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第38話 人型戦闘機ファイヤーボール・ライアン
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北東を目指して進んでいると、髭モジャを巻いて来たパトリが帰って来た。
ケイト達が駆け寄って、パトリを心配している。
やっぱり、私とは対応が全然違うな。
「お帰り、パトリ。大丈夫だった?」
「楽勝だった。頭を引き千切りながら、少し遠くまで捨てて来たよ。しばらくは大丈夫だと思う」
「おお! 流石はパトリだね。今度は私が手足を引き千切って、遠くに投げ捨ててみるね!」
「その時は全部別々の方向に投げた方が良いかも。くっ付きにくいと思うから」
「なるほど、別方向だね。だったら、あんまりバラバラには出来ないね。上半身と下半身でやってみようかな?」
パトリは見た目と違って、身体能力が高い。
灰色魔石のリングを使って、あの細腕で髭モジャの頭は引き千切れない。
そんなパトリに触発されたのか、ミアが両手で空気を掴むと、その場でグルグルと回り始めた。
エアハンマー投げで、メタルスライムを遠くに投げる練習をするようだ。
私の身体を練習台に使わないなら、いくらでもやっていいぞ。
「あうっ!」
「はい、そこまで。メタルスライムは問題なさそうね。これから白黒を倒しに行くけど、パトリは作戦とかある? 何でもいいから、良さそうなものがあったら言っていいよ」
ミアとパトリが盛り上がっている途中なのに、ケイトがミアの両手を掴んで止めた。
投げさせてから止めればいいのに、もっと重要な話がしたいようだ。
バイアスを倒す作戦がないかと、パトリに聞いている。
やっぱり行き当たりばったりの作戦に、不安を感じているんじゃないだろうか。
私は不安で不安で仕方がない。
「作戦はないけど、この先に五人いるよ。ギルの分の白魔石が手に入るから、戦力アップ出来る」
ケイトの質問にパトリは前方を真っ直ぐに指差している。
安全な場所に逃げている訳じゃなかったようだ。
「確かに囮役のジジイが簡単にやられちゃうと、ジジイが連れて行った奴らが、すぐに戻って来るから心配だったのよね。じゃあ、そいつらを襲ってから白黒の所に行きましょう。良かったわね。助かるかもしれないわよ」
ケイトが私の方を見て、微笑みながら言った。
自分の心配ばかりせずに、私の心配を少しはしろ。
そして、少しはまともな作戦を考えろ。
「何が良かっただ。最初から私を殺す予定の作戦を考えるな」
「別にいいでしょう。あんたはもう人生楽しんで、やり残した事ないんだから」
「まだまだあるに決まっている。勝手に私の人生をバットエンドで終わらせようとするな」
「はいはい。じゃあ、頑張って生き延びてくださいねぇ~」
「はぁっー?」
相変わらずムカつく娘だな。親を小馬鹿にして楽しいのか。
全ての元凶は、お前が変な男達にナンパされた所為なんだからな。
♢
パトリに案内されて、また五人の若者を殺害した。
私はリーダー格が嵌めていたリングから白魔石を外して、自分のリングに嵌めさせてもらった。
これで私の死亡率は少しだけ下がった。
武器の分はバイアスの周囲にいる仲間から奪わないといけない。
でも、それは正直無理だと思う。
到着したバイアスの夜営地には、予想外の物が置いてあった。
「あれ? 戦ってないね。とりあえず奇襲する?」
「それもいいけど、減ったら援軍が来るだけよ。下手に警戒されるのは厄介だし、やるなら一気にやらないと」
ランプの灯りを消して、ミアとケイトが休憩中の男達を見ている。
家を松明代わりに燃やしている夜営地は、かなり明るい。
十五台程の浮遊式バイクに、黒い大きなキャンピングカーが一台駐まっている。
だが、これらはどうでもいい。問題は地面に立てられている、あれだ。
身長二メートル三十センチ、分厚い白黒の金属の肉体を持つ人形が敷物の虎のように広がっている。
間違いない。あれは警察が使用する治安維持用兵器、【人型戦闘機FR(ファイヤーボール・ライアン)】だ。
背中の六枚羽根で高速飛行が可能で、両腕の先端にある砲口から魔石のエネルギー弾を発射できる。
あいつら戦争でもするつもりか?
国際法違反、廃都保護条約違反、軍事兵器所持違反、明らかに国家反逆罪だ。
あんなのを使用しているのがバレたら、全員まとめて死刑になるぞ。
「白黒だけを気付かれずに倒せばいいじゃないかな? 狙撃してみようか?」
「なるほど。流石はパトリだね。やっちゃえ、やっちゃえ!」
「待て待て! あれが見えないのか?」
冷静で博識な私と違い、女達は馬鹿な事を言っている。
人型戦闘機を指差して、無知な連中に教えてやった。
少しは相手の戦力を見てからものを言え。
人型戦闘機FRが五機もあるんだぞ。
あれを使えば、ティラノサウルス程度なら真っ向勝負で倒せる兵器なんだぞ。
「あの硬そうな寝袋がどうかしたの?」
寝袋⁉︎ あんな寝袋があったとして、誰も使わない。
猫娘にはあれが寝袋に見えるようだ。
今すぐに図書館に行って、手当たり次第、図鑑を借りて来い。
「違う。あれは寝袋じゃなくて、戦闘兵器だ。使用する魔石の質と量次第で、ティラノサウルス程度の力を数十分は使える危険な代物なんだぞ」
「へぇー、そうなんだ。そんなのがあるんだね」
「何でそんな事知ってんのよ? あんた、キモいわね。普通の人はそんな事知らないのよ」
関心しているミアと違って、ケイトは嫌そうな顔を私に向けている。
ハッキリ言えば、私の知識は普通レベルだ。
つまり私が知っている事を知らない時点で、自分は馬鹿だと証明しているんだぞ。
「私の仕事は営業だぞ。警察、病院、役所は大事な取引先であり、絶対に倒産しない金蔓なんだ。取り扱っている高額商品の名前は知っている」
「じゃあ、さっさと弱点教えてよ。戦えないでしょう」
はいい? 人をキモオタ扱いして、今度はタダで教えろとは都合がいいな。
それが教えてほしい人間の態度なのか?
私は都合のいい女でも、都合のいい親父でもないんだからな。
教えてほしいなら土下座しろ、そう言おうとした。
「あれの弱点は簡単だよ。人が乗らないと動かせないから、乗ろうとする人を倒せば問題ないよ」
でも、私以外にも人型戦闘機FRを知っている人間がいた。
パトリが私の代わりに無償で話し出した。
「なるほど。運転手がいないと車も動かないもんね」
「確かに言われてみればそうね。パトリ、他にはないの?」
そんなの見れば、誰でも分かる。いちいち驚くな。
ついでに私達が乗り込んで奪っていいぞ。
もちろん、国家反逆罪で死刑になるから、やりたいなら一人でやるんだぞ。
「あとは乗られてしまった後だけど、壊せるのは背中の羽根と両手の砲口ぐらいかな。砲口を壊せば、操縦者の腕が見えるよ。あとは腕のリングを破壊すれば無力化できるから」
「へぇー、結構簡単に倒せそうね。銃以外にもパトリは色々知っているのね」
「偶然、映画で見たから知っているだけだよ。映画の名前は忘れちゃったけど」
「うーん、それは残念。思い出したら教えてね。見てみたいから」
「うん、頑張って思い出してみる」
「さあ、弱点も分かったし、メタルスライムが現れたら襲撃するわよ」
「「おお!」」
ちょっと待て! ちょっと待て! 異常に詳し過ぎる!
馬鹿二人は騙されても、私は騙されないぞ。
パトリ、お前……あっち側(WB)の人間だろう?
前に絶対に警察が乗っている人型戦闘機を攻撃しただろう。
「じゃあ、新しい作戦が決まったわよ。ジジイはあれを着て、あいつらを引き連れて行って。顔が見られないし、頑丈だし最高に安全な囮役よ。良かったわね」
パトリの経歴を心配する私に、またケイトが思い付きの作戦を言ってきた。
いい加減にしろよ。学習能力がないのか。
「巫山戯るな。あんなの着たら国家反逆罪で死刑になる。社会的に抹殺されてしまうわ!」
「大丈夫よ。私達、口堅いから誰にも言わないから」
「そうそう。絶対に言わないよ」
「そういう問題じゃない。バレなきゃ何をやってもいい訳じゃないんだぞ!」
ゴリッ。
「おぅっ……」
「ギル、うるさいよ。操縦できるのギルしかいないんだから、乗るのと黙るのどっちがいいのか決めて」
いきなり後頭部に硬くて冷たい感触を押し付けられた。
これだけで何をされているのか分かってしまった。
やっぱり、あっち側の人間じゃないか。
銃口をグリグリと押し付けながら、パトリが聞いてきた。
普通は黙るを選びたいけど、そっちを選んだら、永遠に黙らされてしまいそうだ。
「喜んで乗らせてもらいます」
私はまた、暴力と脅迫に屈する事にした。
♢
ケイト達が駆け寄って、パトリを心配している。
やっぱり、私とは対応が全然違うな。
「お帰り、パトリ。大丈夫だった?」
「楽勝だった。頭を引き千切りながら、少し遠くまで捨てて来たよ。しばらくは大丈夫だと思う」
「おお! 流石はパトリだね。今度は私が手足を引き千切って、遠くに投げ捨ててみるね!」
「その時は全部別々の方向に投げた方が良いかも。くっ付きにくいと思うから」
「なるほど、別方向だね。だったら、あんまりバラバラには出来ないね。上半身と下半身でやってみようかな?」
パトリは見た目と違って、身体能力が高い。
灰色魔石のリングを使って、あの細腕で髭モジャの頭は引き千切れない。
そんなパトリに触発されたのか、ミアが両手で空気を掴むと、その場でグルグルと回り始めた。
エアハンマー投げで、メタルスライムを遠くに投げる練習をするようだ。
私の身体を練習台に使わないなら、いくらでもやっていいぞ。
「あうっ!」
「はい、そこまで。メタルスライムは問題なさそうね。これから白黒を倒しに行くけど、パトリは作戦とかある? 何でもいいから、良さそうなものがあったら言っていいよ」
ミアとパトリが盛り上がっている途中なのに、ケイトがミアの両手を掴んで止めた。
投げさせてから止めればいいのに、もっと重要な話がしたいようだ。
バイアスを倒す作戦がないかと、パトリに聞いている。
やっぱり行き当たりばったりの作戦に、不安を感じているんじゃないだろうか。
私は不安で不安で仕方がない。
「作戦はないけど、この先に五人いるよ。ギルの分の白魔石が手に入るから、戦力アップ出来る」
ケイトの質問にパトリは前方を真っ直ぐに指差している。
安全な場所に逃げている訳じゃなかったようだ。
「確かに囮役のジジイが簡単にやられちゃうと、ジジイが連れて行った奴らが、すぐに戻って来るから心配だったのよね。じゃあ、そいつらを襲ってから白黒の所に行きましょう。良かったわね。助かるかもしれないわよ」
ケイトが私の方を見て、微笑みながら言った。
自分の心配ばかりせずに、私の心配を少しはしろ。
そして、少しはまともな作戦を考えろ。
「何が良かっただ。最初から私を殺す予定の作戦を考えるな」
「別にいいでしょう。あんたはもう人生楽しんで、やり残した事ないんだから」
「まだまだあるに決まっている。勝手に私の人生をバットエンドで終わらせようとするな」
「はいはい。じゃあ、頑張って生き延びてくださいねぇ~」
「はぁっー?」
相変わらずムカつく娘だな。親を小馬鹿にして楽しいのか。
全ての元凶は、お前が変な男達にナンパされた所為なんだからな。
♢
パトリに案内されて、また五人の若者を殺害した。
私はリーダー格が嵌めていたリングから白魔石を外して、自分のリングに嵌めさせてもらった。
これで私の死亡率は少しだけ下がった。
武器の分はバイアスの周囲にいる仲間から奪わないといけない。
でも、それは正直無理だと思う。
到着したバイアスの夜営地には、予想外の物が置いてあった。
「あれ? 戦ってないね。とりあえず奇襲する?」
「それもいいけど、減ったら援軍が来るだけよ。下手に警戒されるのは厄介だし、やるなら一気にやらないと」
ランプの灯りを消して、ミアとケイトが休憩中の男達を見ている。
家を松明代わりに燃やしている夜営地は、かなり明るい。
十五台程の浮遊式バイクに、黒い大きなキャンピングカーが一台駐まっている。
だが、これらはどうでもいい。問題は地面に立てられている、あれだ。
身長二メートル三十センチ、分厚い白黒の金属の肉体を持つ人形が敷物の虎のように広がっている。
間違いない。あれは警察が使用する治安維持用兵器、【人型戦闘機FR(ファイヤーボール・ライアン)】だ。
背中の六枚羽根で高速飛行が可能で、両腕の先端にある砲口から魔石のエネルギー弾を発射できる。
あいつら戦争でもするつもりか?
国際法違反、廃都保護条約違反、軍事兵器所持違反、明らかに国家反逆罪だ。
あんなのを使用しているのがバレたら、全員まとめて死刑になるぞ。
「白黒だけを気付かれずに倒せばいいじゃないかな? 狙撃してみようか?」
「なるほど。流石はパトリだね。やっちゃえ、やっちゃえ!」
「待て待て! あれが見えないのか?」
冷静で博識な私と違い、女達は馬鹿な事を言っている。
人型戦闘機を指差して、無知な連中に教えてやった。
少しは相手の戦力を見てからものを言え。
人型戦闘機FRが五機もあるんだぞ。
あれを使えば、ティラノサウルス程度なら真っ向勝負で倒せる兵器なんだぞ。
「あの硬そうな寝袋がどうかしたの?」
寝袋⁉︎ あんな寝袋があったとして、誰も使わない。
猫娘にはあれが寝袋に見えるようだ。
今すぐに図書館に行って、手当たり次第、図鑑を借りて来い。
「違う。あれは寝袋じゃなくて、戦闘兵器だ。使用する魔石の質と量次第で、ティラノサウルス程度の力を数十分は使える危険な代物なんだぞ」
「へぇー、そうなんだ。そんなのがあるんだね」
「何でそんな事知ってんのよ? あんた、キモいわね。普通の人はそんな事知らないのよ」
関心しているミアと違って、ケイトは嫌そうな顔を私に向けている。
ハッキリ言えば、私の知識は普通レベルだ。
つまり私が知っている事を知らない時点で、自分は馬鹿だと証明しているんだぞ。
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「じゃあ、さっさと弱点教えてよ。戦えないでしょう」
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教えてほしいなら土下座しろ、そう言おうとした。
「あれの弱点は簡単だよ。人が乗らないと動かせないから、乗ろうとする人を倒せば問題ないよ」
でも、私以外にも人型戦闘機FRを知っている人間がいた。
パトリが私の代わりに無償で話し出した。
「なるほど。運転手がいないと車も動かないもんね」
「確かに言われてみればそうね。パトリ、他にはないの?」
そんなの見れば、誰でも分かる。いちいち驚くな。
ついでに私達が乗り込んで奪っていいぞ。
もちろん、国家反逆罪で死刑になるから、やりたいなら一人でやるんだぞ。
「あとは乗られてしまった後だけど、壊せるのは背中の羽根と両手の砲口ぐらいかな。砲口を壊せば、操縦者の腕が見えるよ。あとは腕のリングを破壊すれば無力化できるから」
「へぇー、結構簡単に倒せそうね。銃以外にもパトリは色々知っているのね」
「偶然、映画で見たから知っているだけだよ。映画の名前は忘れちゃったけど」
「うーん、それは残念。思い出したら教えてね。見てみたいから」
「うん、頑張って思い出してみる」
「さあ、弱点も分かったし、メタルスライムが現れたら襲撃するわよ」
「「おお!」」
ちょっと待て! ちょっと待て! 異常に詳し過ぎる!
馬鹿二人は騙されても、私は騙されないぞ。
パトリ、お前……あっち側(WB)の人間だろう?
前に絶対に警察が乗っている人型戦闘機を攻撃しただろう。
「じゃあ、新しい作戦が決まったわよ。ジジイはあれを着て、あいつらを引き連れて行って。顔が見られないし、頑丈だし最高に安全な囮役よ。良かったわね」
パトリの経歴を心配する私に、またケイトが思い付きの作戦を言ってきた。
いい加減にしろよ。学習能力がないのか。
「巫山戯るな。あんなの着たら国家反逆罪で死刑になる。社会的に抹殺されてしまうわ!」
「大丈夫よ。私達、口堅いから誰にも言わないから」
「そうそう。絶対に言わないよ」
「そういう問題じゃない。バレなきゃ何をやってもいい訳じゃないんだぞ!」
ゴリッ。
「おぅっ……」
「ギル、うるさいよ。操縦できるのギルしかいないんだから、乗るのと黙るのどっちがいいのか決めて」
いきなり後頭部に硬くて冷たい感触を押し付けられた。
これだけで何をされているのか分かってしまった。
やっぱり、あっち側の人間じゃないか。
銃口をグリグリと押し付けながら、パトリが聞いてきた。
普通は黙るを選びたいけど、そっちを選んだら、永遠に黙らされてしまいそうだ。
「喜んで乗らせてもらいます」
私はまた、暴力と脅迫に屈する事にした。
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