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中編・後
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「さっきのが初級編のアメとムチだ。十万ユールぐらいなら、その辺の奴に頼めば用意できる金額だから、誰にも助けてもらえないようにしてから、考える時間を与えずに短時間で決着をつける」
「勉強になります!」
裏路地にある下着だけを着た女性が沢山いる店に、奥さんと娘さんを預けるとジェシーさんが教えてくれた。十万ユール貸して、百九十万ユール手に入れたそうだ。流石はプロです。
「はぁぁ、もういいな? 授業は終わりだ。さっさと家に帰れ。今度から奪われそうになったら、殴って、壁ドンすればいい。それで大抵の奴は逃げていく。抵抗しない奴は奪われるだけだ」
溜め息を吐いて、もう終わりだと、ジェシーさんが手を振って帰れと言ってきた。確かにもう夕方だから家に帰らないといけない。
「はい! ありがとうございました!」
「分かったら、さっさと家に帰れ。ここには二度と来るんじゃねぇぞ」
頭を下げてお礼を言うと私は家に帰った。
もう妹なんか怖くない。今度、私の物を奪おうとしたら、殴って、壁ドンしてやる。
♢
「全然来ないです……」
家庭菜園の野菜達に水をあげたりして、いつも通りの日々が過ぎていく。奪って欲しい時に限って、妹は何も奪いに来ない。せっかく、プロの人達に教えてもらった技が無駄になってしまう。
こうなったら、奪われた物を自分で取り返した方がいいかもしれない。
「メアリーお姉ちゃん、これちょうだい」
「あっ!」
……噂をすれば来ましたね!
プチトマトの回復を祈って水をあげていると妹がやって来た。
手には紐状の髪留めを持っている。子供の頃に使っていた記憶がある私の髪留めです。タンスの奥に仕舞っていた物で、今は使ってないので正直あげてもいいです。
でも、それだと意味ないです。これからは髪の毛一本さえ渡さない意思が必要なんです。
……脱・奪われ人生です!
「ダメです! それは大切な物なので渡せません」
「えっ……」
「それと今まであげた物も返してください」
断られると思っていなかったのか、妹はちょっと驚いている。そんな妹にさらに畳み掛けるように、次のお願いをした。師匠の教え通りに考える時間を与えない。
「……嫌々、嫌々! 欲しい欲しい欲しい! 絶対に返さないっ!」
それでもいつものように妹が大声で喚き出した。ご近所さんに平気で迷惑をかけて、本当に恥ずかしい妹だ。でも、今日はすぐに黙らせる良い方法がある。右手を振り上げると妹の頬をパァンとビンタした。
「あうっ!」
「返しなさい」
ビンタされた衝撃で妹の身体が少しフラついた。これで言う事を聞かないなら壁ドンする。
「うぅっ、どうして……」
「あなたがいつもいつも私の物を欲しがるからです。欲しいなら自分のお小遣いで買いなさい」
叩かれた理由が分からない妹に、叩いた理由を教えてあげる。何度も言った事だけど、今日はキチンと分かるまで教えるつもりだ。でも、妹は言葉で分からないから、痛みで分からせないといけない。
「さあ、それをお姉ちゃんに返しなさい!」
「嫌々! 絶対に嫌!」
「はぁぁ……」
この程度の注意で妹が言う事を聞くようなら、お父さんもお母さんも私も苦労しない。妹は私を睨みつけると絶対に渡さないように髪留めを両手で握り締めた。そっちがそのつもりなら、私も容赦はしない。
「あうっ! はうっ!」
パァン! パァン! と何度もビンタして、妹に髪留めを返すようにお願いする。
妹は倒れないように踏ん張っているけど、自分と似た顔を殴るのは複雑な気分だ。まるで自分で自分を殴っているみたい。
「うぅっ、メアリーお姉ちゃん酷いよ……お父さんとお母さんに言いつけてやるんだから……」
「なっ!」
妹は顔を腫らして泣いている。これだと私が妹の髪留めを力尽くで奪い取ろうとしている、意地悪な姉に見えてしまう。被害者は私の方だ。
……もー! 最終兵器の壁ドンしかないですね!
覚悟を決めると妹の手と肩を掴んだ。「嫌々!」と抵抗する妹と一緒に家の岩壁に向かって走って行く。そして、「やぁっ!」と掛け声と一緒に一気に壁に投げつけた。
ドン……
「あぐぅ!」
岩壁に激突した妹は呻き声を上げて、地面に倒れて気絶してしまった。しっかりと握り締めていた妹の手から、私の髪留めがポロリと地面に落ちた。
流石はプロの教えです。妹から髪留めを奪い返す事が出来ました。でも、これはちょっとヤバイです。
「……か、隠さないと」
ゴクリと喉を鳴らして、鼻から鼻血を流している妹を見た。
これは病院代がかなりかかってしまう。お父さんとお母さんにやり過ぎだと怒られてしまう。私のお小遣いが一年以上は無しになってしまう。怪我が治るまで何処かに預けないといけない。
「ハッ!」
……そうだ! あの人達にお願いしてみよう! ついでにお金も稼げるからちょうどいい。
私は名案を思いついたので、気絶している妹を荷車に乗せて、布を被せて、裏路地の酒場を目指した。
「勉強になります!」
裏路地にある下着だけを着た女性が沢山いる店に、奥さんと娘さんを預けるとジェシーさんが教えてくれた。十万ユール貸して、百九十万ユール手に入れたそうだ。流石はプロです。
「はぁぁ、もういいな? 授業は終わりだ。さっさと家に帰れ。今度から奪われそうになったら、殴って、壁ドンすればいい。それで大抵の奴は逃げていく。抵抗しない奴は奪われるだけだ」
溜め息を吐いて、もう終わりだと、ジェシーさんが手を振って帰れと言ってきた。確かにもう夕方だから家に帰らないといけない。
「はい! ありがとうございました!」
「分かったら、さっさと家に帰れ。ここには二度と来るんじゃねぇぞ」
頭を下げてお礼を言うと私は家に帰った。
もう妹なんか怖くない。今度、私の物を奪おうとしたら、殴って、壁ドンしてやる。
♢
「全然来ないです……」
家庭菜園の野菜達に水をあげたりして、いつも通りの日々が過ぎていく。奪って欲しい時に限って、妹は何も奪いに来ない。せっかく、プロの人達に教えてもらった技が無駄になってしまう。
こうなったら、奪われた物を自分で取り返した方がいいかもしれない。
「メアリーお姉ちゃん、これちょうだい」
「あっ!」
……噂をすれば来ましたね!
プチトマトの回復を祈って水をあげていると妹がやって来た。
手には紐状の髪留めを持っている。子供の頃に使っていた記憶がある私の髪留めです。タンスの奥に仕舞っていた物で、今は使ってないので正直あげてもいいです。
でも、それだと意味ないです。これからは髪の毛一本さえ渡さない意思が必要なんです。
……脱・奪われ人生です!
「ダメです! それは大切な物なので渡せません」
「えっ……」
「それと今まであげた物も返してください」
断られると思っていなかったのか、妹はちょっと驚いている。そんな妹にさらに畳み掛けるように、次のお願いをした。師匠の教え通りに考える時間を与えない。
「……嫌々、嫌々! 欲しい欲しい欲しい! 絶対に返さないっ!」
それでもいつものように妹が大声で喚き出した。ご近所さんに平気で迷惑をかけて、本当に恥ずかしい妹だ。でも、今日はすぐに黙らせる良い方法がある。右手を振り上げると妹の頬をパァンとビンタした。
「あうっ!」
「返しなさい」
ビンタされた衝撃で妹の身体が少しフラついた。これで言う事を聞かないなら壁ドンする。
「うぅっ、どうして……」
「あなたがいつもいつも私の物を欲しがるからです。欲しいなら自分のお小遣いで買いなさい」
叩かれた理由が分からない妹に、叩いた理由を教えてあげる。何度も言った事だけど、今日はキチンと分かるまで教えるつもりだ。でも、妹は言葉で分からないから、痛みで分からせないといけない。
「さあ、それをお姉ちゃんに返しなさい!」
「嫌々! 絶対に嫌!」
「はぁぁ……」
この程度の注意で妹が言う事を聞くようなら、お父さんもお母さんも私も苦労しない。妹は私を睨みつけると絶対に渡さないように髪留めを両手で握り締めた。そっちがそのつもりなら、私も容赦はしない。
「あうっ! はうっ!」
パァン! パァン! と何度もビンタして、妹に髪留めを返すようにお願いする。
妹は倒れないように踏ん張っているけど、自分と似た顔を殴るのは複雑な気分だ。まるで自分で自分を殴っているみたい。
「うぅっ、メアリーお姉ちゃん酷いよ……お父さんとお母さんに言いつけてやるんだから……」
「なっ!」
妹は顔を腫らして泣いている。これだと私が妹の髪留めを力尽くで奪い取ろうとしている、意地悪な姉に見えてしまう。被害者は私の方だ。
……もー! 最終兵器の壁ドンしかないですね!
覚悟を決めると妹の手と肩を掴んだ。「嫌々!」と抵抗する妹と一緒に家の岩壁に向かって走って行く。そして、「やぁっ!」と掛け声と一緒に一気に壁に投げつけた。
ドン……
「あぐぅ!」
岩壁に激突した妹は呻き声を上げて、地面に倒れて気絶してしまった。しっかりと握り締めていた妹の手から、私の髪留めがポロリと地面に落ちた。
流石はプロの教えです。妹から髪留めを奪い返す事が出来ました。でも、これはちょっとヤバイです。
「……か、隠さないと」
ゴクリと喉を鳴らして、鼻から鼻血を流している妹を見た。
これは病院代がかなりかかってしまう。お父さんとお母さんにやり過ぎだと怒られてしまう。私のお小遣いが一年以上は無しになってしまう。怪我が治るまで何処かに預けないといけない。
「ハッ!」
……そうだ! あの人達にお願いしてみよう! ついでにお金も稼げるからちょうどいい。
私は名案を思いついたので、気絶している妹を荷車に乗せて、布を被せて、裏路地の酒場を目指した。
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