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22日目
待ち人現る
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姉妹が馬車の中でのんびり待っていると、二人組の冒険者が徒歩でやって来た。
外にいた茶髪の使用人が馬車の扉を開けて、寝ているミランダを起こした。
「ミランダお嬢様、ミランダお嬢様……」
「んん~、なに?」
「昨日の男が現れました」
「ああ、そう……ん?」
寝惚けているミランダに使用人が状況を説明した。
ミランダはボッーとしていたが、状況を理解すると元気に馬車を降りた。
「やっと現れたわね! いつまでレディを待たせるのかしら?」
待ち合わせ10分前だ。勝手に早く来て、勝手に待っているだけだ。
「お前、昨日の女か? 何の用だ?」
髪型と服が違うから分からなかった。
堂々と腕を組んでいるミランダにルセフは聞いた。
待ち伏せされる理由に心当たりがない。護衛依頼を断ったぐらいだ。
そんなルセフに堂々とミランダが答えた。
「何の用もないでしょう。私はあなたのお客様よ。さっさとレベル上げの手伝いをしなさい」
「……おい、ウェイン。金持ちの使用人のレベル上げじゃなかったのか?」
話が違うとルセフは隣の男を睨んだ。
睨まれたウェインは悪びれる様子もなく、ミランダと一緒に堂々としている。
「使用人ならいるだろ。キチンとレベルを上げてくれるか、見学させてもらうそうだ」
「そういうことよ。料金は人数分払ってあげるから、泣いて感謝しなさい!」
タチの悪い二人が結託しているが、タチが悪いのはもう一人いる。
ルセフの危険察知が馬車の中にいる、恐ろしい危険を察知している。
絶対に関わらない方がいいと本能が教えている。
「とにかく俺は知らない。やるならお前——」
「敵に回す相手は選んだ方がいいですよ」
帰ろうとするルセフを、茶髪の使用人が剣を抜いて止めた。
レベル5だ。使うのは剣ではなく、権力だ。
「こちらのミランダお嬢様は、ネロエスト男爵家の次女様です。あなたの住所と家族は調べさせてもらいました。今帰れば後悔することになりますよ」
「それで脅しているつもりか?」
「脅す? 何のことでしょうか? 家と家族を知っている、ただそう言っただけですよ」
使用人は薄っすら笑って言っている。それを一般的には脅していると言う。
そして、敵を回す相手も脅す相手も選んだ方がいい。
ルセフがアイテムポーチのボタンを静かに外した。
「使用人のくせに口の利き方は習わなかったみたいだな。それとも習ってそれか?」
ポーチから剣を取り出し、鞘から剣を抜いた。
鈍く光る両刃の切っ先を素早く使用人に向けた。
「ひいい!」
驚いた使用人が持っていた剣を地面に落とした。
「ちょっと! 私の使用人に何するつもり!」
「喧嘩を売ったのはコイツだ。覚悟は出来てんだろうな!」
「嫌あああー‼︎」
慌ててミランダが止めようとしたが、ルセフは構わずに剣を振り上げ、使用人に振り下ろした。
使用人が悲鳴を上げて、両手で咄嗟に頭を庇った。
「……」
振り下ろされた剣が使用人の頭上でピタッと止まった。
ベタベタの脅しだが、使用人には効果抜群だったようだ。
目を瞑ったままブルブル震えて、斬られるのを待っている。
「いつまでそうしているつもりだ? 遊びで剣を持ちたいなら、女同士で楽しく遊んでろ。魔物は攻撃を止めたりしない。男爵様の脅しも効かない。死にたくないならお嬢様と帰るんだな」
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
ルセフは地面に投げた鞘を拾うと剣を納めた。やっぱり帰るつもりのようだ。
茶髪の使用人が地面に崩れるように座り込んで、激しく呼吸している。
心配した使用人ナンシーが名前を呼んで駆け寄った。
「ベアトリス‼︎ 大丈夫⁉︎」
「おい、ルセフ。やり過ぎだぞ」
「無理に連れて行って死ぬよりマシだ。レベルを上げたいなら訓練所でやればいい。お前も女殺してでも金が欲しいなら、野盗でもやってろ」
「なっ⁉︎ そこまで言わなくてもいいだろう‼︎」
ルセフも悪いが、喧嘩を売った使用人も悪い。
女性貴族と使用人に囲まれて、お金貰って冒険できると思ったウェインも悪い。
皆んな悪いが、そんなことはどうでもいい。レベル上げに行くのか知りたい。
外にいた茶髪の使用人が馬車の扉を開けて、寝ているミランダを起こした。
「ミランダお嬢様、ミランダお嬢様……」
「んん~、なに?」
「昨日の男が現れました」
「ああ、そう……ん?」
寝惚けているミランダに使用人が状況を説明した。
ミランダはボッーとしていたが、状況を理解すると元気に馬車を降りた。
「やっと現れたわね! いつまでレディを待たせるのかしら?」
待ち合わせ10分前だ。勝手に早く来て、勝手に待っているだけだ。
「お前、昨日の女か? 何の用だ?」
髪型と服が違うから分からなかった。
堂々と腕を組んでいるミランダにルセフは聞いた。
待ち伏せされる理由に心当たりがない。護衛依頼を断ったぐらいだ。
そんなルセフに堂々とミランダが答えた。
「何の用もないでしょう。私はあなたのお客様よ。さっさとレベル上げの手伝いをしなさい」
「……おい、ウェイン。金持ちの使用人のレベル上げじゃなかったのか?」
話が違うとルセフは隣の男を睨んだ。
睨まれたウェインは悪びれる様子もなく、ミランダと一緒に堂々としている。
「使用人ならいるだろ。キチンとレベルを上げてくれるか、見学させてもらうそうだ」
「そういうことよ。料金は人数分払ってあげるから、泣いて感謝しなさい!」
タチの悪い二人が結託しているが、タチが悪いのはもう一人いる。
ルセフの危険察知が馬車の中にいる、恐ろしい危険を察知している。
絶対に関わらない方がいいと本能が教えている。
「とにかく俺は知らない。やるならお前——」
「敵に回す相手は選んだ方がいいですよ」
帰ろうとするルセフを、茶髪の使用人が剣を抜いて止めた。
レベル5だ。使うのは剣ではなく、権力だ。
「こちらのミランダお嬢様は、ネロエスト男爵家の次女様です。あなたの住所と家族は調べさせてもらいました。今帰れば後悔することになりますよ」
「それで脅しているつもりか?」
「脅す? 何のことでしょうか? 家と家族を知っている、ただそう言っただけですよ」
使用人は薄っすら笑って言っている。それを一般的には脅していると言う。
そして、敵を回す相手も脅す相手も選んだ方がいい。
ルセフがアイテムポーチのボタンを静かに外した。
「使用人のくせに口の利き方は習わなかったみたいだな。それとも習ってそれか?」
ポーチから剣を取り出し、鞘から剣を抜いた。
鈍く光る両刃の切っ先を素早く使用人に向けた。
「ひいい!」
驚いた使用人が持っていた剣を地面に落とした。
「ちょっと! 私の使用人に何するつもり!」
「喧嘩を売ったのはコイツだ。覚悟は出来てんだろうな!」
「嫌あああー‼︎」
慌ててミランダが止めようとしたが、ルセフは構わずに剣を振り上げ、使用人に振り下ろした。
使用人が悲鳴を上げて、両手で咄嗟に頭を庇った。
「……」
振り下ろされた剣が使用人の頭上でピタッと止まった。
ベタベタの脅しだが、使用人には効果抜群だったようだ。
目を瞑ったままブルブル震えて、斬られるのを待っている。
「いつまでそうしているつもりだ? 遊びで剣を持ちたいなら、女同士で楽しく遊んでろ。魔物は攻撃を止めたりしない。男爵様の脅しも効かない。死にたくないならお嬢様と帰るんだな」
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
ルセフは地面に投げた鞘を拾うと剣を納めた。やっぱり帰るつもりのようだ。
茶髪の使用人が地面に崩れるように座り込んで、激しく呼吸している。
心配した使用人ナンシーが名前を呼んで駆け寄った。
「ベアトリス‼︎ 大丈夫⁉︎」
「おい、ルセフ。やり過ぎだぞ」
「無理に連れて行って死ぬよりマシだ。レベルを上げたいなら訓練所でやればいい。お前も女殺してでも金が欲しいなら、野盗でもやってろ」
「なっ⁉︎ そこまで言わなくてもいいだろう‼︎」
ルセフも悪いが、喧嘩を売った使用人も悪い。
女性貴族と使用人に囲まれて、お金貰って冒険できると思ったウェインも悪い。
皆んな悪いが、そんなことはどうでもいい。レベル上げに行くのか知りたい。
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