没落令嬢カノンの冒険者生活〜ジョブ『道具師』のスキルで道具を修復・レベルアップ・進化できるようになりました〜

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
91 / 121
21日目

ルセフとミランダ

しおりを挟む
「冒険者登録を三人、大至急でお願いします。あとパーティ申請書もお願いします」
「か、かしこまりました! すぐにご用意します! えーっと、名前と年齢をお願いします!」

 カウンターにいたのは、40代の知らない男性職員だった。
 店で暴れまくったカノンにかなりビビっている。

「えー、何で年齢を言わないといけないのよ? 名前だけでいいでしょう」
「かしこまりました! こちらで年齢はご用意させていただきます!」

 女性に年齢と体重を聞くのは禁句だ。
 ミランダに拒否されて、男は勝手な想像で三人の年齢を書いている。
 22、17、16とフローラに殴られたいらしい。

「これで手続きは完了です。どのような依頼をお探しでしょうか?」

 手続きが終わり、ホッとひと安心した職員が聞いた。
 この三人は偽冒険者だから仕事するつもりはない。

「はぁ? 仕事なんて探してないわ。訓練所を借りたいだけ。どこにあるの?」
「えーっと、訓練所は店を出て、左に曲がって、すぐにまた左に曲がって……」

 ミランダが訓練所の場所を聞くと、職員が歩いて1分の訓練所の説明を始めた。
 カノンが知っているから必要ないが、床で倒れている冒険者には必要だ。

「ぐぬぬぬぬっ! あの野朗~!」

 折れてない左手で床に転がっている酒瓶を握った。女に舐められたままで終われない。
 ヨロヨロ立ち上がると、狙いを一番偉そうなミランダに定めた。
 背後から隙だらけの脳天に、酒瓶をめり込ませる。

「死ねえええー‼︎」
「えっ?」

 絶叫して向かって来る冒険者に、ミランダが気づいた。
 ゆっくり後ろを振り返ると、酒瓶が飛んで来るのが見えた。

「ふがあ‼︎」
「えっ? なに?」

 誰かが投げた酒瓶が、酒瓶を持った男の頭に命中した。
 男が床に倒れて唸っているが、ミランダに手を出して許されるわけがない。

「この下郎が! お嬢様に怪我させたら、私達が責任取るのよ!」
「ごぶ、ぶふっ!」

 女性使用人三人に足蹴りされている。ある意味サービスだ。

「あっちの方から飛んで来たみたい。あの人達が助けてくれたんじゃないの?」
「ふーん、なかなかやるわね♪ 街を散歩する時の護衛に雇ってあげようじゃない」

 フローラが飛んで来た方向を指差すと、二人組の男がテーブルで、知らないフリして食事している。
 明らかに関わりたくないから、さっさと店から出て行って欲しいという雰囲気だ。

「どっちが瓶を投げたの? お礼にその食事代は支払ってあげる——」
「飲み終わったのをゴミ箱に捨てただけだ。お礼がしたいなら店から出て行け。うるさくて飯が不味くなる」
「なぐっ⁉︎」

 それなのに、ミランダは二人組のテーブルに向かった。
 その結果、褐色肌の錆色髪の青年に、不機嫌そうに出て行けと言われてしまった。
 ミランダはショックを受けている。

「ははっ♪ ごめんねぇ。コイツ、美人だから緊張しているんだよ。冗談だから許してあげて。俺はウェイン、コイツはルセフ。お礼ならお友達と一緒に食事してくれるだけでいいよ。何なら街で買い物とかでもいいよ。もちろん奢るから」

 口下手な友達の代わりに、黒髪、色白肌の青年が笑いながら話し出した。
 女三人組、使用人を含めると六人組を誘っている。
 五ヶ月前のルセフとウェインだ。

「食事したいなら勝手にするんだな。俺は家に帰る」

 ルセフの皿にはまだ料理が残っているが、椅子から立ち上がった。
 本気で帰るつもりのようだ。それをミランダが前に立ち塞がって止めた。

「ちょっと待ちなさい。あなた強そうね? 街で散歩する時の護衛に雇ってあげるわ。月40万ギルドぐらいでいいかしら?」
「フッ。金持ちはデートに誘うのにも、金を使わないと出来ないのか?」
「ななっ! デートじゃないわ! 護衛よ‼︎ 勘違いしないでちょうだい‼︎」

 ミランダは護衛に雇いたいだけだが、揶揄われるのに慣れてないようだ。
 顔を赤く染めて怒っている。

「だろうな。あんたぐらいの美人なら相手ぐらい選ぶ。金の話をしなければ少しは考えていたが、悪いが貧乏人にも誇りがあるんだ。金で何でも買えないと覚えておくんだな」
「なぐぐぐっ! ちょっと待ちなさいよ!」

 ルセフはミランダの横を通り過ぎると、店の外に向かっていく。
 断られたミランダはまだ言いたいことがあるらしいが、ルセフは止まらずに出て行った。

「くぅぅぅ! 何なのよ、アイツ!」
「まあまあ、そんなに怒らないで。護衛なら俺がするか——」
「あんたは要らないわ!」
「そんなぁー!」
「ククッ。この私に恥をかかすなんていい度胸じゃない。必ず護衛にならせてくださいと言わせてやるわ」

 ミランダが悔しそうに床を踏んでいる。
 ウェインが気を利かせて食事に誘おうとするが、考える必要もなかった。
 即座に断ると、悪い顔で平民ルセフへの仕返しを考え始めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...