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王家の秘密
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廊下に転がり出てきた父上のもとへ行くと、シリルも慌てて部屋を飛び出してきた。
「あ!シーラ!辺境伯を落ち着かせて欲しいんだ!」
父上は大変慌てた様子で「大変なことをしてしまった!!」と頭を抱えている。
「父上、どうしたんですか?」
父上の肩を軽くトントン、と叩いて話しかける。
「はっ!シーラ、俺はシリルを泣かせてしまったんだ。俺が怖かったのかもしれない。何か傷つけることを言ったのかもしれない!!!」
シリルのほうに視線を送ると、ぶんぶんと勢いよく首を横に振っている。
「違うよ!僕は嬉しくて涙が出てしまっただけなんだ!辺境伯に受け入れてもらえて嬉しくて!!だからその拳をしまって!シーラ!」
シリルがそう言うので、いったん拳を納め、父上に声をかけることにした。
「シリルは嬉しかったようですよ。良かったですね」
「そ、そうか、よかった!」
私の言葉を聞いた途端に父上はほっとして胸をなで下ろしたようだ。はぁ、と大きなため息までついた。
「スイに、『シリルお兄様は可愛いうさぎちゃんですから、優しく、丁寧に、繊細に関わってくださいませね』と言われたんだ。それなのに泣かせてしまって、どうしようかと思ったんだ」
父上は戦いになるとものすごく強く、頼りになるが、どうも細かいことが苦手なのだ。兵士達のように荒々しく無骨な者たちは力強く導くことができるが、対女性や控えめな男性や子供となると途端にどう接していいのかわからなくなるらしい。壊してしまいそうで怖いんだそうだ。
「強くて、たくましくて少し怖い人なんだと思っていたけど、辺境伯って実はチャーミングなんだね」
シリルが私にこっそりと囁く。
「ああ、怖いと言うならばおそらく母上の方だろうな。私も時々怖いと思うからな母上は」
私は王妃様とお茶会をしに出かけた母上のことを思った。
母上は王妃様と学生時代からの友人なんだそうだ。
「そう言えば、父上、以前聞いたオーランドの年齢の件、もう少し詳しく覚えていませんか?」
「シーラ、それは僕が聞いても良い話なの?!」
シリルが慌ててその場から離れようとするので、私はシリルと父上を部屋の中に押し込み扉を閉めた。
「アーサーはシリルがいるところで年齢の話をしたんだ、シリルに知られても良いと判断したんだろう。さっき、少し話をしたが……オーランドを守って欲しいと言い残して去っていったんだ」
私の言葉を聞いたシリルは、ほんの少しだけうなずいて静かにソファに腰掛けた。
父上は腕を組んで目を瞑り深く考え込んでいるような仕草をした。
「たとえば、王妃様が体調を崩したとか、そういう話はなかったですか?」
「……聞いたのか?」
父上が険しい顔をして私の方を見た。父上はちゃんと知っているんだ。オーランドがなぜ、年齢を誤魔化しているのか。
「アーサーがおかしいんです。まるで私を拒絶するように壁を作った。嫌な予感がするんです」
父上は窓のそばまでゆっくりと歩いていった。少し、空いていた窓をきっちりと閉めて外を見つめたまま、ポツリとつぶやいた。
「王妃様がオーランド殿下をご懐妊された時、毒殺されそうになったんだ。まだ、公表するかなり前だ。安定期に入っていなかった。もし、対処が遅れていたら……二人とも助からなかっただろう」
シリルがつい、悲鳴をあげそうになったようで両手で口を押さえた。ほんの少し顔が青くなっている。
「その場にいたんですね。父上」
「……いた。サラと俺が呼ばれたお茶会でその事件は起こった。サラがいち早く気付いて王妃様がほんの少し口にしただけで止めたので体調は崩してしまったが、無事回復した。」
父上がこちらをゆっくり振り向く。逆光で顔がよく見えないが、声に怒気を含んでいる。
「犯人は、捕まえたんですね?」
「あぁ、その時は捕まえたと思っていた。しかし、もし取り逃した者がいたら、再び狙われかねないので毒で赤子は死んでしまったことにしたんだ。オーランド殿下は王妃様が領地に戻って秘密裏に出産し、育てたんだ。」
今もなお、殺気を隠せないほどに怒る父上の様子からおそらくだがその犯人は、父上と母上の逆鱗に触れたんだ。
毒を盛るだけではない、他の何かもあったんだ。
「それで、どうしてオーランドの年齢を誤魔化す必要があったんですか?」
それでも、生まれさえすれば公表しても良かったのではないかと思い、そう聞いてみるが父上は苦い顔をするだけでそれに対する答えは聞かせてくれなかった。
「この国では五歳になれば、王位を継ぐ者として指名できる。三歳になったときに年齢を二歳誤魔化して王位を継ぐ者として指名し、簡単に手を出せないようにしたんだ。『5年前に生まれていた、病弱な末っ子がいた』と言ってね。そうして、王宮にオーランド殿下と王妃様を呼び戻すことができた」
「国内貴族の仕業だったんですね」
シリルがそう呟くと、父上が少し驚いたように目を丸くして、「ああ、なぜわかった?」と聞き返した。
「派閥がどこまで伸びているのか、短期間では測りきれなくて根絶やしにできなかった。だから、無理やり年齢をあげて後継者として立てるしかなかった?」
「まぁ、そういうことだ。詳しいことはアレクに聞け。」
父上は閉めた窓をもう一度開けた。「これ以上は話さない」と言う合図だ。
「まだ、話す覚悟はできていないようで、話してくれなかったんです。もう一度話してみます」
私がそう答えると、後ろを向いたままコクリとうなずいた。
「あ!シーラ!辺境伯を落ち着かせて欲しいんだ!」
父上は大変慌てた様子で「大変なことをしてしまった!!」と頭を抱えている。
「父上、どうしたんですか?」
父上の肩を軽くトントン、と叩いて話しかける。
「はっ!シーラ、俺はシリルを泣かせてしまったんだ。俺が怖かったのかもしれない。何か傷つけることを言ったのかもしれない!!!」
シリルのほうに視線を送ると、ぶんぶんと勢いよく首を横に振っている。
「違うよ!僕は嬉しくて涙が出てしまっただけなんだ!辺境伯に受け入れてもらえて嬉しくて!!だからその拳をしまって!シーラ!」
シリルがそう言うので、いったん拳を納め、父上に声をかけることにした。
「シリルは嬉しかったようですよ。良かったですね」
「そ、そうか、よかった!」
私の言葉を聞いた途端に父上はほっとして胸をなで下ろしたようだ。はぁ、と大きなため息までついた。
「スイに、『シリルお兄様は可愛いうさぎちゃんですから、優しく、丁寧に、繊細に関わってくださいませね』と言われたんだ。それなのに泣かせてしまって、どうしようかと思ったんだ」
父上は戦いになるとものすごく強く、頼りになるが、どうも細かいことが苦手なのだ。兵士達のように荒々しく無骨な者たちは力強く導くことができるが、対女性や控えめな男性や子供となると途端にどう接していいのかわからなくなるらしい。壊してしまいそうで怖いんだそうだ。
「強くて、たくましくて少し怖い人なんだと思っていたけど、辺境伯って実はチャーミングなんだね」
シリルが私にこっそりと囁く。
「ああ、怖いと言うならばおそらく母上の方だろうな。私も時々怖いと思うからな母上は」
私は王妃様とお茶会をしに出かけた母上のことを思った。
母上は王妃様と学生時代からの友人なんだそうだ。
「そう言えば、父上、以前聞いたオーランドの年齢の件、もう少し詳しく覚えていませんか?」
「シーラ、それは僕が聞いても良い話なの?!」
シリルが慌ててその場から離れようとするので、私はシリルと父上を部屋の中に押し込み扉を閉めた。
「アーサーはシリルがいるところで年齢の話をしたんだ、シリルに知られても良いと判断したんだろう。さっき、少し話をしたが……オーランドを守って欲しいと言い残して去っていったんだ」
私の言葉を聞いたシリルは、ほんの少しだけうなずいて静かにソファに腰掛けた。
父上は腕を組んで目を瞑り深く考え込んでいるような仕草をした。
「たとえば、王妃様が体調を崩したとか、そういう話はなかったですか?」
「……聞いたのか?」
父上が険しい顔をして私の方を見た。父上はちゃんと知っているんだ。オーランドがなぜ、年齢を誤魔化しているのか。
「アーサーがおかしいんです。まるで私を拒絶するように壁を作った。嫌な予感がするんです」
父上は窓のそばまでゆっくりと歩いていった。少し、空いていた窓をきっちりと閉めて外を見つめたまま、ポツリとつぶやいた。
「王妃様がオーランド殿下をご懐妊された時、毒殺されそうになったんだ。まだ、公表するかなり前だ。安定期に入っていなかった。もし、対処が遅れていたら……二人とも助からなかっただろう」
シリルがつい、悲鳴をあげそうになったようで両手で口を押さえた。ほんの少し顔が青くなっている。
「その場にいたんですね。父上」
「……いた。サラと俺が呼ばれたお茶会でその事件は起こった。サラがいち早く気付いて王妃様がほんの少し口にしただけで止めたので体調は崩してしまったが、無事回復した。」
父上がこちらをゆっくり振り向く。逆光で顔がよく見えないが、声に怒気を含んでいる。
「犯人は、捕まえたんですね?」
「あぁ、その時は捕まえたと思っていた。しかし、もし取り逃した者がいたら、再び狙われかねないので毒で赤子は死んでしまったことにしたんだ。オーランド殿下は王妃様が領地に戻って秘密裏に出産し、育てたんだ。」
今もなお、殺気を隠せないほどに怒る父上の様子からおそらくだがその犯人は、父上と母上の逆鱗に触れたんだ。
毒を盛るだけではない、他の何かもあったんだ。
「それで、どうしてオーランドの年齢を誤魔化す必要があったんですか?」
それでも、生まれさえすれば公表しても良かったのではないかと思い、そう聞いてみるが父上は苦い顔をするだけでそれに対する答えは聞かせてくれなかった。
「この国では五歳になれば、王位を継ぐ者として指名できる。三歳になったときに年齢を二歳誤魔化して王位を継ぐ者として指名し、簡単に手を出せないようにしたんだ。『5年前に生まれていた、病弱な末っ子がいた』と言ってね。そうして、王宮にオーランド殿下と王妃様を呼び戻すことができた」
「国内貴族の仕業だったんですね」
シリルがそう呟くと、父上が少し驚いたように目を丸くして、「ああ、なぜわかった?」と聞き返した。
「派閥がどこまで伸びているのか、短期間では測りきれなくて根絶やしにできなかった。だから、無理やり年齢をあげて後継者として立てるしかなかった?」
「まぁ、そういうことだ。詳しいことはアレクに聞け。」
父上は閉めた窓をもう一度開けた。「これ以上は話さない」と言う合図だ。
「まだ、話す覚悟はできていないようで、話してくれなかったんです。もう一度話してみます」
私がそう答えると、後ろを向いたままコクリとうなずいた。
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