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第二章
第8話 パン作り
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「三人とも自分のペースでいいからね」
前を歩く長髪三姉妹に声をかけると「はぁーい」と明るい返事が返ってきた。
茶髪のポニーテールヘアが佐藤百。甘い物が好きらしく、太ってはいないが全体的にふくよかだ。三人の中では弄られ役で、パンを食べたいと考えさせていたら杖が黄色になり、土の弾丸を発射できるようになった。
次に長谷川美月。艶のある黒髪のストレートヘアで、女子の中でも胸が大きい方だ。家が裕福で上に兄が一人いるらしい。甘やかされて育ったお嬢様タイプで運動は得意ではない。杖は白色のまま保留中だ。
最後に高橋結衣。黒髪のストレートヘアで、前髪の右側を金色のヘアピンで留めている。三人の中で一番髪が長く腰まで届いている。長谷川とは対照的に胸は小さい方で、性格は結構キツイらしい。杖は白色のまま保留中だ。
日が昇り少し明るくなってから、この三人と一緒に五人で丸いグラウンドを出発した。
日没から明るくなるまで、見張りの男子の話では約十時間だったらしい。
一日が二十四時間で固定ならば、昼の時間の方が長いという事になる。
「会長、イモ虫がいたけど私が倒した方がいいの?」
「そうだね。佐藤さんが倒してくれた方が嬉しいかな? 戦える人が多い方がいいから。でも、それだと杖が攻撃魔法に成長しそうだから、まだ見学でいいよ。美味しいパンを想像していて」
前を歩く三人が巨大イモ虫を見つけたようだ。黄色の杖を持った佐藤が聞いてきた。
戦える人間は欲しいけど、戦闘で精神に変な影響が出るのは困る。
佐藤には見学してもらい、イモ虫三匹を毒弾で倒した。
「おお! 流石は会長だぁ! 強い強いっ!」
「モモは子供ね。あの程度なら私も倒せるわよ。素手で!」
「結衣、それは駄目だよ。杖が攻撃タイプに変わるから、戦いたい気持ちは抑えないと」
「それはマズイわね。すーはー、すーはー、平常心、平常心……」
佐藤が感心して、高橋が対抗心を燃やしている。
そして、長谷川に注意されて、高橋が慌てて深呼吸をして冷静になっている。
少し賑やか過ぎるけど、言われてみたら、目の前で魔物を倒していたら、自分も倒したくなる。
戦闘行為を見せるだけでも精神に影響するのは間違いない。
「ほらほら、モモの出番だよ! イモ虫に杖を杖をくっ付けるだけらしいよ!」
「嫌ぁー! 目が大きくて怖いよぉ!」
倒したイモ虫に近寄るのを嫌がる佐藤を高橋が無理矢理に連れていく。
まるで大きなウンチに佐藤の杖を無理矢理に、くっ付けさせようとしているみたいに見える。
この調子だと森を抜けるのに何日かかるか分からないが、まずは佐藤の杖を成長させるしかない。
「会長はさっきから何をやっているんですか? 地面に落書きですか?」
ガリガリと杖で地面に矢印と時間を書いていると、七海が後ろから覗き込んで聞いてきた。
地面には『D班・0930・→』と書いてある。
「見れば分かるだろう? 現在時刻と前の目印の方向を書いている。同じ場所をグルグル回るのは嫌だし、万が一の時はグラウンドに戻れる。すぐに消えるだろうが、一日ぐらいは持つだろう」
「へぇー、会長って本当に面倒な性格ですね。神経質で細かいと女子に嫌われますよ」
まだ怒っているのか、七海は機嫌が少し悪いようだ。
セクシーな動画で皆んなのやる気を出させたのが、気に入らないらしい。
「嫌いで結構だ。他の奴らみたいに恋愛感情でパーティを組み方がおかしい。破局したら気まずい状態でずっと一緒にいるんだぞ。本人達と仲間も含めて地獄のパーティじゃないか」
充電が切れたらスマホは使い物にならない。今のうちに最大限利用しないと勿体ない。
スッと立ち上がると、七海と一緒に前を歩く長髪三姉妹の後ろを少し離れて付いて行く。
「私よりはマシだと思いますけどね。勝手に彼女にされて、一緒のチームにさせられるんですから」
「そのお陰で男は俺一人なんだ。同級生の他の男に寝込みを襲われる心配をしなくていいだろう?」
長髪三姉妹以外にも、俺のチームに入りたい希望者は多かった。回復が出来る七海は貴重な存在だ。
男は七海に手を出されたくない、女は四人以上は多過ぎると全て断った。
だけど、他の人も白杖を回復できる杖に変化させるのに成功したので、七海人気はすぐに終わった。
「べぇー! どうせ会長が襲ってくるなら一緒じゃないですか!」
「安心しろ、寝込みは襲わない。夜中の見張り中に眠気覚ましに軽くするだけだ」
「うぅぅ、やっぱり襲うんじゃないですか……」
襲う宣言に隣を歩く七海は両手で身を守りながら、少しだけ横に移動して離れた。
冗談のつもりだったのに本気にしているようだ。
長髪三姉妹が近くで寝ているのに、そんな事をしていたら、誰も眠れなくなってしまう。
だが、面白いので真面目な表情を崩さずに、説得できるか挑戦してみた。
「当たり前だ。夜は少し冷える。くっ付いてお互いの体温で温めるのは常識だ。我儘を言うな」
「むぅー、我儘を言ってるのは会長です! 焚き火をすれば温かいです!」
「じゃあ、木の無い場所ならいいんだな? だったら、七海の為に早く森を抜けないといけないな」
「そ、そんな事、私、一言も言ってないですよぉー!」
七海の同意を得たので少しだけ歩く速度を速めた。
もちろん冗談だが、七海は本気にしている。慌てて追いかけてくる。
それに焚き火は良い案だと思うが、火を起こす為に杖を変化させるのは勿体ない。
杖に頼らずに必要な物を自分達で作る必要がある。日用品を作れる杖があれば便利なんだろうけどな。
♢
「あっ! 会長、見て見てっ! 変わりますよぉー!」
「そうだね。変わるみたいだね。おめでとう、佐藤さん」
四十九匹目のイモ虫を吸収していると、佐藤が嬉しそうな顔で呼んできた。
後ろから見ていたから、黄色い杖が棍棒に変わっているのは見えている。
七海よりも四匹だけ成長が早いのは、杖の種類か持ち主の影響なのだろう。
「それで佐藤さん、調合は出来るようになったの?」
「うううん、調合じゃなかったけど、『料理・パン』と『desert』の二つが頭に浮かんだよ」
「デザートは砂漠を意味する単語かな? パンとデザートなんて、佐藤さんは食いしん坊なんだね?」
「ち、違うよぉー! 皆んなが思い浮かべてって言うから、そうしただけで、私、食いしん坊じゃないよぉー!」
少し笑いながら、単語の意味を教えると佐藤は顔を真っ赤にして否定している。
白い杖から黄色の杖になった時に覚えたのが、『soil』で土を意味している。
デザートなら、食後のデザートよりも砂漠のデザートを意味すると思う。
ある程度、弄ってやったので、早速パン作りを始めてもらおう。
「佐藤さん、パンと言っても色々あるでしょう? 食パン、クロワッサン、コッペパン、バゲット、餡パン、メロンパン……とりあえず何が作れるか試してみようか?」
財布をポケットから取り出すと、ハンカチを地面に敷いて、その上に水色真珠を並べていく。
現在は79個の水色真珠を持っている。これだけあれば、20個ぐらいはパンが作れそうだ。
「何でもいいんですか?」
「そうだね? 何でもいいけど、料理されるパンが固定されると困るから、皆んなが毎日食べたいパンをまずは決めようか?」
佐藤の質問に少しだけ考えると、七海の回復薬がお茶の味なのを思い出した。
試しに栄養ドリンクの味に出来るかやってみたけど、味はお茶のままだった。
「私はバゲットがいいです。食べ応えがありますから」
「うーん、私はハンバーガーがいいけど、無理そうだから、メロンパンかな?」
「七海は何がいいの? 俺はメロンパンが良いんだけど」
長谷川と高橋が言ったので、七海にも聞いた。実際にはメロンパンにしろ、という要求だ。
七海もそれを理解したようで、ぎこちない笑顔で「メロンパン」と言った。これでメロンパンになった。
成功したら、砂糖たっぷりのメロンパンが食べられる。頭を使うには大量の糖分が必要だ。
「うん、私も甘いメロンパンが良い。駄目だったら、次はバゲットにするねぇ」
「モモ、失敗したら許さないからね。私達の命はあんたにかかっているのよ!」
「えっ、う、うん……」
笑顔で地面にしゃがみ込んだ佐藤の両肩を、高橋が掴んでプレッシャーを与えている。
爆発物の処理じゃないんだから、失敗しても誰も死なない。
「高橋さん、それだと佐藤さんが緊張するだけだよ。佐藤さんは実験だと思って気楽にやってみて。でも、食べられないフライパンは作らないでね」
「にやぁぁぁ! 二人とも集中させてよぉ! 会長、本当にフライパン作ったらどうするんですかぁ!」
「大丈夫。フライパンは料理じゃないから、作れないよ」
リラックスさせようとしたのに、佐藤は半泣きになってしまった。
精神的に弱くても杖は一応は成長するようだ。
「ぐすっ、『料理・パン』……」
少し落ち着いてから佐藤は料理を再開した。黄色の棍棒杖を水色真珠にくっ付ける。
三つの真珠が光ると形を変えていく。完成したのは、見た目は完璧なメロンパンだった。
「見た目はメロンパンだね。佐藤さんが最初に食べてみて」
「いいの? うん、いただきます……」
佐藤は遠慮しているけど、原材料・茶色イモ虫のパンを食べるには勇気がいる。
食べるように勧めると、佐藤は直径15センチはあるメロンパンに小さな口で齧り付いた。
「んっ! 甘い……これ、メロンパンだよぉ!」
「本当! やったじゃない! モモ、一人で食べてないで私達の分も早く作って!」
「う、うん、すぐに作るから待って……」
佐藤はビックリした顔の後に嬉しそうな顔をした。どうやら、見た目通りの普通のメロンパンのようだ。
モグモグと食べる佐藤にお願いして、追加で四個のメロンパンを作ってもらった。
一日ぶりのまともな食事を女子達は嬉しそうに食べている。
……これで水と食料は確保できた。あとは森を抜けるだけか。
食糧を確保できたので、これで本格的な探索を始められる。
森を抜ける前に水色真珠を出来るだけ集めて、俺の杖も成長させたい。
とりあえず色々と考えないといけないけど、今は甘いメロンパンで糖分をしっかり補給しよう。
考えるのはその後の方が絶対に良い。
前を歩く長髪三姉妹に声をかけると「はぁーい」と明るい返事が返ってきた。
茶髪のポニーテールヘアが佐藤百。甘い物が好きらしく、太ってはいないが全体的にふくよかだ。三人の中では弄られ役で、パンを食べたいと考えさせていたら杖が黄色になり、土の弾丸を発射できるようになった。
次に長谷川美月。艶のある黒髪のストレートヘアで、女子の中でも胸が大きい方だ。家が裕福で上に兄が一人いるらしい。甘やかされて育ったお嬢様タイプで運動は得意ではない。杖は白色のまま保留中だ。
最後に高橋結衣。黒髪のストレートヘアで、前髪の右側を金色のヘアピンで留めている。三人の中で一番髪が長く腰まで届いている。長谷川とは対照的に胸は小さい方で、性格は結構キツイらしい。杖は白色のまま保留中だ。
日が昇り少し明るくなってから、この三人と一緒に五人で丸いグラウンドを出発した。
日没から明るくなるまで、見張りの男子の話では約十時間だったらしい。
一日が二十四時間で固定ならば、昼の時間の方が長いという事になる。
「会長、イモ虫がいたけど私が倒した方がいいの?」
「そうだね。佐藤さんが倒してくれた方が嬉しいかな? 戦える人が多い方がいいから。でも、それだと杖が攻撃魔法に成長しそうだから、まだ見学でいいよ。美味しいパンを想像していて」
前を歩く三人が巨大イモ虫を見つけたようだ。黄色の杖を持った佐藤が聞いてきた。
戦える人間は欲しいけど、戦闘で精神に変な影響が出るのは困る。
佐藤には見学してもらい、イモ虫三匹を毒弾で倒した。
「おお! 流石は会長だぁ! 強い強いっ!」
「モモは子供ね。あの程度なら私も倒せるわよ。素手で!」
「結衣、それは駄目だよ。杖が攻撃タイプに変わるから、戦いたい気持ちは抑えないと」
「それはマズイわね。すーはー、すーはー、平常心、平常心……」
佐藤が感心して、高橋が対抗心を燃やしている。
そして、長谷川に注意されて、高橋が慌てて深呼吸をして冷静になっている。
少し賑やか過ぎるけど、言われてみたら、目の前で魔物を倒していたら、自分も倒したくなる。
戦闘行為を見せるだけでも精神に影響するのは間違いない。
「ほらほら、モモの出番だよ! イモ虫に杖を杖をくっ付けるだけらしいよ!」
「嫌ぁー! 目が大きくて怖いよぉ!」
倒したイモ虫に近寄るのを嫌がる佐藤を高橋が無理矢理に連れていく。
まるで大きなウンチに佐藤の杖を無理矢理に、くっ付けさせようとしているみたいに見える。
この調子だと森を抜けるのに何日かかるか分からないが、まずは佐藤の杖を成長させるしかない。
「会長はさっきから何をやっているんですか? 地面に落書きですか?」
ガリガリと杖で地面に矢印と時間を書いていると、七海が後ろから覗き込んで聞いてきた。
地面には『D班・0930・→』と書いてある。
「見れば分かるだろう? 現在時刻と前の目印の方向を書いている。同じ場所をグルグル回るのは嫌だし、万が一の時はグラウンドに戻れる。すぐに消えるだろうが、一日ぐらいは持つだろう」
「へぇー、会長って本当に面倒な性格ですね。神経質で細かいと女子に嫌われますよ」
まだ怒っているのか、七海は機嫌が少し悪いようだ。
セクシーな動画で皆んなのやる気を出させたのが、気に入らないらしい。
「嫌いで結構だ。他の奴らみたいに恋愛感情でパーティを組み方がおかしい。破局したら気まずい状態でずっと一緒にいるんだぞ。本人達と仲間も含めて地獄のパーティじゃないか」
充電が切れたらスマホは使い物にならない。今のうちに最大限利用しないと勿体ない。
スッと立ち上がると、七海と一緒に前を歩く長髪三姉妹の後ろを少し離れて付いて行く。
「私よりはマシだと思いますけどね。勝手に彼女にされて、一緒のチームにさせられるんですから」
「そのお陰で男は俺一人なんだ。同級生の他の男に寝込みを襲われる心配をしなくていいだろう?」
長髪三姉妹以外にも、俺のチームに入りたい希望者は多かった。回復が出来る七海は貴重な存在だ。
男は七海に手を出されたくない、女は四人以上は多過ぎると全て断った。
だけど、他の人も白杖を回復できる杖に変化させるのに成功したので、七海人気はすぐに終わった。
「べぇー! どうせ会長が襲ってくるなら一緒じゃないですか!」
「安心しろ、寝込みは襲わない。夜中の見張り中に眠気覚ましに軽くするだけだ」
「うぅぅ、やっぱり襲うんじゃないですか……」
襲う宣言に隣を歩く七海は両手で身を守りながら、少しだけ横に移動して離れた。
冗談のつもりだったのに本気にしているようだ。
長髪三姉妹が近くで寝ているのに、そんな事をしていたら、誰も眠れなくなってしまう。
だが、面白いので真面目な表情を崩さずに、説得できるか挑戦してみた。
「当たり前だ。夜は少し冷える。くっ付いてお互いの体温で温めるのは常識だ。我儘を言うな」
「むぅー、我儘を言ってるのは会長です! 焚き火をすれば温かいです!」
「じゃあ、木の無い場所ならいいんだな? だったら、七海の為に早く森を抜けないといけないな」
「そ、そんな事、私、一言も言ってないですよぉー!」
七海の同意を得たので少しだけ歩く速度を速めた。
もちろん冗談だが、七海は本気にしている。慌てて追いかけてくる。
それに焚き火は良い案だと思うが、火を起こす為に杖を変化させるのは勿体ない。
杖に頼らずに必要な物を自分達で作る必要がある。日用品を作れる杖があれば便利なんだろうけどな。
♢
「あっ! 会長、見て見てっ! 変わりますよぉー!」
「そうだね。変わるみたいだね。おめでとう、佐藤さん」
四十九匹目のイモ虫を吸収していると、佐藤が嬉しそうな顔で呼んできた。
後ろから見ていたから、黄色い杖が棍棒に変わっているのは見えている。
七海よりも四匹だけ成長が早いのは、杖の種類か持ち主の影響なのだろう。
「それで佐藤さん、調合は出来るようになったの?」
「うううん、調合じゃなかったけど、『料理・パン』と『desert』の二つが頭に浮かんだよ」
「デザートは砂漠を意味する単語かな? パンとデザートなんて、佐藤さんは食いしん坊なんだね?」
「ち、違うよぉー! 皆んなが思い浮かべてって言うから、そうしただけで、私、食いしん坊じゃないよぉー!」
少し笑いながら、単語の意味を教えると佐藤は顔を真っ赤にして否定している。
白い杖から黄色の杖になった時に覚えたのが、『soil』で土を意味している。
デザートなら、食後のデザートよりも砂漠のデザートを意味すると思う。
ある程度、弄ってやったので、早速パン作りを始めてもらおう。
「佐藤さん、パンと言っても色々あるでしょう? 食パン、クロワッサン、コッペパン、バゲット、餡パン、メロンパン……とりあえず何が作れるか試してみようか?」
財布をポケットから取り出すと、ハンカチを地面に敷いて、その上に水色真珠を並べていく。
現在は79個の水色真珠を持っている。これだけあれば、20個ぐらいはパンが作れそうだ。
「何でもいいんですか?」
「そうだね? 何でもいいけど、料理されるパンが固定されると困るから、皆んなが毎日食べたいパンをまずは決めようか?」
佐藤の質問に少しだけ考えると、七海の回復薬がお茶の味なのを思い出した。
試しに栄養ドリンクの味に出来るかやってみたけど、味はお茶のままだった。
「私はバゲットがいいです。食べ応えがありますから」
「うーん、私はハンバーガーがいいけど、無理そうだから、メロンパンかな?」
「七海は何がいいの? 俺はメロンパンが良いんだけど」
長谷川と高橋が言ったので、七海にも聞いた。実際にはメロンパンにしろ、という要求だ。
七海もそれを理解したようで、ぎこちない笑顔で「メロンパン」と言った。これでメロンパンになった。
成功したら、砂糖たっぷりのメロンパンが食べられる。頭を使うには大量の糖分が必要だ。
「うん、私も甘いメロンパンが良い。駄目だったら、次はバゲットにするねぇ」
「モモ、失敗したら許さないからね。私達の命はあんたにかかっているのよ!」
「えっ、う、うん……」
笑顔で地面にしゃがみ込んだ佐藤の両肩を、高橋が掴んでプレッシャーを与えている。
爆発物の処理じゃないんだから、失敗しても誰も死なない。
「高橋さん、それだと佐藤さんが緊張するだけだよ。佐藤さんは実験だと思って気楽にやってみて。でも、食べられないフライパンは作らないでね」
「にやぁぁぁ! 二人とも集中させてよぉ! 会長、本当にフライパン作ったらどうするんですかぁ!」
「大丈夫。フライパンは料理じゃないから、作れないよ」
リラックスさせようとしたのに、佐藤は半泣きになってしまった。
精神的に弱くても杖は一応は成長するようだ。
「ぐすっ、『料理・パン』……」
少し落ち着いてから佐藤は料理を再開した。黄色の棍棒杖を水色真珠にくっ付ける。
三つの真珠が光ると形を変えていく。完成したのは、見た目は完璧なメロンパンだった。
「見た目はメロンパンだね。佐藤さんが最初に食べてみて」
「いいの? うん、いただきます……」
佐藤は遠慮しているけど、原材料・茶色イモ虫のパンを食べるには勇気がいる。
食べるように勧めると、佐藤は直径15センチはあるメロンパンに小さな口で齧り付いた。
「んっ! 甘い……これ、メロンパンだよぉ!」
「本当! やったじゃない! モモ、一人で食べてないで私達の分も早く作って!」
「う、うん、すぐに作るから待って……」
佐藤はビックリした顔の後に嬉しそうな顔をした。どうやら、見た目通りの普通のメロンパンのようだ。
モグモグと食べる佐藤にお願いして、追加で四個のメロンパンを作ってもらった。
一日ぶりのまともな食事を女子達は嬉しそうに食べている。
……これで水と食料は確保できた。あとは森を抜けるだけか。
食糧を確保できたので、これで本格的な探索を始められる。
森を抜ける前に水色真珠を出来るだけ集めて、俺の杖も成長させたい。
とりあえず色々と考えないといけないけど、今は甘いメロンパンで糖分をしっかり補給しよう。
考えるのはその後の方が絶対に良い。
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