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第6話 優しいロボットのロボ子

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「ご主人様! あれはどういうつもりですか! あんなの強盗と一緒ですよ!」

 この屑に何を言っても無駄かもしれませんが、何か言わないと気が済みません。いっそ、殴った方が理解してくれるかもしれません。

「ロボ子、お前は人間の気持ちをな~~~んにも分かってない。だから、お前はロボ子なんだ」

「んんっ⁇ それはどういう事ですか?」

 確かに私はロボットですが、人工知能を搭載しています。人間と同じように感情を持ち、考える事も出来ます。ロボットだから、人間の気持ちが分からないと言われるのは心外です。

「いいか、ロボ子。初対面の人間がやって来て、これから話し相手になります。だから、1時間800円支払ってください。こんな事を言われて喜ぶ人間はいないんだ」

「でも、あのおばあさんが依頼者ですよね? だったら、おばあさんはお金を払ってもでも誰かと話したいという事だと思います」

「はっは、あんな恥ずかしい事、自分で依頼する訳ないだろう。あの依頼はきっと息子夫婦が婆さんの面倒を見るのが嫌になってやった事だろうよ」

「そんな事が……いえ、嘘です! そんなの私は信じられません!」

 ご主人様の言う事が本当ならば、自分の母親を見捨てた事になります。それは、来るかどうかも分からない冒険者に全ての責任を押し付けたようなものです。

「普通だよ、普通。大昔はわざわざ山の中に捨てに行ったそうだ。今はわざわざそんな事もせずに家に放置だよ。時代が変わったのか、人の心が変わったのか、そういう世の中なんだよ。下手に関わって情なんか湧いても面倒なだけだぞ。もうあの家には行くんじゃないぞ!」

「ですが、ご主人様…」

「いいか、命令だ。ロボットならご主人様の言う通りにすればいいんだよ! 分かったな!」

「………」

 私は無言を貫きます。けれども、ご主人様の言う通り、ロボットは自分のご主人様の言う事を聞かないといけません。どんなに嫌な命令でも一応は聞かないといけないのです。

「おーい、ロボ子! 婆さんの仕事は無くなったんだから、次の仕事を見つけて来いよ! 今度も婆さん関係の仕事を持って来たら、お前には裏路地で風俗嬢の仕事をしてもらうからな! いいな!」

「はい、分かりました…ご主人様」

 この屑がご主人様になった時点でこうなる事は分かっていました。きっとトコトン性根が腐っているのです。人間らしい優しさを求めても通用しないのです。

「では、次の仕事を探して来ます」

 私は○○○○ドアを開くと、ハロー冒険者ワークに行こうとします。けれども、背後からご主人様の優しい声が聞こえてきました。

「おい、ロボ子……風邪引くなよ」

「チッ」

 私は軽く舌打ちをすると、勢いよくドアを閉めて、ハロー冒険者ワークで次の仕事を見つける事にしました。ご主人様は当てにはなりません。一生一人でワンピースでも読んでいればいいんです!

 ❇︎

 ❇︎

 ❇︎

「はい、ロボ子ちゃん、ありがとうねぇ」

「こちらこそ、ありがとうございます」

 野菜の配達を終えると、時給780円の報酬を受け取ります。本来ならば配達先までは馬車で往復6時間はかかりますが、私の場合は秘○道○の力で5分で終える事が出来ます。

 それでも、八百屋のおじさんは私に5000円を報酬として渡してくれます。太っ腹なおじさんです。でも、このおじさんの優しい報酬は私の屑でヒモのご主人様の汚い手に渡ってしまいます。

(この綺麗なお金をご主人様に渡すのは正直嫌ですが、仕方ありません。今は我慢しましょう)

 きっといつかは引き篭もるのにも飽きるはずです。それまでの我慢と辛抱です。あのおばあさんと一緒で、ご主人様は私が付いていないと死んでしまうのです。

(さて、家に帰る前におばあさんの家に寄らなくては…)

 ご主人様には禁止されていますが、放って置ける訳がありません。おばあさんに金銭的な援助は出来ませんが、こうやって余り物の野菜を届ける事は出来ます。

 ○○○○ドアを開くと、私はおばあさんの家に到着しました。きっと私が来るのを嫌々ながらも待ってくれているはずです。

「んんっ? 何の音でしょうか? 家の中から聞こえてきます」

 おばあさんの家の中からパン、パン、パンと何かを叩くような音が聞こえてきました。もしかすると、おばあさんの息子夫婦が戻って来たのかもしれません。私はソッと木の扉を開けて中を覗いてみました。

 ❇︎



 

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