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第二章
第7話 情報提供
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「あれ? 会長だ……」
丸いグラウンドにある小さな焚き火に近づいて行くと、チラッと見た男が何気ない顔で言った。
どうやら、二人もいなくなったのに、そこまでの大騒ぎにはなっていないようだ。
皆んな、他人の心配よりも自分の心配をするのに忙しいのだろう。
……本当に残っている。
丸いグラウンドには一つの焚き火を囲むように十五人が座ったり、寝込んでいた。
さっきの見張りの三人にも少し話を聞いたが、全員が残っているらしい。
グラウンドから見て、東西南北に十字になるように、三人ずつの見張りを四ヶ所置いているそうだ。
問題は見張りを置いても、攻撃能力がある杖を持っている人間が少ないという事だ。
白い杖には何の力もないそうだ。つまり半数以上の生徒が戦力外判定されている。
「皆んな、ちょっと話したい事があるんだ。疲れているだろうし、眠たいとは思うけど聞いて欲しい」
パァン、パァンと手の平を叩き合わせて、皆んなの注目を集めて、話したい事があると伝えた。
クラスメイトの疲れた表情からは、話は聞きたくないという感情しか伝わって来ない。
それでも、ほとんどの人が視線を向けたまま次の話を待っている。
「まずは勝手にいなくなって、皆んなに心配かけて、すまなかった。七海さん、いや、七海と二人っきりで話したい事があったんだ。皆んなには内緒にしていたけど、七海と俺は付き合っている」
「おい、本当かよ? 嘘だろう?」
「嘘ぉ! 一ノ瀬君が雫と付き合ってるの!」
いきなりの告白に男子も女子も驚いているが、一番驚いているのは七海だろう。
七海が一番信じられないといった顔をしている。
「隠していたのは恋人がいると生徒会長になれないと思ったからだ。不純異性交遊で学校を退学させられるとも思った。俺と七海は皆んなが思っているような健全な付き合いをしてない。証拠ならある。これだ……」
ズボンのポケットからスマホを取り出すと、淫らな映像の再生ボタンをタッチした。
『あんっ、う、ん、会長、きもち……』と七海の悶える姿と声が流れるが、三秒間だけ流してすぐに消した。
これ以上は青少年に有害な影響しか与えない。
視線のほとんどが俺から、真っ赤な顔で俯いている七海に移動したが話を続ける。
「これが皆んなから離れた理由だ。最後の瞬間を七海と過ごそうと思ったんだ。でも、やっぱり生きたいと思った。それで皆んなにも協力して欲しいとお願いに来たんだ」
「会長、それはちょっと都合良くないですかぁ? 二人がいなくなった理由は分かりましたけど、ウチらが二人の幸せの為に協力する理由はないですよね?」
「あぁ、そうだな。何で俺達が頑張らないといけないんだよ。もう十分に幸せだろう? 彼女がいて、童貞でもないんだから」
エッチな動画を見せられて興奮したわけではないと思うが、急にクラスメイトの風当たりが強くなった。
……まぁ、ここまでは予定の範囲内だ。次のアイテムを使うとしよう。
「皆んなの気持ちは分かる。それにタダで協力してくれとお願いするつもりもない。七海と一緒に森の中で杖の使い方を調べてきたんだ。七海、ちょっとこっちに来て手伝って欲しい」
七海は名前を呼ばれて明らかに嫌な顔をしたが、ポケットからスマホをチラッ、チラッと見せると微妙な笑顔でやって来た。
「もぉー、会長! あとで絶対に殴りますからねぇ!」
「良かったじゃないか。彼氏がいれば、悪い虫は寄って来ない。水色真珠で回復薬を一本作ってくれ」
やって来た七海は涙目を浮かべて、いきなり上着の襟を掴むと小声で怒ってきた。
同じように小声で話して、回復薬を作ってくれとお願いした。
「知っているかもしれないが、森の中には中型犬並みに大きな茶色いイモ虫が生息している。倒したイモ虫に杖を当てると青白い光が杖に吸収される。そして、五十三匹吸収したのが七海の杖だ。棍棒のようになる。七海、調合を使ってくれ」
財布から水色真珠を皆んなに見えるように三つ取り出して、地面に置いた。
七海が棍棒杖を水色真珠にくっ付けて、「調合・回復薬」と唱えると緑色の小瓶に変化した。
「えっ?」「どうやったんだ?」と驚く声と質問の声が飛んでくる。
それを一つずつ丁寧に答える時間はないので、一方的な情報の提供を続ける。
「皆んな、ちょっと落ち着こうか? 杖が成長すると別の能力が使えるようになるんだ。白い杖は持ち主の精神に影響して性質が変わると思う。七海は看護師を目標にしていたから回復魔法が使えて、俺は皆んなを騙して嘘を吐いていたから毒魔法になったと思う」
話している内容のほとんどが推測でしかないが、まったくの大ハズレとは思っていない。
白い杖を持っているクラスメイトの協力で確認できるはずだ。杖の色が変われば推測は事実に変わる。
「心の中にある希望や夢を吸収して、杖は色付くと思う。食べ物が食べたいと思いながら白い杖を持ち続ければ、食べ物が作れる杖になると思う。でも、注意して欲しい。全員が食べ物を作れる杖だと魔物を倒せる人がいなくなる。ゲームと同じで役割分担が必要なんだ。全員が戦士、全員が魔法使いだと駄目なんだ」
思った以上に説明が長くなってしまった。
もう少し短く出来れば良かったが、寝転がっていた人も座って、真っ直ぐに聞いている。
……まぁ、食べ物が食べられると聞けば、空腹の人間なら真剣に聞く気にもなるだろう。
「つまり、食べ物が作れる杖を成長させて、水色の玉で食べ物を作れば、俺達は生き残れるんだな?」
「でも、天海さん、花咲さん、野宮さんみたいに直接作れるんじゃないの? 誰かお腹が空いている人が試した方がいいんじゃない?」
茶髪のセミロングヘアの女子が気になる事を言ったので、聞いてみた。
「南さん、それはどういう意味なの? 天海さん達は直接物を作れるという事なのかな?」
南は聞かれて少し驚いた顔をしたが、すぐに話し始めた。
「えーっと、天海さんは水の玉、花咲さんは木の玉、野宮さんは小さい鉄の玉を出せるんです。天海さんのお陰で何とか水だけは飲めているんです」
「そうなんだ。ありがとう、南さん。他にも杖の色が変わった人はいるかな? どんな力があるのか知っているなら教えて欲しい」
南にお礼を言ってから、他にも色が変わった杖を持っている人がいないか聞いた。
その結果、杖の色が変わったのは、先生を含めた二十九人の中で八人だった。
男子が三人、女子が四人、そして、先生の一人だ。
男子二人は土の玉と火の玉、先生は火の玉が出せるらしい。
……やはり性格や趣味が影響しやすいのかもしれない。
色変わりの杖を持っている人物の情報である程度の予想が出来る。
現国教師の中川は競争心が高い。同じように陸上部に所属している進藤も競争心が高い。
この二人が赤い杖で火を使うのは納得できる。
問題は同じ色で能力が違う場合だ。花咲の杖は緑色をしている。
家が花屋で学校でも園芸部をやっているから、木の玉が出せるのは理解できる。
問題があるとしたら、七海の杖も薄い緑色だという事だ。
同じ色の杖でも、回復と木の玉では全然違う。
それにピンク色の杖を持つ天海が何故、水の玉なのかも分からない。
水なら普通は青色の杖になりそうだ。
……まだまだ情報が不足しているな。
「浜崎、お前ならやれる! 頑張れ!」
「焼肉! 焼肉! 焼肉!」
……さて、あれで上手くいくのだろうか?
三人の男子に応援されながら、小太りの男が白い杖を両手で祈るように持って、焼肉と連呼している。
危ない宗教団体にも見えるが、杖に食欲を込めているだけだ。
あれで杖の色が何色でもいいから変われば、強い精神的欲望を杖が吸収して変化する事が実証される。
「おお! おお!」としばらく待っていると、歓声が上がってきた。
全員の注目が集まる中で浜崎の杖が赤色に変わっていく。
杖の色が完全に変わると、浜崎を囲んでいた三人が、浜崎の頭を手の平でパァン、パァンと叩き始めた。
「この馬鹿崎っ! お、お前、火をイメージしただろ! 真っ赤になってるじゃねぇか!」
「痛っ、痛っ、ち、違う! 網の上の焼肉をイメージした! 間違いねぇ!」
「じゃあ、頭の中に何て英語が浮かんだんだよ?」
「……『fire』」
「やっぱり火じゃねぇかよ!」
浜崎は失敗したようだが、精神的な欲望を杖が吸収して変化するのは間違いない。
最低でも攻撃役、回復役、水と食料支援役二人の四人組なら、長距離探索も可能になる。
あとは希望者を集めて出発するだけだ。
「おめでとう、浜崎くん。君のお陰で白い杖が変化するのは確認できたよ。これなら、皆んなで森の外を探索できる」
「会長、本当にバラバラに移動しないと駄目なのか?」
「俺はそれが一番生き残れる確率を上げられる方法だと思う。皆んなに強制するつもりはないけど、最低でも四人組を作って、東西南北に分かれて行動した方が良いと思う。友達同士で魔物の奪い合いはしたくないでしょう?」
皆んなにはキチンと説明した。イモ虫も無限にいるわけじゃない。
二十九人なら一日三食、水色真珠を九個使うなら、261匹のイモ虫を倒す必要がある。
もちろん単純計算でこれだ。実際はもっと必要だし、食料を調合できるかも不明だ。
集団行動よりも四方八方に分かれて、広範囲を探して、町を見つけた方が良い。
町が見つからなくても、森の外に何があるかは分かるはずだ。
「そうだよな。このままジワジワ飢え死にする前に移動しないとな……」
「じゃあ、とりあえず運動部で集まろうぜ! 20キロぐらいは余裕で走れるだろ?」
「ゲームなら、戦士、格闘家、魔法使い、僧侶の四人パーティが基本だけど、四人じゃ足りないな。六人パーティで行くか?」
危機感が好奇心に変わって、やっと本格的な話し合いが始まったようだ。
男子と女子に分かれて話をしている。
男子達はやる気に満ちているけど、女子達は誰のパーティに付いて行くか話し合っている。
好きな男子と一緒のパーティになりたいようだ。恋には積極的でも、冒険には消極的だな。
「七海は俺と同じチームだ。それと新しいチームメンバーを勧誘に行くぞ」
スマホを七海に見せて微笑むと、女子達の話し合いの輪に向かった。
俺のチームに必要なのは協調性と俺色に染められる杖だけだ。
丸いグラウンドにある小さな焚き火に近づいて行くと、チラッと見た男が何気ない顔で言った。
どうやら、二人もいなくなったのに、そこまでの大騒ぎにはなっていないようだ。
皆んな、他人の心配よりも自分の心配をするのに忙しいのだろう。
……本当に残っている。
丸いグラウンドには一つの焚き火を囲むように十五人が座ったり、寝込んでいた。
さっきの見張りの三人にも少し話を聞いたが、全員が残っているらしい。
グラウンドから見て、東西南北に十字になるように、三人ずつの見張りを四ヶ所置いているそうだ。
問題は見張りを置いても、攻撃能力がある杖を持っている人間が少ないという事だ。
白い杖には何の力もないそうだ。つまり半数以上の生徒が戦力外判定されている。
「皆んな、ちょっと話したい事があるんだ。疲れているだろうし、眠たいとは思うけど聞いて欲しい」
パァン、パァンと手の平を叩き合わせて、皆んなの注目を集めて、話したい事があると伝えた。
クラスメイトの疲れた表情からは、話は聞きたくないという感情しか伝わって来ない。
それでも、ほとんどの人が視線を向けたまま次の話を待っている。
「まずは勝手にいなくなって、皆んなに心配かけて、すまなかった。七海さん、いや、七海と二人っきりで話したい事があったんだ。皆んなには内緒にしていたけど、七海と俺は付き合っている」
「おい、本当かよ? 嘘だろう?」
「嘘ぉ! 一ノ瀬君が雫と付き合ってるの!」
いきなりの告白に男子も女子も驚いているが、一番驚いているのは七海だろう。
七海が一番信じられないといった顔をしている。
「隠していたのは恋人がいると生徒会長になれないと思ったからだ。不純異性交遊で学校を退学させられるとも思った。俺と七海は皆んなが思っているような健全な付き合いをしてない。証拠ならある。これだ……」
ズボンのポケットからスマホを取り出すと、淫らな映像の再生ボタンをタッチした。
『あんっ、う、ん、会長、きもち……』と七海の悶える姿と声が流れるが、三秒間だけ流してすぐに消した。
これ以上は青少年に有害な影響しか与えない。
視線のほとんどが俺から、真っ赤な顔で俯いている七海に移動したが話を続ける。
「これが皆んなから離れた理由だ。最後の瞬間を七海と過ごそうと思ったんだ。でも、やっぱり生きたいと思った。それで皆んなにも協力して欲しいとお願いに来たんだ」
「会長、それはちょっと都合良くないですかぁ? 二人がいなくなった理由は分かりましたけど、ウチらが二人の幸せの為に協力する理由はないですよね?」
「あぁ、そうだな。何で俺達が頑張らないといけないんだよ。もう十分に幸せだろう? 彼女がいて、童貞でもないんだから」
エッチな動画を見せられて興奮したわけではないと思うが、急にクラスメイトの風当たりが強くなった。
……まぁ、ここまでは予定の範囲内だ。次のアイテムを使うとしよう。
「皆んなの気持ちは分かる。それにタダで協力してくれとお願いするつもりもない。七海と一緒に森の中で杖の使い方を調べてきたんだ。七海、ちょっとこっちに来て手伝って欲しい」
七海は名前を呼ばれて明らかに嫌な顔をしたが、ポケットからスマホをチラッ、チラッと見せると微妙な笑顔でやって来た。
「もぉー、会長! あとで絶対に殴りますからねぇ!」
「良かったじゃないか。彼氏がいれば、悪い虫は寄って来ない。水色真珠で回復薬を一本作ってくれ」
やって来た七海は涙目を浮かべて、いきなり上着の襟を掴むと小声で怒ってきた。
同じように小声で話して、回復薬を作ってくれとお願いした。
「知っているかもしれないが、森の中には中型犬並みに大きな茶色いイモ虫が生息している。倒したイモ虫に杖を当てると青白い光が杖に吸収される。そして、五十三匹吸収したのが七海の杖だ。棍棒のようになる。七海、調合を使ってくれ」
財布から水色真珠を皆んなに見えるように三つ取り出して、地面に置いた。
七海が棍棒杖を水色真珠にくっ付けて、「調合・回復薬」と唱えると緑色の小瓶に変化した。
「えっ?」「どうやったんだ?」と驚く声と質問の声が飛んでくる。
それを一つずつ丁寧に答える時間はないので、一方的な情報の提供を続ける。
「皆んな、ちょっと落ち着こうか? 杖が成長すると別の能力が使えるようになるんだ。白い杖は持ち主の精神に影響して性質が変わると思う。七海は看護師を目標にしていたから回復魔法が使えて、俺は皆んなを騙して嘘を吐いていたから毒魔法になったと思う」
話している内容のほとんどが推測でしかないが、まったくの大ハズレとは思っていない。
白い杖を持っているクラスメイトの協力で確認できるはずだ。杖の色が変われば推測は事実に変わる。
「心の中にある希望や夢を吸収して、杖は色付くと思う。食べ物が食べたいと思いながら白い杖を持ち続ければ、食べ物が作れる杖になると思う。でも、注意して欲しい。全員が食べ物を作れる杖だと魔物を倒せる人がいなくなる。ゲームと同じで役割分担が必要なんだ。全員が戦士、全員が魔法使いだと駄目なんだ」
思った以上に説明が長くなってしまった。
もう少し短く出来れば良かったが、寝転がっていた人も座って、真っ直ぐに聞いている。
……まぁ、食べ物が食べられると聞けば、空腹の人間なら真剣に聞く気にもなるだろう。
「つまり、食べ物が作れる杖を成長させて、水色の玉で食べ物を作れば、俺達は生き残れるんだな?」
「でも、天海さん、花咲さん、野宮さんみたいに直接作れるんじゃないの? 誰かお腹が空いている人が試した方がいいんじゃない?」
茶髪のセミロングヘアの女子が気になる事を言ったので、聞いてみた。
「南さん、それはどういう意味なの? 天海さん達は直接物を作れるという事なのかな?」
南は聞かれて少し驚いた顔をしたが、すぐに話し始めた。
「えーっと、天海さんは水の玉、花咲さんは木の玉、野宮さんは小さい鉄の玉を出せるんです。天海さんのお陰で何とか水だけは飲めているんです」
「そうなんだ。ありがとう、南さん。他にも杖の色が変わった人はいるかな? どんな力があるのか知っているなら教えて欲しい」
南にお礼を言ってから、他にも色が変わった杖を持っている人がいないか聞いた。
その結果、杖の色が変わったのは、先生を含めた二十九人の中で八人だった。
男子が三人、女子が四人、そして、先生の一人だ。
男子二人は土の玉と火の玉、先生は火の玉が出せるらしい。
……やはり性格や趣味が影響しやすいのかもしれない。
色変わりの杖を持っている人物の情報である程度の予想が出来る。
現国教師の中川は競争心が高い。同じように陸上部に所属している進藤も競争心が高い。
この二人が赤い杖で火を使うのは納得できる。
問題は同じ色で能力が違う場合だ。花咲の杖は緑色をしている。
家が花屋で学校でも園芸部をやっているから、木の玉が出せるのは理解できる。
問題があるとしたら、七海の杖も薄い緑色だという事だ。
同じ色の杖でも、回復と木の玉では全然違う。
それにピンク色の杖を持つ天海が何故、水の玉なのかも分からない。
水なら普通は青色の杖になりそうだ。
……まだまだ情報が不足しているな。
「浜崎、お前ならやれる! 頑張れ!」
「焼肉! 焼肉! 焼肉!」
……さて、あれで上手くいくのだろうか?
三人の男子に応援されながら、小太りの男が白い杖を両手で祈るように持って、焼肉と連呼している。
危ない宗教団体にも見えるが、杖に食欲を込めているだけだ。
あれで杖の色が何色でもいいから変われば、強い精神的欲望を杖が吸収して変化する事が実証される。
「おお! おお!」としばらく待っていると、歓声が上がってきた。
全員の注目が集まる中で浜崎の杖が赤色に変わっていく。
杖の色が完全に変わると、浜崎を囲んでいた三人が、浜崎の頭を手の平でパァン、パァンと叩き始めた。
「この馬鹿崎っ! お、お前、火をイメージしただろ! 真っ赤になってるじゃねぇか!」
「痛っ、痛っ、ち、違う! 網の上の焼肉をイメージした! 間違いねぇ!」
「じゃあ、頭の中に何て英語が浮かんだんだよ?」
「……『fire』」
「やっぱり火じゃねぇかよ!」
浜崎は失敗したようだが、精神的な欲望を杖が吸収して変化するのは間違いない。
最低でも攻撃役、回復役、水と食料支援役二人の四人組なら、長距離探索も可能になる。
あとは希望者を集めて出発するだけだ。
「おめでとう、浜崎くん。君のお陰で白い杖が変化するのは確認できたよ。これなら、皆んなで森の外を探索できる」
「会長、本当にバラバラに移動しないと駄目なのか?」
「俺はそれが一番生き残れる確率を上げられる方法だと思う。皆んなに強制するつもりはないけど、最低でも四人組を作って、東西南北に分かれて行動した方が良いと思う。友達同士で魔物の奪い合いはしたくないでしょう?」
皆んなにはキチンと説明した。イモ虫も無限にいるわけじゃない。
二十九人なら一日三食、水色真珠を九個使うなら、261匹のイモ虫を倒す必要がある。
もちろん単純計算でこれだ。実際はもっと必要だし、食料を調合できるかも不明だ。
集団行動よりも四方八方に分かれて、広範囲を探して、町を見つけた方が良い。
町が見つからなくても、森の外に何があるかは分かるはずだ。
「そうだよな。このままジワジワ飢え死にする前に移動しないとな……」
「じゃあ、とりあえず運動部で集まろうぜ! 20キロぐらいは余裕で走れるだろ?」
「ゲームなら、戦士、格闘家、魔法使い、僧侶の四人パーティが基本だけど、四人じゃ足りないな。六人パーティで行くか?」
危機感が好奇心に変わって、やっと本格的な話し合いが始まったようだ。
男子と女子に分かれて話をしている。
男子達はやる気に満ちているけど、女子達は誰のパーティに付いて行くか話し合っている。
好きな男子と一緒のパーティになりたいようだ。恋には積極的でも、冒険には消極的だな。
「七海は俺と同じチームだ。それと新しいチームメンバーを勧誘に行くぞ」
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そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
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