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第1章・廃棄ダンジョン編
第8話・代償魔法《リライト・デッド》
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「逃ゲタ。逃ゲタ。ソッチ、行クナ」
ゴブリン達が慌てて骨槍を投げつけます。どうやら、城の中に行かせたくない理由があるようです。
ドォス‼︎ガァス‼︎
「ぐっ…」
飛んで来る骨槍が身体に突き刺さろうと、気にせずルインは走り続けます。どうせ死ぬのは決まっています。死ぬと決めています。痛み程度は我慢するべきものだと、ルインは思っています。
出来るだけ大勢を引き連れる。俺は餌だ。俺の命は奴らにとって新鮮な餌程度の価値しかない。でも、それでいい。奴らの命も俺にとっては、レベルアップの経験値程度の価値しかない。
「死をもって死を得るか…」
古城の巨大な木扉は何とか原型を留めてしました。両開きの扉を全開で開ければ、馬車ごと中に入れそうです。
ルインは右肩を勢いよく扉に打つけて、扉を開けようとしましたが、ビクッともしません。内開きではなく、外開きの扉のようです。押すのではなく、引かないと扉は動きません。
急いで右手でドアノブを掴むと、力を入れて扉を開けました。
ガランガラン‼︎ガランガラン‼︎
「なっ‼︎」
不愉快な音が鳴り響きます。扉を開けると音が出る罠を仕掛けていたようです。
やっぱり賢いのがいる。あれは?
頭上を見上げると音の正体が判明しました。金属製の鎧に白い骨が打つかっている音でした。おそらくはルインと同じようにゴブリン達を殺しにやって来た冒険者達でしょう。少なく見ても、防具は6~7人分はありそうです。
まだ城のホールに入ったばかりですが、悪臭、刺激臭、腐敗臭と外とは段違いです。こんな所にいれば、短時間でもすぐに身体に異常が現れるでしょう。
「…うぐっ⁉︎オッエッッ‼︎」
我慢出来ずにルインは、昼ご飯に食べた物を城の石床にぶち撒けました。こんな場所で生活出来る人間やモンスターはいないはずです。でも、侵入者を知らせる音を聞きつけて、ズルズルと城の奥から何かがやって来たようです。
「ふぅ…ふぅ…うっぐっ⁉︎あれがゴブリングール?」
城の至る所から白い骨槍とボロ切れを纏った長身のゴブリングールが出て来ました。顔も手足も長く、見た目はゴブリンとは全く違います。これなら顔と手足が異様に長い人間と思った方が良さそうです。
ゴブリングールは雄と雌がいます。アンデッド系のモンスターですが、子供を生む事は出来ます。それでも、まだゴブリングールの数よりはゴブリンの数の方が多いようです。外にいるゴブリン達はグールにとっては食料のようなものです。つまりは家畜です。
中央に大階段、部屋は6。2階はさらにそれ以上か…。1階の部屋から出て来たゴブリングールよりは、2階から下りて来ているグールの方がレベルは高いな。
頭は冷静に動いてくれます。でも、身体の震えは止まりません。初めての冒険、初めての戦闘です。そして、死です。
ペタペタペタペタ。
レベル34…レベル48…レベル42…数は10匹以上、まだ増えそうだな。下手に攻撃しても瞬殺されるだけ。だったらこの場を動かずに、1匹でも多く、城の奥から誘き出す方が得か。
アイアンダガーを構えて、接近して来るゴブリングール達の様子を窺いますが、一定の距離まで近づくと立ち止まってしまいます。
警戒している?いや、違うな。コイツらは仲間を喰って生きている。馬鹿みたいに突撃して、怪我するのを嫌がっているだけだろう。だとしたら、最初に向かって来るのは1番レベルが低い下っ端か。レベル28、アイツだろうな。
「死にカケ。コイツ、弱イ。殺シテ、食ベル」
戦おうにも、邪魔な2本の白い骨槍がルインの身体に突き刺さったままです。右肩、左脇腹と致命傷は避けられましたが、新品だった服が破れて血で染まっています。残りのお金が少ないのに、手痛い出費です。
痛過ぎると何処を怪我しているのか分からないな。右手はほとんど動かない。でも、足に攻撃が当たらなくて助かった。お陰で少しは敵の実力が分かる。
「ぐゔっっ~~‼︎」
ズボッ‼︎
歯を噛み締めると、左手を身体の後ろに回して、脇腹に刺さっている邪魔な骨槍を引き抜きます。
「さあ、殺ろうか‼︎」
左手に白い骨槍を、右手にアイアンダガーを持って構えます。でも、次の瞬間、ゴブリングール達はルインの予想しない動きを見せました。白い骨槍を一斉に投げつけて来ました。
チッ‼︎包囲しての集中砲火か。本当に賢い。
ドォス‼︎ドォス‼︎ドォス‼︎
「…ひっぐ‼︎」
口から血を吐き出して、ホールの石床に膝をついて倒れます。腹部には多数の風穴が空いて、大量の血と臓物が飛び出しています。
投げつけられた白い骨槍のほとんどがルインの腹部に突き刺さり、貫通しました。投擲スピード、パワーともにゴブリンとは段違いです。一瞬でルインの命は刈り取られました。
「弱イ。弱イ。弱イの食ベル」
倒れて死んでいるルインに、ゴブリングール達が近づいて行きます。
代償魔法《リライト・デッド》発動‼︎
残り257人…。
ンンッ…?生きてる。…いや、死んでいるのか。俺がそこで死んでいる。…それよりもコイツら、俺が見えないのか?
半透明状態のルインは隣で倒れている自分の身体を見ています。今は幽体離脱のような状態なのか、ゴブリングールの誰も幽体ルインを見ようとしません。存在に気が付きません。
幽体ルインは試しにゴブリングールの1匹を殴ってみました。でも、右拳がゴブリングールの頭をすり抜けただけです。この身体では攻撃出来ないようです。出来るのは浮いて移動するのと、壁や地面を通り抜ける事ぐらいのようです。
そろそろ、30秒。クローリカの話が本当なら生き返る。とりあえず背後をとってからの奇襲攻撃がベストだろうけど、そもそもレベルも攻撃力も足りない。倒すなら、ここで使うしかないな。
「ココ、オレ、食ベル‼︎」
今では20匹以上のゴブリングールが1つの死体を前に言い争っています。誰が身体の何処を食べるのか、なかなか決まらないようです。どう見ても、その大人数に対して死体1つでは足りないでしょう。
経験値を多く稼ぐのならば、掴み合いの殺し合いになって、ゴブリングールの数が減る前に倒したい所です。
ルインは急いで移動します。1階の左側の部屋に入ると隠れました。空っぽの本棚が沢山並んでいます。どうやら、書庫や執務室のような場所だったのでしょう。中にはゴブリングールはいないようです。
「あつっ⁉︎助けて‼︎助けて‼︎」
何だ⁉︎誰かいるのか⁉︎
30秒経過すると、ルインの死体があった場所で誰かが大声で叫んでいます。
「変ワッタ?食ベルの変ワッタ?」
ゴブリングール達は目の前の死体が、生きている別の人間に変わった事を不思議に思っているようです。普通は驚いたりする所ですが、彼らには恐怖という感情や経験がないのでしょう。
「ルイン‼︎居るんだろ?私だ‼︎《ベン・フレミングス》だ‼︎助けてくれ‼︎」
ベン小父さん?まさか‼︎
「今助けるから、待ってて‼︎」
どうやら、ルインの知っている人のようです。部屋から飛び出して助けに向かいます。でも、その前に白い骨槍の1つがベンの喉に突き刺さりました。
ドォス‼︎
「うぐっつ…‼︎」
「ウルサイ。コレ、ウルサイ」
声が出ないようです。呼吸が出来ないようです。両手で喉に刺さっている白い骨槍を必死に退かそうとしますが、ピクリとも動きません。ベンは苦しみ踠きます。その姿はゴブリングール達が邪魔でルインには見えません。ただ、助けを求める声が止んだ事だけしか分かりません。
「エサ、来タ。戻ッテ、キタ」
ゴブリングールの何匹かが、背後から向かって来るルインの存在に気が付いたようです。
ルインの右手にはアイアンダガー、左手には白い骨槍が握られています。死んだ時に持っていた武器と着ていた服は、生き返ると手元に残るようです。身体の傷は修復されるようですが、破れた服は元通りにはならないようです。右肩に突き刺さっていた骨槍は、どうやら死んだ場所の近くに残されるようです。どういう仕組みかは分かりませんが、無害な物と有害な物で分けられるようです。
「お前ら、邪魔だよ‼︎」
代償魔法《アンミリテッド・キル》発動‼︎
残り256人…。
❇︎
ゴブリン達が慌てて骨槍を投げつけます。どうやら、城の中に行かせたくない理由があるようです。
ドォス‼︎ガァス‼︎
「ぐっ…」
飛んで来る骨槍が身体に突き刺さろうと、気にせずルインは走り続けます。どうせ死ぬのは決まっています。死ぬと決めています。痛み程度は我慢するべきものだと、ルインは思っています。
出来るだけ大勢を引き連れる。俺は餌だ。俺の命は奴らにとって新鮮な餌程度の価値しかない。でも、それでいい。奴らの命も俺にとっては、レベルアップの経験値程度の価値しかない。
「死をもって死を得るか…」
古城の巨大な木扉は何とか原型を留めてしました。両開きの扉を全開で開ければ、馬車ごと中に入れそうです。
ルインは右肩を勢いよく扉に打つけて、扉を開けようとしましたが、ビクッともしません。内開きではなく、外開きの扉のようです。押すのではなく、引かないと扉は動きません。
急いで右手でドアノブを掴むと、力を入れて扉を開けました。
ガランガラン‼︎ガランガラン‼︎
「なっ‼︎」
不愉快な音が鳴り響きます。扉を開けると音が出る罠を仕掛けていたようです。
やっぱり賢いのがいる。あれは?
頭上を見上げると音の正体が判明しました。金属製の鎧に白い骨が打つかっている音でした。おそらくはルインと同じようにゴブリン達を殺しにやって来た冒険者達でしょう。少なく見ても、防具は6~7人分はありそうです。
まだ城のホールに入ったばかりですが、悪臭、刺激臭、腐敗臭と外とは段違いです。こんな所にいれば、短時間でもすぐに身体に異常が現れるでしょう。
「…うぐっ⁉︎オッエッッ‼︎」
我慢出来ずにルインは、昼ご飯に食べた物を城の石床にぶち撒けました。こんな場所で生活出来る人間やモンスターはいないはずです。でも、侵入者を知らせる音を聞きつけて、ズルズルと城の奥から何かがやって来たようです。
「ふぅ…ふぅ…うっぐっ⁉︎あれがゴブリングール?」
城の至る所から白い骨槍とボロ切れを纏った長身のゴブリングールが出て来ました。顔も手足も長く、見た目はゴブリンとは全く違います。これなら顔と手足が異様に長い人間と思った方が良さそうです。
ゴブリングールは雄と雌がいます。アンデッド系のモンスターですが、子供を生む事は出来ます。それでも、まだゴブリングールの数よりはゴブリンの数の方が多いようです。外にいるゴブリン達はグールにとっては食料のようなものです。つまりは家畜です。
中央に大階段、部屋は6。2階はさらにそれ以上か…。1階の部屋から出て来たゴブリングールよりは、2階から下りて来ているグールの方がレベルは高いな。
頭は冷静に動いてくれます。でも、身体の震えは止まりません。初めての冒険、初めての戦闘です。そして、死です。
ペタペタペタペタ。
レベル34…レベル48…レベル42…数は10匹以上、まだ増えそうだな。下手に攻撃しても瞬殺されるだけ。だったらこの場を動かずに、1匹でも多く、城の奥から誘き出す方が得か。
アイアンダガーを構えて、接近して来るゴブリングール達の様子を窺いますが、一定の距離まで近づくと立ち止まってしまいます。
警戒している?いや、違うな。コイツらは仲間を喰って生きている。馬鹿みたいに突撃して、怪我するのを嫌がっているだけだろう。だとしたら、最初に向かって来るのは1番レベルが低い下っ端か。レベル28、アイツだろうな。
「死にカケ。コイツ、弱イ。殺シテ、食ベル」
戦おうにも、邪魔な2本の白い骨槍がルインの身体に突き刺さったままです。右肩、左脇腹と致命傷は避けられましたが、新品だった服が破れて血で染まっています。残りのお金が少ないのに、手痛い出費です。
痛過ぎると何処を怪我しているのか分からないな。右手はほとんど動かない。でも、足に攻撃が当たらなくて助かった。お陰で少しは敵の実力が分かる。
「ぐゔっっ~~‼︎」
ズボッ‼︎
歯を噛み締めると、左手を身体の後ろに回して、脇腹に刺さっている邪魔な骨槍を引き抜きます。
「さあ、殺ろうか‼︎」
左手に白い骨槍を、右手にアイアンダガーを持って構えます。でも、次の瞬間、ゴブリングール達はルインの予想しない動きを見せました。白い骨槍を一斉に投げつけて来ました。
チッ‼︎包囲しての集中砲火か。本当に賢い。
ドォス‼︎ドォス‼︎ドォス‼︎
「…ひっぐ‼︎」
口から血を吐き出して、ホールの石床に膝をついて倒れます。腹部には多数の風穴が空いて、大量の血と臓物が飛び出しています。
投げつけられた白い骨槍のほとんどがルインの腹部に突き刺さり、貫通しました。投擲スピード、パワーともにゴブリンとは段違いです。一瞬でルインの命は刈り取られました。
「弱イ。弱イ。弱イの食ベル」
倒れて死んでいるルインに、ゴブリングール達が近づいて行きます。
代償魔法《リライト・デッド》発動‼︎
残り257人…。
ンンッ…?生きてる。…いや、死んでいるのか。俺がそこで死んでいる。…それよりもコイツら、俺が見えないのか?
半透明状態のルインは隣で倒れている自分の身体を見ています。今は幽体離脱のような状態なのか、ゴブリングールの誰も幽体ルインを見ようとしません。存在に気が付きません。
幽体ルインは試しにゴブリングールの1匹を殴ってみました。でも、右拳がゴブリングールの頭をすり抜けただけです。この身体では攻撃出来ないようです。出来るのは浮いて移動するのと、壁や地面を通り抜ける事ぐらいのようです。
そろそろ、30秒。クローリカの話が本当なら生き返る。とりあえず背後をとってからの奇襲攻撃がベストだろうけど、そもそもレベルも攻撃力も足りない。倒すなら、ここで使うしかないな。
「ココ、オレ、食ベル‼︎」
今では20匹以上のゴブリングールが1つの死体を前に言い争っています。誰が身体の何処を食べるのか、なかなか決まらないようです。どう見ても、その大人数に対して死体1つでは足りないでしょう。
経験値を多く稼ぐのならば、掴み合いの殺し合いになって、ゴブリングールの数が減る前に倒したい所です。
ルインは急いで移動します。1階の左側の部屋に入ると隠れました。空っぽの本棚が沢山並んでいます。どうやら、書庫や執務室のような場所だったのでしょう。中にはゴブリングールはいないようです。
「あつっ⁉︎助けて‼︎助けて‼︎」
何だ⁉︎誰かいるのか⁉︎
30秒経過すると、ルインの死体があった場所で誰かが大声で叫んでいます。
「変ワッタ?食ベルの変ワッタ?」
ゴブリングール達は目の前の死体が、生きている別の人間に変わった事を不思議に思っているようです。普通は驚いたりする所ですが、彼らには恐怖という感情や経験がないのでしょう。
「ルイン‼︎居るんだろ?私だ‼︎《ベン・フレミングス》だ‼︎助けてくれ‼︎」
ベン小父さん?まさか‼︎
「今助けるから、待ってて‼︎」
どうやら、ルインの知っている人のようです。部屋から飛び出して助けに向かいます。でも、その前に白い骨槍の1つがベンの喉に突き刺さりました。
ドォス‼︎
「うぐっつ…‼︎」
「ウルサイ。コレ、ウルサイ」
声が出ないようです。呼吸が出来ないようです。両手で喉に刺さっている白い骨槍を必死に退かそうとしますが、ピクリとも動きません。ベンは苦しみ踠きます。その姿はゴブリングール達が邪魔でルインには見えません。ただ、助けを求める声が止んだ事だけしか分かりません。
「エサ、来タ。戻ッテ、キタ」
ゴブリングールの何匹かが、背後から向かって来るルインの存在に気が付いたようです。
ルインの右手にはアイアンダガー、左手には白い骨槍が握られています。死んだ時に持っていた武器と着ていた服は、生き返ると手元に残るようです。身体の傷は修復されるようですが、破れた服は元通りにはならないようです。右肩に突き刺さっていた骨槍は、どうやら死んだ場所の近くに残されるようです。どういう仕組みかは分かりませんが、無害な物と有害な物で分けられるようです。
「お前ら、邪魔だよ‼︎」
代償魔法《アンミリテッド・キル》発動‼︎
残り256人…。
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