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梨の王
歴史に残らぬ空白期間 その2 ②
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「おめぇ、こんな事してタダで済むと思うなよ。
俺らぁ後ろには別のマフィアがついてんだ。」
アプリードと呼ばれる男はそちらを見ずにパンパンと銃を撃ち込んだ。
頭に2発、身体には3発の銃弾が入り血溜まりが広がる。
「死ぬならもっと綺麗に死ねよ。
はぁ、最後の言葉も死に姿もダセェ。
マフィアだろうがよ、お前も。
立ち向かえってんだよ、馬鹿!
あ、くそ。
電話に血が付いてるじゃねぇかよ。
動くのか、これ。
…ちっ。
お?
もしもし、俺だ。
終わったぞ。
あ?
あー。
えーと…。
5、いや、6だった。
入ってすぐ1人やったから、6だ。
ん?
あー、俺は怪我とかないよ。
あ!
やべっ、うわ、最悪だよ。
いやさ、今話してるこの電話に血がついちゃってさー、報告出来りゃいいかと思ってそのまま顔に付けないように話してるんだけど、垂れて来て服についちゃった。
あーあーあーあー。
まぁいいや、どっかにシャツの一枚くらいあんだろ。
それ貰って帰るわ。
なに?
急ぎ目?
なんでよ。
腹減ってんだけど。
マジで?
男、女?
…男?
…男?
なんかやったっけか…。
あ、怒ってないのね。
良かった良かった。
…あ?
もう一回言え。
…兄貴?
嘘つけ、どんな奴だよ。
…うん、うん、おんなじ顔…。
…そっか、生きていたんだな。
そうか…。
わかった、すぐ帰る。
あ、待て待て待て待て。
兄貴に腹減ってないか聞けって、うん、うん。
…。
…何だよそれ。
まぁ、俺もそうかもなぁ。
確かに、会ったら腹ペコなんて忘れると思うわ。
あぁ、会ってから飯でも行こうって言っておいて。
うん、はい。
はーい。」
アプリードは比較的綺麗な部分で血のついた部分を拭いてから脱ぎ、物色してシャツを探したが何の模様かわからないが、ガラガラのシャツしかなく頭を抱えた。
長っぽい奴はもう動かないが、ストレス発散の為に蹴りを入れて、ポケットから金を抜いた。
「ダセーのは死に様だけじゃなくって、服もかよ。
血ぃついちゃったから、金もらって行くよ。
久々に会うからさぁ、キチッとして会いたいじゃんか。
わかるだろ?」
◆
「すぐ来るって。
良かったっすね。
あ、一個わかった事がありますよ、アンタが兄貴だ。」
アプリードはソファに座りながら背伸びをして、懐から身分証を取り出した。
双子なので誕生日やらなんやらが全て同じで結局どちらが自分のものか分からなかった。
「俺が兄貴なのか。
それだけでもここに来た甲斐があったな。
ありがとな…えーと…。」
「ギルです。」
「あぁ、ありがとう、ギル。」
◆
アプリードリヒにはいくつかの空白期間があり、その間は謎に満ちている。
本人の言では、お告げがあり、肩に梨の木を授かった際に、ホールドウィンの声を聞いて、現状のファーデンフロイデに異を唱えるため、伏していたと言う。
それをそのまま信じている者もいるが、そうでない者ももちろんおり、歴史研究を専門としている者が辿った事もあるが、現在は口を閉ざしている。
噂では仙人に出会い修行に明け暮れたとか、ヴァイオリンの悪魔に魂を売ったとか、ホールドウィンの英霊に指導をされていた等のファンタジーな説から、貴族に匿われて時を待ったや、王族からの依頼で血筋の証明をする為の儀式を受けていた等の現実的な説もある。
その中の一つに、マフィアとなり私兵と資金を蓄えていたという説もあるが、アプリードリヒに後ろ暗い噂が起こる事自体は少なかった。
ある時、清廉ですねとのコメントに、彼は
「周りが過保護で困るよ。」
とだけ答えた。
俺らぁ後ろには別のマフィアがついてんだ。」
アプリードと呼ばれる男はそちらを見ずにパンパンと銃を撃ち込んだ。
頭に2発、身体には3発の銃弾が入り血溜まりが広がる。
「死ぬならもっと綺麗に死ねよ。
はぁ、最後の言葉も死に姿もダセェ。
マフィアだろうがよ、お前も。
立ち向かえってんだよ、馬鹿!
あ、くそ。
電話に血が付いてるじゃねぇかよ。
動くのか、これ。
…ちっ。
お?
もしもし、俺だ。
終わったぞ。
あ?
あー。
えーと…。
5、いや、6だった。
入ってすぐ1人やったから、6だ。
ん?
あー、俺は怪我とかないよ。
あ!
やべっ、うわ、最悪だよ。
いやさ、今話してるこの電話に血がついちゃってさー、報告出来りゃいいかと思ってそのまま顔に付けないように話してるんだけど、垂れて来て服についちゃった。
あーあーあーあー。
まぁいいや、どっかにシャツの一枚くらいあんだろ。
それ貰って帰るわ。
なに?
急ぎ目?
なんでよ。
腹減ってんだけど。
マジで?
男、女?
…男?
…男?
なんかやったっけか…。
あ、怒ってないのね。
良かった良かった。
…あ?
もう一回言え。
…兄貴?
嘘つけ、どんな奴だよ。
…うん、うん、おんなじ顔…。
…そっか、生きていたんだな。
そうか…。
わかった、すぐ帰る。
あ、待て待て待て待て。
兄貴に腹減ってないか聞けって、うん、うん。
…。
…何だよそれ。
まぁ、俺もそうかもなぁ。
確かに、会ったら腹ペコなんて忘れると思うわ。
あぁ、会ってから飯でも行こうって言っておいて。
うん、はい。
はーい。」
アプリードは比較的綺麗な部分で血のついた部分を拭いてから脱ぎ、物色してシャツを探したが何の模様かわからないが、ガラガラのシャツしかなく頭を抱えた。
長っぽい奴はもう動かないが、ストレス発散の為に蹴りを入れて、ポケットから金を抜いた。
「ダセーのは死に様だけじゃなくって、服もかよ。
血ぃついちゃったから、金もらって行くよ。
久々に会うからさぁ、キチッとして会いたいじゃんか。
わかるだろ?」
◆
「すぐ来るって。
良かったっすね。
あ、一個わかった事がありますよ、アンタが兄貴だ。」
アプリードはソファに座りながら背伸びをして、懐から身分証を取り出した。
双子なので誕生日やらなんやらが全て同じで結局どちらが自分のものか分からなかった。
「俺が兄貴なのか。
それだけでもここに来た甲斐があったな。
ありがとな…えーと…。」
「ギルです。」
「あぁ、ありがとう、ギル。」
◆
アプリードリヒにはいくつかの空白期間があり、その間は謎に満ちている。
本人の言では、お告げがあり、肩に梨の木を授かった際に、ホールドウィンの声を聞いて、現状のファーデンフロイデに異を唱えるため、伏していたと言う。
それをそのまま信じている者もいるが、そうでない者ももちろんおり、歴史研究を専門としている者が辿った事もあるが、現在は口を閉ざしている。
噂では仙人に出会い修行に明け暮れたとか、ヴァイオリンの悪魔に魂を売ったとか、ホールドウィンの英霊に指導をされていた等のファンタジーな説から、貴族に匿われて時を待ったや、王族からの依頼で血筋の証明をする為の儀式を受けていた等の現実的な説もある。
その中の一つに、マフィアとなり私兵と資金を蓄えていたという説もあるが、アプリードリヒに後ろ暗い噂が起こる事自体は少なかった。
ある時、清廉ですねとのコメントに、彼は
「周りが過保護で困るよ。」
とだけ答えた。
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