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14日目
再戦腕相撲
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「……ドラゴンって遅いんですね」
街近くの森までの競争は、クリスタル飛行船が余裕で勝ってしまった。
相手は元トカゲだ。最初から勝てる勝負じゃなかった。
遠くの空に飛んで来る茶色いドラゴンが見える。
「街に行くので、もう山に帰っていいですよ」
「カゲッー‼︎」
トカゲの仕事は終わった。
街に一緒に連れて行って、襲撃させるつもりはない。
誰かに見つかる前に山に戻るように言った。
ドラゴン素材は貴重でお金になる。
「さあ、パトラッシュ。酒場に行きますよ!」
「ワフゥ!」
大きな白犬の背中に乗ると、カノンは街に向かった。
前よりもスピードが上がっている。
「よぉーし、今度こそ勝ちますよ! 全員倒して、お父様の再々就職です」
街中を素早く走り抜けて、冒険者ギルドの前に到着した。
建物一階の酒場に入ると、冒険者達がエリック酒で盛り上がっていた。
酒には罪がないのか、酒の販売はやめさせられなかった。
「ん? 何だ、お前! 辞めたんだから、酒場なら他所に行けよ!」
「そうだ! それともまた痛い目に遭いたいのか!」
二日振りにやって来たカノンに冒険者達が気づいた。
酒の力を借りて、強気に出て行けと言っている。
「修業して来ました! もう一度腕相撲してください!」
だけど、今日はカノンも強気だ。頑張って食べて修業した。
誰でもいいから、かかって来いよ。そんな無敵状態だ。
「がっははは♪ 修業だって⁉︎ たった二日の修業で勝てるってか? コイツは凄えぇ!」
「誰か相手してやれよぉ~♪ 腕折るんじゃないぞぉ~」
でも、見た目が変化したわけでも、傷だらけにもなっていない。
二日前と何も変わらないカノンを見て、冒険者達は舐めまくっている。
「指二本で十分だ。俺が瞬殺してやるよ。さあ、来いや!」
「望むところです! 怪我しても知りませんよ!」
一人の冒険者がカノンに挑戦した。人差し指と中指だけで相手するようだ。
テーブルの皿を退かせて、右腕の肘をドンとテーブルに置いた。
短い茶髪の四角顔の男の指を、カノンがしっかり握った。
「エイッ!」
「ぎゃああああ~‼︎ ぎゃああああ~‼︎」
——ボキィ、ゴキィ。
勝負は男が言う通り、瞬殺で終わった。
指二本が曲げ折られ、手首まで曲げ折られた。
男が床を転げ回って絶叫している。
「女ぁー! 汚いぞ! 装備を隠し持っているだろう!」
「持ってないです。嘘だと思うなら、そこの女性に調べさせてください」
反則したと冒険者が騒いでいるが、装備を使った反則技は使っていない。
純粋にレベルの違いだ。酒場の女給に頼んで、足の指まで調べても何も出てこなかった。
「何も隠していません」
「チッ。手加減する必要はねえぞ! 誰か男の強さを教えてやれ!」
「俺がやってやるよ。それで終わりだ」
さっきの男よりも強そうな、巨漢の丸坊主が現れた。
左目に大きな傷が縦に伸びている。丸々と太った右腕をテーブルに堂々と乗せた。
「ぎゃああああ~‼︎ ぎゃああああ~‼︎」
「ジャ、ジャクソンがやられたぁー‼︎」
——ボキィ、ゴキィ。
さっきと同じだった。男の大絶叫が酒場に響き渡る。
親指以外の指四本を折られて、手首を折られて、床を転げ回っている。
「次は誰ですか? 雑魚はもういいですから、一番強い人を出してください」
「くそぉー、調子に乗りやがって! 誰か隣の宿屋からベクトルさんを呼んで来い! 後悔させてやる!」
自分では後悔させられないらしい。
冒険者三人が建物から走って出て行った。
だけど、悪巧みを考える冒険者がいた。
コソコソ話して、反則で倒そうとしている。
「おい……勝負が始まる前に殴れ」
「何言ってんだよ、女だぞ」
「女だからだ。女に舐められたまま終われるか」
「分かった……よし、次は俺がやる。ベクトルさんが相手する必要ねえよ!」
顔の赤い男がカノンの前に現れた。
少し酔っているせいか、冷静な判断が出来ないようだ。
テーブルに右腕を置いて握り合うと、始めの合図を無視して、左拳で顔を殴った。
「はぐっ!」
「悪い悪い手が滑ってしま——こはあんっ‼︎」
少し痛かったけど、カノンは我慢した。
男は軽く笑って謝ろうとしたが、カノンの凄まじい左手の平手打ちに顔を打たれた。
手を握ったまま、意識を失って、テーブルに顔面を叩きつけた。
「今の反則です! 少し痛かったです!」
「おい、マジかよ。本物の上級冒険者なんじゃないのか?」
平手一撃で気絶させられた冒険者を見て、やっと冒険者達が気づいたようだ。
自分達がとんでもない相手に喧嘩を売ってしまったことに。
街近くの森までの競争は、クリスタル飛行船が余裕で勝ってしまった。
相手は元トカゲだ。最初から勝てる勝負じゃなかった。
遠くの空に飛んで来る茶色いドラゴンが見える。
「街に行くので、もう山に帰っていいですよ」
「カゲッー‼︎」
トカゲの仕事は終わった。
街に一緒に連れて行って、襲撃させるつもりはない。
誰かに見つかる前に山に戻るように言った。
ドラゴン素材は貴重でお金になる。
「さあ、パトラッシュ。酒場に行きますよ!」
「ワフゥ!」
大きな白犬の背中に乗ると、カノンは街に向かった。
前よりもスピードが上がっている。
「よぉーし、今度こそ勝ちますよ! 全員倒して、お父様の再々就職です」
街中を素早く走り抜けて、冒険者ギルドの前に到着した。
建物一階の酒場に入ると、冒険者達がエリック酒で盛り上がっていた。
酒には罪がないのか、酒の販売はやめさせられなかった。
「ん? 何だ、お前! 辞めたんだから、酒場なら他所に行けよ!」
「そうだ! それともまた痛い目に遭いたいのか!」
二日振りにやって来たカノンに冒険者達が気づいた。
酒の力を借りて、強気に出て行けと言っている。
「修業して来ました! もう一度腕相撲してください!」
だけど、今日はカノンも強気だ。頑張って食べて修業した。
誰でもいいから、かかって来いよ。そんな無敵状態だ。
「がっははは♪ 修業だって⁉︎ たった二日の修業で勝てるってか? コイツは凄えぇ!」
「誰か相手してやれよぉ~♪ 腕折るんじゃないぞぉ~」
でも、見た目が変化したわけでも、傷だらけにもなっていない。
二日前と何も変わらないカノンを見て、冒険者達は舐めまくっている。
「指二本で十分だ。俺が瞬殺してやるよ。さあ、来いや!」
「望むところです! 怪我しても知りませんよ!」
一人の冒険者がカノンに挑戦した。人差し指と中指だけで相手するようだ。
テーブルの皿を退かせて、右腕の肘をドンとテーブルに置いた。
短い茶髪の四角顔の男の指を、カノンがしっかり握った。
「エイッ!」
「ぎゃああああ~‼︎ ぎゃああああ~‼︎」
——ボキィ、ゴキィ。
勝負は男が言う通り、瞬殺で終わった。
指二本が曲げ折られ、手首まで曲げ折られた。
男が床を転げ回って絶叫している。
「女ぁー! 汚いぞ! 装備を隠し持っているだろう!」
「持ってないです。嘘だと思うなら、そこの女性に調べさせてください」
反則したと冒険者が騒いでいるが、装備を使った反則技は使っていない。
純粋にレベルの違いだ。酒場の女給に頼んで、足の指まで調べても何も出てこなかった。
「何も隠していません」
「チッ。手加減する必要はねえぞ! 誰か男の強さを教えてやれ!」
「俺がやってやるよ。それで終わりだ」
さっきの男よりも強そうな、巨漢の丸坊主が現れた。
左目に大きな傷が縦に伸びている。丸々と太った右腕をテーブルに堂々と乗せた。
「ぎゃああああ~‼︎ ぎゃああああ~‼︎」
「ジャ、ジャクソンがやられたぁー‼︎」
——ボキィ、ゴキィ。
さっきと同じだった。男の大絶叫が酒場に響き渡る。
親指以外の指四本を折られて、手首を折られて、床を転げ回っている。
「次は誰ですか? 雑魚はもういいですから、一番強い人を出してください」
「くそぉー、調子に乗りやがって! 誰か隣の宿屋からベクトルさんを呼んで来い! 後悔させてやる!」
自分では後悔させられないらしい。
冒険者三人が建物から走って出て行った。
だけど、悪巧みを考える冒険者がいた。
コソコソ話して、反則で倒そうとしている。
「おい……勝負が始まる前に殴れ」
「何言ってんだよ、女だぞ」
「女だからだ。女に舐められたまま終われるか」
「分かった……よし、次は俺がやる。ベクトルさんが相手する必要ねえよ!」
顔の赤い男がカノンの前に現れた。
少し酔っているせいか、冷静な判断が出来ないようだ。
テーブルに右腕を置いて握り合うと、始めの合図を無視して、左拳で顔を殴った。
「はぐっ!」
「悪い悪い手が滑ってしま——こはあんっ‼︎」
少し痛かったけど、カノンは我慢した。
男は軽く笑って謝ろうとしたが、カノンの凄まじい左手の平手打ちに顔を打たれた。
手を握ったまま、意識を失って、テーブルに顔面を叩きつけた。
「今の反則です! 少し痛かったです!」
「おい、マジかよ。本物の上級冒険者なんじゃないのか?」
平手一撃で気絶させられた冒険者を見て、やっと冒険者達が気づいたようだ。
自分達がとんでもない相手に喧嘩を売ってしまったことに。
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