愛のない結婚を後悔しても遅い 離縁を望まれたスパダリ令嬢、溺愛の限りを尽くしたら孤独な公爵令息に懐かれすぎています

空橋彩

文字の大きさ
46 / 47
王家の秘密

85

しおりを挟む
「シーラ、ちょっといいか?」

父上とシリルが話をしたいと言ったので、私は潔く部屋を出た。扉をちょうど閉めたところで暗い顔をしたアーサーに声をかけられた。

「ああ、いいよ。隣の部屋に行こう」

わずかにこくんと頷いたアーサーはトボトボと私の後に続いた。アーサーは困ったり悲しくなったりすると、こうして背中を丸めてゆっくりと歩く。
今にも泣き出しそうな顔をして、「今いいか?」と声をかけてくる。

隣の部屋に入るや否や、アーサーが勢いよく顔を上げた。

「オーランドのこと、辺境伯から聞いたか?」

オーランドのこと、と言われて思い浮かぶのは年齢のことだ。

「オーランドの年齢のことか?」

「ああ、そうだ」

「母上に同席してもらわなかったろ?父上は理由はわからないがそう言うことにすると言われた、と言っていた。」

父上はこの国の英雄だ。物凄く強い。武力に秀でた人だ。代わりに、あまり深く物事を考えないところがある。
どちらかというと私も父上よりだからか、理由はわからないがそうすると言われた、と聞いて「そうですか、承知しました」と答えた。

「それが俺のせいだとしたら、シーラは何ていうかなと思ってさ」

アーサーは私から視線をそらして床をじっと見つめている。アーサーの悪い癖だ。

「私がお前を見損なうと思って心配している、のか?」

アーサーがぐっと拳を強く握りしめた。図星だったようだ。アーサーは、思い込むと抜け出せなくなる癖がある。失敗することを極端に恐れ、周りからどう見られているのかをすごく気にする。
王族として扱われると怒るのがいい例だ。

「寂しいな」

私がそう言うと、アーサーがやっと顔を上げた。眉間に深く皺を寄せて、困ったような悲しいような顔をしている。

「私とお前の仲はそんなに信用できないものだったのか。お前がいけないことをしたら私が叱ってやるつもりだ。もし、道を踏み外して崖から落ちそうになったなら、お前が手を差し伸べるなら、いつでも掴むよ。」

「俺が、オーランドが生まれる前に死なせてしまうところだったって言っても?」

当時、そんな話は聞いていない。王家で隠したのか?いや、王家がブライトンにそんな重大な事件を隠し通せるはずがない。

「それは……」

どういうことだと聞き返そうとしたら、アーサーが私に背中を向けた。そして、小さな声でつぶやいた。

「シーラ、オーランドを守ってくれ。どんなものからも守ってくれ」

そう言うと扉を開けて、出て行こうとした。

「まて!アーサー!!」

アーサーを引き留めようと、手を伸ばすとアーサーはいつもよりも低く冷たい声で私を制止した。

「俺は、ヒュー・アレキサンドライト・ユリアナだ。気軽に手を触れるな。礼を取れ、王族の前だぞ」

いつもとは全く違う、私の知らない声で私に向かってそう言った。指先が後少しでアーサーに届くところだった。私が伸ばした手は少しだけ、アーサーの上着に触れた。

「承知いたしました。アレキサンドライト殿下」

伸ばしかけた手を胸の前に引き戻し、軽く頭を下げて礼をとる。私はアーサーの後ろ姿が見えなくなるまで見つめた。

アーサーが去った後、ちょうど隣の部屋から父上の叫びが聞こえた。

「シリル!!どうしたんだ!!」

と。

後で王家に探りを入れようと、アーサーを追わなかった。今は追っても彼を余計に追い詰めてしまうんじゃないかと思ったからだ。
先に、慌てて廊下に飛び出してきた父上を助けに行くことにした。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。