32 / 121
7日目
父娘近況報告
しおりを挟む
カノンの父親——エリック・ネロエスト54歳は無事に娘に保護された。
カノンの母親の男爵令嬢と結婚したのは、商売に成功した32歳の時だった。
父親というよりも祖父に近い。
「くぅ~! やはりあの時のあれがマズかった!」
「どうしたんですか、お父様? お口に合いませんか?」
朝食のパン1個を半分ほど食べると、エリックが不機嫌そうに顔を歪めた。
事業に失敗した原因を思い出している。
「いいや。このパンは世界一美味しいよ。不味かったのは、私が作った酒の方だ」
「お酒ですか?」
「ああ、酒だ。あの雑草酒が色々とマズかった」
エリックのジョブは【酒師】だ。
果物、野菜、木の実、キノコ、草……と植物から酒を製造することが出来る。
凄いジョブとスキルだが、途中から材料費を着服する為に、雑草を混ぜるようになった。
10%から始めていき、徐々に20%、30%と増えていき、40%で不味すぎてバレた。
食品は信用が第一なのに、雑草や木の葉を飲ませたら、客が怒るのは当然だ。
屋敷と工場に客が大挙して、金返せコール。
着服した隠し財産も尾行されて、しっかり全額没収。
ついで捕まって、軽く暴行を受けた後に酒樽に放り込まれた。
酒樽から脱出できたのは、つい最近だ。
「だいたいMP回復薬が高すぎるんだ! MP40回復で1本8000ギルドだぞ! 安く大量に作れと言われたら、食材費を削るしかないじゃないか!」
「そうです。お父様は上と下からの重圧に応えただけです。出来る中で最高の仕事をしました」
エリックは材料費着服親父だが、身内なら庇うのは当たり前だ。
MP回復薬も大量注文して、相場よりも2割も安いが、着服したくなったから仕方ない。
娘に牛乳をコップに注がれながら、優しく慰められる。
「……いや。最低の仕事だった。村に住んでいた頃は畑の野菜や森の果物で、小さな樽で作っていた。あの頃は味にこだわっていたのに、街では金にこだわらなければ、酒を作れなくなっていた。周りの人間が皆、酒ではなく、私に金、金、金を作れと言っていた」
だけど、父親は自分が悪いと少しは自覚している。
30年前の村人時代を懐かしく思い出して、街の人間は怖いと言っている。
結局は街色に染められた自分は悪くないと、言いたいだけだった。
「お父様の言う通りです。私も毎日お金を作っています。本当に街は大変です」
「カノンも苦労したんだな。はぁー、これからは小さな畑を耕して、酒造りからは引退だ。酒は人を駄目にする」
二人とも被害者面しているが、二人とも街の人間を偽金と薄めた酒で騙しているだけだ。
このままでは娘の方にも、父親と同じ末路が待っている。
「それよりもカノン。生活費はどうやって稼いでいるんだ? 昨日はそのまま寝てしまったから聞いてなかったが……」
話を切り替えて、エリックは聞きたかった肝心の話を聞いた。
家の中を軽く見回すだけで、高価な家具がたくさん置いてある。
屋敷の家具ではないから、持ち出したわけではない。
「あ、そうでした! お父様。私、冒険者の仕事を紹介されて、魔物を倒してお金を稼いでいるんですよ!」
カノンは初めての仕事を喜んで、エリックに報告した。
するとエリックが勘違いした。
「なっ⁉︎ そんな危険な仕事をしていたのか⁉︎ くぅー! その装備、そしてあの魔物は見張りか‼︎」
金貸しに武器を渡されて、魔物の見張り付きで、危険な仕事を無理矢理やらされていない。
勘違いしているエリックに、カノンは大きくなったパトラッシュを、キチンと紹介した。
「いえ。あれはパトラッシュです。レベルが上がって進化したんです」
「クゥーン」
「ん⁇ ん? カノンは何を言っているんだ?」
エリックは常識人だ。娘の言っていることが理解できずに混乱している。
犬は牛みたいに大きくならない。
カノンの母親の男爵令嬢と結婚したのは、商売に成功した32歳の時だった。
父親というよりも祖父に近い。
「くぅ~! やはりあの時のあれがマズかった!」
「どうしたんですか、お父様? お口に合いませんか?」
朝食のパン1個を半分ほど食べると、エリックが不機嫌そうに顔を歪めた。
事業に失敗した原因を思い出している。
「いいや。このパンは世界一美味しいよ。不味かったのは、私が作った酒の方だ」
「お酒ですか?」
「ああ、酒だ。あの雑草酒が色々とマズかった」
エリックのジョブは【酒師】だ。
果物、野菜、木の実、キノコ、草……と植物から酒を製造することが出来る。
凄いジョブとスキルだが、途中から材料費を着服する為に、雑草を混ぜるようになった。
10%から始めていき、徐々に20%、30%と増えていき、40%で不味すぎてバレた。
食品は信用が第一なのに、雑草や木の葉を飲ませたら、客が怒るのは当然だ。
屋敷と工場に客が大挙して、金返せコール。
着服した隠し財産も尾行されて、しっかり全額没収。
ついで捕まって、軽く暴行を受けた後に酒樽に放り込まれた。
酒樽から脱出できたのは、つい最近だ。
「だいたいMP回復薬が高すぎるんだ! MP40回復で1本8000ギルドだぞ! 安く大量に作れと言われたら、食材費を削るしかないじゃないか!」
「そうです。お父様は上と下からの重圧に応えただけです。出来る中で最高の仕事をしました」
エリックは材料費着服親父だが、身内なら庇うのは当たり前だ。
MP回復薬も大量注文して、相場よりも2割も安いが、着服したくなったから仕方ない。
娘に牛乳をコップに注がれながら、優しく慰められる。
「……いや。最低の仕事だった。村に住んでいた頃は畑の野菜や森の果物で、小さな樽で作っていた。あの頃は味にこだわっていたのに、街では金にこだわらなければ、酒を作れなくなっていた。周りの人間が皆、酒ではなく、私に金、金、金を作れと言っていた」
だけど、父親は自分が悪いと少しは自覚している。
30年前の村人時代を懐かしく思い出して、街の人間は怖いと言っている。
結局は街色に染められた自分は悪くないと、言いたいだけだった。
「お父様の言う通りです。私も毎日お金を作っています。本当に街は大変です」
「カノンも苦労したんだな。はぁー、これからは小さな畑を耕して、酒造りからは引退だ。酒は人を駄目にする」
二人とも被害者面しているが、二人とも街の人間を偽金と薄めた酒で騙しているだけだ。
このままでは娘の方にも、父親と同じ末路が待っている。
「それよりもカノン。生活費はどうやって稼いでいるんだ? 昨日はそのまま寝てしまったから聞いてなかったが……」
話を切り替えて、エリックは聞きたかった肝心の話を聞いた。
家の中を軽く見回すだけで、高価な家具がたくさん置いてある。
屋敷の家具ではないから、持ち出したわけではない。
「あ、そうでした! お父様。私、冒険者の仕事を紹介されて、魔物を倒してお金を稼いでいるんですよ!」
カノンは初めての仕事を喜んで、エリックに報告した。
するとエリックが勘違いした。
「なっ⁉︎ そんな危険な仕事をしていたのか⁉︎ くぅー! その装備、そしてあの魔物は見張りか‼︎」
金貸しに武器を渡されて、魔物の見張り付きで、危険な仕事を無理矢理やらされていない。
勘違いしているエリックに、カノンは大きくなったパトラッシュを、キチンと紹介した。
「いえ。あれはパトラッシュです。レベルが上がって進化したんです」
「クゥーン」
「ん⁇ ん? カノンは何を言っているんだ?」
エリックは常識人だ。娘の言っていることが理解できずに混乱している。
犬は牛みたいに大きくならない。
3
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる