没落令嬢カノンの冒険者生活〜ジョブ『道具師』のスキルで道具を修復・レベルアップ・進化できるようになりました〜

もう書かないって言ったよね?

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20日目

創作料理ドーナバナ

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 酒造りは自分に任せてほしいと言って、カノンはエリックにも配達を頼んだ。
 飛行船を使って配達すると、また伯爵や貴族に目をつけられてしまう。
 自信喪失のエリックは素直に配達に向かった。

「ふぅー。こんなものですね」

 三週間分の作業が終わってしまった。工場の中には大量の酒樽がビッシリ置かれている。
 あとはアイテムポーチに入れて、必要な時に取り出して配達に行くだけでいい。

「ご苦労様でした。明日も頑張ってくださいね」
「そ、相談役⁉︎ こんなにいいんですか⁉︎」
「もちろんです。頼りにしていますよ」
「そ、相談役……俺達一生付いて行きます!」

 カノンは配達から帰って来た作業員達に、日給という名の月給を渡している。
 小金貨と大金貨は別物だ。もう完全に工場を乗っ取ろうとしているとしか思えない。

「…………」

 そんな光景をエリックが気配を消して、遠くの方から扉を少し開けて見ている。
 未来にいつ帰ってくれるんだろう、そう思っている目をしている。

「シリカさん、ご苦労様です。お陰で助かりました。ありがとうございました」

 作業員達が帰るとエリックは扉を開けて、工場の中に入って来た。
 年下の子孫娘に頭を下げる姿は、作業員達には見せられない。

「いえいえ、子孫として当然です。明日からはお母、奥さんとゆっくり過ごした方が良いですよ。それに娘さん達にも自由が必要です。特に末っ子のカノンちゃんは好きにさせた方がいいです」
「は、はぁ? 分かりました。娘達にあまり厳しくしないように、妻に言っておきます」
「ええ、そうしてください」

 明らかに自分の為に言っている。
 雑草酒造りは阻止したから、明日から特にやることがない。
 だけど、散歩やパーティー、花嫁修業をするつもりはない。
 自由に好きなことをやりたいに決まっている。

 ♢

「久し振りにフローラお姉様と遊べます♪」

 カノンは屋敷に帰ると、長女の部屋に向かった。
 使用人達がまだ探しているが、見つからないように隠れながら進んでいる。
 捕まると何時間もお説教される。

「お姉様、カノンです。美味しいお菓子を買って来たんですけど、一緒に食べませんか?」

 ——コンコンコン。
 扉を軽く叩いて、カノンは部屋にいるはずの姉に呼びかけた。
 扉が開くと、白ワンピースに白い半ズボンを着た金髪の女が現れた。
 貴族らしくない服装だが、カノンの姉のフローラだ。

「わぁ~♪ 食べます! さあ、入って入って!」
「はい、失礼します」

 お菓子もカノンも大歓迎らしい。カノンの手を取って、部屋の中に連れ込んでいる。
 母親に甘い物の食べ過ぎを普段から注意されているが、栄養のほとんどが胸に集中している。
 夜会に参加すれば、嫌でも目立ってしまう程に成長している。

「わぁ~♪ 初めて食べたけど、凄く美味しいわぁ! どこで買って来たの?」
「これはドーナバナです。実は私が作りました!」
「凄ぉ~い! カノンは料理の天才なのね!」
「えっへへへへ♪」

 姉に美味しいと褒められて、カノンは得意げな顔になっている。
 三つ並べたドーナツの穴に、チョコバナナを入れただけの高カロリー創作料理だ。

 バナナ以外にも、メロン、イチゴ、サツマイモなどを入れた、ドーナメロ、ドーナイチなどもある。
 大量にあるパンと果物と野菜を使っただけの料理だ。
 お好みでチョコをチーズやジャムに変更することも可能だが、どうでもいい。

「今度お姉様も一緒に作りましょう。簡単だからすぐに覚えられますよ」
「う~ん、私に出来るかしら?」

 誰でも作れるに決まっている。

「はい、任せてください!」

 姉のフローラはいつも褒めてくれるから、カノンは大好きだ。
 姉の前に座って、柔らかい姉の胸を枕に甘えまくっている。
 母親のロクサーヌにやったら、いい大人が見っともない!と張り倒されてしまう。

「あっ、そういえばお姉様のジョブは何ですか? 私、知らないです」

 料理の天才と言われて、カノンはフローラのジョブが気になった。
 使っているところを見たことないが、優しい姉なら絶対に凄いジョブだと確信している。
 だけど、フローラのジョブは分からなかった。

「ごめんなさいね。私もジョブは知らないの。お母様からジョブは結婚するまで、習得しなくていいって言われているから」
「そうなんですか。教会に行けばすぐに手に入りますよ」
「……もしかして、カノン。教会に行って、料理のジョブを貰って来たの? それでこのドーナバナを……」

 やはり姉妹だ。カノンと同じで微妙な鋭さと愚かさを兼ね備えている。
 教会に行かなくても、ドーナバナ如きは誰でも作れる。

「いえ、行ってないです。使用人に聞いただけです」
「ほっ♪ そうよね。女は中身よりも見た目よ。ジョブで判断する男は金目当てよ。お母様がそう言っていたわ。だから結婚するまでジョブは習得しなくていいの」
「確かにその通りです。流石、お母様です!」

 楽々と姉を誤魔化すことに成功すると、姉が母親の教えを教えてくれた。
 最近心当たりのある出来事があったばかりだ。カノンは凄く納得している。
 でも、ショボイジョブの持ち主が言いそうな台詞だ。母親のジョブを調べた方がいい。
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