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第二章 無人島で処女を奪われる

第14話 無人島探索【リュドミラ視点】

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「準備はいいですね?」

 短剣を右手に持って、左手で台座に触れると、緊張しているアーニャに言った。
 これから外に出て、道具部屋にあった無人島の地図を頼りに食糧の調達に行く。
 ついでに男を見つけたら刺し殺して、ノーラを助け出す。

「はい……でも、リュドミラ様はここに残っていた方がいいです。食糧なら私一人で調達できますから」
「どうしたんですか? あなたがそんな勇敢なことを言うなんて……お気持ちは嬉しいですが、村長の私が休むわけにはいきません。むしろ、あなたが残った方がいいぐらいです」
「いえいえ、付いて行きます。自分の食べ物ぐらいは自分で手に入れたいです」
「そうですね。働かざる者は死にますからね。では、私から行きますね」

 子供体型のアーニャ一人に、食糧調達という重要な仕事を任せるつもりはありません。
 アーニャが捕まれば、この場所をすぐに喋るでしょう。
 出来れば一生お留守番して欲しいぐらいです。

 シュン!

「……誰もいないようですね」

 合言葉を言って岩山の中から外に出ると、まずは周囲の安全を確認した。
 男の姿は見えない。台座の前に待ち構えられていたら大変でした。
 すぐに台座を目立ったないように、隠さないといけません。

「……リュドミラ様、大丈夫そうですか?」
「大丈夫みたいです。早く食糧を集めますよ」
「は、はい」

 しばらく警戒して待っていると、アーニャが出て来たので出発しました。
 地図にはリンゴの木が描かれているので、一番近くのリンゴの木を目指します。

「リンゴの種があれば、お風呂のお湯で洞窟の中で育てられますね」
「そんなに長く立て篭る必要ないです。あの男を殺せば全て解決します」
「だから危険ですって。50年ぐらいあの中で暮らせば、勝手に死んでくれますよぉ」
「嫌です。私は一日でも早く男を殺して、ノーラを助けたいのです」

 アーニャがくだらない提案をしてきたので、素早く却下しました。
 私は臆病者ではありません。あんな男に怯えて50年も無駄に出来ません。

「さあ、早く回収しますよ。食べる物が無ければ、男は飢え死にしますからね」

 布袋に木に成っているリンゴをどんどん入れていく。島の食糧は限られています。
 男に奪われる前に回収すれば、それだけ男を空腹で弱らせることが出来ます。
 強いのなら弱らせればいいだけです。

「はぁ、はぁ、はぁっ……夜までには終わらせますよ」

 持って運べる重さまでリンゴを詰め込むと、今度は岩山の中に戻ります。
 岩山の中に回収したリンゴだけを置いて、また布袋にリンゴを詰め込みに行きます。
 これを繰り返して、近場のリンゴの実を回収すれば、ひとまず休憩です。

 食糧の回収が出来て、男を空腹で弱らせて、重たい物を持って強くなれます。
 一度に三つの作戦が同時に進んでいきます。
 あとは死にかけの男の寝込みを襲って、ノーラを救出すれば私達の勝利です。

「はぁ、はぁ、はぁっ……リュドミラ様、もう無理ですぅ!」
「はぁ……アーニャ、あなたは本当に役に立たないですね。だから、本ばかり読むのは駄目なんです。仕事しないから、すぐに疲れるんです。少しずつでもいいので、運んでもらいますからね!」
「そんなぁ……もう無理ですぅ~」

 まだ三往復目なのに、岩山の中の芝生の絨毯にアーニャが座り込んでしまった。
 この瞬間にも、ノーラがどんな目に遭っているか想像すれば、そんな弱音は吐けないはずです。
 無理矢理立たせると外に連れて行きました。

「本当にリンゴばかりですね。リンゴ好きか、リンゴしか育たないのでしょうか?」

 キノコや食草もあるので文句はないですが、果物がリンゴだけなのは困ります。
 前に住んでいた人がリンゴ好きだったのかもしれません。
 何とか村に戻って、ブドウやオレンジ、イチゴやモモの種を手に入れたいです。
 一ヶ月も経てば、盗賊達も村には残っていないでしょう。

「……そうですね。私もリンゴは一個あれば十分です」
「確かに今日はもう十分集めましたね。あとは夜の為に体力を残しておきましょう」
「ふぅはぁぁぁ、やっと終わりです!」

 今日のリンゴ回収はここまでです。
 アーニャの体力がもう限界です。岩山の中に戻ると芝生の上に寝転んでしまいました。
 夜には男の様子見、明日は同じ作業をします。
 もう休憩させたないと、夜に使いものになりません。

「アーニャ、夜になりました。行きますよ」
「もうですか? あっ、はい」

 夜まで休憩と準備を済ませると、私とアーニャは男を殺しに出発した。
 丈夫な長い木の棒に短剣を布で巻き付けて、槍を作った。
 男の強い腕に掴まれない距離から、二人掛かりで攻撃すれば勝てるはずです。

「あれは……何をしているんですか?」

 台座のある橋の所に行くと男は起きていた。
 岩橋の上に座って、剣を海に向かって振っている。これでは奇襲で殺せない。

「あれは多分、釣りだと思います。本で読んだことがあります。海に中に住んでいる魚という生き物を、ああやって捕まえているんです」
「うぐっ、生き物を食べるなんて野蛮ですね。それよりもノーラは何処にいるですか?」

 私の疑問にアーニャが答えてくれた。
 血の出る生き物を食べている姿を想像しただけで、気持ち悪くて吐きそうになる。
 正直言って、教えないで欲しかった。
 でも、そんなことはどうでもいい。男の近くにノーラの姿が見えない。

「もしかして、殺されて海に捨てられたんじゃ……」
「そんなはずないです! ノーラは生きてます! あの男は盗賊ですよ。売りものを売らずに殺して捨てるなんて考えられないです。きっとノーラに逃げられたんです!」

 アーニャの馬鹿な考えに怒った。
 ノーラがいないのなら、逃げ出したと考えるのが普通です。

「アーニャ、ノーラを探しに行きますよ。きっとあの男は、台座からやって来るお母様達を待っているんです。ノーラを見つけて、三人掛かりで男を殺しますよ」

 男の考えを読むとアーニャを連れて、ノーラを探すことにした。
 男が動けないなら今がチャンスです。そこまで広い島ではありません。
 この海岸から反対側の海岸まで、歩いて一時間もあれば行けると思います。

「リュドミラ様、探すと言っても何処を探すんですか? 隠れている人を見つけるのは簡単じゃないですよ」
「それは分かっています。大声で名前を呼ぶわけにもいきません。でも、それでも島中を探すしかないんです。それしか方法はありません」
「うぅっ、分かりました。私は島の左側を探します。リュドミラ様は右側を探してみてください」
「確かに二手に分かれて探した方が良いですね。分かりました。そうしましょう。ノーラを見つけられなくても、朝には岩山に戻ってくださいね」

 アーニャの意見を参考に二手に分かれると、ノーラの捜索を開始した。
 私がノーラなら、男の近くには隠れない。
 だとしたら、私達を探しながら、怖い思いで森の中を移動しているはずです。
 早く見つけてあげないといけません。

「はぁ……駄目ですね。やっぱり簡単には見つかりません」

 やっぱり隠れている人間を見つけるのは難しい。このままだと海岸に出てしまう。
 まさか、本当に殺されて海に……いえいえ、そんな馬鹿なことを考えたら駄目です。
 今日が駄目なら明日です。

「あれは……?」

 リンゴの木の下に白い塊が見えた。短剣の槍を構えて警戒しながら近づいていく。

「ノーラ⁉︎ 嗚呼、良かった!」

 槍を手から離すと、地面に倒れているノーラに駆け寄った。
 近くに食べたリンゴの芯が落ちているので、ここで力尽きて寝てしまったようです。

「あぅっ……リュドミラ様……? 会いたかったです! ご無事ですか?」
「ぐっす、うぐっ、えぇ、あなたのお陰ですよ! 安全な場所を見つけました。そこには男は入って来れません。もう安全です」

 嬉しさから自然と涙が流れてしまう。ノーラは動くのもキツそうです。
 あの男から酷い乱暴を受けたのは間違いない。あの男への怒りが更に溢れていく。
 でも、今はノーラの手当てが先です。
 ノーラに肩を貸すと、岩山の隠し部屋に連れていった。
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