【R18】腹黒毒生徒会長様の世界樹クラス転移 〜持ち主によって様々に成長する世界樹の魔法の杖を与えられた高校生達〜

もう書かないって言ったよね?

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第二章

第7話 情報提供

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「あれ? 会長だ……」

 丸いグラウンドにある小さな焚き火に近づいて行くと、チラッと見た男が何気ない顔で言った。
 どうやら、二人もいなくなったのに、そこまでの大騒ぎにはなっていないようだ。
 皆んな、他人の心配よりも自分の心配をするのに忙しいのだろう。

 ……本当に残っている。
 丸いグラウンドには一つの焚き火を囲むように十五人が座ったり、寝込んでいた。
 さっきの見張りの三人にも少し話を聞いたが、全員が残っているらしい。
 グラウンドから見て、東西南北に十字になるように、三人ずつの見張りを四ヶ所置いているそうだ。

 問題は見張りを置いても、攻撃能力がある杖を持っている人間が少ないという事だ。
 白い杖には何の力もないそうだ。つまり半数以上の生徒が戦力外判定されている。

「皆んな、ちょっと話したい事があるんだ。疲れているだろうし、眠たいとは思うけど聞いて欲しい」

 パァン、パァンと手の平を叩き合わせて、皆んなの注目を集めて、話したい事があると伝えた。
 クラスメイトの疲れた表情からは、話は聞きたくないという感情しか伝わって来ない。
 それでも、ほとんどの人が視線を向けたまま次の話を待っている。

「まずは勝手にいなくなって、皆んなに心配かけて、すまなかった。七海さん、いや、七海と二人っきりで話したい事があったんだ。皆んなには内緒にしていたけど、七海と俺は付き合っている」
「おい、本当かよ? 嘘だろう?」
「嘘ぉ! 一ノ瀬君が雫と付き合ってるの!」

 いきなりの告白に男子も女子も驚いているが、一番驚いているのは七海だろう。
 七海が一番信じられないといった顔をしている。

「隠していたのは恋人がいると生徒会長になれないと思ったからだ。不純異性交遊で学校を退学させられるとも思った。俺と七海は皆んなが思っているような健全な付き合いをしてない。証拠ならある。これだ……」

 ズボンのポケットからスマホを取り出すと、淫らな映像の再生ボタンをタッチした。
『あんっ、う、ん、会長、きもち……』と七海の悶える姿と声が流れるが、三秒間だけ流してすぐに消した。
 これ以上は青少年に有害な影響しか与えない。
 視線のほとんどが俺から、真っ赤な顔で俯いている七海に移動したが話を続ける。

「これが皆んなから離れた理由だ。最後の瞬間を七海と過ごそうと思ったんだ。でも、やっぱり生きたいと思った。それで皆んなにも協力して欲しいとお願いに来たんだ」
「会長、それはちょっと都合良くないですかぁ? 二人がいなくなった理由は分かりましたけど、ウチらが二人の幸せの為に協力する理由はないですよね?」
「あぁ、そうだな。何で俺達が頑張らないといけないんだよ。もう十分に幸せだろう? 彼女がいて、童貞でもないんだから」

 エッチな動画を見せられて興奮したわけではないと思うが、急にクラスメイトの風当たりが強くなった。
 ……まぁ、ここまでは予定の範囲内だ。次のアイテムを使うとしよう。

「皆んなの気持ちは分かる。それにタダで協力してくれとお願いするつもりもない。七海と一緒に森の中で杖の使い方を調べてきたんだ。七海、ちょっとこっちに来て手伝って欲しい」

 七海は名前を呼ばれて明らかに嫌な顔をしたが、ポケットからスマホをチラッ、チラッと見せると微妙な笑顔でやって来た。

「もぉー、会長! あとで絶対に殴りますからねぇ!」
「良かったじゃないか。彼氏がいれば、悪い虫は寄って来ない。水色真珠で回復薬を一本作ってくれ」

 やって来た七海は涙目を浮かべて、いきなり上着の襟を掴むと小声で怒ってきた。
 同じように小声で話して、回復薬を作ってくれとお願いした。

「知っているかもしれないが、森の中には中型犬並みに大きな茶色いイモ虫が生息している。倒したイモ虫に杖を当てると青白い光が杖に吸収される。そして、五十三匹吸収したのが七海の杖だ。棍棒のようになる。七海、調合を使ってくれ」

 財布から水色真珠を皆んなに見えるように三つ取り出して、地面に置いた。
 七海が棍棒杖を水色真珠にくっ付けて、「調合・回復薬」と唱えると緑色の小瓶に変化した。
「えっ?」「どうやったんだ?」と驚く声と質問の声が飛んでくる。
 それを一つずつ丁寧に答える時間はないので、一方的な情報の提供を続ける。

「皆んな、ちょっと落ち着こうか? 杖が成長すると別の能力が使えるようになるんだ。白い杖は持ち主の精神に影響して性質が変わると思う。七海は看護師を目標にしていたから回復魔法が使えて、俺は皆んなを騙して嘘を吐いていたから毒魔法になったと思う」

 話している内容のほとんどが推測でしかないが、まったくの大ハズレとは思っていない。
 白い杖を持っているクラスメイトの協力で確認できるはずだ。杖の色が変われば推測は事実に変わる。

「心の中にある希望や夢を吸収して、杖は色付くと思う。食べ物が食べたいと思いながら白い杖を持ち続ければ、食べ物が作れる杖になると思う。でも、注意して欲しい。全員が食べ物を作れる杖だと魔物を倒せる人がいなくなる。ゲームと同じで役割分担が必要なんだ。全員が戦士、全員が魔法使いだと駄目なんだ」

 思った以上に説明が長くなってしまった。
 もう少し短く出来れば良かったが、寝転がっていた人も座って、真っ直ぐに聞いている。
 ……まぁ、食べ物が食べられると聞けば、空腹の人間なら真剣に聞く気にもなるだろう。

「つまり、食べ物が作れる杖を成長させて、水色の玉で食べ物を作れば、俺達は生き残れるんだな?」
「でも、天海あまみさん、花咲はなさきさん、野宮ののみやさんみたいに直接作れるんじゃないの? 誰かお腹が空いている人が試した方がいいんじゃない?」

 茶髪のセミロングヘアの女子が気になる事を言ったので、聞いてみた。

「南さん、それはどういう意味なの? 天海さん達は直接物を作れるという事なのかな?」

 南は聞かれて少し驚いた顔をしたが、すぐに話し始めた。

「えーっと、天海さんは水の玉、花咲さんは木の玉、野宮さんは小さい鉄の玉を出せるんです。天海さんのお陰で何とか水だけは飲めているんです」
「そうなんだ。ありがとう、南さん。他にも杖の色が変わった人はいるかな? どんな力があるのか知っているなら教えて欲しい」

 南にお礼を言ってから、他にも色が変わった杖を持っている人がいないか聞いた。
 その結果、杖の色が変わったのは、先生を含めた二十九人の中で八人だった。
 男子が三人、女子が四人、そして、先生の一人だ。
 男子二人は土の玉と火の玉、先生は火の玉が出せるらしい。

 ……やはり性格や趣味が影響しやすいのかもしれない。
 色変わりの杖を持っている人物の情報である程度の予想が出来る。
 現国教師の中川は競争心が高い。同じように陸上部に所属している進藤しんどうも競争心が高い。
 この二人が赤い杖で火を使うのは納得できる。

 問題は同じ色で能力が違う場合だ。花咲の杖は緑色をしている。
 家が花屋で学校でも園芸部をやっているから、木の玉が出せるのは理解できる。
 問題があるとしたら、七海の杖も薄い緑色だという事だ。
 同じ色の杖でも、回復と木の玉では全然違う。

 それにピンク色の杖を持つ天海が何故、水の玉なのかも分からない。
 水なら普通は青色の杖になりそうだ。
 ……まだまだ情報が不足しているな。

「浜崎、お前ならやれる! 頑張れ!」
「焼肉! 焼肉! 焼肉!」

 ……さて、あれで上手くいくのだろうか?
 三人の男子に応援されながら、小太りの男が白い杖を両手で祈るように持って、焼肉と連呼している。
 危ない宗教団体にも見えるが、杖に食欲を込めているだけだ。
 あれで杖の色が何色でもいいから変われば、強い精神的欲望を杖が吸収して変化する事が実証される。

「おお! おお!」としばらく待っていると、歓声が上がってきた。
 全員の注目が集まる中で浜崎の杖が赤色に変わっていく。
 杖の色が完全に変わると、浜崎を囲んでいた三人が、浜崎の頭を手の平でパァン、パァンと叩き始めた。

「この馬鹿崎っ! お、お前、火をイメージしただろ! 真っ赤になってるじゃねぇか!」
「痛っ、痛っ、ち、違う! 網の上の焼肉をイメージした! 間違いねぇ!」
「じゃあ、頭の中に何て英語が浮かんだんだよ?」
「……『fireファイア』」
「やっぱり火じゃねぇかよ!」

 浜崎は失敗したようだが、精神的な欲望を杖が吸収して変化するのは間違いない。
 最低でも攻撃役、回復役、水と食料支援役二人の四人組なら、長距離探索も可能になる。
 あとは希望者を集めて出発するだけだ。

「おめでとう、浜崎くん。君のお陰で白い杖が変化するのは確認できたよ。これなら、皆んなで森の外を探索できる」
「会長、本当にバラバラに移動しないと駄目なのか?」
「俺はそれが一番生き残れる確率を上げられる方法だと思う。皆んなに強制するつもりはないけど、最低でも四人組を作って、東西南北に分かれて行動した方が良いと思う。友達同士で魔物の奪い合いはしたくないでしょう?」

 皆んなにはキチンと説明した。イモ虫も無限にいるわけじゃない。
 二十九人なら一日三食、水色真珠を九個使うなら、261匹のイモ虫を倒す必要がある。
 もちろん単純計算でこれだ。実際はもっと必要だし、食料を調合できるかも不明だ。
 集団行動よりも四方八方に分かれて、広範囲を探して、町を見つけた方が良い。
 町が見つからなくても、森の外に何があるかは分かるはずだ。

「そうだよな。このままジワジワ飢え死にする前に移動しないとな……」
「じゃあ、とりあえず運動部で集まろうぜ! 20キロぐらいは余裕で走れるだろ?」
「ゲームなら、戦士、格闘家、魔法使い、僧侶の四人パーティが基本だけど、四人じゃ足りないな。六人パーティで行くか?」

 危機感が好奇心に変わって、やっと本格的な話し合いが始まったようだ。
 男子と女子に分かれて話をしている。
 男子達はやる気に満ちているけど、女子達は誰のパーティに付いて行くか話し合っている。
 好きな男子と一緒のパーティになりたいようだ。恋には積極的でも、冒険には消極的だな。

「七海は俺と同じチームだ。それと新しいチームメンバーを勧誘に行くぞ」

 スマホを七海に見せて微笑むと、女子達の話し合いの輪に向かった。
 俺のチームに必要なのは協調性と俺色に染められる杖だけだ。
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