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17日目
貴族お見合い
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「お父様、おはようございます。綺麗な新種の魔物を見つけたんですよ。これで冒険者ギルドの知名度も上がりますね」
午前7時。天気は晴れている。
カノンは今日中に、残り五種類のフライムを捕獲する予定だ。
一階のテーブルで朝食を食べているエリックに報告した。
「それは良かった。実はお前に頼みたい仕事があるんだ」
「緊急の依頼ですか?」
「そうだ。緊急で重要な仕事だ。この中から好きな男を選べ。伯爵と子爵の息子だ」
「がぁーん‼︎」
今日の捕獲予定は中止のようだ。まさかのお見合いらしい。
テーブルに三人の男のお見合い写真が並べられた。
伯爵三男22歳、子爵次男16歳、子爵長男17歳と、一応はまともな候補が選ばれている。
「是非とも飛行、お前を一目見て気に入ったそうだ。今日の昼食に会って話がしたいそうだ」
「今日ですか⁉︎ ちょっと用事が……」
「これ以上に大事な用事はない。服とカツラを用意しなさい。短い髪だと笑われてしまうぞ」
「はい、分かりました……」
明らかに気に入ったのは、カノンではなく、飛行船の方だ。
カノンは行きたくないが、父親に言われたら仕方ない。
行かないと男爵よりも偉い貴族達に、平民の父親が何をされるか分からない。
「はぁー。結婚したら貴族生活です。手掴みでパンも食べれません」
二階の部屋に戻ると、カノンは嫌々準備を始めた。
パンなら部屋で隠れて食べればいいが、言いたいことはそうじゃない。
貴族の嫁になると、窮屈で退屈な生活が待っている。
「仕方ないです! 全力で嫌われましょう!」
カノンは本気のようだ。
白いドレスと長い金髪をアイテムポーチに入れた。こんな物は必要ない。
ありのままの姿ではないが、偽りの駄目女になって勝負するようだ。
♢
昼食会場は以前門前払いされた高級料理店だった。
血塗れの剣を持って、顔に古傷の落書きをしたカノンが入店した。
革と布の戦士服を着た女戦士は、門前払いされないようだ。
「お待たせしました。ちょっとドラゴンと戦っていました」
「えっ……あなたがカノンさんですか?」
「はい、そうで、そうだぜ!」
一番身分が上の伯爵長男が戸惑っている。
エリックに聞いていた話と全然違う。
「そ、そうですか。よろしかったら、うちの使用人に着替えを用意させましょうか?」
「結構です。それよりも親父に肉が食えると聞いたんだけど、肉はどこですか?」
伯爵長男が顔を引き攣らせて聞いたが、カノンは素早く断った。
今日のカノンは、ガサツな肉好き女戦士になりきるみたいだ。
付け焼き刃のせいか、ちょっと演技が微妙ではある。
「料理ならすぐに用意しましょう。その間にお話でもしましょうか。どうぞお席にお座りください」
「あ、ありがとうございます」
伯爵長男が丁寧に丸テーブルの椅子を引くと、カノンが普通にお礼を言って座った。
身につけた習慣はなかなか消えない。
「今日は急なお誘いで申し訳ありません。初めまして、アルガナン伯爵家の長男エドウィンです」
「あ、どうも。カノン・ネロエストです」
「お久し振りです、カノンさん。屋敷が売却されたと聞いて、ずっと心配していたんですよ」
「は、はぁ……?」
「私も心配していたんですよ。どうして頼ってくれなかったのですか? パーティで何度もお話したのに」
「そ、そうですね」
伯爵長男に続いて、テーブルに座る二つの子爵家の次男と長男が話してきた。
子爵の二人には何度か会ったらしいが、カノンの記憶には残っていない。
全員初対面の全然知らない男達だ。
午前7時。天気は晴れている。
カノンは今日中に、残り五種類のフライムを捕獲する予定だ。
一階のテーブルで朝食を食べているエリックに報告した。
「それは良かった。実はお前に頼みたい仕事があるんだ」
「緊急の依頼ですか?」
「そうだ。緊急で重要な仕事だ。この中から好きな男を選べ。伯爵と子爵の息子だ」
「がぁーん‼︎」
今日の捕獲予定は中止のようだ。まさかのお見合いらしい。
テーブルに三人の男のお見合い写真が並べられた。
伯爵三男22歳、子爵次男16歳、子爵長男17歳と、一応はまともな候補が選ばれている。
「是非とも飛行、お前を一目見て気に入ったそうだ。今日の昼食に会って話がしたいそうだ」
「今日ですか⁉︎ ちょっと用事が……」
「これ以上に大事な用事はない。服とカツラを用意しなさい。短い髪だと笑われてしまうぞ」
「はい、分かりました……」
明らかに気に入ったのは、カノンではなく、飛行船の方だ。
カノンは行きたくないが、父親に言われたら仕方ない。
行かないと男爵よりも偉い貴族達に、平民の父親が何をされるか分からない。
「はぁー。結婚したら貴族生活です。手掴みでパンも食べれません」
二階の部屋に戻ると、カノンは嫌々準備を始めた。
パンなら部屋で隠れて食べればいいが、言いたいことはそうじゃない。
貴族の嫁になると、窮屈で退屈な生活が待っている。
「仕方ないです! 全力で嫌われましょう!」
カノンは本気のようだ。
白いドレスと長い金髪をアイテムポーチに入れた。こんな物は必要ない。
ありのままの姿ではないが、偽りの駄目女になって勝負するようだ。
♢
昼食会場は以前門前払いされた高級料理店だった。
血塗れの剣を持って、顔に古傷の落書きをしたカノンが入店した。
革と布の戦士服を着た女戦士は、門前払いされないようだ。
「お待たせしました。ちょっとドラゴンと戦っていました」
「えっ……あなたがカノンさんですか?」
「はい、そうで、そうだぜ!」
一番身分が上の伯爵長男が戸惑っている。
エリックに聞いていた話と全然違う。
「そ、そうですか。よろしかったら、うちの使用人に着替えを用意させましょうか?」
「結構です。それよりも親父に肉が食えると聞いたんだけど、肉はどこですか?」
伯爵長男が顔を引き攣らせて聞いたが、カノンは素早く断った。
今日のカノンは、ガサツな肉好き女戦士になりきるみたいだ。
付け焼き刃のせいか、ちょっと演技が微妙ではある。
「料理ならすぐに用意しましょう。その間にお話でもしましょうか。どうぞお席にお座りください」
「あ、ありがとうございます」
伯爵長男が丁寧に丸テーブルの椅子を引くと、カノンが普通にお礼を言って座った。
身につけた習慣はなかなか消えない。
「今日は急なお誘いで申し訳ありません。初めまして、アルガナン伯爵家の長男エドウィンです」
「あ、どうも。カノン・ネロエストです」
「お久し振りです、カノンさん。屋敷が売却されたと聞いて、ずっと心配していたんですよ」
「は、はぁ……?」
「私も心配していたんですよ。どうして頼ってくれなかったのですか? パーティで何度もお話したのに」
「そ、そうですね」
伯爵長男に続いて、テーブルに座る二つの子爵家の次男と長男が話してきた。
子爵の二人には何度か会ったらしいが、カノンの記憶には残っていない。
全員初対面の全然知らない男達だ。
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