没落令嬢カノンの冒険者生活〜ジョブ『道具師』のスキルで道具を修復・レベルアップ・進化できるようになりました〜

もう書かないって言ったよね?

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10日目

配達解雇・素材依頼

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「はぁ? おい、俺を馬鹿にしてんのか?」

 30代後半の失礼な男職員が、顔面をピクピクさせて怒っている。
 隣町に配達に行って、16分で街の冒険者ギルドに帰って来た。
 受け取り手続きに、ちょっとだけ時間がかかってしまった。

「嘘だと思うなら、配達に付いて来てください。それに一つだと物足りないです。全部まとめていいですよ」
「何が物足りないだ。大事な配達を全部持ち逃げされたら大損害だ。お前らにやらせるのは低額の配達だけだ」

 配達が楽勝すぎて、カノンが調子に乗っている。
 仮登録と初級冒険者だ。職員は二人を最初から信用していない。
 偽造の認め印を押しているとしか思えない。

「お前達はもう配達はいい。素材採取と素材調査のどっちがいい?」

 カウンターの上に職員が分厚い本を二冊置いた。
 素材採取が発見された素材を回収する依頼だ。
 素材調査は未発見の素材を発見する依頼だ。
 素材採取の方が簡単な依頼だ。

「えー! どっちも緊急性のない依頼じゃないですか。配達やらせてくださいよぉー」
「駄目だ。確認が取れたらやらせてやるよ。どっちも嫌なら、お前達にやらせる仕事はねえ」
「そんなぁー!」

 もう2件も護衛と配達の依頼をさせている。
 信用できない相手に、信用第一の仕事をやらせられるわけがない。
 職員はウェインの要求を却下した。

「あっ! この素材持ってます! これを渡せばいいんですか?」
「ああ、そうだ。持っているならな」

 だがカノンにとって、素材集めも簡単な依頼だった。
 素材採取の本をパラパラ捲ると、持っている素材がたくさんあった。

「ちょっと本借りますね」
「汚すなよ」

 本二冊を空いているテーブルに持っていくと、ハサミで隠れるように端を切った。
 修復して、四冊の本に増やすと、借りていた二冊を職員に返した。

「全部持って来るから任せてください!」
「……今持っているのを渡せよ」

 カノンは職員に約束すると、ウェインと分かれて家に帰った。ちょうど昼ご飯時だ。
 それに素材の量が多いから、どうしても用意するのに時間がかかる。

「うぅぅ、飲みすぎたぁ……」

 家に帰るとエリックが、パンが入ったアイテムポーチから、パンを出して食べていた。
 食べたら増やすから、永遠にパンが無くならない。

「お父様、もう大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫だ。それにこんな大事な時に寝ている暇はない。昨日の酒は進化させたのか?」

 テーブルに座って頭を押さえている父親を、カノンが心配している。
 エリックは問題ないと答えると、酒を渡せとお願いした。
 娘は朝から2件仕事したのに、昼間から酒を飲みたいらしい。

「はい、完璧です! 市販のブドウ酒も進化させて、酒場の人達に飲み比べしてもらいました。お父様のブドウ酒の圧勝でした!」
「ふっ。当たり前の結果だな」

 娘の報告にエリックは喜んでいる。
 自分のブドウ酒と、ついでに市販のブドウ酒も出してもらっている。
 先に市販のブドウ酒の方をグラスに注いで、色と香りをじっくり確かめている。
 そして、一口だけ軽く飲んでみた。

「うむ。悪くはないな。85点ぐらいか」

 100満点の85点らしい。
 エリックが飲んだ酒の中でも、最高レベルの高得点だ。
 美味しい市販のブドウ酒に満足して、次に自分のブドウ酒をグラスに注いだ。

「くっふふ。やはり色と香りが全然違うな。ブドウの質が違いすぎて、勝負にならないか」

 エリックがさっきよりも長く、グラスの黄金の液体を回している。
 カノンは素材を増やす仕事で忙しい。早く飲んで欲しい。
 酒の香りに我慢できなくなったのか、やっと一口飲んだ。

「ぶぅふふふぅーッ‼︎」

 そして、すぐに噴き出した。

「お父様⁉︎」
「ハァ、ハァ……な、何だ、この酒は⁉︎ 誰が作った⁉︎」
「それはお父様のお酒ですけど」
「何だと⁉︎」

 エリックは自分が作った酒が分からないみたいだ。
 酒に気絶させられそうになって、かなり驚いている。

「ぐっ、私はなんて恐ろしい物を作ってしまったんだ! 人間が耐えられるのは、せいぜい120点が限界だ。650点には耐えきれない! この酒は失敗作だ! もっとマズく作らないと飲めない!」
「お父様……」
 
 テーブルを叩いて悔しがっているが、点数が異常に高すぎる。
 失敗作でも負けを認めるつもりはないらしい。
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