没落令嬢カノンの冒険者生活〜ジョブ『道具師』のスキルで道具を修復・レベルアップ・進化できるようになりました〜

もう書かないって言ったよね?

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10日目

商人護衛依頼

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 冒険者ギルドから追い払われたカノンは、飛行船で街の上空を回って、ルセフを探した。
 見つければ、やったことがない冒険者の仕事を手伝えるかもしれない。

「あっ! いました!」

 街の外に向かって走る一台の、二頭引きの馬車を見つけた。ルセフが御者をやっている。
 飛行船を下降させて、馬車の後方についた。ゆっくりと接近していく。
 このまま気づかれずに護衛するつもりなら、かなり不気味だ。

「うーん、これは遅いですね」

 だけどカノンが尾行するのに飽きてしまった。馬車の速度が遅すぎる。
 馬車を軽々と追い越して、飛行船の窓から驚いているルセフに手を振った。
 馬車がゆっくりと速度を落として停車した。

「何だ、それは!」

 初めて見る黄金の小船に向かって、ルセフは怒鳴った。
 飛行船が地面に着陸して、カノンが扉を開けて出て来た。

「これは飛行船です。ルセフさんの家にお酒を届けに行ったんですけど、お母さんしかいなくて探したんですよ」

 カノンの説明が不十分だったのか、ルセフは人差し指を上に向けて、もう一度聞いている。

「そんなこと聞いてねぇよ! 何で空飛んでんだよ!」
「それは分かりません。飛ぶから飛ぶんじゃないですか?」
「くっ、駄目だ。聞く相手が駄目すぎる!」

 聞いた相手が悪かった。本人も理解せずに飛んでいる。
 ルセフは空飛ぶ船は見なかったことにしようとした。
 けれども、馬車の中から護衛中の商人とウェインが飛び出して来た。

「その船は何なんだ⁉︎ いくらで買えるんだ!」
「ちょっと危ないですって。馬車の中に居てくださいよぉー」

 商人なら飛行船に興味があるのは当たり前だ。
 困り顔のウェインに止められるが、構わずにカノンに近づいていく。

「3000万、いや、5000万までなら出す!」
「お金ならあるからいいです」
「くぅぅぅ! 1億ならどうだ!」

 灰色髪にモジャ口髭の商人が、必死に買取り交渉をしているが無駄だ。
 カノンが大金貨袋を取り出して、ジャラジャラ鳴らしてトドメを刺した。

「いえ、お金ならあります。全部大金貨です」
「がぁーん‼︎」

 商人がショックを受けている。小娘に資金力の差を見せつけられた。

「あのおじさんを護衛すればいいんですよね? 私の船で飛んで行った方が早いですよ」
「おじさんじゃない。依頼人のガリバンさんだ。それにこれは俺達の仕事だ。お前には関係ない」
「じゃあ、ここは依頼人さんに決めてもらいましょう。ガリバンさん、飛行船と馬車のどっちが良いですか?」

 馬車の中に戻った商人の奪い合いが始まった。カノンとルセフが話し合っている。
 二人だけでは決着は付かないと、カノンは項垂れている商人に聞いた。
 答えはもちろん決まっている。

「……飛行船がいい」
「フフッ。決まりですね。馬車を乗せられる大きい船を持って来ます。ここで待っててくださいね」

 移動手段が商人によって決まった。
 カノンは喜んで、クリスタル飛行船を森に取りに行った。
 7分程で馬車の上空に、二階建ての家が六軒並んだような、青い宝石の大型船が現れた。

「なぁっ⁉︎ あががががぅっ~‼︎」

 上空を見上げる商人がガタガタ震えている。
 今度は買うとは言えない。予想価格は2500~3500億ギルドぐらいだ。
 船が着陸すると、船尾の扉が倒れるように開いていく。
 板状の扉が地面に付くと、上りやすい緩やかな上り坂が出来た。

「後ろから乗っていいですよぉー!」
「おい、これは……いや、何でもない。ウェイン、さっさと馬車を乗せるぞ!」

 カノンが船の上から、下にいるルセフ達に大きな声で言った。
 ルセフは何か聞こうとしたけど、やめた。聞いてもどうせ分からない。
 船尾から船内に入ると、船内の階段を上って、操舵室のカノンの元にやって来た。

「いやぁー。カノンちゃん、凄い金持ちなんだね。こんな船があるなら、護衛と配達の仕事を受け放題だよ」
「エッへへ♪ 私って、そんなに頼りになりますか?」
「調子に乗るな。目的地はミゲールだ。場所が分からないとか言わないよな?」
 
 ウェインは褒めるが、ルセフは褒めない。
 目的地に到着するまでが仕事だ。

「図鑑があるから大丈夫です。えーっと、ミゲールですね……ありました。40分で着くと思いますよ」
「えっ、40分⁉︎ 馬車で三日もかかるんだけど!」
「あっはは。そんなにかかりませんよ。じゃあ、出発しますね」

 カノンは万能地図図鑑を取り出して、ミゲールの町を探し出した。
 ウェインは到着時間を聞いて驚いているけど、構わずにクリスタル飛行船は発進した。
 一気に障害物のない空に上昇して、そのまま町のある方角に一直線に飛んでいく。

「町が見えて来ました。町の近くに降ろしますね」
「…………」

 到着時間は32分だった。早すぎて疑われる時間だ。
 冒険者ギルドへの報告は、六日後にした方がいい。
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