フランとブランと願いごと

百瀬

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ある、遠いどこかの国、国のいちばんいなか町のはなしです。
そこには天涯孤独の貧しい若者がふたりおりました。
ふたりは同じぐらいの年でしたが、性格がまったく違いました。
貧しい者同士、何かとよく会うので、たまに一緒にパンを分けたり、寒い日は一緒に火に当たったりしていました。
フランはいつもきげんがよく、貧乏でもけして嘆いていませんでした。
彼はよく歌をうたい、わずかばかりのパンでも大切に、さめたスープでもおいしそうにありがたいありがたいと食べました。
フランは、きょうツバメの雛がやっと飛べるようになったとか、今日の空はとってもきれいだとか、小さなしあわせを見つけるのがとてもじょうずでした。

いっぽう、ブランは、いつもきげんのわるい男でした。
どうしてこんなに貧乏なんだ、はやく金持ちになりたいと、さぎまがいのことをしたり、すこし人をだましてお金を集めたりしては、
パンのこげたところや、頼んだスープのおいしくないところを見つけて文句を言っていました。ブランはずっと自分の人生を不幸だと思っていました。不満がいっぱいだったのです。
あるとき、ふたりに転機がおとずれます。
その日、旅をしているふしぎな老人が、ふたりの前に来ていいました。
「おまえの願いは、何か?」
フランは、「一緒に笑いあえる、かわいいお嫁さんがいてほしい。でも、こんなに貧乏だから無理だろうか?」と聞きました。
「いや、いや、叶うよ。」
と老人は言いました。また、「フラン、お前はとってもゆたかな男だよ、今にみておいで。」と言い、なにかまじないのようなことばを言って帰ってゆきました。


ブランのもとへも老人はやってきました。
「おまえの願いは、何か?」
ブランは、「金持ちになりたい。」とすぐに言いました。
老人は、「それなら、叶えてやろう。金がたくさんあれば、いいんだな?」
「ああ、そうだ。」ブランはうなずきました。老人はまた、フランのときと同じようにまじないのことばを言って、帰ってゆきました。


やがて、フランは気立てのよい、よく笑うかわいい女の子と知り合いました。
ふたりはたちまち恋に落ち、結婚することとなりました。
なんせフランは町の人気者でしたので、町のみんながふたりの結婚をよろこび、たくさんの食料や、おいわいの品をふたりにプレゼントしました。
フランもお嫁さんも大喜び。毎日おいしいものを食べ、美しい服を着て、いごこちのよい家に住み、とてもとてもゆたかになりました。
フランは歌の練習にはげみ、歌手としても有名になりました。



ブランは、フランがあっという間に金持ちになったと思い、嫉妬と、さみしさで、いかりっぽくなっておりました。
でも、なんとか、『あの老人は願いを叶える力があるのだから、おれはもっと、フランよりも金持ちになる』と信じました。
やがて、ブランのもとに、大金が舞い込みました。
ブランがたまたま、落し物の大金をひろい、それの持ち主が、いくらかをブランに分けてくれたのです。ブランはよろこび、それを元手に賭け事をして、大当たり。持っていたそのお金を何十倍にもしました。
あっという間に億万長者です。ブランはおおよろこびであのときの老人に感謝しました。
さあ、これからいい家を買おう。
いい服を着て、いいレストランでおいしいものをたんと食べよう。
だってこんなにお金があるのだから、なんだってできるぞと、ブランは強気になっておりました。
しかし、ブランはいい家を買うことができませんでした。町で一等見晴らしのいい豪邸は、持ち主がブランを嫌っていました。
町の一等地である土地も、同じ持ち主でした。彼はブランを嫌っていたので、そしてブランのお金はにせのお金ではないかと疑っていたので、ブランが金持ちになったことを信じませんでした。

ブランの失望はまだ続きました。
いい服も、服屋や仕立て屋の店員は売ってくれなかったのです。彼らはフランのお嫁さんのお祝いをプレゼントしているときに、その服たちを踏み、わざと靴跡をつけたブランが嫌いでした。
売ってくれないものは仕方がないので、ブランは適当な服を買いました。
いいレストランにも、ブランは入れてもらえませんでした。ブランはおいしいものにもありつけないのか、とそのときがいちばん弱りました。
こんなにお金を持っているのに、何も幸せじゃないのはどうしてだろうかと、憤慨しました。
ブランは、へんくつなおじいさんが持っている小さな家なら借りれたので、そこを借りました。おじいさんはブランを気に入り、いろいろごちそうしてくれましたが、ブランはやはりレストランの味が恋しくて、おじいさんの料理はものたりなく感じました。
しかし、ブランはしょぼくれている自分にやさしくしてくれたおじいさんを大事にしました。家賃も多めに支払いましたし、おじいさんの足が痛むときは、かわりに買い物に行ってやりました。
しばらく時間が過ぎ、ブランはだんだんおじいさんと食事をするのが一日の楽しみとなっていました。何を作ろうか、どんな珍しい野菜が売っているだろう。
ブランはおじいさんのために腕をふるいました。ブランは料理を続けると、なかなかいい腕前をはっきしました。おじいさんはいつも「おいしい、ブランの作るものは最高だ」、と言って食べてくれるので、ブランも満足でした。
ブランはレストランに行かなくてもよくなりましたし、着るものもおじいさんのお古を着ていました。もう仕立て屋や服屋に行く気が起こりませんでしたから。
ふたりでラジオを聴いたり、小さな家で小さなゲームをたのしみました。
ラジオから、なつかしいフランの歌声が流れてくることがありましたが、それも心地よくブランは聴いていました。



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