代償魔法《デッド・オア・キル》〜260人の命を背負う不死身の冒険者〜

もう書かないって言ったよね?

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第1章・廃棄ダンジョン編

第15話・武器と防具

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 短剣一体型のナックルダスターを右手用と左手用に1個ずつ購入すると、次は防具を見に行きます。武器屋と防具屋は隣同士の建物です。歩いてすぐです。

(上半身と下半身、どちらの守りを優先するべきか…)

 生存率を上げるなら、脳や臓器を守る必要があるから兜や胸当て。でも、足を怪我すると戦うのも逃げるのも苦労しそうです。

(両方は流石に重くなるので欲張るのは駄目だろうな。生存率か……)

 代償魔法が使えるのは残り254回です。最大で254回も死ねる事を意味しています。防具とはルインにとっての生存率を高めるのではなく、島の誰かの生存率を高める為の物です。だとしたら…。

「小父さん!胸当てと籠手と脛当てとブーツをください!」

「おいおい、坊主、欲張り過ぎだぞ!防具ってのは付けると意外と動きにくいんだ。多過ぎると逆に駄目なんだぞ!」

(これだから素人は困るんだよ。俺の店の防具をつけている死体が見つかるだけで営業妨害なんだぞ!)

 実際に死んだ冒険者の家族や知り合いが、武器屋や防具屋に押し掛けて来る事がよくあります。大抵はお金を要求するだけですが、中には命を狙うような物騒な人もいます。売る側も注意が必要です。そういう意味では防具屋の小父さんの方が武器屋の小父さんよりは親切丁寧なようです。

「えっ~と、駄目でしょうか?」

「まずはレベルだな。んんっ!レベル26か。だったら少なくとも冒険者2、3年目だな。何だ?戦闘系のクエストに転向か?」

 ルインの見た目はどう見てもまだ子供です。今年で18歳になりますが、それでもまだ17歳です。冒険者になれるのは成人と認められる15歳からなので、防具屋の小父さんの目には、ルインは成人してすぐに冒険者になったそこそこベテランの冒険者に見えているようです。

(昨日、冒険者になったばかりとは言えないよな…よし、嘘を吐こう!)

「まあ、そんな所です。集団の低レベルモンスターと1人で戦う時はどんな防具がいいでしょうか?」

 ルインの説明は少し抜けています。武装したゴブリンの集団と説明した方がいいです。好戦的なモンスターもいれば、逃げるだけの臆病なモンスターもいます。不十分な情報では的確なアドバイスは出来ません。

 でも、ルインの事情を考えれば、出来る限り何処で何をやっているのか、何の為に冒険者をやっているのか、情報は隠し通さなくてはいけません。下手に知られるとそこから関係ない人にまでクローリカの存在が知られてしまう可能性があります。そうなると、島の人達がクローリカに何をされるか予想が出来ません。

「モンスターっても色々いるだろう。鳥系、狼系、亜人系と…空飛んでいるモンスター相手に地上で剣なんか振っても当たらないだろう?それと一緒なんだよ。何と戦うかで防具も変えないといけない。どんなモンスターとも相性の良い万能な防具はないんだぜ」

(要するに品揃えが悪いという事でしょうか?)

 ルインは喉の所まで出かかった言葉を何とか飲み込みました。そろそろ廃棄ダンジョンに向かいたいです。

「えっ~と、とりあえず拳と蹴りを主体に戦うつもりなんですけど、その場合の適切な防具はなんでしょうか?」

(この小父さん、良い人そうだけど、かなり面倒そうだな。さっきの武器屋の小父さんはお金を渡せばすぐに売ってくれたのに)

 店に入ってから、もう20分経過しました。他のお客が来ないので防具屋の小父さんと2人きりです。もう何でもいいから防具を買って店から出たいのに、この小父さんは簡単には売ってくれません。

「格闘タイプか。だったら、籠手と脛当ては絶対に必要だな!この蛇の鱗を使った籠手と脛当ては軽くて丈夫、しかも金属と違って錆びないから、手入れが簡単だ!しかも、安い‼︎まずはこれとこれで決まりだな!」

(あっ!あっあ!)

 買うと言っていないのに、何だか箱を用意して勝手に入れています。話は長くて遅いのに、箱をカラフルな包装用紙で包むスピードは桁違いです。ピンクと金のリボンでラッピングされてしまいました。もう買うしかありません。

「《スネイク・ガントレット》に《スネイク・グリーヴ》か。確かに良さそうだけど……」

 3万ゴールドと4万ゴールドと結構高いです。これを買えばウェインに渡された金貨は残り7枚になります。防具屋の店主のオススメ商品です。きっとこれ以外の防具を選ぶと、何だかんだとケチをつけられて、またこの商品に戻ってしまいます。もう買うしかありません!

「あのぉ…ラッピングはいいです。すぐに装備するので」

「えっ!……そういうのは早く言ってもらわないと困るよ。もうラッピング終わっちゃったよ」

「すみません。次からは気をつけます」

(この店も二度と来ないようにしよう)

 防具屋の店主は文句を言いながら、防具の入った箱からリボンと包装用紙を取っていきます。箱から籠手と脛当てを取り出すと、早速防具の付け方を教えてもらいました。普通は包む前に教える方が先だと思います。

「いいか、付け方は簡単だ。盾と一緒で赤い鱗がある前面しか守る事は出来ない。裏面にある3本のベルトで腕と足に固定すれば簡単には動かない。それと直接腕に固定するよりは布とか緩衝剤を入れた方が良いかもしれねぇな。その方が痛みは和らぐようだぜ」

 実際に防具を使った際の感想を色々と詳しく説明してくれますが、何だか、他人から聞いたような感じしか伝わりません。それにアドバイスというよりも、商品の苦情や改良点があるようにも聞こえます。だんだん訳あり商品でも買わされた気分になります。多分、返品は出来そうにないです。

「坊主、また来いよ!壊れたら格安で修理してやるからな。がっははは…」

「はい。その時はよろしくお願いします…」

 口ではそう言いましたが嘘です。ルインは二度とこの店には来ない事を心に誓いました。どう考えてもバスレの店です。こんな事なら冒険者ギルドのゴルベッドに優良店を教えてもらうべきでした。

(さて、やっと装備は整った。廃棄ダンジョンに向かおう!)

 レベルは26。武器も防具もあります。前のようにみっともなく逃げ回る必要は何処にもありません。今度は狩られる側から狩る側です。

「さあ、ゴブリン狩りの始まりだ!」

 ルインは意気揚々と古城のダンジョンを目指して、ルカテリナの街を出発しました。格下の相手ですが、数だけは100匹近いです。そう簡単に上手く行くでしょうか?

 








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