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第7話 廃都の探索ツアー
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『恐竜はいないよ。車から出て来ていいよ』
「はいはぁ~い」
首にかけている輪っか型の無線機から、パトリの声が鮮明に聞こえてきた。
その声にまったく緊張感のないミアが返事をする。
パトリは鳥の獣人というか、鳥は獣じゃないから鳥人になるか。
車から降りるとパタパタと飛んで、上空から車の周囲の安全を確認してくれた。
「ギルっち、行くよぉ~。武器とアビリティリングは忘れないようにね。あっでも、武器とリングのスイッチは入れっぱなしは駄目だよ。魔石のエネルギーが切れると、ただの金属の塊になるからね」
「使うのは戦闘中と重たい物を持つ時だけだろ。そんなに心配しなくても分かっている」
車の中央にある扉から外に出ようとしていたミアが、運転席に座っている私を呼んでいる。
既に車の外に出ていたケイトは、いつもの白ブラウスの上に、若草色のジャケットを着込んでいた。
濃い緑の長ズボンと合わせて、廃都の建物の壁に張り付いている草に、擬態でもするつもりなんだろう。
その程度で恐竜の目が誤魔化せる訳がない。馬鹿の極みだな。
私は中途半端な娘とは違い、古着屋で見つけた激安の黒のリクルートスーツを着ている。
男の勝負服はこれ以外考えられない。
首元には黒ネクタイをビシィと着用している。
廃都で亡くなった人達と、今日、私に倒される恐竜達の冥福の為だ。
まさに今の私は死の営業マンだな。
「本当かなぁ~? トイレには行っておいた方がいいからねぇ」
「大丈夫だ。トイレには行ったし、手もキチンと洗った」
「石鹸付けて?」
「……石鹸は使ってない」
「ダメだよ、料理担当なんだから。キチンと手を洗う習慣を付けないと」
「んんっー、今度から気を付ける」
「うんうん、そうしてねぇ」
しつこいなぁー。私の母親か!
自分で言うのもなんだが、四十歳のジジイを子供扱いしないでほしい。
まあ、先輩として後輩の世話を焼きたがる気持ちは分からなくもない。
実際に今日が仕事初日と言ってもいい日だ。
右も左も分からない新入社員に色々と教えたいのだろう。
「それじゃあ、出発するわよ。あんたは真ん中前衛で、私とミアが左右の後衛よ。基本的にこの陣形で進むから覚えるように」
車から降りると、ケイトの指示通りに、私達は三角形の陣形を取りつつ廃都を進み始めた。
向かっているのはビジネス街だ。高層ビルや商業施設が多数存在している。
今は働いている人もいないし、売られている物は風化されずに残った物しかない。
恐竜を見つければ、上空を飛んでいるパトリが教えてくれる。
私がやる事は、壊れた道や植物で覆われた建物の中に、金目の物がないか探すだけだ。
「ほとんどボロボロで使えそうな物は何も残っていないんじゃないのか? 何を見つければいいんだ?」
路上に駐まっている自動車は錆びて壊れたり、植物のプランターになっている。
建物なんて、植物製の緑のシャッターを破壊しないと、中に入れないし、何も見えない。
「基本は宝石。でも、宝石を扱っている店は、ほとんど荒らされた後よ。今は陶器とか工芸品が狙い目。あとは本ね。紙派の愛好家に人気があるから」
「複雑に考えずに適当でいいんだよ。保存状態が良さそうな物は大抵お金になるし。ワインの瓶もラベルが付いたのなら買う人もいたよ」
『そうだね。前に花や野菜の種、車のナンバープレートが売れた事もあるからね」
なるほど、三人の意見を総合すると、とりあえず原型を留めている物は拾えという事らしい。
一般的にアンティーク品と呼ばれる物を拾っておけば間違いないだろう。
「……となると、ビジネス街を狙うよりも、住宅街を狙った方がいいんじゃないのか? そっちの方が物の種類は豊富だろう」
「うーーーん、でもね……出るんだよ。ドロドロドロ~~、怪物が」
「怪物?」
私の質問にミアは両手を持ち上げて、手首の先を曲げてユラユラ揺れながら答えている。
幽霊? ゾンビ? これだと怪物が怖いのか、可愛いのか分からない。
「そう、怪物。遭遇したら死亡率百パーセントの不死身の怪物。集合住宅や民家に住んでいるらしいから、行くなら死ぬ時だけにして」
「今度は不死身の怪物か。幽霊とかゾンビでも住んでいるのか?」
まだ幽霊ごっこを続けているミアを無視して、ケイトが真面目に答えてきた。
死亡率百パーセント? めちゃくちゃ嘘臭いな。
それだと怪物に殺された人間を調べている奴がいる事になる。
そいつは死んでないじゃないか。
「にゃ~、それが分からないんだよ。死亡率百パーセントだから。私達が使っているあの車も、住宅街で放置されていた物を安く買ったんだよ。一括払いで大変だったけどね」
「なるほど、縁起の悪い事故車両みたいなものか。道理で少ない稼ぎで購入できた訳だ」
幽霊ごっこをやめたミアのお陰で、ケイトがたったの三年でキャンピングカーを購入できた謎は解けた。
だが、肝心の怪物がいるという謎はまだ解けていない。
分かっている事は、住宅には何かヤバイのがいるかもしれないという事だけだ。
もちろん、商売相手を近づけさせない為のデマ情報の可能性もある。
でも、わざわざキャンピングカーを放置するとも思えない。
うーん、ここは素直にケイトの忠告を聞いていた方が良さそうだ。
♢
「はいはぁ~い」
首にかけている輪っか型の無線機から、パトリの声が鮮明に聞こえてきた。
その声にまったく緊張感のないミアが返事をする。
パトリは鳥の獣人というか、鳥は獣じゃないから鳥人になるか。
車から降りるとパタパタと飛んで、上空から車の周囲の安全を確認してくれた。
「ギルっち、行くよぉ~。武器とアビリティリングは忘れないようにね。あっでも、武器とリングのスイッチは入れっぱなしは駄目だよ。魔石のエネルギーが切れると、ただの金属の塊になるからね」
「使うのは戦闘中と重たい物を持つ時だけだろ。そんなに心配しなくても分かっている」
車の中央にある扉から外に出ようとしていたミアが、運転席に座っている私を呼んでいる。
既に車の外に出ていたケイトは、いつもの白ブラウスの上に、若草色のジャケットを着込んでいた。
濃い緑の長ズボンと合わせて、廃都の建物の壁に張り付いている草に、擬態でもするつもりなんだろう。
その程度で恐竜の目が誤魔化せる訳がない。馬鹿の極みだな。
私は中途半端な娘とは違い、古着屋で見つけた激安の黒のリクルートスーツを着ている。
男の勝負服はこれ以外考えられない。
首元には黒ネクタイをビシィと着用している。
廃都で亡くなった人達と、今日、私に倒される恐竜達の冥福の為だ。
まさに今の私は死の営業マンだな。
「本当かなぁ~? トイレには行っておいた方がいいからねぇ」
「大丈夫だ。トイレには行ったし、手もキチンと洗った」
「石鹸付けて?」
「……石鹸は使ってない」
「ダメだよ、料理担当なんだから。キチンと手を洗う習慣を付けないと」
「んんっー、今度から気を付ける」
「うんうん、そうしてねぇ」
しつこいなぁー。私の母親か!
自分で言うのもなんだが、四十歳のジジイを子供扱いしないでほしい。
まあ、先輩として後輩の世話を焼きたがる気持ちは分からなくもない。
実際に今日が仕事初日と言ってもいい日だ。
右も左も分からない新入社員に色々と教えたいのだろう。
「それじゃあ、出発するわよ。あんたは真ん中前衛で、私とミアが左右の後衛よ。基本的にこの陣形で進むから覚えるように」
車から降りると、ケイトの指示通りに、私達は三角形の陣形を取りつつ廃都を進み始めた。
向かっているのはビジネス街だ。高層ビルや商業施設が多数存在している。
今は働いている人もいないし、売られている物は風化されずに残った物しかない。
恐竜を見つければ、上空を飛んでいるパトリが教えてくれる。
私がやる事は、壊れた道や植物で覆われた建物の中に、金目の物がないか探すだけだ。
「ほとんどボロボロで使えそうな物は何も残っていないんじゃないのか? 何を見つければいいんだ?」
路上に駐まっている自動車は錆びて壊れたり、植物のプランターになっている。
建物なんて、植物製の緑のシャッターを破壊しないと、中に入れないし、何も見えない。
「基本は宝石。でも、宝石を扱っている店は、ほとんど荒らされた後よ。今は陶器とか工芸品が狙い目。あとは本ね。紙派の愛好家に人気があるから」
「複雑に考えずに適当でいいんだよ。保存状態が良さそうな物は大抵お金になるし。ワインの瓶もラベルが付いたのなら買う人もいたよ」
『そうだね。前に花や野菜の種、車のナンバープレートが売れた事もあるからね」
なるほど、三人の意見を総合すると、とりあえず原型を留めている物は拾えという事らしい。
一般的にアンティーク品と呼ばれる物を拾っておけば間違いないだろう。
「……となると、ビジネス街を狙うよりも、住宅街を狙った方がいいんじゃないのか? そっちの方が物の種類は豊富だろう」
「うーーーん、でもね……出るんだよ。ドロドロドロ~~、怪物が」
「怪物?」
私の質問にミアは両手を持ち上げて、手首の先を曲げてユラユラ揺れながら答えている。
幽霊? ゾンビ? これだと怪物が怖いのか、可愛いのか分からない。
「そう、怪物。遭遇したら死亡率百パーセントの不死身の怪物。集合住宅や民家に住んでいるらしいから、行くなら死ぬ時だけにして」
「今度は不死身の怪物か。幽霊とかゾンビでも住んでいるのか?」
まだ幽霊ごっこを続けているミアを無視して、ケイトが真面目に答えてきた。
死亡率百パーセント? めちゃくちゃ嘘臭いな。
それだと怪物に殺された人間を調べている奴がいる事になる。
そいつは死んでないじゃないか。
「にゃ~、それが分からないんだよ。死亡率百パーセントだから。私達が使っているあの車も、住宅街で放置されていた物を安く買ったんだよ。一括払いで大変だったけどね」
「なるほど、縁起の悪い事故車両みたいなものか。道理で少ない稼ぎで購入できた訳だ」
幽霊ごっこをやめたミアのお陰で、ケイトがたったの三年でキャンピングカーを購入できた謎は解けた。
だが、肝心の怪物がいるという謎はまだ解けていない。
分かっている事は、住宅には何かヤバイのがいるかもしれないという事だけだ。
もちろん、商売相手を近づけさせない為のデマ情報の可能性もある。
でも、わざわざキャンピングカーを放置するとも思えない。
うーん、ここは素直にケイトの忠告を聞いていた方が良さそうだ。
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