【R18】腹黒毒生徒会長様の世界樹クラス転移 〜持ち主によって様々に成長する世界樹の魔法の杖を与えられた高校生達〜

もう書かないって言ったよね?

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第二章

第9話 森の外の世界

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「はぁぁ、やっと外に出られたよぉー」

 喜ぶよりも疲れているようだ。佐藤が森の外の荒地を見て、ため息を吐き出した。
 毒の杖はまだ成長してないが、森の中に引き返してイモ虫を探したい女子はいないだろう。

「暗くなるまでは、まだ六時間ぐらいは余裕があると思うけど、皆んなはどうしたい?」

「どうした方が良い?」とは聞かない。
 良し悪しで行動を判断して決めていたら、それがルールになってしまう。
 ルールは他人も自分も拘束する諸刃の刃だ。まだまだ感情で判断する余裕と柔軟さが必要だ。

「七海ちゃんの回復のお陰であまり疲れてないから、私は行ける所まで行きたいかな?」
「私は今日はここまででいいと思う。限界まで頑張って、夜に広い場所で魔物に襲われたらヤバイでしょう? 森なら隠れる場所もあるし、イモ虫もいる。食糧には困らない」
「なるほどね。佐藤さんと七海はどうしたい?」

 お嬢様なのに長谷川はまだ歩きたいようだ。逆に高橋は慎重だ。
 個人的には高橋の案で良いと思うけど、佐藤と七海にも聞いた。

「えーっと、私はどっちでもいいかな?」
「モモ、そういうのはいいから。六対四とか微妙な感じでもやりたい方があるでしょう?」
「うーん、じゃあ、休みたいかな?」
「はい、休憩ね。雫はどっちがいいの?」
「私もどっちでもいいけど、今日は森を抜けたところで満足かな。これから何か見つけようとして、何も見つからなかったらショックだし」

 佐藤の曖昧な答えを高橋が決めていく。七海も休憩したいようだ。
 確かに森を抜けたという達成感のまま、明日にモチベーションを維持するのも一つの手だ。

「じゃあ、今日はここで休憩で決まり。でも、一、二時間だけ周囲を調べたいから、長谷川さんが良かったら付き合って欲しい。駄目かな?」
「あっ、はい! 大丈夫です!」
「ありがとう、長谷川さん。一人じゃ心細いから助かったよ」

 三人の意見を尊重して、今日は休憩する事にした。
 それでも、地面に座って残り六時間を無駄にするつもりはない。
 まだ歩きたいと言っていた長谷川に、付き合って欲しいとお願いしたら、喜んで付いて来てくれた。

 ♢

「長谷川さんがこんなに体力があるなんて知らなかったよ。お嬢様だから、ペットボトルよりも重い物は持った事がないと思っていたから」
「もぉー! それは酷いよ、一ノ瀬君。教科書とか入った鞄は二キロはあるよ」
「そうだね。ごめん、ごめん」

 ……まぁ、胸に重い脂肪の塊をいつも乗せていたら持てるか。
 隣を歩く長谷川に冗談を言って揶揄うと、少し怒ってから否定された。
 あまり話した事がないので、どういうタイプの人間なのか分からない。

 森の外の荒地は、小さな薄茶色の雑草が生えているだけで何も落ちてない。
 森の木の枝さえも貴重品になりそうだ。
 遠くの方に灰色と青色が混ざった高そうな山脈が見えるが、山登りは流石に上履きでやりたくない。
 丈夫な靴もそうだが、バッグなどの持ち運びが出来る保管庫も欲しい。ポケットに物を入れるのも限界だ。

「一ノ瀬君は怖くないの? こんな場所にいきなり連れて来られたのに……」

 荒野を歩いていると、長谷川が立ち止まって聞いてきた。
 声は普通のトーンだったけど、目は不安そうに揺れている。

「そうだね。明日死ぬかもしれないし、今日死ぬかもしれない。でも、それは日本でも同じ事だよ。僕達が怖いと思っているのは死ぬ事じゃなくて、当たり前の日常を奪われた事なんだよ……」

 少しだけ上を向いて考えると、長谷川の目を真っ直ぐに見て話し始めた。
 一人でも精神的に不安定になると、他の人にも悪影響を与えてしまう。
 相談に乗るなんて面倒でしかないけど、相談に乗らないともっと面倒な事に発展する。
 自分一人で限界まで我慢してイライラされるよりは、困っていると教えてくれる方が助かる。

「お尻を葉っぱで拭いて、お風呂にも入れない。でも、奪われた物はまた手に入れればいい。その為に前に向かって、皆んな進んでいると思うよ。長谷川さんみたいに勇気を持ってね」
「勇気……私が?」
「そう、勇気だよ。それに長谷川さんがいてくれるお陰で俺は勇気が出るんだ。一人だったら怖くて、きっと何も出来ないと思う。七海や佐藤さん、高橋さん、長谷川さんがいてくれるから、頑張ろうって勇気が出るんだよ」

 快適な生活から不便な生活への生活環境の大きな変化は、半端ない精神的ストレスだろう。
 とくに裕福な家庭だと、その落差が激しい。おそらく長谷川がクラスで一番不安な状態だ。
 その不安感を別の感情に切り替える必要がある。長谷川に寄り添うとソッと優しく抱き締めた。
 
「んっ、あ、あの、一ノ瀬君、こういうのは……」
「心臓の音を聴くと落ち着くらしい。どんな音がするのか聴いてみて?」
「あっ、はい……トクン、トクン、言ってます」
「それが命の音だよ。俺の命が動いている間は長谷川さんを守るから、長谷川さんも俺を守って欲しい。二人だけの約束だけど、お願い出来るかな?」

 胸の中で微動だにしない長谷川が口だけを動かして囁いてくる。
 おかしな雰囲気になる前に心臓の音を聴かせた。
 長谷川はゆっくりと身体を下げて、右耳を俺の胸に押し当てている。
 どうやら聞こえたようだ。
 
「はい、いいですよ。フフッ。でも、プロポーズみたいですね?」
「じゃあ、そうしようか? 長谷川さん、目を閉じて」
「えっ⁉︎ あ、うぅ……」

 心臓の音を聴くのをやめて、身体を上げると長谷川が嬉しそうな声で言った。
 プロポーズみたいだと言うので、どうせなら誓いのキスもしておこう。
 目を閉じるようにお願いすると、一瞬戸惑った後に長谷川は目を閉じた。
 目も唇は硬く閉じて、明らかに緊張しているのが伝わってくる。
 抱き締めるのをやめると、ゆっくりと跪いて長谷川の右手の甲にチュッと軽くキスした。

「……長谷川さん、終わったよ」
「えっ? あ、あぁー、そっちですよね。そうですよねぇ……」

 長谷川は少しがっかりした表情をしているけど、そこ以外にする所はない。
 二股して痴話喧嘩して修羅場になって、後ろから魔法の弾丸を撃たれたくない。

「それじゃあ、手を繋いで前に進もうか。長谷川さんはお兄さんがいるそうだから、俺の事はお兄さんだと思っていいから。頼りないかもしれないけどね」
「あ、はい、お兄ちゃんですね。わぁーい……」

 明らかに声のトーンが下がって、全然嬉しそうじゃないけど、構わずに手を繋いで歩き出した。
 手と手で誰かと繋がっているという安心感は与えられるはずだ。

 ♢

「長谷川さん、そろそろ帰ろう? 暗くなる時間は目安で、絶対じゃないんだよ」
「あと五分だけ……あっちの方向に何かぼんやりと見えませんか?」

 歩き始めて、二時間が過ぎてしまった。
「もうちょっと、もうちょっとだけ」と言って、長谷川がお願いして進むからだ。
 回復役の七海がいないから、水と回復薬は手持ちの一本ずつしかない。
 そろそろ引き返さないと体力的に戻れない可能性もある。

「ほらほら! 一ノ瀬君、何か見えるよ!」
「えっ? 何処に?」

 長谷川が指差す方向を目を細めて見る。
 裸眼でもそこまで視力は悪くないけど、遠くの方にぼんやりと少し茶色い何かが見えるぐらいだ。
 ちょっとした岩山か、木が数本生えているようにしか思えない。
 もしくは、何かあると言われたから、そう見えるだけで、本当は何も無いかもしれない。

「あれは家だよ。私、目は良い方だから」
「うーん……分かった。長谷川さんを信じるよ。でも、今日は引き返すよ。今日中に戻らないと七海達が心配するし、友好的な人達が住んでいるとも限らない。キチンと準備して、明日、皆んなで行こう」

 攻撃できるのは一人だけ、森を抜けるまでに70匹以上もイモ虫を倒している。
 明らかに準備不足で連戦と移動で疲労も蓄積している。

 それに本当に家だとしても安全とは限らない。この世界の知的生命体が人間じゃない可能性もある。
 緑色の不気味な怪物や二本の手と八本足のイカ型宇宙人の可能性もある。
 もちろん人間の姿でも凶悪な場合もある。家があったから助かるとは限らない。

「そうだよね。皆んなで行った方が良いよね?」
「うん、そうだね。でも、大発見だよ。家を建てられる人がいるなら生活できる証拠だから」
「そうだよね。お風呂とかトイレもあるよね?」
「あるかもしれないね。さあ、戻ろう」
「う、うん……」

 長谷川の表情を見る限り、帰りたくないようだけど、強引に連れ帰らないといけない。
 ある程度、話を合わせて理解を示すと、繋いだ手を少し強く引いて、七海達の元に連れ帰った。

 ♢

 翌日、五人で昨日の場所を目指して進む事になった。地面に書いた目印を頼りに順調に進んで行く。
 昨日と同じ場所まで到着すると、七海が「本当だ。何か見えるよ」と言った。
 どうやら、蜃気楼や思い込みではなさそうだ。

「会長、どうするんですか? 火とか水とか攻撃できる杖にした方が良いですか?」
「それはまだ待ってほしい。一度決めると変更できないから」

 濃茶色の木造の建物が見えてくると、高橋が聞いてきた。
 襲われるのと襲うのは全然意味が違うから、とりあえず待ってもらった。

 確かヨーロッパのロンドンの建物が石造りの家になったのが、17世紀の後半だったと思う。
 1600年だと、ちょうど日本が江戸時代になった年だ。
 剣と弓ぐらいは普通に持っていると思った方がいい。火縄銃や魔法がある可能性もある。
 そんな武装した相手に攻撃役が一人増えても意味はない。下手に攻撃意思を見せる方が危険だ。

「ごめん。皆んなはここで待ってて欲しい。相手が武装していて、好戦的な場合がある。俺一人で安全なのか確かめてくるよ。襲ってきた場合は毒で攻撃して、沢山道連れにも出来るからね」

 立ち止まると皆んなに謝って、一人で行くと伝えた。
 色々と考えた結果、単独行動の方が上手くいくと思う。

「それって、凄く危険ですよね?」
「確かに襲って来た場合は危険だね。俺以外がやって来たら皆んなは逃げて、他の人達に危険を教えて欲しい。四人なら、俺がいなくても大丈夫だから」

 長谷川が心配そうな顔で聞いてきたけど、犠牲者五人よりは一人の方がいい。
 それに男一人の方が逆に狙われにくい。男は食べるぐらいしか利用価値がない。
 こっちの世界で若い女よりも若い男の方が、性的に狙われるのが一般的じゃなければだ。

 四人に待っているように念押しして、遠くに見える濃茶色の建物に近づいていく。
 一階建ての木造の家が沢山見えてきた。横に並んだ建物の数から村と言うよりも小さな町だ。
 ヘソの高さまである壊れた木柵が小さな町を囲んでいる。

「これは……少し厄介だな」

 柵の向こう側に町の中を歩いている人達が見えた。でも、話を聞くのは難しいかもしれない。
 町の人達は汚れた服を着て、茶色に汚れた肌のゾンビになって徘徊していた。
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