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連載
62.アレキサンドライト視点
「おい!アーサー!!最近スイのところに顔を出していないのか??」
肩のあたりまで髪の伸びたシーラが朝一番に俺の執務室に飛び込んできた。彼女が手に握っているのは、この部屋のドアのノブだ。
そう、だって鍵がかかっていたはずだから。鍵の意味がないなんてどう言うことだ?と思う間もなく彼女はバタバタと入室して俺の机にバン!とドアノブを叩きつけた。
「あ…あぁ、なかなかいく時間が取れなくて…」
「あの大馬鹿者共の処罰はお父上が下すことになっただろう?アーサーそんなになにが忙しいんだ?」
シーラがギロリと恐ろしい顔で睨んできた。このままぶん殴られる可能性もある。
俺はビビっている様子を悟らせないようにわざと陽気に答えることにした。
「いろいろ、やる事があるんだよ。今日だってほら、部屋の扉が壊れた。始末書を書いて提出しなければならないだろ?」
「私が書いておく。スイに会いに行かないのか?」
なんの話をしてもスイの話にもどってしまう。グッと歯を食いしばった事がシーラにバレたのか、はぁ、と軽くため息をつかれた。
「なぜだ、アーサー。あんなにスイを気に入っていただろう。あの子は…お前のオモチャじゃないんだぞ。飽きたからと言って放り出していいのか?」
「飽きてなんていない!!」
俺は自分がハッキリしないのがいけないのに、シーラの言葉にカチンときてつい、キツめに責めてしまった。シーラはニヤッと笑って俺を見つめている。
挑発にのってしまった。ほんとに、シーラには勝てない。
「俺のせいで…シーラを失うところだった。俺はスイから家族を…奪ったんだ。合わす顔がない。今後も…そうならない可能性はないだろ?そう思うと…会いにいけない。会いたいのに」
今は元気にしているシーラも、しばらくは本調子でなかった。失ったままの記憶もある。つい最近まで手足に痺れが残っていた。
それもこれも全て、俺を守るためにシーラがおった傷だ。
引きずり返されたあの日、シーラを失ったあの日。俺を見つめるランドルフの悲しそうな瞳。辺境伯の怒りに満ちた瞳。俺はあの目が忘れられない。
スイはどんな顔をするだろう。
そう思うと一歩を踏み出せないでいた。
すると、シーラが懐から紺色の封筒を取り出した。
「それは…まさか…」
「スイからの手紙を預かってきた。これを届けないとシリルを返してくれないらしい。人質だそうだ。シリルはいま、“花嫁修行”をさせられているんだ。迷惑だから早く読め」
シーラがこちらに封筒を投げてよこした。慌てて手で挟んで受け取る。危ない。刺さるところだったじゃないか。
たかが紙が刺さるわけないと思うだろ?刺さるんだよ。
高速回転をかけられたちょっと硬めの紙。
シーラにかかれば立派な凶器になる。
恐る恐る封蝋を剥がし手紙を引っ張り出す。
二つに折られた紙をそーっと開くと美しく優雅な字で一言だけ書かれていた。
『裏切り者』
怒っている。スイが、怒っている。
シーラを失わせた事?みっともなく現場に縋ったこと?辺境伯に殴らせたこと?
どこまで知っていて、どこを怒っているんだ…
おそらく俺は真っ青な顔をしていたんだろう。「アーサー」と声をかけられハッとして顔を上げた。
そこにはにっこりと、可愛らしく微笑んだスイが立っていた。
今日は薄い水色のフリフリのついた可愛らしいドレスを着ている。王宮に入るためか丈は長くいつも出している足はしっかりと隠れている。揃いの色の手袋は膝まで伸びていて優雅である。
首をほんの少し傾けて透き通る声で俺に語りかける。
「お久しぶりでございます。アレキサンドライト殿下。」
「あ…あぁ、久しぶりだな。中々会いにいけなくてすまな…」
「いえ。お会いする約束もしていませんし、そもそも、お会いする資格もわたくしは持っていませんでしたわね。」
スイは手に持っていたツバの広い帽子…キャペリンを胸の辺りに当ててペコリとお辞儀をする。
「わたくし、ここに訪ねる資格も王宮を訪ねる資格も持ち合わせておりませんので、お姉様にわがままを言って連れてきて貰いましたの。」
スイの言葉がグサグサと俺の心に刺さる。細く開けたスイの瞳の奥にはしっかりとした怒りの炎が燃えている。あの目にそのまま射殺されそうだ。
そうだ。彼女は俺の婚約者でもなければ友人でもない。会いたいからと言って気軽に会いに来られる間柄ではない。
だから、シーラに頼んで会いにきたのだ。
情けない俺に痺れを切らして…
肩のあたりまで髪の伸びたシーラが朝一番に俺の執務室に飛び込んできた。彼女が手に握っているのは、この部屋のドアのノブだ。
そう、だって鍵がかかっていたはずだから。鍵の意味がないなんてどう言うことだ?と思う間もなく彼女はバタバタと入室して俺の机にバン!とドアノブを叩きつけた。
「あ…あぁ、なかなかいく時間が取れなくて…」
「あの大馬鹿者共の処罰はお父上が下すことになっただろう?アーサーそんなになにが忙しいんだ?」
シーラがギロリと恐ろしい顔で睨んできた。このままぶん殴られる可能性もある。
俺はビビっている様子を悟らせないようにわざと陽気に答えることにした。
「いろいろ、やる事があるんだよ。今日だってほら、部屋の扉が壊れた。始末書を書いて提出しなければならないだろ?」
「私が書いておく。スイに会いに行かないのか?」
なんの話をしてもスイの話にもどってしまう。グッと歯を食いしばった事がシーラにバレたのか、はぁ、と軽くため息をつかれた。
「なぜだ、アーサー。あんなにスイを気に入っていただろう。あの子は…お前のオモチャじゃないんだぞ。飽きたからと言って放り出していいのか?」
「飽きてなんていない!!」
俺は自分がハッキリしないのがいけないのに、シーラの言葉にカチンときてつい、キツめに責めてしまった。シーラはニヤッと笑って俺を見つめている。
挑発にのってしまった。ほんとに、シーラには勝てない。
「俺のせいで…シーラを失うところだった。俺はスイから家族を…奪ったんだ。合わす顔がない。今後も…そうならない可能性はないだろ?そう思うと…会いにいけない。会いたいのに」
今は元気にしているシーラも、しばらくは本調子でなかった。失ったままの記憶もある。つい最近まで手足に痺れが残っていた。
それもこれも全て、俺を守るためにシーラがおった傷だ。
引きずり返されたあの日、シーラを失ったあの日。俺を見つめるランドルフの悲しそうな瞳。辺境伯の怒りに満ちた瞳。俺はあの目が忘れられない。
スイはどんな顔をするだろう。
そう思うと一歩を踏み出せないでいた。
すると、シーラが懐から紺色の封筒を取り出した。
「それは…まさか…」
「スイからの手紙を預かってきた。これを届けないとシリルを返してくれないらしい。人質だそうだ。シリルはいま、“花嫁修行”をさせられているんだ。迷惑だから早く読め」
シーラがこちらに封筒を投げてよこした。慌てて手で挟んで受け取る。危ない。刺さるところだったじゃないか。
たかが紙が刺さるわけないと思うだろ?刺さるんだよ。
高速回転をかけられたちょっと硬めの紙。
シーラにかかれば立派な凶器になる。
恐る恐る封蝋を剥がし手紙を引っ張り出す。
二つに折られた紙をそーっと開くと美しく優雅な字で一言だけ書かれていた。
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怒っている。スイが、怒っている。
シーラを失わせた事?みっともなく現場に縋ったこと?辺境伯に殴らせたこと?
どこまで知っていて、どこを怒っているんだ…
おそらく俺は真っ青な顔をしていたんだろう。「アーサー」と声をかけられハッとして顔を上げた。
そこにはにっこりと、可愛らしく微笑んだスイが立っていた。
今日は薄い水色のフリフリのついた可愛らしいドレスを着ている。王宮に入るためか丈は長くいつも出している足はしっかりと隠れている。揃いの色の手袋は膝まで伸びていて優雅である。
首をほんの少し傾けて透き通る声で俺に語りかける。
「お久しぶりでございます。アレキサンドライト殿下。」
「あ…あぁ、久しぶりだな。中々会いにいけなくてすまな…」
「いえ。お会いする約束もしていませんし、そもそも、お会いする資格もわたくしは持っていませんでしたわね。」
スイは手に持っていたツバの広い帽子…キャペリンを胸の辺りに当ててペコリとお辞儀をする。
「わたくし、ここに訪ねる資格も王宮を訪ねる資格も持ち合わせておりませんので、お姉様にわがままを言って連れてきて貰いましたの。」
スイの言葉がグサグサと俺の心に刺さる。細く開けたスイの瞳の奥にはしっかりとした怒りの炎が燃えている。あの目にそのまま射殺されそうだ。
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だから、シーラに頼んで会いにきたのだ。
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