病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
45 / 70

第四十五話 冒険者ギルドに行ってみた

しおりを挟む
 上空からウサギとオオカミを見つけては、一匹ずつ確実に倒していく。
 複数いる場合は一匹倒しては空に逃げる。
 相手は飛べないので一方的に攻撃し放題だ。

『うげぇ、やっぱりピーマンだ』

 倒したての魔物なら少しは美味しいかと思ったら、やっぱり苦かった。
 でも、我慢して飲めば傷が治るし、お腹も少しは膨れる。
 戦い続けるには血の補給は欠かせない。

『ふぅ~~、今日はこの辺で終わろうかな』

 剣を鞘にしまうと地面に座り込んだ。
 収納袋の死体を数えたら、鎧ウサギが二十三匹、一角オオカミが十六匹だった。
 これだけあれば宿屋に泊まれそうだ。

 ついでに剣も買いたい。
 今使っているアイツの剣が折れたら、炭剣と交換できなくなる。
 それは絶対に嫌だ。あの剣は僕が貰う。

 休憩を終わらせるとトンネルに向かった。
 冒険者ギルドのある街を目指そうと思う。
 倒した魔物を売りたいし、ここの魔物はもう手応えを感じない。
 倒しているうちに僕の戦闘技術が上達してしまったみたいだ。
 雑魚魔物が超雑魚魔物になってしまった。もう僕の敵じゃない。

 ダンジョンを出ると近場の安全な場所まで飛んでみた。
 今から街を目指すほど元気じゃない。
 魔物も獣も来ないような、草の生えた崖の縁に寝っ転がった。

『うっ、ううん……』

 でも、ここじゃなかった。
 草の臭いがするし、感触がチクチクと地味に痛い。

『駄目だ。眠れない』

 眠いなら眠れると自分に言い聞かせたけど駄目だった。
 起き上がると翼を出した。頑張って街まで行った方がいい。
 野宿なんて子供がすることじゃない。
 やるとしてもお父さんみたいに馬車の中だ。

 方位磁石で街の方角を確かめると、そっちに向かって真っ直ぐ飛んでいく。
 いつかは街の明かりが見えてくるはずだ。それまでは寝るのは我慢だ。
 今寝たら墜落して永遠の眠りに落ちてしまう。

 ♢♢♢

『ま、街だぁ……』

 朝日が昇った後も頑張って飛び続けて、やっと街が見えてきた。
 街の明かりなんて必要ない。街そのものがハッキリ見えている。

『よっと、ここからは歩きで行かないと』

 ピーちゃんじゃないんだから、飛んでいる人間は不審人物確定だ。
 兵隊さんに捕まって、色々聞かれるに決まっている。

『えっと、たしか黒い布に白い獅子の旗のある、黒い屋根の建物だったよね』

 僕にとっては初の街だ。建物と人の数が村とは大違いだ。
 ピーちゃんの話で聞いた冒険者ギルドの目印を思い出していく。
 目印を知らないと一生見つけられないかもしれない。

『すみません。冒険者ギルドって、どっちにありますか?』

 目印知ってても分からないものは分からない。
 通りすがりのおじさんに聞いてみた。こっちの方が断然早い。

「ああ、あっちだよ。黒い旗に白獅子が描かれているから分かるはずだよ」
『ありがとうございます』

 ほらね。二十秒もかからずに分かっちゃった。
 おじさんにお礼を言うと、指を指した方向の道を進んでみた。
 しばらく色々な人に聞きながら進んでいくと、本当に黒い屋根に旗が掲げられている建物があった。

『これがピーちゃんが開けられなかった扉か……』

 重そうというか分厚そうな木扉がある。
 これを開けられないようなら冒険者にはなれない。
 なんだか緊張してきた。扉の取っ手を両手で持った。

『あらよっと!』

 片足で軽く蹴り飛ばして開けてやった。
 楽勝すぎて笑いが止まらない。

 扉が開いたので冒険者ギルドに入ってみた。
 怖いお兄さんとお姉さんがいたと言ってたけど、顔が怖いのは半分ぐらいだ。
 残り半分は普通のお兄さん、お姉さんといった感じだ。
 農家で例えると農家歴二十年の達人と二年の素人って感じだ。
 僕のお母さんはそういう意味では達人に入るから、怖いお母さんになる。

『すまない。魔物を売りたいんだがいいか?』

 フードローブで頭をキチンと隠して、受付のお姉さんに大人っぽく聞いてみた。

「あら、ずいぶんと小さなお客様ねえ。僕、いくつなの?」

 ほら、来た。聞かれると思ってたんだよね。

『人に年齢を聞くなら、まずは自分の年齢から言うのが礼儀なんじゃないのか?』
「二十四よ。僕、いくつかな?」
『僕じゃない。三十三だ』
「ぶふぅー!」

 後ろの方で何人か吹き出したようだけど、嘘じゃない。
 お父さんの年齢は三十三だ。

「あ、あら、ごめんなさい。年上だったんですね。それで魔物の買取りでしたね。見せてもらってよろしいですか?」
『ああ、これだ。弱すぎて相手にならないんだ。もう少し手応えのある魔物を紹介してほしい』

 急に敬語になったお姉さんは気にせずに収納袋を受付に置いた。
 こっちは眠くて腹減っているから、端た金でもいいから買取ってほしい。

「あー、鎧ウサギと一角オオカミですね」
「ぶふぅー! そりゃー弱えよ!」
「馬鹿、聞こえるぞ」

 また後ろの方で何人かが吹き出している。
 人の話を盗み聞きとは品のない連中だ。

「えっと、どちらもGランクの魔物ですので、一匹小銅貨二枚での買取りになります。よろしいですか?」
『構わない』

 三十九匹いるから大銅貨三枚にはなる。
 宿屋は無理でも食事代にはなる。寝るのは屋根の上で我慢しよう。

「こちらが買取り金額の大銅貨三枚と小銅貨八枚になります」
『ありがとう。助かったよ』

 しばらく待っていると、魔物が取り出された収納袋と硬貨をお姉さんが受付に置いた。
 自分で初めて稼いだお金だ。
 食事に全部使わずに、お母さんにお土産でも買っていこうかな?

「そして、こちらが紹介したい魔物が現れる難易度Fのダンジョンです」
『ふむ、街から近いな』

 渡された地図に書かれた丸印と矢印から考えると、一日あれば飛んでいけそうだ。
 街から矢印が伸びていて、丸印がダンジョンだ。

「はい、亜人系の魔物が現れるダンジョンで、常に暗い状態なので灯りを用意していくことをおすすめします」
『必要ない。俺には全てが見えている』

 また後ろの方で何人か吹き出しているけど、もう気にしない。
 暗闇でもハッキリ見えるのが吸血鬼だ。

「し、失礼しました。このダンジョンの亜人の死体は買取りできませんので、首にぶら下げている小さな袋があれば、その中身をお持ちください。中身の品物によって買取り金額を決めさせていただきます」
『分かった、袋の中身だな。色々助かったよ。ありがとう、お嬢さん』
「い、いえ、どうしたしまして。おじ様」

 フードの中で軽くウィンクすると、手を振って出口に向かった。
 Gランク魔物を倒したから、もう一人前の大人と名乗っても許される。
 おじ様、なんて素敵な響きなんだ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

処理中です...