愛のない結婚を後悔しても遅い 離縁を望まれたスパダリ令嬢、溺愛の限りを尽くしたら孤独な公爵令息に懐かれすぎています

空橋彩

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王家の秘密

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「ダメだ。何かあったらどうするんだ」


「何かなければ事件は動かないよ?大丈夫、シーラが守ってくれるんでしょ?」

シリルは首を傾げて私の方をじっと見ている。アーサーは困った様にオロオロと私とシリルを見比べている。


「そんなもの(囮)は、軍や近衛の者に任せておけばいいんだ!シリルには無理だ!いいか、もし、万が一のことがあったら抵抗する力がなければ最悪の場合…生きてはいられない。そんな危ないところにシリルをやることはできない。それならいっそアーサーが囮になればいい。」

囮になったアーサーを想像したのか、シリルはほんの少し嫌そうな顔をした。アーサーも微妙な表情をしたところへ、鈴の転がる様な可憐な声が響いた。

「お姉様、アレクはどんなに着飾ってもか弱いご婦人にはなりませんわ。」


「スイ?!」


「うふふ、ご機嫌よう。お父様から伝言を預かってまいりましたの。」

声のした方を見てみると、手に真っ黒な封筒を握ったスイが穏やかに笑っていた。今日もフリフリと丸く膨らんだ、後ろが長く前が短いという特徴的なスカートのドレスを着ている。
スイは、ポイっと封筒をアーサーに渡すとシリルをじっと見つめた。「あ、こんにちは」とか「あの?」とかシリルが時々言葉を発するがスイは一切返事をしない。
ただ、じーっと、まるで美術品を見定めるかの様にじっと見つめる。


「辺境の地を守護する者の伴侶として、自ら囮を名乗り出るとは、素晴らしい心構えよ。わたくしが美しくして差し上げてよ?」

「スイ!それは、ダメだといま…」

「あら、お姉様」

スイはビシッと私を指差して勝気にニヤリと笑った。

「人の一人くらい、守れなくてこの国を守れますか?守る自信が無いとは言わせませんわ。銀軍の総統からの命ですの。この事件、アレクと共に解決してほしい、との事です。辺境で怪しい出国が何件かありまして。」

「なっ…そんな報告は受けていない」

「いま、致しました。」

スイがアーサーが読んでいる手紙を手のひらで指す。
アーサーが難しそうに眉間にしわを寄せて手紙を読んでいる。そのうちの読み終わった一枚を私に手渡してきた。

私はその内容に憤慨してグシャリと手紙を握りつぶしてしまった。シリルが丁寧に手紙を広げてアーサーに了解を得てから目を通す。そして、呆れた様に悲しい顔をして一言つぶやく。

「まるで何とかの笛吹き男みたいだね。」

笛吹き男が何なのかはわからないが、シリルが珍しく怒っているのがわかった。

「だが、これなら囮作戦がつかえる。あちらの目的が明確だからな…シーラでもいけるはずだ。」

「相手を見たら即、殺してしまいそうだが。気をつけよう。」


パン!とスイが手を叩いてみんなの注目を集める。ニコニコと笑ってはいるが瞳に怒りを宿している様だ。

「お兄様から作戦を預かってまいりましたの。お姉様には囮は不可能ですから。やはりここは、シリル様…それと私が囮をいたします。軍人お二人には別の役割を…」


「認めない!!そんなのダメに決まってるだろー!」

優雅な王宮の美しい庭園に、アーサーの恐ろしい雄叫びが響き渡った。












「で、何でどうして俺がここに呼ばれたんですか?俺は王宮なんかに足を踏み入れて良い人間じゃないでしょう?何考えてんですか、あの人は。」


「そう思うならもう少し行儀良くしたらどうだ。カイル。」

納得のいかない様な顔で、だけど手を後ろで組んでビシッと背筋を伸ばして立つカイルが不満気に私に囁く。
この部屋の主は先程から落ち着かない様であっちに行ったりこっちに行ったり、ソワソワと歩き回っている。
足を引っ掛けて転ばせれば落ち着くだろうか?
時々立ち止まり、頭に手を当てては首を振ってまた、歩き出している。

「アーサー、カイルが不安だそうだぞ。ちゃんと説明したのか?」

「したような。してないような。してないかもしれない。」

そう言って泣き出しそうな顔で私をみる。はぁ、と強くため息をついてカイルの方に顔を向け今回の事件の説明をする。

「実は、国内から何人か、飲み屋で働いている少女、女性が連れ去られている。それに伴って、その家族や近しい者達も次々と隣国へ出国しているんだ。」

「旅行とか、出稼ぎとかでは?」

「そう思うのも無理はない。しかし、彼女達は突然、忽然と消えてしまったそうだ。家族や近しい者たちが心配して探し、そのまま家族も連れ去られている。先に消えてしまった少女たちの特徴は、金の髪に金の瞳。年齢は16から20の間。髪は緩くウェーブがかかっているそうだ。」

「…師匠の様な」

カイルが後ろ手で組んでいた手をふっと解き、顎に手を当てて何かを考えだす。

「関所を超える家族たちの理由欄には皆、決まってこう書いてある。“知人と隣国にて待ち合わせをしているため、迎えに行く”そして、必ず案内人として黒い帽子を被った男が一緒にいるんだそうだ。」

「それで、俺にどうしろと言うんですか?」

カイルはシリルの従兄弟なだけあり、頭が良い。よく気が付き、腕も立つ。将来は辺境で銀軍に所属したいと申し出を受けている。

「カイルも囮として罠にかかってもらいたい。私と、アーサーが後から君達を救いに隣国へ出国する。」


「君達?俺だけで十分では?」

カイルが首を傾げた瞬間にアーサーの執務室の扉がギィ、と穏やかに開いた。
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