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第6話 魔物が暮らす廃都到着

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 破壊された道路を進み続ける事……数日。
 道路沿いに『警告! この先、危険区域!』と書かれた真新しい看板が立っていた。
 もうそろそろ仕事場の廃都サンディエルゴに到着しそうだ。
 サンディエルゴは北と東に山と森、西に海、南に荒野に囲まれた街で、数百年前は観光都市だったらしい。
 今はその面影はなく、ただの巨大なゴーストタウンになっている。

「さてと、ギルっち。ここからは慎重に行かないと死んじゃうよ」
「もしかして、それで戦うのか?」
「そうだよぉ~。普段通りに動けるし、一つ壊れても残り三つあるから安心できるよ」

 ミアは助手席に座ると、前方をジッーと見ながら話しかけてきた。
 既に両手足に青白い光を放つ武器を装着しているので、戦闘準備完了のようだ。
 両手にミスリルグローブ、両足にミスリルブーツを付けている。
 接近戦でボカスカと戦う格闘タイプのようだ。
 
「はい、これがあんたの武器よ。これも弁償してもらうから」
「また弁償か……」

 ミアと話していると、ケイトもやって来た。
 手には青白い鞘に入れられた剣を二本持っていて、私に一本渡してきた。
 これが私の武器のようだが、壊してもないのに弁償だ。
 
 まあいい。いちいち馬鹿娘の相手をするのは疲れた。
 ゴルフクラブに野球バットと、棒状の物を振り回して、白球を遠くに飛ばすのは得意だ。
 剣なら同じように振り回せるだろう。

 それにしても、金を稼ぎに来たのに、仕事に必要な道具だと言われて、色々と買わされている。
 もう結構な額、ケイトに借金している。
 私を借金塗れにして、結局はタダ働きで車から追い出すつもりなんじゃないのか?

「文句があるなら剣を返して、素手で戦えばいいでしょう。でも、もうあんたが触って汚染されたから返品できないけど」
「汚染されたなら、除菌シートで拭けばいいじゃないか」
「あんたの菌はしつこいから除菌できないのよ」

 私は歩く究極細菌兵器かよ。
 感染したら、どんな症状が現れるんだよ。

「めちゃくちゃだな。それだと私が触った物は全部買取りしないといけないじゃないか。この車も私が買取らないといけないのか?」
「そうしたいなら買取らせるけど、あんたじゃ無理でしょう。馬鹿な事を聞く前に作戦会議よ。パトリもこっちに来て。足手まといの汚染ジジイがいるから念入りにしないと」

 馬鹿な事を言っているのは、お前の方だろうが!
 いちいち私をイラつかせる、ケイトの余計な一言が気になるが、今は喧嘩は駄目だ。
 何をすればいいのか分からない仕事場に、放り出されるのは困る。
 ここは黙って聞くしかない。

「お待たせ。始めていいよ」

 しばらく待っていると、二丁拳銃を太ももに装備して、ライフル銃を持ったパトリがやって来た。
 ミアと違って、パトリは遠距離タイプのスナイパーのようだ。

「それじゃあ全員準備は出来たようね。基本的にやる事はいつもと同じだけど、今日はこれがいるから、いつもより難しくなると思う。でも、これがやられそうな時は見捨てていいから。安全第一で行きましょう」
「はぁ~い!」「うん、分かった」

 ケイトはこれ、これと私を指差して言っている。
 ジジイ扱いから、物扱いになったようだ。
 ケイトの言葉にミアとパトリは元気に返事している。
 仮採用の私を命懸けで助けてくれる仲間はいないと思った方がよさそうだ。
 自分の身は自分で守るしかない。

「もう廃都の外側には何も無いと思った方がいいと思う。中心地を探して……」
「だったら前回の近くから始めた方がいいと思う。その方が見落としは減ると思う」
「えっ~、それよりもパトリが上空から恐竜を見つけた方が早いよ。倒した後にゆっくり探そうよ」

 何も知らない私を置き去りにして、作戦会議は進んでいく。
 廃都の中心部を探したいケイト、ローラー作戦で街を隅々まで探したいパトリ、恐竜倒してお金と安全を確保したいミア、三者三様のやり方を主張している。
 女同士で仲が良いと思っていたが、案外、チームワークはバラバラなのかもしれないな。

「ギルは何か作戦はないの? 無いならジャンケンで決めるよ」

 パトリが私に作戦がないか聞いてきた。
 残念ながら行った事もない場所の事を聞かれても、何も思いつかない。

「ジャンケン? ジャンケンで勝った人の作戦をやるのか?」
「そうだよ。ジャンケンで勝った人はその日の運が良いから」
「縁起を担いでいる訳か。私は何も分からないから、三人で決めてくれ」

 私は三人のジャンケン結果を待つ事にした。
 廃都の街は映像で見た事がある。
 でも、実際に見た人間はほとんどいない。
 運転席に座る私の目に廃都の街並みが近づいてくる。
 十階建てから五十階建てまである高層ビルの外壁には、繁殖した植物が緑の壁を作っている。
 陥没したり、ひび割れた歩道や道路の真ん中には樹木が立っている。
 長い年月をかけて、真の意味でコンクリートジャングルになったと言えるだろう。

「「「せーの!」」」

 しばらくすると、三人の掛け声が後ろから聞こえてきた。
 ジャンケンが始まったようだ。
 何度か掛け声は続いたが、五回目の掛け声で勝負がついたようだ。
 ミアの笑い声が聞こえてきた。

「にゃはははは。ギルっち、良かったね。いきなり実戦が出来るよ。バシバシ倒せば大金がっぽりだよ」

 私にとってはいきなり罰ゲームがやって来たようなものだ。
 素直に喜べない。
 それでも金額を聞けば、笑いが止まらなくなるかもしれない。

「そんなにお金になるのか?」
「小型の【ヴェロキラプトル】なら、一人四匹倒せば赤字にはならないよ。中型や大型は倒した事ないから分からないけどね」
「一人四匹でいいのか? それが沢山いて弱いなら、それを狙った方がいいんじゃないか!」

 今にも崩壊しそうな危険な建物の中に入るより、屋外の広い場所で恐竜と戦う方が安全そうだ。
 五階建て以上の建物が崩壊すれば、瓦礫の下敷きになって死んでしまう。

「それが簡単に出来ないから誰もやらないのよ。小型の近くには中型がいて、この車と同じぐらいの大きさよ。それに中型を狙っている大型もいる。つまりは小型と大型はセットなのよ。そして、私達が倒せるのは小型だけよ」
「ふむ……逆に考えれば、中型と大型を倒せれば、何も問題ないという事だろう? 大型は無理だとしても、中型は絶対に倒せないのか?」

 まあ、世の中そんなに甘くないのは分かっている。
 ケイトが恐竜を狙うリスクを話してきた。
 でも、ピンチをチャンスに変える事が出来れば、商機が生まれる。
 ライバルがいないなら、大儲けは確実だ。

「それは無理だよ。中型恐竜の【トリケラトプス】は、目の上に長い二本の角と鼻先に短い角が一本あるんだよ。この車も体当たり一発で、串刺しのペシャンコにされちゃうよ。もちろん私達もね」
「でも、この車ぐらいの大きさならば、建物の三階からパトリのライフルで一方的に攻撃できるじゃないか。三百発も当てれば倒せるんじゃないのか?」

 ミアの言う通り、体当たりされたら、串刺しペシャンコになるだろう。
 でも、銃を使って遠距離や空中から攻撃すれば、何も心配する必要はない。

「それは無理だったよ。前に試してみたけど、銃弾は硬い身体を貫通しなかったから」

 なるほど、攻撃力が足りないのか。
 だったら、攻撃力を上げればいい。

「だったら、高層ビルに体当たりさせて、倒れて来たビルで押し潰すとか——」
「はいはい。もぉー、やめ。そんな事したら体内の魔石も壊れるだけよ。ジジイの妄想タイムは終わりよ」

 パンパンと両手を叩いて、ケイトは私の話を終わらせた。
 確かにビルで押し潰したら、魔石は壊れるかもしれない。
 でも、色々なアイデアを出し合い、話し合う事で新しいアイデアは生まれるものだ。
 夢でも妄想でも見てもいいじゃないか。
 それにトリケラトプスをビルで倒せば、邪魔者はいなくなる。
 それはそれでいいはずだ。

「待て待て! あとちょっとで良い案が出るかもしれない」
「にゃはは。ギルっち、残念時間切れだよ。もう到着したから、そこの駐車場に駐めて」
「んっ? こんな所でいいのか? もっと街の奥に入らないと、恐竜も金目の物も見つからないんじゃないのか?」

 考えている途中なのに、廃都の街に少し入った所で、ミアが広い駐車場に車を駐めるように言ってきた。
 廃都の中心部には五十階以上の高層ビルが多数あるのに、この辺は駐車場や三階建ての小さな建物しかない。
 
「それはしない方がいいんだよ。守るべき優先順位は車、人、物なんだよ。車が壊れたら街に帰れなくなるでしょう。瓦礫が車に落ちて来たら危ないし、恐竜に壊されたら大変だから」
「うんうん、そういう事だよ。それに廃都の中は瓦礫とか障害物が多いから、車で移動するのは難しいんだよ」
「なるほど。確かに車が一番大切だな」

 パトリとミアは街から離れた駐車場に、車を駐める理由を話してくれた。
 車のエンジン音は静かな方だが、無音という訳ではない。
 近くに恐竜がいたら気づかれて、襲って来るかもしれない。
 そう考えると、廃都の街中を呑気にドライブする馬鹿はいないな。

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