケッとしてるとマジでケツ掘られるぞ」
「ケ、ケツですか……」

 言葉のインパクトに思わず自分のお尻を手で撫でた。忠告めいた厳しい声だけれど、いまいちピンとこない。
 首を傾げながら自分のお尻を撫でさする僕に、蓮さんはもどかしそうに舌打ちをした。

「とりあえず、絶対あいつと二人っきりになるな。分かったな?」
「え……、同じ職場でそれは難しいんじゃ……」
「返事は?」
「は、はい……」

 有無を言わせない鋭い目で睨まれ、僕ははいとしか答えようがなかった……。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

人気アイドルが義理の兄になりまして

三栖やよい
BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?

彼はオレを推しているらしい

まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。 どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...? きっかけは突然の雨。 ほのぼのした世界観が書きたくて。 4話で完結です(執筆済み) 需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*) もし良ければコメントお待ちしております。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...