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第三章
第17話 少女監禁事件
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グレーシズの町を午前十時に出発して、テルダムの町に午後七時に到着した。
七海の杖も成長させて、これでゆっくりと休めると思ったのに、まだ休めないようだ。
住民に連れられて、困っている顔の長谷川と怒っている顔の高橋がやって来た。
皆んなで出迎えに来たわけじゃなさそうだ。
「ちょっと帰るのが遅過ぎ! どうするつもり! アイツら、やったわよ!」
「ちょっと結衣、落ち着いて。今帰って来たのが分かっているなら、俺達が事情が分からないのも分かるよね?」
強く口調で高橋が凄く怒っているのは分かったけど、怒っている理由がまったく分からない。
藤原達が、とくに辻本が何かやったのだろうか?
「そんなの知らない! アイツら、少女を監禁しているのよ!」
「監禁⁉︎ 本当に!」
「佐藤さんも落ち着こうか……」
高橋を落ち着かせて冷静に話を聞こうとしているのに、監禁という言葉を聞いて、今度は佐藤が興奮している。
まだ冷静に話が聞けそうな長谷川に聞いた方が早そうだ。
「長谷川さん、少女を誰が監禁したのかな?」
「馬鹿なの! 辻本に決まっているでしょう! 保管していた解毒薬が三本無くなっていたから、藤原達の家に聞きに行ったら、家の中に裸の女の子がいたのよ!」
「あぁー……」
長谷川が話す前に高橋が喋ってくれた。
事情はある程度分かったけど、頭が真っ白になって考えるのを放棄した。
放棄した俺に代わって、落ち着いたらしい佐藤が質問している。
「それって何歳ぐらいなの? 五歳? 十歳?」
「もっと上。多分、身長と胸の発育から中二ぐらいだと思う。アイツら、新しいパーティメンバーだとか言って返そうとしないのよ」
「十三、十四歳かぁー……それってロリコンになるのかな?」
「絶対にロリコンよ! 裸にして、辻本が水魔法で身体を洗ったのよ。睡眠薬飲ませて襲っているのと同じよ。全員、ゴミ屑よ! 死ねばいいのよ!」
暢気な佐藤とは対照的に高橋の怒りはドンドン上昇していく。
中学二年生ぐらいの女子の身長なら、ちょうど高橋の身長と同じぐらいだ。
ゾンビ少女を自分に重ね合わせているのかもしれない。
でも、状況を整理すると、勝手に持ち出した解毒薬をゾンビ少女に飲ませて、身体を洗っただけだ。
捨て犬が汚れていたから、身体を洗ってあげた程度の気持ちしかないかもしれない。
捨て犬とエッチしていたら現行犯だけど、まだ無実の可能性もゼロじゃない。
「事情は分かったから、あとは俺に任せておいて。男同士の方が落ち着いて話し合えると思うから」
「話し合い? 少女を犯したのよ。死刑か、杖を取り上げて追放のどっちかでしょう!」
「そうだね。もしもそうなら、そのつもりだよ。結衣の話は十分に聞いたから、次は藤原達の話を聞かないと駄目でしょう? 両方から話を聞いて公平に判断しないと」
感情的になって証拠もないのに、死刑も追放も簡単にしていい事じゃない。
高橋は死刑にしたいようだけど、もうちょっと冷静に考えて決めないといけない。
七海達に高橋と長谷川を任せると、藤原達に貸している家に向かった。
……あぁ、学校じゃないんだから、面倒くさい仕事を増やさないで欲しい。
心の中で少しだけ愚痴を言ってから、木扉をコンコンと叩いて、「一ノ瀬だ。話がある」と声をかけた。
扉は開かなかったけど、家の中から藤原の声が聞こえてきた。
「今度は会長か。誤解があるみたいだけど、俺達はやましい事は何もしていない」
「藤原、それは分かっているよ。とりあえず扉を開けて欲しい。やましい事をしてないなら開けられるはずだよね? 俺も扉を壊して確かめたくないんだよ」
木扉ぐらいは簡単に破壊できる。壊したくないのは修理するのが面倒だからだ。
杖を構えて十五秒ほど待っていると、ようやく心とその他の準備が出来たようだ。
「……分かった。今開ける」
「ありがとう、藤原」
扉の向こう側からゴトゴトと、何か重たい物を動かす音が聞こえてくる。
扉の前にバリケードでも作っていたのだろう。
念の為に扉の正面に立たずに横に移動した。三対一だと杖の性能が上でも攻撃されたら負ける。
解毒薬が作れる俺を殺さないと油断しない方がいい。作ろうと思えば誰でも作れる。
「一人だけか?」と扉が少し開けて、藤原が聞いてきた。
「一人だよ」と答えると中に入れてくれた。
会員制の非合法の危ない店に入っている気分になる。
……いないな。
家の中にいるはずの少女を探しているけど見当たらない。
玄関を開けてすぐのリビングではなく、部屋の中に隠しているようだ。
「いい加減にしろよな。もう夜だぞ。寝かせろよ」
「高橋さんに聞いたけど、十三歳の少女を監禁して淫らな行為をしているそうだね。本当なのかな?」
遠回しに時間をかけて、オブラートに包んで聞くつもりはない。単刀直入に聞いてみた。
「してねぇよ! パーティメンバーになってもらおうとしたんだよ」
椅子に座っている辻本が怒って否定した。近くの椅子に座っている森は黙っている。
三人共犯なのか、辻本の独断なのか、それとも辻本以外が独断でやったのか調べる必要がありそうだ。
「なるほど。その杖を持ってないパーティメンバーはどんな仕事をするのかな?」
「掃除や洗濯、料理などの細かな作業です。会長のパーティは五人組ですよね。僕達も一人増やそうと思ったんです。男同士だと気付かない細かな点も女性なら気付くと思ったんですよ」
「つまり、森が少女をパーティに入れようと言ったんだね?」
「会長も高橋も誤解しているようですけど、少女だと分かったのは解毒薬を飲ませた後です。体力のない老婆を仲間にするわけにはいかないでしょう? 身体が小さい方が成長段階だから若いと思っただけです」
……なるほど。面倒だけど、一応は理解できる説明だ。
「性奴隷としてパーティに入れた」と言ってくれれば楽なのに、森がパーティへの女性の必要性を言ってくる。
それに追随して、辻本も言ってきた。
「会長は20人も使っているのに、俺達には一人も駄目とかおかしいだろ? それとも会長のパーティから誰か一人くれるのか? そしたら、ちょうど4:4になる」
「あぁー……うん、それでいいよ」
素敵な提案だったので即採用した。
三人は「えっ?」と呆けた顔になっているけど、自分達が言った事を否定するつもりはないだろう。
「俺が移動するよ。男四人、女四人でちょうどバランスが良い」
「おい、会長。話を聞いていたのかよ? 女が欲しいと言ったんだ。いつから、オカマになったんだよ」
パァッと笑顔で言ったのに、辻本はイライラと不満顔だ。
余程、女が欲しいようだけど、こっちは最初からそのつもりは一切無い。
「大丈夫だよ。こう見ても性格は細かい方なんだ。多分、女の子よりも良く気が付くと思う。掃除は得意だし、服は作れるから洗濯する必要もない。料理はそもそも材料がないと出来ないよ。これで森が言っていた条件に合うよね?」
「えぇ、性別以外なら条件に合います」
「性別を気にするなんて考え方が古いよ。男同士、女同士で結婚する時代なんだ。性別は問題ないよ」
「会長の考えはどうでもいいんだ! 俺達が問題だって言っているから、問題なんだよ!」
話し合いで穏便に済まそうとしているのに、力尽くで思い通りにしたいようだ。
良く言えば、森は冷静に、辻本は情熱的に自分達の主張を押し通そうとする。
悪質な金貸しに娘を渡せと脅されている気分だ。
警察に通報したいけど、ここにはいないので自分達で解決するしかない。
「そうだね、辻本の言う通りだ。問題なんだよ。俺達の方の問題だ。解毒薬の窃盗、少女の誘拐・監禁、この町の住民と決めたルールだと、藤原達には死刑になってもらわないといけない」
「はぁ? 巫山戯んなぁ! そんなルール知らねぇよ!」
「森にゾンビには攻撃するなと言ったよ? 知らないとは言わせない。ルールを破ったんだから罰を受ける必要がある。でも、誤解があるかもしれない。パーティメンバーが欲しいんだろ? 俺でいいよね?」
辻本が相変わらず情熱的に反論するけど、もう聞き飽きた。
杖を剣の形に変えると、「ディゾルブ」と剣先に直径五センチの三つの溶解弾の塊を出現させた。
これでもまだ少女を選ぶようなら、使えない頭を溶かさないといけない。
「待って……」
「動くな!」
「うっ……」
森が椅子から立ち上がって何か言おうとしたけど、声を出して止めた。
杖を持たせるつもりも、素手で反撃させるつもりもない。
「杖は触らない方がいい。それと両手を上げてもらう。おかしな動きをしたら攻撃する。日本の法律でも親の同意無しに未成年を連れ回すのは犯罪だよ。本人の許可なく、裸にして身体を洗うのは猥褻罪だ」
日本の法律を使って分かりやすく説明したのに、駄目な相手には駄目なようだ。
「許可なら取った。洗っていいか聞いたら、頷いたからな」
「辻本君、そんなのどっちでもいいんだよ。ここは学校じゃないんだ。次に余計な口を開いたら死ぬよ?」
「はぁ? やれるもんならやってみろよ」
少し強めに警告したのに、辻本は冗談か脅しだと決め付けているようだ。
自分の命が貴重だと勘違いしているのか、俺に殺す勇気も度胸もないと勘違いしているようだ。
だったら仕方ない。剣先から溶解弾を消して、椅子に座っている辻本に近づいていく。
「分かった。やっていいんだね? じゃあ、やるよ」
「はぁ? ちょっ、本気で言ってん……」
一応、チャンスは与えた。剣を斜め上に振り上げると、右斜め下に思いっきり振り抜いた。
ザァクと椅子の脚と辻本の右足が一緒に切断されて、床を転がっていく。
傾いた椅子と一緒に辻本が床の上にドガァと落下した。
「ぎぁあああああッッ‼︎ 痛えぇぇ‼︎ 痛えぇぇ‼︎」
膝から下を切断された辻本が、切断面から血を撒き散らしながら、床の上で身体を左右に激しく揺すって絶叫を上げている。
森が椅子から驚いたように立ち上がったけど、抵抗するつもりだろうか?
「森君、どうして立ち上がったの? まさか、抵抗するつもり? それとも治療するつもりかな? 治療するなら早くして。死んじゃうから」
「あぁ、いや、そのぉ……」
「森君、辻本君が死んじゃうよ。早くやって。それとも、この程度の怪我も治せない役立たずなのかな?」
「ふぅー、ふぅー、い、いや、ち、違う……治せる、治せるよっ!」
質問しているのに森は混乱しているようだ。目を泳がせて、呼吸も荒く、まともに答えられない。
電車の痴漢で捕まったサラリーマンでも、まだまともな対応が出来る。
剣を向けて、もう一度聞くとやっと動き出した。
床に転がっている足を拾うと左手で持って、辻本の切断面にくっ付けて、右手で杖を持った。
「リカバリー! リカバリー! リカバリー!」
「あああああッッ‼︎ 痛えぇぇ‼︎ 痛えぇぇ‼︎ 早く治してくれッッ‼︎」
緑色の光弾が足に当たると、切断された右足がくっ付いていく。流石は魔法の力だ。
普通はそんなに簡単に神経も血管も筋肉も骨も繋がらない。
「森君、上手くくっ付いたみたいだね。じゃあ、次は左足を切るから、またくっ付けて。辻本君は死んでもいいらしいから、失敗しても問題ないから。そうだよね、辻本君?」
「はふぅー! はふぅー! はふぅー!」
血が止まったから治療が済んだのだろう。辻本の横に移動して、次の指示を森に伝えた。
そして、大汗と涙を流している辻本の返事を聞く前に、上から下に剣を振り落とした。
辻本の左足の膝の少し上を床板と一緒に真横にスパァッと切断した。
「ぎぁあああああッッ‼︎」と辻本の悲鳴がまた上がった。
森が急いで切断された足を持ち上げて、くっ付け始める。
今なら自分達の立場を理解して、キチンと話を聞いてくれるはずだ。
「そう。辻本君、それでいいんだ。言われた事を守れば良いんだ。単純で簡単な話だろう? 違うかな?」
「はい! はい!」
杖を持っている森の右手の上に剣を置いた。森は頭を縦に強く振って頷いている。
藤原の方を見ると、強張った表情で両手を上げたまま、森と同じように強く頷いている。
二人は理解してくれたようだ。残りは一人だけだけど、理解できないなら次は腕が切断されるだけだ。
「分かった。俺から住民の皆んなには辻本君はしっかりと反省していると伝えるよ。でも、またルールを破ったら連帯責任になるからね。それでいいよね、辻本君も?」
「ゔゔっ、ひぐっ、ひぐっ……」
泣いている辻本に聞いているのに返事は返ってこない。
これ以上、コイツに時間を使うのも勿体ないので、理解したと思う事にしよう。
三人の杖を没収すると、三つある部屋の中を探して、ボサボサの長い茶髪の少女を見つけた。
部屋の隅に座っている少女は裸ではなく、男物の大きなサイズの厚手の半袖白シャツを着ている。
町の住民のタンスの中の服を綺麗に洗って、藤原達に貸していた服だ。恩を仇で返すとは恥知らずな奴らだ。
「もう大丈夫だよ。外に出ようか?」
出来るだけ優しそうな微笑みを浮かべて、体育座りをする少女に左手を差し出した。
少女は怯えるわけでも、怖がるわけでもなく。暗い表情で真っ直ぐにジッと見てくる。
しばらく待っていると、少女がスゥッと一人でゆっくりと立ち上がった。手助けは必要ないようだ。
七海の杖も成長させて、これでゆっくりと休めると思ったのに、まだ休めないようだ。
住民に連れられて、困っている顔の長谷川と怒っている顔の高橋がやって来た。
皆んなで出迎えに来たわけじゃなさそうだ。
「ちょっと帰るのが遅過ぎ! どうするつもり! アイツら、やったわよ!」
「ちょっと結衣、落ち着いて。今帰って来たのが分かっているなら、俺達が事情が分からないのも分かるよね?」
強く口調で高橋が凄く怒っているのは分かったけど、怒っている理由がまったく分からない。
藤原達が、とくに辻本が何かやったのだろうか?
「そんなの知らない! アイツら、少女を監禁しているのよ!」
「監禁⁉︎ 本当に!」
「佐藤さんも落ち着こうか……」
高橋を落ち着かせて冷静に話を聞こうとしているのに、監禁という言葉を聞いて、今度は佐藤が興奮している。
まだ冷静に話が聞けそうな長谷川に聞いた方が早そうだ。
「長谷川さん、少女を誰が監禁したのかな?」
「馬鹿なの! 辻本に決まっているでしょう! 保管していた解毒薬が三本無くなっていたから、藤原達の家に聞きに行ったら、家の中に裸の女の子がいたのよ!」
「あぁー……」
長谷川が話す前に高橋が喋ってくれた。
事情はある程度分かったけど、頭が真っ白になって考えるのを放棄した。
放棄した俺に代わって、落ち着いたらしい佐藤が質問している。
「それって何歳ぐらいなの? 五歳? 十歳?」
「もっと上。多分、身長と胸の発育から中二ぐらいだと思う。アイツら、新しいパーティメンバーだとか言って返そうとしないのよ」
「十三、十四歳かぁー……それってロリコンになるのかな?」
「絶対にロリコンよ! 裸にして、辻本が水魔法で身体を洗ったのよ。睡眠薬飲ませて襲っているのと同じよ。全員、ゴミ屑よ! 死ねばいいのよ!」
暢気な佐藤とは対照的に高橋の怒りはドンドン上昇していく。
中学二年生ぐらいの女子の身長なら、ちょうど高橋の身長と同じぐらいだ。
ゾンビ少女を自分に重ね合わせているのかもしれない。
でも、状況を整理すると、勝手に持ち出した解毒薬をゾンビ少女に飲ませて、身体を洗っただけだ。
捨て犬が汚れていたから、身体を洗ってあげた程度の気持ちしかないかもしれない。
捨て犬とエッチしていたら現行犯だけど、まだ無実の可能性もゼロじゃない。
「事情は分かったから、あとは俺に任せておいて。男同士の方が落ち着いて話し合えると思うから」
「話し合い? 少女を犯したのよ。死刑か、杖を取り上げて追放のどっちかでしょう!」
「そうだね。もしもそうなら、そのつもりだよ。結衣の話は十分に聞いたから、次は藤原達の話を聞かないと駄目でしょう? 両方から話を聞いて公平に判断しないと」
感情的になって証拠もないのに、死刑も追放も簡単にしていい事じゃない。
高橋は死刑にしたいようだけど、もうちょっと冷静に考えて決めないといけない。
七海達に高橋と長谷川を任せると、藤原達に貸している家に向かった。
……あぁ、学校じゃないんだから、面倒くさい仕事を増やさないで欲しい。
心の中で少しだけ愚痴を言ってから、木扉をコンコンと叩いて、「一ノ瀬だ。話がある」と声をかけた。
扉は開かなかったけど、家の中から藤原の声が聞こえてきた。
「今度は会長か。誤解があるみたいだけど、俺達はやましい事は何もしていない」
「藤原、それは分かっているよ。とりあえず扉を開けて欲しい。やましい事をしてないなら開けられるはずだよね? 俺も扉を壊して確かめたくないんだよ」
木扉ぐらいは簡単に破壊できる。壊したくないのは修理するのが面倒だからだ。
杖を構えて十五秒ほど待っていると、ようやく心とその他の準備が出来たようだ。
「……分かった。今開ける」
「ありがとう、藤原」
扉の向こう側からゴトゴトと、何か重たい物を動かす音が聞こえてくる。
扉の前にバリケードでも作っていたのだろう。
念の為に扉の正面に立たずに横に移動した。三対一だと杖の性能が上でも攻撃されたら負ける。
解毒薬が作れる俺を殺さないと油断しない方がいい。作ろうと思えば誰でも作れる。
「一人だけか?」と扉が少し開けて、藤原が聞いてきた。
「一人だよ」と答えると中に入れてくれた。
会員制の非合法の危ない店に入っている気分になる。
……いないな。
家の中にいるはずの少女を探しているけど見当たらない。
玄関を開けてすぐのリビングではなく、部屋の中に隠しているようだ。
「いい加減にしろよな。もう夜だぞ。寝かせろよ」
「高橋さんに聞いたけど、十三歳の少女を監禁して淫らな行為をしているそうだね。本当なのかな?」
遠回しに時間をかけて、オブラートに包んで聞くつもりはない。単刀直入に聞いてみた。
「してねぇよ! パーティメンバーになってもらおうとしたんだよ」
椅子に座っている辻本が怒って否定した。近くの椅子に座っている森は黙っている。
三人共犯なのか、辻本の独断なのか、それとも辻本以外が独断でやったのか調べる必要がありそうだ。
「なるほど。その杖を持ってないパーティメンバーはどんな仕事をするのかな?」
「掃除や洗濯、料理などの細かな作業です。会長のパーティは五人組ですよね。僕達も一人増やそうと思ったんです。男同士だと気付かない細かな点も女性なら気付くと思ったんですよ」
「つまり、森が少女をパーティに入れようと言ったんだね?」
「会長も高橋も誤解しているようですけど、少女だと分かったのは解毒薬を飲ませた後です。体力のない老婆を仲間にするわけにはいかないでしょう? 身体が小さい方が成長段階だから若いと思っただけです」
……なるほど。面倒だけど、一応は理解できる説明だ。
「性奴隷としてパーティに入れた」と言ってくれれば楽なのに、森がパーティへの女性の必要性を言ってくる。
それに追随して、辻本も言ってきた。
「会長は20人も使っているのに、俺達には一人も駄目とかおかしいだろ? それとも会長のパーティから誰か一人くれるのか? そしたら、ちょうど4:4になる」
「あぁー……うん、それでいいよ」
素敵な提案だったので即採用した。
三人は「えっ?」と呆けた顔になっているけど、自分達が言った事を否定するつもりはないだろう。
「俺が移動するよ。男四人、女四人でちょうどバランスが良い」
「おい、会長。話を聞いていたのかよ? 女が欲しいと言ったんだ。いつから、オカマになったんだよ」
パァッと笑顔で言ったのに、辻本はイライラと不満顔だ。
余程、女が欲しいようだけど、こっちは最初からそのつもりは一切無い。
「大丈夫だよ。こう見ても性格は細かい方なんだ。多分、女の子よりも良く気が付くと思う。掃除は得意だし、服は作れるから洗濯する必要もない。料理はそもそも材料がないと出来ないよ。これで森が言っていた条件に合うよね?」
「えぇ、性別以外なら条件に合います」
「性別を気にするなんて考え方が古いよ。男同士、女同士で結婚する時代なんだ。性別は問題ないよ」
「会長の考えはどうでもいいんだ! 俺達が問題だって言っているから、問題なんだよ!」
話し合いで穏便に済まそうとしているのに、力尽くで思い通りにしたいようだ。
良く言えば、森は冷静に、辻本は情熱的に自分達の主張を押し通そうとする。
悪質な金貸しに娘を渡せと脅されている気分だ。
警察に通報したいけど、ここにはいないので自分達で解決するしかない。
「そうだね、辻本の言う通りだ。問題なんだよ。俺達の方の問題だ。解毒薬の窃盗、少女の誘拐・監禁、この町の住民と決めたルールだと、藤原達には死刑になってもらわないといけない」
「はぁ? 巫山戯んなぁ! そんなルール知らねぇよ!」
「森にゾンビには攻撃するなと言ったよ? 知らないとは言わせない。ルールを破ったんだから罰を受ける必要がある。でも、誤解があるかもしれない。パーティメンバーが欲しいんだろ? 俺でいいよね?」
辻本が相変わらず情熱的に反論するけど、もう聞き飽きた。
杖を剣の形に変えると、「ディゾルブ」と剣先に直径五センチの三つの溶解弾の塊を出現させた。
これでもまだ少女を選ぶようなら、使えない頭を溶かさないといけない。
「待って……」
「動くな!」
「うっ……」
森が椅子から立ち上がって何か言おうとしたけど、声を出して止めた。
杖を持たせるつもりも、素手で反撃させるつもりもない。
「杖は触らない方がいい。それと両手を上げてもらう。おかしな動きをしたら攻撃する。日本の法律でも親の同意無しに未成年を連れ回すのは犯罪だよ。本人の許可なく、裸にして身体を洗うのは猥褻罪だ」
日本の法律を使って分かりやすく説明したのに、駄目な相手には駄目なようだ。
「許可なら取った。洗っていいか聞いたら、頷いたからな」
「辻本君、そんなのどっちでもいいんだよ。ここは学校じゃないんだ。次に余計な口を開いたら死ぬよ?」
「はぁ? やれるもんならやってみろよ」
少し強めに警告したのに、辻本は冗談か脅しだと決め付けているようだ。
自分の命が貴重だと勘違いしているのか、俺に殺す勇気も度胸もないと勘違いしているようだ。
だったら仕方ない。剣先から溶解弾を消して、椅子に座っている辻本に近づいていく。
「分かった。やっていいんだね? じゃあ、やるよ」
「はぁ? ちょっ、本気で言ってん……」
一応、チャンスは与えた。剣を斜め上に振り上げると、右斜め下に思いっきり振り抜いた。
ザァクと椅子の脚と辻本の右足が一緒に切断されて、床を転がっていく。
傾いた椅子と一緒に辻本が床の上にドガァと落下した。
「ぎぁあああああッッ‼︎ 痛えぇぇ‼︎ 痛えぇぇ‼︎」
膝から下を切断された辻本が、切断面から血を撒き散らしながら、床の上で身体を左右に激しく揺すって絶叫を上げている。
森が椅子から驚いたように立ち上がったけど、抵抗するつもりだろうか?
「森君、どうして立ち上がったの? まさか、抵抗するつもり? それとも治療するつもりかな? 治療するなら早くして。死んじゃうから」
「あぁ、いや、そのぉ……」
「森君、辻本君が死んじゃうよ。早くやって。それとも、この程度の怪我も治せない役立たずなのかな?」
「ふぅー、ふぅー、い、いや、ち、違う……治せる、治せるよっ!」
質問しているのに森は混乱しているようだ。目を泳がせて、呼吸も荒く、まともに答えられない。
電車の痴漢で捕まったサラリーマンでも、まだまともな対応が出来る。
剣を向けて、もう一度聞くとやっと動き出した。
床に転がっている足を拾うと左手で持って、辻本の切断面にくっ付けて、右手で杖を持った。
「リカバリー! リカバリー! リカバリー!」
「あああああッッ‼︎ 痛えぇぇ‼︎ 痛えぇぇ‼︎ 早く治してくれッッ‼︎」
緑色の光弾が足に当たると、切断された右足がくっ付いていく。流石は魔法の力だ。
普通はそんなに簡単に神経も血管も筋肉も骨も繋がらない。
「森君、上手くくっ付いたみたいだね。じゃあ、次は左足を切るから、またくっ付けて。辻本君は死んでもいいらしいから、失敗しても問題ないから。そうだよね、辻本君?」
「はふぅー! はふぅー! はふぅー!」
血が止まったから治療が済んだのだろう。辻本の横に移動して、次の指示を森に伝えた。
そして、大汗と涙を流している辻本の返事を聞く前に、上から下に剣を振り落とした。
辻本の左足の膝の少し上を床板と一緒に真横にスパァッと切断した。
「ぎぁあああああッッ‼︎」と辻本の悲鳴がまた上がった。
森が急いで切断された足を持ち上げて、くっ付け始める。
今なら自分達の立場を理解して、キチンと話を聞いてくれるはずだ。
「そう。辻本君、それでいいんだ。言われた事を守れば良いんだ。単純で簡単な話だろう? 違うかな?」
「はい! はい!」
杖を持っている森の右手の上に剣を置いた。森は頭を縦に強く振って頷いている。
藤原の方を見ると、強張った表情で両手を上げたまま、森と同じように強く頷いている。
二人は理解してくれたようだ。残りは一人だけだけど、理解できないなら次は腕が切断されるだけだ。
「分かった。俺から住民の皆んなには辻本君はしっかりと反省していると伝えるよ。でも、またルールを破ったら連帯責任になるからね。それでいいよね、辻本君も?」
「ゔゔっ、ひぐっ、ひぐっ……」
泣いている辻本に聞いているのに返事は返ってこない。
これ以上、コイツに時間を使うのも勿体ないので、理解したと思う事にしよう。
三人の杖を没収すると、三つある部屋の中を探して、ボサボサの長い茶髪の少女を見つけた。
部屋の隅に座っている少女は裸ではなく、男物の大きなサイズの厚手の半袖白シャツを着ている。
町の住民のタンスの中の服を綺麗に洗って、藤原達に貸していた服だ。恩を仇で返すとは恥知らずな奴らだ。
「もう大丈夫だよ。外に出ようか?」
出来るだけ優しそうな微笑みを浮かべて、体育座りをする少女に左手を差し出した。
少女は怯えるわけでも、怖がるわけでもなく。暗い表情で真っ直ぐにジッと見てくる。
しばらく待っていると、少女がスゥッと一人でゆっくりと立ち上がった。手助けは必要ないようだ。
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捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
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